2018/12/28 - 2019/01/02
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太田和彦さんの「ひとり飲む、京都」を読んで、自分も真似して、年末年始の京都で呑んできました。
折角なので、文章もそれっぽくしてみました。
※1 「ひとり飲む、京都」からの引用は全て、手元にあるマガジンハウス社刊の単行本 第二刷からです。
※2 写真は過去に撮影したものが含まれています(一々写真を撮る習慣がないので。申し訳ありません)。
(2019年の 1月に 3週間ほど公開した後、私家版にしていたものです。久しぶりに読み返したら、自分で言うのも変ですが、「1週間も京都に滞在しているのに、観光もしないで飲み続けている自分」が、あまりにも馬鹿馬鹿しかったので、2020年1月現在の状況を追記して、再掲することにしました。
他の方の旅行記では、行ったお店や注文したお料理/飲み物の写真や情報は多く掲載されていますが、そのお店で何をしたのか/何が起こったのか、については意外と書かれていないようです。
この旅行記は逆で、ほとんど「自分がしたこと/お店で起こったこと」で構成されています。
ご興味を持たれた方がいらっしゃれば幸いです)
(2021年10月27日追記)
2021年10月22日~25日までの京都呑みを「note」に書いてみました。
https://note.com/innyounokouyou/n/na73a3b43da1f
(最終改訂日:2022年7月5日)
- 旅行の満足度
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- 新幹線
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
【12月28日・1日目】
[横浜中華街 聘珍楼]
旅は何故か冷たい風が吹きつける、寒い横浜中華街から始まる。
仕事納めのこの日、会社の納会が「聘珍楼」で開かれ、午後 8時前まで約3時間、美味しい中華料理を楽しんだ。
(2022年6月3日 追記:報道によると、聘珍楼は2022年5月15日に移転のため閉店したとのこと)
その後、新横浜駅 午後 8時38分 発の新幹線に乗る。
車内では席に着いたとたん爆睡。
起きてから少し読書しているうちに、午後10時39分 、京都に着く。
横浜も冷たい風が吹いていたためか、酔っているからなのか、あまり寒く感じない。
そのまま地下鉄で四条烏丸のホテルへ向かう。
[ホテル]
太田さんは、夏編では「ホテルフジタ」へ、冬編ではフジタの閉館に伴い、三条烏丸へ宿泊しておられる。
僕は、四条烏丸から錦通りを越してすぐのところにある「チェックイン四条烏丸」を取った。
このホテルは連泊に適していると思っている。 -
どのへんが連泊に適しているのかは追々書くとして…
とりあえず部屋に荷物を置き、早速出掛ける。
烏丸通を上がり、一つ目の蛸薬師通を東に入る。
柳馬場通まで来て、そのまま北へ上がる。
太田さんが冬編の 4日目に訪れた「魚戸いなせや」は今は「手水や」というお店になっている。 -
もう午後 11時を越えているので、入店せずにそのまま柳馬場通を上がる。
このまま御池通まで上がると、途中に「馳走いなせや」(太田さんの本では「地酒いなせや」と紹介されている)があるが、今日は、蛸薬師通から一筋上がった六角通にある「和鉄板ぞろんぱ」に入る。
ここは、深夜1時まで営業しているので、この時間でも大丈夫である。
[和鉄板ぞろんぱ]
http://www.zoronpa.com/rokkaku/index.html -
遅い時間だが、今日が仕事納めだからか、お客さんは多い。お店の入り口に近いカウンターの席に座る。
「篠さんとこからですか?」
と店長が聞くので、
「いや、今京都に着いたところ」
と返しながら、とりあえずビールを注文する。
「今日は"かつお"がお勧めです。篠さんとこでも出てますけど。まぁ、うちが紹介したんですけど」
「篠さん」は、烏丸通の西側にある居酒屋「一政」のオーナーシェフだ。
かつおは「一政」で食べることにし、代わりに空腹を満たすために焼きそばを注文。
「今回はいつまで京都ですか?」
「3日の朝に帰る」
「うち、来年の7日まで休まないんで、また来てください」
カウンターは常連のお客さんと店員さんのやり取りで賑やかだ。
アルバイトの女性が、店長兄弟(6人兄弟、まさにリアルおそ松さん。弟たちもこのお店で働いている)の近所に住んでいて「小さい頃から知ってる」とのことで、地元の話で盛り上がっている。
ビールからお酒に切り替える。
「この間入れたんですよ」
と店長が取り出したのが、「萩の鶴 R30」。
ツイー……。
喉越しの良い、綺麗なお酒。
「僕もまだ飲んでないんですよ」
店長が小さなお猪口を取り出し、少し注ぐ。試飲するらしい。
2人で乾杯する。
「うん、美味しいですね」
店長も満足そうだ。
さて、もう少し飲んでいたいところだが、横浜での納会や京都への異動で疲れているし、旅は始まったばかりなので、早々にホテルに帰ることにする。
「年末まで行くとこ決まってます?」
「いや何も決めてない。大晦日とかお店に入れなかったら、寄らせてもらいます」
「じゃぁ、まだ『良いお年を』って言うのやめときますね」
と店長に見送られる。
それが、あの大晦日への序章だった。
【12月29日・2日目】
[ホテル] -
食堂で朝食(今回は贅沢に、朝食付きのプランにした)をとった後、昨日できなかった荷解きをする。
ノートPCをセッティングし、ネットを接続する(ネットは有線/Wi-Fi どちらも可)。
テレビの角度は変えられない(従って、テレビはベッドに寝て見ることになる)ようだ。
ところで、ホテルでの荷解きについては、太田さんも、冬編 1日目の冒頭で、こう書かれている。
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着替えを引き出しに入れたり、洗面具や薬を風呂場に置いたり、しばらく滞在するホテルの部屋を自分に合わせて整えるのは、(中略)どこか楽しいものと知った。おおげさには一週間の新生活の準備だ(155ページ)。
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ベッドの枕元には照明のコントローラがあり、ACコンセントも付いている。これで、スマホの充電もできると思っていたら、その横に、「携帯電話充電器」があり、各メーカの機種に対応できるようになっていた。 -
-
ニュースによると、東海道新幹線は雪で遅れが出ているようだ。昨日移動しておいて良かった。
-
午前 11時頃にホテルを出て、ホテルの斜向かい(と言って良いと思うが)の大垣書店に寄る。柴崎友香著「公園へ行かないか?火曜日に」を見つけたのでそのまま購入。
[カプリ食堂]
https://capri.red/ -
烏丸通を五条通辺りまで下がって、「カプリ食堂」に入る。
アルバイト(だと思われる)の店員が 2人。
このお店は、ランチ(だいたい700円~1000円くらい)を注文すると、ビールが350円で飲めるので、とてもありがたい。
カキフライランチと当然ビールを注文。
不意に、お店の電話が鳴る。
以前、同じような状況で、僕にオーナー夫人から電話が掛かってきたことがあったことを思い出す。何故、お店にいたことが判ったのか、未だに謎である。
今回は、予約の電話だったようだ。
オーナーもいないので、注文したものを平らげ、静かにお店を出る。
(追記:2019年末、同じようにランチを食べていたらオーナーから電話があった…)
(追記:オーナーは2号店、カプリ食堂LIMONE VERDE にいる。https://capri.red/free/verde)
(さらに追記:2021年現在、どちらのカプリ食堂でも、280円均一の「昼呑みメニュー」がある → 2022年メニュー終了)
ホテルに帰り、暫し休憩。PCとTVを繋いでDVDでも見ようとHDMIケーブルも持ってきたが、これも接続できない。PCでDVDを再生させながら、うたた寝をする。
(追記:2019年末~2020年正月に泊まったソファーありの部屋ではテレビの角度は変えられなかったが、HDMIケーブルは接続できた)
[先斗町 酒BAR]
午後 4時前、ベッドからノソノソと起き上がり、大浴場へ行く。
ホテルには大浴場があり、午後 3時から入れる。
連泊中ずっとユニットバスだと疲れも取れないが、大浴場があるととてもリフレッシュできる。
この時間でも何人かの先客がいる。結構、早風呂を好む人がいるのかもしれない。
僕の場合は、「風呂上りのビール」が目当てだ。
湯冷めしないように念入りに入浴し、先斗町の「酒BAR」に行く。 -
このお店は、午後 3時くらいから開いているカジュアルなカウンターバーで、早い時間は常連客や外国人観光客で賑わう。
この時間、日本人は「こういった場所は食事の後」と思っているのか、あまり入ってこない。外国人観光客は、お構いなしに入ってきてビールや日本酒を飲んで、長居せず帰っていく。
僕の中では、このお店は「0軒目」という認識で、ここで1~2杯ビールを飲んで調子を上げていく。
ツイー……。
風呂上がりのビールの美味さは、夏・冬関係ない。
この日は、午後 9時から二階のパーティースペースで常連客たちと忘年会をするとのこと。京都以外からの参加者も多いらしい。
「参加する?」
店長の安原さんが聞くので、
「しない」
と素っ気なく断る。
このお店は、大晦日は毎年、お客さんたちとカウントダウンをする。
「一昨年辺り、『去年のカウントダウンはお客さんが溢れて大変だった』って言うのを聞いて、午前1時頃に来たら、誰もいなかったことがあったような」
「そうそう。で、去年はめっちゃ混んだ」
と店長。
「混んだ→暇→混んだ、ということは、今年は…」
「嫌なこと、言うな」
怒られる。
ビールを2杯飲み終わったところで席を立とうとしたら、安原さんが店員の女性に、耳打ちする。
「こういう時は、どう言うんやった?」
「もう一杯どうです?」
どうやら、前回来た時にこの手で杯を重ねてしまったのに味をしめたらしい。
……結局、ビールを3杯飲んでお店を出る。
(追記:酒Bar、2021年夏閉店。安原さんは京都市役所近くで新しいバーを開店) -
[たまりや(現 「吉左エ門、」) 。行ってないけど]
賑わう先斗町を下がり、混雑する四条大橋を渡り、縄手通りまで歩く。
泉涌寺の辺りから三条通辺りまで続く「大和大路通」は、四条通より北側では「縄手通」とも呼ばれる。四条通から縄手通に入って暫く歩くと、白川が見えてくる。
太田さんは、この辺りのことをこう記している。
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幅四メートルほどの清流白川に沿う白川南通は最も京都らしい情緒から、映画などで「舞台は変わって京都」のファーストカットに昔から何度も使われ(中略)。切石の石畳、小橋「巽橋」や料亭黒塀、柳の緑が絵になる。(57ページ。夏編 3日目)
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この文章の手前に、太田さんはこう書かれている。
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四条大橋たもと南座前の交番を上る祇園縄手通、白川を渡った左のビル二階「たまりや」。場所はわかったが開店には早く、近所を歩いてみよう。(上記同)
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「たまりや」の女将さんによると、太田さんは本当にお一人で来られ、後日、出版社から掲載許可を求める連絡があるまで、わからなかったとのこと。
女将さん曰く「読んだら、私のしゃべりが京都弁になっていて、びっくりした」(女将さんは滋賀出身で「どすわ」などとは言わない)。まぁ、これは京都の雰囲気を出すためのご愛敬といったところかと思う。
といっても、太田さんが紹介した「たまりや」は今はなく、「吉左エ門、」(吉の上の字は士ではなく土)という、福井出身の板長と奥様(女将さん)が経営する割烹料理屋になっている。
で、そのお店に年末のご挨拶をと思って来てみたが、昨日で年内の営業を終了したようだ。諦めて階段を降りる。
ちなみに、現在の「たまりや」は祇園南、花見小路に面したところにあり、女将さんは健在だが料理人を使わず、妹さんとおばんざいを出すお店になっていたが、2019年から新料理長を迎えて、割烹料理屋さんに戻るらしい。近いうちにお伺いしたいと思う。
※写真は現在の「たまりや」の看板。
追記:「たまりや」は、残念ながら2019年7月8日に火事で全焼してしまった(「祇園の火事」ということで記憶されている方もあるかもしれない)。2019年末に、祇園北側にあるビルの地下で「鈴乃」というお店を開き、再出発されました。
詳細はこちら:https://fumitama.exblog.jp/
(2022/07/05追記)
「鈴乃」は2022年5月末で閉店しました。
女将さんは知人の方と新たに会員制(場所も非公開)のバーを開店されたそうです。「鈴乃」があった場所は、新たに「夜桜」という会員制のお店になったようです。
詳細はこちら:https://fumitama.exblog.jp/ -
-
縄手から四条河原町まで戻り、四条烏丸まで地下道で移動する。外はあまりに寒すぎる。加えて人通りが多い。
グループのお客さんが多いからか、厨房が忙しそうだ。
「忙しそうですね」
カウンターに座りながら、オーナーの篠さんに声を掛ける。
「いや、今日は全然大丈夫ですよ。明日は最終日なんで、予約でいっぱい。明日は無理」
今日来ておいて良かった。
道中寒かったので、熱燗を注文。待っている間にメニューを確認するが、"かつお"が見当たらない。
しかし、グループのお客さん用に"かつお"が出ていくのを発見。
「ぞろんぱで、"かつお"をお勧めされたんだけど」
とおねだりして、"かつお"を出してもらう。確かに美味しい。
篠さんが、カウンターのお客さんに名刺を渡している。
「俺、何年も通ってるのに、名刺いただいたことがない」
と文句を言うと、「はいはい」と、篠さんが名刺と千社札を差し出してくれる。
「今年も京都で年越しですか?うちは、2日から営業しますから、良かったら来てください」
「ということは、帰省しないの?」
このお店は、篠さんを始め、メインスタッフは関東出身者である。開店して何年も経つと、やはり京都が生活の中心になっているということなのかもしれない。
お勧めの日本酒をお願いすると、「二兎」(写真)を出してくれた。
で、それを飲み、気分良くお店を出た(と思う)。
[SUSHI Dining 大八]
「一政」からの帰り、「SUSHI Dining 大八」に席が空いているのを見つけ、入ってしまったのは覚えている。しかし、ここからの記憶はなく、気が付いたらホテルで寝ていた(しかも、ちゃんと着替えて)。
お店で何をしたのか、不安で仕方がない。
【12月30日・3日目】
[ホテル]
二日酔いで起きられない。こういう時には、熱い風呂に入るのが良いのかも。 -
風呂で少しは回復したが、出歩く気分ではないし、正午から「ガキ使」の特番がある。とりあえず、それを見る。
番組が終わっても暫くグズグズし続け、漸くお腹が空いてきたので、午後 3時前にホテルを出る。小雨が降っている。
観光を兼ねて、屋根のある錦市場を通ることにするが、これが間違いだった。
年末の買い出しと観光客で溢れて、西の入り口からかなりの人混み。
柳馬場通と交差するところにある「元蔵」という居酒屋(だと僕は思っているが、お昼時はうどんを食べて帰る客がほとんど)にも行列ができているのを見ながら歩いていたら、突然、その先進めなくなった。
仕方がないので、流れに逆らわず、牛歩のごとく進む。
通りに面したお店の人が、「ゆっくり」とか「追い越したらあかん」とか声を掛けている。
富小路通まであとどのくらい掛かるだろうと考えていたら、突然、肩を叩かれた。
京都で知り合いに会うとは思っていないので、何か落としたか、迷惑なことをしてしまって注意されるのかと戸惑っていると、相手は「和鉄板ぞろんぱ」の店員さん。
「これから出勤?」
「いや、魚を取りにきたんです」
この渋滞の中、仕事とはいえ、ご苦労な事だと思う。
[きよきよ]
何とか錦市場を越え、木屋町通まで到達。
奥まったビルの一階にある「きよきよ」という立ち飲み屋に入り、ビールと(寒かったので)おでん盛り合わせを注文する。
お店のテレビでは「HUNTERxHUNTER」というアニメが流れている。
興味はないが、流れていると何となく見てしまう。
暫くすると、賑やかな女性二人組が「寒い寒い」と言いながら入店。
お店の隅に置いてあった椅子を見つけ、「椅子ありですか?」。2人はそのまま椅子飲みに突入。…その手があったのか!
立ち飲みとはいえ、おでんの盛り合わせは、豪華に盛り付けられている。
さすが、「京家きよみず」が手掛けたお店だけあると感心。
ビールを追加注文し、おでん盛り合わせを完食してからお店を出る。
[京家きよみず本家] ※写真は一年前のもの
http://www.kyoya-kiyomizu.com/ -
Yちゃんと約束していたので、今回の旅で唯一予約したお店。
ちょっと遅れるというので、お店で待ち合わせ。
お店の前には「本日、満席でご予約のお客様のみ」との張り紙。
ちょうど 1年前に一人で来た時には、時間が遅かったからか飛び込みで入れてもらえた。
カウンターに案内され、Yちゃんを待っている間にお店を観察。
このお店がオープンしてから 8年半。僕が来始めてからちょうど 8年。
その間に、木屋町・祇園にお店を出し、お昼に行った「きよきよ」を今年オープンさせた。スタッフもそれぞれのお店に移動したり独立したりで、今日知っている人はいないようだ。
(追記:さらに「京家 KIYOMIZU 錦麩屋町」もオープン)
(さらに追記:「京家 KIYOMIZU 錦麩屋町」、2020年末、「キヨミズノジカン」としてリニューアルオープン。https://www.kyoya-kiyomizu.com/kiyomizunojikan/)
遅れて(といっても 5分くらい) Yちゃんが入ってくる。
「今日、飲まれへん」と、珍しくカルピスウォーターを注文。
「すぐ帰るかも」と言うので理由を聞くと、何と、お昼に実家のお母さんが骨折して入院したらしく、帰省するとのこと。それで飲めないのか。
「違う。胃潰瘍になってん。もう癖みたいになってて、すぐなる」
日替わりのおばんざいが大皿でカウンターに並んでいる。
ここに来たら必ず食べる、ポテトサラダを注文。追加で豚の角煮も。
Yちゃん曰く「前厄やからかなぁ」。
お母さんや自身の胃潰瘍の事だけではなく、どうも今年は良いことがなかったらしい。
本厄の今年、とりあえず、「お金払って厄払いしといた方が良いと思う」とアドバイスしておく。
実家へは大阪に住むお姉さんの車で行くことになった Yちゃんと、阪急河原町駅の改札で別れる。
[串鉄板ぞろんぱ]
http://www.zoronpa.com/muromachi/index.html
そのまま地下道を烏丸通まで歩く。
地上に出て室町通りを下がり、仏光寺通の少し手前の「串鉄板ぞろんぱ」の前で立ち止まる。
透明な壁でお店の中のカウンター席が外から見える。どうやら満席のようだ。
諦めて踵を返そうとした瞬間、中からオーナーが出てきた。
「空いてます。空いてます」
1席だけ空いていた、奥のカウンター席に案内される。
このお店は、「和鉄板ぞろんぱ」のオーナーの東さんが今年(2018年) 3月に開いたお店で、串に刺した食材を鉄板で焼いてくれる。もちろん魚も美味しい。
「"かつお"お勧めですよ」
…ここでも勧められる。
「昨日、篠さんとこで食べてきた」
とりあえず、熱燗を注文。
「篠さんとこ、どうでした?確か、今日までですよね?」
「昨日は二階(テーブル席)は混んでたみたいだけど、カウンターは大丈夫だった。でも、今日は予約でいっぱいって言ってた」
「うち、年末年始やってますんで、良かったら来てください」
適当に串を注文し、お酒も冷酒に切り替える。
もう少し飲んでいたいが、明日からの年越し~お正月に備えた方が良いと判断。
オーナーと「良いお年を」と言葉を交わして、早々にホテルへ帰る。
【12月31日・4日目 大晦日】
[ホテル]
洗濯をする。 -
このホテルは、全室に洗濯機と浴室乾燥機が設置されている。
おかげで、長期の連泊でも荷物を減らすことができるので大助かり。
持参した洗剤(もちろんホテルでも販売している)を入れ、洗濯開始。
洗濯した後は、浴室に干して乾燥機をスタート。
(追記:部屋に常備されたハンガーが少ないので、クリーニング屋さんでもらえるような簡単なハンガーを持参した方が良いかも。もしかしたらフロントで貸してくれるかもしれないが、尋ねたことはない) -
乾燥を待っている間、今日は大晦日なので、蕎麦屋さんに行くことにする。
ホテルから近い蕎麦屋さんは、太田さんの本にもある「本家尾張屋」(夏編 4日目)だと思うが、頑張って東大路通まで歩く。
懲りずに錦市場を歩くが、昨日以上の混み具合なので堺町筋に逃げ、結局、松原通まで到達。松原橋で鴨川を渡る。
そのまま松原通を東に進むと、商店街がある。魚屋の前では、年末年始に備えて魚などを買い出しする近所の人が列をなしている。
時間は、お店の開店時間11時半を過ぎている。
去年は待ち行列ができていて、一人客の僕は「相席で良ければ」ということで、ショートカットで入れてもらった。今年はどうなのか、不安で自然と速足になる。
[蕎麦流々 千角]
やっと辿り着いたお店は「千角」という蕎麦屋さん。外で待っている人はいないが、中はきっと混んでいるに違いない。
覚悟を決めて自動ドアのボタンを押す。お客さんが一人もいない。
一瞬状況が把握できず、開店時間を間違えたのかと焦る。
「いらしゃい…、あっ、こんにちは」
店員の女性が入ってきた僕を見て、「知ってるお客さん」という表情になる。
「…こんにちは…、で、やってるんですか?」恐る恐る聞く。
「やってますよ。お席、選び放題です」
女性店員さん、苦笑いで応える。
ドア近くに 2人掛けの席もある(カウンターはない)のに、頭が混乱していて、思わず奥の4人掛けのテーブル席についてしまう。
奥にいた別の女性店員さんからも「いつもおおきに」と挨拶される。
年越しそばだけと思っていたが、お客さんがいないのを良い事に、蕎麦屋飲みに切り替える。
「瓶ビールをください」
「瓶ビールは、キリンとアサヒがありますが」
「キリンでお願いします」
ビールを待つ間にメニューを見る。アテは味噌焼きにしようか。と、さっきの店員さんが来て、
「すみません。瓶ビール、サッポロかアサヒでした」
…僕に何か面白い神様でも憑いているのだろうか?
さて、ビールが運ばれて来た。
瓶ビールといえば、太田さんは、以前こう書かれていた。
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瓶ビールの場合は自分で慎重にグラスに注ぐ。これで味が決まるからもっとも大切な瞬間だ。この時は誰であろうと話しかけられても返事はしない。(中略)
そっと注ぎ始めたらそのままびんをぐーっと高く上げ、できるだけ細い流れにして時間をかけるとたっぷりの泡が生まれる。(中略)
ビールの水面がグラスの半分位まで上がってきたら、今度はびんの口をグラスに当て、グラスの内側をすべらせそっと流し入れると泡がぐぐーっと持ち上がってくる。(中略)
居酒屋ではこの作業(セレモニー)を慎重に行う。一人であれば誰に遠慮もなくこの作業に没頭できる。(以下略)
(「居酒屋の流儀」(講談社)。単行本 23~24ページ。「まずビール」)
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そんなことを思い出しながら、僕もビール注ぎに集中する。
泡が表面張力でグラスの縁よりふわっと盛り上がるとご機嫌になる。
太田さんも仰っているではないか。
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ビールの命は泡、泡がなくなるとヘタる。(同上)
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瓶の中のビールがなくなった頃合いで先ほどの店員さんが来て、
「ビールの注ぎ方、上手ですね」
と褒めてくれる。益々機嫌が良くなって、日本酒を注文する。 -
そうこうしているうちに、お客さんも続々入ってくるようになった。4人掛けテーブルを一人で占拠しているのは心苦しい。
「天そば、ください」
「今からおつくりして良いですか?」
「時間掛かりますよね?」
「良くわかってらっしゃる」
「それと、混んできたら言ってくださいね。相席でも全然構わないんで」
「お気遣いありがとうございます」
天そばはお酒がなくなったタイミングで運ばれて来た。
今年も、このお店で年越しそばが食べられた。
「来年もよろしくお願いします。良いお年を」と店員さんたちと交わし、お会計を済ませる。
(追記:2020年末に前を通ったら、ラーメン屋さんになっていた…。入っていないので、詳細は不明)
ホテルに帰って、「探偵ナイトスクープ」大晦日恒例の総集編を見る。設置構造上、ベッドに横にならないとテレビが見られない。お酒も入っているので、途中ちょっと居眠りしてしまう。
乾いた洗濯物を整理して、大浴場に行き一年の垢を落とす。
[先斗町 酒BAR]
風呂上りのビールは今年最後の「酒BAR」。
僕の隣に座っているお客さんは広島から来た常連さんで、安原さんと「有喜屋」で年越しそばを食べて来たそう。しかも、お店真向かいの「本店」じゃなくて、別の店舗で。
広島の常連さん、おもむろにスマホを取り出す。
「最近、ホテルにスマホが置いてるんじゃのぉ。タダじゃ言うけぇ、使こぅとるんじゃ」
日本は公衆の通信環境の整備が遅れているからなのか。僕のホテルにも置いてあった。 -
ビール 1杯でお会計をお願いする。
「ガキ使、笑ってはいけない」が始まるまでにホテルに帰りたいし、その前にもう一軒寄りたい。
「毎年、ホテルで『ガキ使』見るって、京都に何しに来てるん?」
とは言え、このやり取りも恒例になっていて、一昨日みたいに引き止められない。
[JAM]
ホテルとは逆の、東へ向かう。四条大橋を渡り、川端通の「井筒八ッ橋」の前を通って少し北上すると、「JAM HOSTEL & SAKE bar」がある。 -
ここはオーナー夫妻こだわりの日本酒を揃えてあるお店。
入るとオーナー夫人が迎えてくれた。
お昼に入った「千角」は、この方が教えてくれた。
どういった経緯からか、「最近の蕎麦屋はお昼休みがあって、昼呑みができない」という話題になって、オーナー夫人が「最近、良いお店を見つけたんですよ。しかも、日本酒も結構置いてあって」と。
で、早速行ってみたら、その日が偶然大晦日(本当に蕎麦が出てくるまで気が付かなかった)で、以来、「千角」で年越しそばを食べている。
「いつ京都に来たんですか?」
「28日かな」
「じゃぁ良かったですね」
「そう、次の日だったら雪で新幹線が…」
そんな会話をしながら、日本酒を飲んでいると、オーナー登場。
どうやら交代の時間らしい。
僕を見て、「なんか、年末って感じですね」。
このお店も大晦日のカウントダウンからお正月の間、営業する。
「毎年ですけどね」
「ガキ使」の時間が迫る。ここから歩くと、結構な時間が掛かるので早めに退店。
「良いお年を」と言って、お店を出る。
ホテル一階にあるコンビニで缶ビールとおつまみを買い、「ガキ使」を見る。
例年はおつまみやお酒を買い込んで、結構本格的な部屋飲みをしていたが、何せ寝ながらしかまともにテレビが見られないし、毎年、飲み過ぎて動けずホテルで新年を迎えるという、それこそ「京都に何しに来た」という状況に陥りそうになるので、今年は控えることにする。
CMの間にチャンネルを変えると、京都テレビで太田さんが、京都の「千登利亭」にいらした。井岡は4階級制覇できなかった。
[和鉄板ぞろんぱ]
午後 11時の「和鉄板ぞろんぱ」は、観光客と常連客の入れ替えタイミングでカウンター席は埋まっている。
「奥(小上がり)が空いてますんで、とりあえず、そこで。席空いたら呼びます」
二階のテーブル席は経験あるが、一階の小上がりは初めて。
とりあえず、生ビールを注文。
「昨日はどうも」
昨日錦市場ですれ違った店員さん。
「錦市場凄かったね」
「毎年あんなもんですよ。僕らも行きたくないんですけど、魚屋さんが『配達嫌や』って言うんで、しゃぁないから取りに行くんです」
そう言っている間にカウンター席が2人分空き、移動させられる。
カウンター席は、入り口に近い方から、"YMさん"という常連の年配男性、お連れさんの女性、僕。
空いていた隣の奥席には、二階に退避させられていた"師匠"と呼ばれている(店長曰く、「僕らの日本酒の師匠なんですよ」)若い男性が移ってきた。
一番奥にいた、2人連れのお客さんは、日付が変わる前に退店。
「年越し焼きそば、作れる?」
僕の隣に座っている、女性が言う。
そうか、その手があったのか!(この旅で何回思うのか…)
すかさず僕も便乗する。すると、反対側に座っている"師匠"も「僕も」と。
「まとめて注文くださって、手間が省けます」
と店長。
太田さんも、冬編 1日目「食堂おがわ」で、同じようなことをされている。
--------------------------------
隣に来た四人は、(中略)料理は五千円のおまかせで頼んだ。何が出るか興味がわきちらちら見ていたが、造り盛り合わせ(中略)などが続き、「もろこ、いきます?」と声がかかった。(中略)
「ぼくもそれ」
すかさず便乗注文。(中略)一人で大勢の注文を切り回すのだから仕事の重複を減らしてあげねばいけない。(161~162ページ)
--------------------------------
かくして、焼きそばが、並んだ 3人の前に別々に置かれるのであった。 -
そうこうしているうちに二階のお客さんも帰ってしまい、カウントダウンの時には、カウンター席の常連さんと僕だけに。
「この店、シャンパンある?」
"YMさん"だかそのお連れの女性だかが言い出し、我々と店員全員でシャンパンで乾杯することに。 -
すると今度は"師匠"がシャンパンを注文。その後、お互いがシャンパンを注文し合う、「シャンパン開け合戦」に発展。
誰かが、「なんか、ホストクラブみたい」と言う。
僕は、全てのシャンパンをご馳走になりながら、「このまま帰れるのか」と不安が募る。酒量はもちろんだが、このまま行くと「タダ飲み」になってしまうことが心配だ。
結局、2組の常連さんで、お店にあった 6本のシャンパンを空けてしまう。
これで終わるのかと思ったら、「そうだ、"アズマ"に持ってこさせよう」と"YMさん"が電話を掛け、お連れの女性が「今すぐシャンパンを届けよ」と指示している。
「店長大丈夫?」
見ると店長の顔が真っ赤。店長はお酒に弱いらしい。
程なく、"アズマ"ことオーナーの東さんが慌てて駆け込んでくる。お正月に「串鉄板ぞろんぱ」で出す、お雑煮の仕込みをしている途中で呼び出しを食らったらしい。状況が把握できず、シャンパンを持ったまま呆然と立ち尽くしている。
東さん、キョトンとした表情のまま、シャンパングラスを渡され、盛り上がる我々に圧倒されながら、乾杯する。
今までさんざんシャンパンをご馳走になったので、「じゃぁ、この1本は僕が」と言うと、店長が「えっ、いいんですか?」と慌てる。
まぁ言ってしまった手前、撤回できない。
お会計、19,950円也。
…やっぱり、面白い神様が憑いていらっしゃるのかもしれない。
[先斗町 酒BAR]
シャンパンの飲み過ぎと、お会計のインパクトで、お店を出たとたんに気持ち悪くなる。ホテルに帰れば良いのに、またもや、六角通を逆に歩き始める。
午前 1時半、這う這うの体で辿り着いた「酒BAR」は、結構な惨状だ。
カウントダウンは盛り上がったらしいが、残った数名のお客さんがカウンター席に突っ伏している。とても静かな店内。
店長安原さんは、「3回吐いた」と謎の自慢。
それでもこれから、八坂神社に初詣に行くという。当然、誘いを断る。
何とかホテルに辿り着いたのが、午前 2時半。ベッドにダイブする。
【1月1日・5日目 2019年元日】
[松尾大社]
二日酔いの身体を何とかベッドから引きはがし、大浴場→朝食のコースを辿る。 -
午前 11時前にホテルを出、バス停に向かう。ちょうど、「松尾橋」行きのバスが来る。車内は空いている。
このままひたすら四条通を西へ向かう。終点まで行き、お酒の神様が祀られている松尾大社にお詣りする。
例年通り、去年の「服酒守」をお返しし新しいのを購入。お詣りを済ませ、御神酒をいただく。
1200円で今年の干支が刻印された枡を購入し、それに御神酒を注いでいただく(御神酒のお代わりは 200円)。御神酒は「加茂鶴」「月桂冠」「初日の出」の 3種類から選べる。「初日の出」をいただく。
ちなみに2019年は、「己亥(つちのとい、きどのいのしし、きがい)」。
Wikipediaによると、「干支の組み合わせの36番目。陰陽五行では、十干の己は陰の土、十二支の亥は陰の水で、相剋(土剋水)である」とのこと。
初詣を済ませ、折り返しのバスで元来た道を戻る。
[八坂神社]
お正月に京都にいるなら、八坂神社への初詣は必須だと思う。
四条河原町の交差点で信号待ちをしている間にふと思いつき、マルイを左に見ながら南下。ダイコクドラッグを越した先の路地に入る。
進んだ先に、太田さんが冬編 1日目に訪れた「食堂おがわ」がある。一度幸運に恵まれ、飛び込みで入ったことがある。もちろん今日はお休み。
その左隣は、「Sake Cafe ハンナ」だ。こちらもお休み。
このお店は太田さんが訪れたときにはなかったが、店主のハンナさんは、この冬編 1日目に登場している。
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隣の女性客は日本酒に詳しく「今日は滋賀の酒特集」と、黒板にない酒をどんどん注文している。「次は喜楽長」「あ、それ、僕もいいですか?」「あらどうぞ」。(163ページ)
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その後、ご縁があって、「食堂おがわ」の隣に日本酒をメインにしたお店をオープンした(https://ameblo.jp/hannarihutatabi/entry-11246549128.html)。
以前何度かお邪魔したことがあるが、四条烏丸周辺のお店にご縁が増えたこともあり、最近はご無沙汰している。そのうち、再訪できればと思う。
鴨川を渡り東へ歩く。昨日京都テレビで見た「千登利亭」の前を通る。
混雑する花見小路を抜け、四条通に戻る。午後 4時前だがかなりの人混み。
何とか八坂神社へのお詣りを済ませる。
混雑する四条通を戻る気がしないので、東大路通のよしもと祇園花月横の小さな路地に入り、そのまま昨日訪れた「JAM」へ向かう。
オーナー夫妻は、二日酔いの状態だ。
「カウントダウンは、そうとう盛り上がったんですか?」
「私、一人が特に」
夫人が本当に辛そうに言う。
「こういう時は、熱い風呂がいいんですよ」
オーナーが言う。
それを聞いている僕も、結構な二日酔い。
日本酒を 2杯飲んで、「今年もよろしくお願いします」と挨拶して、お店を出る。
[先斗町 酒BAR]
ホテルに帰る前に、一応寄っておく。
「昨日、何飲んだ?」
僕が来たことは覚えているが、何を飲んだかは覚えていないと言う。
「コロナ。でも、安さんが『ライムとかめんどくさい』って言うから、とりあえず、瓶だけもらって、ラッパ飲み…。ところで、あの後、初詣行った?」
「もちろん。ちゃんと、住所と名前を言ってお願い事を言った」
「それは、凄い。俺は、今日、松尾大社で、とっさに『すみません。だから、許してください』って思ってしまって」
お客さんも、爆笑。
新年なので、安さんにビールをご馳走して(というか、強要された)、お店を出る。
[カプリ食堂]
時間は午後 8時前。「カプリ食堂」で、久しぶりにオーナーに会う。
「奥さんはお元気ですか?」
「元気ですよ。今、実家に帰ってるんですよ。子どもが生まれて。今、四か月です」
「それはおめでとう」
そんな会話をしながらビールを2杯飲み、お店を出る。
室町通を上がり、「串鉄板ぞろんぱ」の前を通る。空いていれば入ろうかと思ったが、満席の様子。とりあえず、ホテルに戻ることにする。
太田さんもこう書いておられる。
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旅に出た夜は夕方から飲み始めるが、この頃は体がもたず合間にコーヒーブレーク、またはいったんホテルに戻って一時間ほど寝てまたご出勤というパターンも増えた(ご苦労なこってす)。 (62ページ。夏編 4日目)
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一時間ほど休み、ホテルを出た(ご苦労なこってす)。
「串鉄板ぞろんぱ」に戻るのは面倒なので、一番近い六角通の「んまい」に行くことにする。
[んまい] -
僕が年末年始を京都で過ごし始めた頃、元日に営業しているお店は少なく、このお店には助けられた。
カウンター席に案内され、熱燗を注文する。
「おまちどうさまでした」
お酒は可愛い容器で出された。 -
鳥皮ポン酢をアテに飲む。
気分的にはもう少し飲みたいが、身体が受け付けなくなっている。
「すんません。年末年始に飲み過ぎて、これで限界です」
「それは、お疲れ様でした」
お会計をしながら、店長の真理さんが言ってくれる。
先日、「和鉄板ぞろんぱ」で"師匠"が、「『んまい』の真理さんが、大阪で独立する」と言っていたことを思い出し、聞いてみる。
「系列店として大阪に出すんですが、『折角だから自分でやってみたら』といってもらって」
いただいた名刺には、「茶屋町 marry」とある。真理さんのことは、
「ママ マリー・三宅」
裏にお店の地図とともに、「日本酒初心者さんから玄人さんまで、幅広い日本酒の楽しみ方を分かち合える日本酒バルを目指します。」と書いてある。
2019年春 開店予定とのこと。開店したら、行ってみようと思う。
(追記:「茶屋町Marry」 2019年3月にオープン。椅子席と立ち呑みが選べるスタイル。お酒はもちろん、おつまみも美味しい。マリーさんはいつも元気)
(さらに追記:「んまい」 2020年1月 閉店)
(2020年10月26日 さらに追記:「茶屋町Marry」 2020年8月に「鮨とSAKE 茶屋町Marry」として、リニューアル。10月9日には、関西テレビの「よ~いドン!」という番組で、ランチが紹介された↓。注意:日本酒はランチに含まれません) -
茶屋町Marry:https://www.facebook.com/chayamachi.marry
(2022年3月30日 またまた追記:「茶屋町Marry」 2022年3月28日で3周年を迎えた!おめでとうございます)
【1月2日・6日目】
[昼食で敗北]
ホテルを出てどちらに進むか迷ったが、ずっと下がってばかりだったので、気分を変えて上がってみることにする。
三条通を西に進むと、お囃子の音が聞こえて来た。
「お獅子でもいるのか?」と思ったら、本当にそうだった。 -
獅子舞に頭を噛んでもらうと魔除けになり、一年無病息災で過ごせると云われている。
小さな子どもが獅子舞を見て、「嫌ぁー怖いー」と泣き叫んでいる。母親が抱っこしようとするが、子どもは、抱かれると獅子舞の前まで連れていかれるのではと警戒して母親からも逃げまわっている。周りの大人たちは、その光景を微笑ましく見ている。
僕はもういい大人なので獅子舞は怖くないが、一人で獅子舞に頭を差し出すことが恥ずかしい。
三条通から新京極を南下する。「スタンド」が営業していて驚くが、入った人がすぐに出てくる。つまり、満席なのだろう。
東側の路地に入る。「タイガー餃子」に行列ができている。
さらに東に歩く。「百錬」も「たつみ」もお休み。入るお店が見つからない。
河原町通に出る。
「抹茶館」の前に行列。でもこれはいつものこと。
驚いたのは、その先「リンガーハット」にも、「丸亀製麺」にも行列。麺なら何でも良いのか!?
これでは、どこにも入れないと諦める。
強烈な敗北感に打ちのめされながら、ホテル一階のコンビニで買ったサンドイッチを食べる、新年 2日目の午後…。
結局、そのままホテルの部屋で、持ってきていた山本七平著「『空気』の研究」を読了する。できれば、旅に出る前までに読了したかったのだが。
このまま行くと、京都で買った「公園に行かないか?火曜日に」は、手が付けられそうにない。
お風呂に入り、午後 5時半、出発。
[串鉄板ぞろんぱ]
「カプリ食堂」でビール 2杯飲んで(オーナーはいなかった)、「串鉄板ぞろんぱ」へ。今日は、席が空いていた。
オーナー夫人(久しぶりにお会いしたような気がする)にカウンター席に案内される。
「えらい目に遭った人です」
座りながら、カウンターの中にいた"アズマ"こと東オーナーに言うと、
「ほんま、すんませんでした。怒ってはらへんか、皆で心配してたんですよ」
と苦笑いで謝られる。
怒ってはいない。
「一見の観光客なら『京都楽しいですねぇ。ご馳走様です』とか言ってそのまま帰っていいと思うけど、さすがにそれはできないからね」
そうこれは、僕の飲み方に対するささやかな矜持。もちろん支払い金額のインパクトは大きかったが。
お正月なので、サーロインステーキの串鉄板を注文する。それと日本酒も。
「何があったんですか?」
オーナー夫人が聞くので、事情を説明する。
「いや、うちにも安いシャンパンはあるんですけど、"YMさん"からの電話やったんで、一番高いやつを持っていったんです」
とオーナー。
「隆幸(「和鉄板ぞろんぱ」店長)は、朝までお店の二階で寝てたらしいですわ。あいつ、一年分のアルコールをあの時飲んだんちゃうかな」
「すごいですね」
と、オーナー夫人が言ったのは、僕らのことではなく、鉄板で焼かれている厚さ 5cmはあろうかと思われるステーキ 2枚。
奥の個室にいる、常連の団体客用らしい。確かに豪華な光景だ。
オーナーはそのステーキを鮮やかに切り分け、提供用の鉄板に載せていく。
「『レアになってるんで、焼きが足りないようなら焼き直します』って伝えて」
程なく、お肉が戻ってくる。「『良く焼きで』ということです」
「こういうお肉は、どう焼くのが美味しいの?」
お肉を焼き直しているオーナーに聞いてみる。
「人それぞれなんで、一概に言えませんが、僕はある程度焼いた方が好きです」
少しして、オーナー夫人が奥から戻ってきて言う。
「『もうお肉食べられないから、このお肉で焼きそば作って』って言われたんで、全力で止めました」
…僕も正解だと思う。
[一政]
午後 8時半。「串鉄板ぞろんぱ」を出て、「一政」へ行く。 -
カウンター席に案内されたが、そこには「予約席」の札が。
「大丈夫ですよ」とは言ってくれているが、カウンターの中では、すでに予約客の調整について話している。
このお店は、2014年頃に、当時「馳走いなせや」の料理長だったKさんから、「関東から来た元気な若者が開いたお店」として紹介していただいた。
お店の紹介と言えば、太田さんは、
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「トレフルドールは行かれましたか?」
「あ、女性バーテンダーの」
「そうです。K6の同級生です」
「へえ、行ってみるよ」
「ぜひどうぞ」
バーのよいところはこれだ。バーは互いに客を紹介しあう共存共栄で、まして同じ店で修業した同士は結束も固いことだろう。居酒屋、料理屋ではあまりこういう話は聞かない。(208ページ。冬編 3日目)
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と書かれているが、居酒屋でもお客さんを紹介し合うことは当たり前のようにあると思う。
僕で言えば、Kさんから、このお店と「JAM」、東京銀座の「夢酒みずき」などを紹介していただいているし、「JAM」ではやはり大晦日に行った「千角」という蕎麦屋を、東京銀座にあった「旬家」という居酒屋からは、今日行った「カプリ食堂」の前身である「Medousa」というレストランバーを紹介いただいている。いずれのお店も、初めて入店した日から良くしていただき、現在も常連客として扱ってくださる。SNSも全くやったことがなく検索も不慣れな ITに乗り遅れたオヤジとしては、信用あるお店からの紹介は、とてもありがたい。
「遅かったですね。この前、『6時に来る』って言ってましたけど」
篠さんが言う。…そんなことを言ったのか。とりあえず、来ておいて良かった。
ビールを飲みながら、大晦日の話をする。
「で、俺が払ったシャンパンが一番高かったという…」
「それは大変でしたね。でも、タカ(「和鉄板ぞろんぱ」店長)はぼったくるような男じゃないんで」
篠さんのセリフがカッコいい。僕も、もちろん、ぼったくられたとは思っていない。
そう言っている間に午後 9時が近くなり、予約客の調整の話に緊迫感が出ている。
ビール 1杯しか飲んでいないが、これ以上はお店に迷惑を掛けられないので、お会計してもらうことにする。
[和鉄板ぞろんぱ] ※写真は、2018年5月のもの。
午後 9時半前。「和鉄板ぞろんぱ」に入る。 -
一応ここでも謝られる。
カウンター奥にアメリカから来た男性が座っていて、その右隣の日本人女性はその同僚(ということはアメリカ在住)とのこと。その右に、常連らしき女性一人がいて、その隣に座る。
僕が来る前から 3人は盛り上がっていたようで、その勢いに僕も巻き込まれてしまう。
アメリカから来た 2人が席を立つ。
「楽しかったぁ」
とハグをして別れる。何だか、向こうはアメリカ文化に馴染んでいるから普通なのかもしれないが、僕としては同じ日本人同士(しかも相手は女性)でハグするのは、酔っていても恥ずかしい。
ここから、常連の女性と二人になってしまった。普通に飲みたかったのだが、それまでのノリもあるのか、女性が、
「何か飲みませんか?」
と聞いてきたので、「いや別に」とか返事をしていたら、
「えぇー(瞳ウルウル)」
「その『瞳ウルウル』、止めません?」
こんな調子を繰り返し、結局、何かご馳走したような記憶があるようなないような。
それにしても、目の前で見た「瞳ウルウル」の破壊力は、相当なものだ。
2日目の「酒BAR」でもそうだが、どうやら僕は、女性からの誘いに相当弱いらしい(知らなかったのは僕本人だけだと思うけど)。
さて、そろそろ、僕の年末年始の京都旅も終わる。
太田さんは、冬編の最終日の最後にこう書かれている。
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どこか違うところに住みたいという願いをささやかに実現した。(中略)結局したのは酒を飲むことだった。(中略)
しかしそれだけではなかった。日ごろの仕事も家庭も人間関係も一切を忘れた一人に帰ったときの自分を見た。なぜ私はこんなことをしたのか。忘れかけていた自分を思い出すためにやってきたのかもしれない。
ツイー……。
「うまい」
世古さんはにっこり笑い、両手をズボン横にそろえて一礼した。
(271~272ページ。冬編 7日目)
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僕は、店長と一緒にドヤドヤとお店を出て、件の女性をお見送りした。
太田さんとは格が違い過ぎる顛末だ。
太田さんの著書を真似してみようと思っていたが、結局、紹介されているお店には一軒も行かなかった。でもそれで良いと思っている。
僕は、太田さんの行ったお店をなぞりたいわけではなく、太田さんが経験した、「一介の観光客が、京都のお店で馴染みのように迎えられ、その雰囲気を堪能しながら、お酒やアテを味わい、お店の人やお客さんとの会話を楽しむ」ことを真似し、そして、「一人に帰ったときの自分」を見たかったのだ。
かなりおこがましい行為ではあったが、一人に帰った自分なりの楽しみを見つけることができたと思っている。
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明日は東京へ帰る。私はゆっくりと三条大橋へ向かって歩き出した。(272ページ。冬編 7日目)
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僕も明日は東京へ帰る。ゆっくりというより千鳥足という表現がぴったりの歩き方で六角通を西に歩き出した。
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