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●1986年10月14日(火)霧のち晴<br />「明け方に総攻撃の予定が,濃霧のため,やむなく午後に延期。<br /> 午後になると,霧はしだいに晴れはじめた。前線の望遠鏡から,われわれがまもなく奪還する予定の敵の陣地が見える。一人の敵兵の後ろを数人の”お供”がついていく。そのなかの一人の若い兵士が,白菜を抱えている。おそらく,あの白菜をこれから鍋で煮るのだろう。敵軍はわれわれの戦闘意図には気づいていないようだ。<br /> 正午すぎの12時58分,攻撃開始。計画どおり砲撃が二三分間おこなわれた。<br /> 私は砲撃が見やすい位置に事前に走っていた。塹壕の上に立って,敵陣が砲撃されるシーンを撮った。一枚撮って,二枚目のシャッターを押そうとしたその瞬間,津波のような揺れに直撃されて,私は後ろへ宙返りして,塹壕の中にもんどり打って落ちてしまった。<br /> 敵のこの一撃で,私は思考停止状態に陥ってしまった。振り返ると,そばで李宗立も震えている。『梁幹部,大丈夫ですか? すぐ前方に敵の砲兵陣地があるようなので,とても危険です。早く洞穴に隠れたらどうですか』<br /> 李は塹壕にへばりついて,前方を窺っている。双方の砲撃はしだいに熾烈さを増し,土くれや弾丸が四方に飛び散って満足に目も開けられない。」<br />「李は外に向かって何回も飛び出そうとしたが,そのたびに機関銃の掃射を受けて戻ってくる。『どうします?梁幹部!』李は振り返って私を見つめた。<br /> 思い切って外に出るしかあるまい。私はカメラを抱きしめると,『突撃!』と叫びながら,目をつぶって前へ向かって走り出した。<br /> 前方に敵に破壊された機銃座が見えた。さっとそこに倒れ込んだ。何も見えない。李は後ろからしきりに叫ぶ。『ダメです!ここにいちゃダメです。敵から丸見えですよ。早く,早く行きましょう!』<br /> 二人が相前後して銃座から飛び出した瞬間,ガーン!と爆発音がした。機銃座に砲弾が落ちたのだ。」<br />「真正面に,背負われていく負傷者が見えた。負傷者を背負っている兵士に私は望遠レンズを合わせようとしたが,動きが速くてレンズではつかまえられない。<br /> 私と李は,足を止めず走りつづけた。前方を行く兵士たちの一群は,敵の砲火をものともせず,勇敢に前へ突進していく。突然,大音響とともに天を衝くような火柱があがった。一発の敵砲弾が彼らの真ん中に落ちたのだ。ちぎれた足,鉄かぶと,軍服の一部が空中を舞い飛ぶ。<br /> 反射的にカメラを構えたが,目の前のあまりの惨状に呆然と立ちつくしてしまった。<br /> これまで映画でたくさんの戦争のシーンを見たことがある。硝煙立ちこめる戦場に出れば,私自身や味方兵士たちは,どんなに勇敢に,敵を恐れず,てきぱきと身を処していくのだろうかと,何回となく想像してきた。しかし今日,あらゆることが起こるのを目の前にして,私ははじめて,映画と現実には絶望的なまでの差があることに気づいたのだ。」<br /><br />  梁子著・王敏訳「戦場からニイハオ! 中国女性従軍カメラマンの日記」(光文社)より<br /><br /><br />ランソン逍遥その1:ハイフォンからランソンへ移動&ランソン公共バス<br />https://4travel.jp/travelogue/11483237<br /><br />ランソン逍遥その2:街歩き前篇<br />https://4travel.jp/travelogue/11483245

ランソン逍遥(2018年11月ベトナム)~その3:街歩き後篇

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2018/11/21 - 2018/11/30

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32

タヌキを連れた布袋(ほてい)

タヌキを連れた布袋(ほてい)さん

●1986年10月14日(火)霧のち晴
「明け方に総攻撃の予定が,濃霧のため,やむなく午後に延期。
 午後になると,霧はしだいに晴れはじめた。前線の望遠鏡から,われわれがまもなく奪還する予定の敵の陣地が見える。一人の敵兵の後ろを数人の”お供”がついていく。そのなかの一人の若い兵士が,白菜を抱えている。おそらく,あの白菜をこれから鍋で煮るのだろう。敵軍はわれわれの戦闘意図には気づいていないようだ。
 正午すぎの12時58分,攻撃開始。計画どおり砲撃が二三分間おこなわれた。
 私は砲撃が見やすい位置に事前に走っていた。塹壕の上に立って,敵陣が砲撃されるシーンを撮った。一枚撮って,二枚目のシャッターを押そうとしたその瞬間,津波のような揺れに直撃されて,私は後ろへ宙返りして,塹壕の中にもんどり打って落ちてしまった。
 敵のこの一撃で,私は思考停止状態に陥ってしまった。振り返ると,そばで李宗立も震えている。『梁幹部,大丈夫ですか? すぐ前方に敵の砲兵陣地があるようなので,とても危険です。早く洞穴に隠れたらどうですか』
 李は塹壕にへばりついて,前方を窺っている。双方の砲撃はしだいに熾烈さを増し,土くれや弾丸が四方に飛び散って満足に目も開けられない。」
「李は外に向かって何回も飛び出そうとしたが,そのたびに機関銃の掃射を受けて戻ってくる。『どうします?梁幹部!』李は振り返って私を見つめた。
 思い切って外に出るしかあるまい。私はカメラを抱きしめると,『突撃!』と叫びながら,目をつぶって前へ向かって走り出した。
 前方に敵に破壊された機銃座が見えた。さっとそこに倒れ込んだ。何も見えない。李は後ろからしきりに叫ぶ。『ダメです!ここにいちゃダメです。敵から丸見えですよ。早く,早く行きましょう!』
 二人が相前後して銃座から飛び出した瞬間,ガーン!と爆発音がした。機銃座に砲弾が落ちたのだ。」
「真正面に,背負われていく負傷者が見えた。負傷者を背負っている兵士に私は望遠レンズを合わせようとしたが,動きが速くてレンズではつかまえられない。
 私と李は,足を止めず走りつづけた。前方を行く兵士たちの一群は,敵の砲火をものともせず,勇敢に前へ突進していく。突然,大音響とともに天を衝くような火柱があがった。一発の敵砲弾が彼らの真ん中に落ちたのだ。ちぎれた足,鉄かぶと,軍服の一部が空中を舞い飛ぶ。
 反射的にカメラを構えたが,目の前のあまりの惨状に呆然と立ちつくしてしまった。
 これまで映画でたくさんの戦争のシーンを見たことがある。硝煙立ちこめる戦場に出れば,私自身や味方兵士たちは,どんなに勇敢に,敵を恐れず,てきぱきと身を処していくのだろうかと,何回となく想像してきた。しかし今日,あらゆることが起こるのを目の前にして,私ははじめて,映画と現実には絶望的なまでの差があることに気づいたのだ。」

  梁子著・王敏訳「戦場からニイハオ! 中国女性従軍カメラマンの日記」(光文社)より


ランソン逍遥その1:ハイフォンからランソンへ移動&ランソン公共バス
https://4travel.jp/travelogue/11483237

ランソン逍遥その2:街歩き前篇
https://4travel.jp/travelogue/11483245

旅行の満足度
3.5
観光
3.5
ホテル
3.0
グルメ
3.5
ショッピング
3.5
交通
3.5
同行者
その他
一人あたり費用
25万円 - 30万円
交通手段
高速・路線バス タクシー 徒歩
航空会社
ベトジェットエア
旅行の手配内容
個別手配
  • 次は観光エリア。

    次は観光エリア。

  • まずは二清洞(ニタイン洞窟)という鍾乳洞&寺へ。

    まずは二清洞(ニタイン洞窟)という鍾乳洞&寺へ。

  • すぐに到着。

    すぐに到着。

    二清洞 / ニタイン洞窟 洞穴・鍾乳洞

  • 中はこんなふうになっているらしい。入場料20kd。

    中はこんなふうになっているらしい。入場料20kd。

  • 続いて三清洞(タムタイン洞窟)へ。こちらも鍾乳洞&寺。

    続いて三清洞(タムタイン洞窟)へ。こちらも鍾乳洞&寺。

  • 途中で犬神と邂逅。<br /><br />洗濯板を立てかけたりしていいのかな。

    途中で犬神と邂逅。

    洗濯板を立てかけたりしていいのかな。

  • 15分ほど歩いて三清洞に到着。

    15分ほど歩いて三清洞に到着。

    三清洞 (タムタイン洞窟) / 莫朝の都城遺跡 洞穴・鍾乳洞

  • 三清洞の案内図。

    三清洞の案内図。

  • こちらは二清洞より規模が大きく,土産物の露店が出ている。

    こちらは二清洞より規模が大きく,土産物の露店が出ている。

  • そこからトーティ(To Thi)山へ。

    そこからトーティ(To Thi)山へ。

  • 小高いトーティ山は,ランソンの市街地からも見えている。<br /><br />トーティ夫人の物語(絵本・訳文あり)はこちらを参照↓<br /><br />https://www.hyogo-ip.or.jp/torikumi/tabunkakyose/kyozai/kyozaidl/viet/documents/wlv-6-d9bf6-3.pdf

    小高いトーティ山は,ランソンの市街地からも見えている。

    トーティ夫人の物語(絵本・訳文あり)はこちらを参照↓

    https://www.hyogo-ip.or.jp/torikumi/tabunkakyose/kyozai/kyozaidl/viet/documents/wlv-6-d9bf6-3.pdf

  • トーティ山を反対側(市街地側)へ下りると,

    トーティ山を反対側(市街地側)へ下りると,

  • ファイロアン湖に行き当たる。

    ファイロアン湖に行き当たる。

  • 散歩するにはちょうどよい湖で,湖上の小島には大きなレストランがある。<br /><br />湖畔に小さな茶店がいくつか出ている。

    散歩するにはちょうどよい湖で,湖上の小島には大きなレストランがある。

    湖畔に小さな茶店がいくつか出ている。

  • ランソンの街でもっとも面白いのは,バックソン通り周辺のエリアである。

    ランソンの街でもっとも面白いのは,バックソン通り周辺のエリアである。

  • バックソン通りの市場の北端はキールア市場周辺。<br /><br />キールア市場の西側には,デム・キールア市場もある。

    バックソン通りの市場の北端はキールア市場周辺。

    キールア市場の西側には,デム・キールア市場もある。

    デム キールア市場 市場

    キールア市場の夜市? by タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
  • キールア市場の東向かいにはターフー祠がある。<br /><br />たくさんの市民がお参りに訪れている。

    キールア市場の東向かいにはターフー祠がある。

    たくさんの市民がお参りに訪れている。

  • キールア市場周辺は,ランソン名物の丸焼きの店が数多く軒を並べている。

    キールア市場周辺は,ランソン名物の丸焼きの店が数多く軒を並べている。

  • 刻み煙草を売る老婆。

    刻み煙草を売る老婆。

  • やや南に下がったジエンヴオン市場周辺には,

    やや南に下がったジエンヴオン市場周辺には,

    ジェンブオン市場 市場

    青果・精肉の露店が多く面白い by タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
  • 青果・精肉など生鮮食料品の露店が密集している。

    青果・精肉など生鮮食料品の露店が密集している。

  • クズイモ。

    クズイモ。

  • ガック(ナンバンカラスウリ)。<br /><br />ベトナムの赤飯(濃いオレンジ色をしたおこわ)はこの種子で色を染める。

    ガック(ナンバンカラスウリ)。

    ベトナムの赤飯(濃いオレンジ色をしたおこわ)はこの種子で色を染める。

  • 処理されたアヒル。

    処理されたアヒル。

  • 山岳民族の姿もしばしば見かける。

    山岳民族の姿もしばしば見かける。

  • バックソン通りの南端付近の500mほどは,朝市がすごい人出だ。

    バックソン通りの南端付近の500mほどは,朝市がすごい人出だ。

  • 種類豊富な漬物。

    種類豊富な漬物。

  • これはコールラビ。<br /><br />ニンジンを添えて陳列の彩りをよくする感性がベトナム人らしい。

    これはコールラビ。

    ニンジンを添えて陳列の彩りをよくする感性がベトナム人らしい。

  • これは狗肉。

    これは狗肉。

  • 狗肉を売る屋台はいくつもある。<br /><br />最近は内外からの風当たりがあるらしいが,独自の文化はしっかりと守ってほしいと思う。

    狗肉を売る屋台はいくつもある。

    最近は内外からの風当たりがあるらしいが,独自の文化はしっかりと守ってほしいと思う。

  • これは・・・狗肉屋台の近くに繋がれていたが,たぶん飼い猫であろう。<br /><br />(ベトナム北部や両広では猫も食用になる。)

    これは・・・狗肉屋台の近くに繋がれていたが,たぶん飼い猫であろう。

    (ベトナム北部や両広では猫も食用になる。)

  • ☆ランソン市街は,洞窟エリアを含めて,徒歩で回ることができる。<br />☆ドンダンへは公共バスの路線(1・2番)がある。長距離バスが発着するフィアバックへも公共バスの路線(3番)がある。<br />☆見どころはバックソン通りの朝市やその周辺の市場。ファイロアン湖からトーティ山~三清洞の辺りは散歩道として最適。<br />☆ランソンの名物は肉の丸焼き。豚,鶏,合鴨がある。発酵タケノコの唐辛子漬けも名産品で,麺食堂のテーブルには必ず置いてある。汁麺に投入したり,そのまま食べても美味しい。スーパーにはランソンの地酒(焼酎)も置いていた。<br />☆ハノイの各バスターミナル行きのミニヴァンは,フィアバックを出たあとランソン鉄道駅の東南にある国道一号線と幹線道路の交差点で客待ちをしていた。わざわざフィアバックまで行かなくても,ここから乗車できるかも。<br /><br /><br />ランソン逍遥その1:ハイフォンからランソンへ移動&ランソン公共バス<br />https://4travel.jp/travelogue/11483237<br /><br />ランソン逍遥その2:街歩き前篇<br />https://4travel.jp/travelogue/11483245

    ☆ランソン市街は,洞窟エリアを含めて,徒歩で回ることができる。
    ☆ドンダンへは公共バスの路線(1・2番)がある。長距離バスが発着するフィアバックへも公共バスの路線(3番)がある。
    ☆見どころはバックソン通りの朝市やその周辺の市場。ファイロアン湖からトーティ山~三清洞の辺りは散歩道として最適。
    ☆ランソンの名物は肉の丸焼き。豚,鶏,合鴨がある。発酵タケノコの唐辛子漬けも名産品で,麺食堂のテーブルには必ず置いてある。汁麺に投入したり,そのまま食べても美味しい。スーパーにはランソンの地酒(焼酎)も置いていた。
    ☆ハノイの各バスターミナル行きのミニヴァンは,フィアバックを出たあとランソン鉄道駅の東南にある国道一号線と幹線道路の交差点で客待ちをしていた。わざわざフィアバックまで行かなくても,ここから乗車できるかも。


    ランソン逍遥その1:ハイフォンからランソンへ移動&ランソン公共バス
    https://4travel.jp/travelogue/11483237

    ランソン逍遥その2:街歩き前篇
    https://4travel.jp/travelogue/11483245

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