戸畑・八幡・黒崎旅行記(ブログ) 一覧に戻る
久しぶりで北九州市八幡区にある響ホールで日本最高で、かつ世界的なレベルの古楽器演奏団体であるBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)が、珍しくも北九州にやってきたので、聞きに行った。この団体は海外のレーベルであるBISからCDを90枚くらい(バッハのカンタータ全集は世界的な評価を受けている。)出しており、鈴木雅明の指揮で、世界的な活躍を続けている団体なのだが、日本の地方ではあまり演奏していない。神戸松陰女学院の教会で長年演奏や録音活動を続けていたので、そこで、聞いたことがあるほかは、後は東京のサントリー・ホールなどで毎年クリスマスごろにメサイヤやマタイ受難曲を演奏するので、私たちはこれらの大曲を聞くために、東京まで何度か通ったくらいの素晴らしい団体なのだ。<br /><br />鈴木雅明は指揮者、パイプオルガン奏者として超一流で、海外の音楽専門誌でも、バッハ演奏の大家として、恐らく日本人音楽家では、もっとも知られているし、活躍している人だろう。内田光子と並んで世界的な現役の音楽家なのだが、今回は息子の鈴木優人が指揮とチェンバロを担当することになった。息子の優人のほうも、勿論、既に大活躍しているし、今回、初めて、彼を指揮者、チェンバロ奏者として見るので楽しみにしていた。<br /><br />今回は、前半がバッハのフルート(トラベルソ)の入った曲が2曲。前田りり子さんが演奏するものと思っていたら、新顔の鶴田洋子さんがトラベルソを演奏した。前田りり子さんの弟子だそうだ。アムステルダムでも勉強してきた新人だが、上手い。バッハの管弦楽組曲2番とブランデンブルグ協奏曲5番という、有名曲を並べて演奏してくれた。勿論、私も長年、自分なりにトラベルソで演奏してきた曲なので、すみずみまで熟知している曲なのだが、アマチュアの私には難しい部分もあちこちあり、目の前でさらっと演奏される現実に、大いに興奮した。鈴木優人のチェンバロソロは流石であった。<br /><br />後半はヴィヴァルディの四季。寺神戸亮のガット弦によるヴァイオリン・ソロは素晴らしかった!彼は過去に何度か聞いているが、ヨーロッパのトップ・レベルの古楽器オーケストラでもコンサート・マスターやソリストを務めてきた人だ。流石だった!ブラボーが聞こえたのは当然だろう。(寺神戸亮は、近年は東京の北とぴあで、古楽器でバロック・オペラを毎年指揮し、注目されている。息子がライブを見て、絶賛していた。)<br /><br />ヴィヴァルディの四季は、古楽器でなかなか日本では聞けないだろう。なにしろ、日本では、長年、イ・ムジチなどの現代楽器でスチール弦の音にみんな慣らされているので、あれがバロック音楽だと勘違いしている人が多い国だ。現代楽器でヴィヴァルディやバッハをやると、甲高い金属的な443Hzのピッチで聞かされるのだが、これで平気になっていると、絶対音感なるものが耳についてしまい、ヨーロッパでは演奏家になれない。<br /><br />日本の音楽大学は恐らく今でも、入学試験にソルフェージュなるものがあると思うが、あれが悪の根源なのだ!ヨーロッパでは各地で、パイプオルガンのピッチが異なっており、Aの音が日本では440Hzから443Hzくらにセットされているが、ヨーロッパでは、390Hzくらいから460Hzくらいまで、さまざまだった。<br /><br />欧米では、今では多くの音楽会で、バロック音楽やバロック・オペラの上演には、古楽器で演奏し、ピッチも数種類用いられている。私もそれらの異なるピッチに対応できるように8種類のトラベルソとたくさんのリコーダーを持っている。プロの演奏したCDなどを確認すれば、簡単にわかることだ。大抵の日本で音楽教育を受けた人は、440Hzに耳が固まっているので、欧米のパイプオルガンや古楽器を用いる演奏には参加できない。<br /><br />私が時々一緒に演奏するチェンバロ奏者も、最初ピアノで出発し、学生時代にチェンバロもやるようになって、絶対音感が邪魔になり、苦労して、その絶対音感を破壊したそうだ!それを越えないとバロック音楽は演奏できない。(これが原因で、日本の音楽家は、古楽器演奏を敵視する人が結構多い。挑戦はしてみたが、上手く耳が慣れないという人をかなり知っている。それに日本の演奏会場は大きすぎて、音量が小さく優雅な音の古楽器演奏には向いていない。今回の720名収容の響ホールでさえ大きすぎるので、私は前から3列目の席を買ったのだ。後ろのほうでは、ちゃんと聞こえないと思う。)<br /><br />日本はヤマハ音楽教室などのせいで、かつて、大量に鍵盤楽器の教室がはやり、絶対音感で耳が固定されてしまった人が多い。それでは、モーツァルト以前の音楽が当時の演奏スタイルで当時の様式の楽器で演奏できなくなってしまうのだ。(アマゾンのCDのレヴューなどを見ていると、今だに、日本では信じられないような時代錯誤のCDを愛好している人が多いようだが、これらも同じような理由で、現在の楽器とピッチの音だけに耳が馴染んでしまっているからだろう。モダン・フルートや金属弦の音で、しかも高いピッチでバッハを聞いている人がまだ多いという現実がある。。。)<br /><br />BCJなどは、当然、その曲の時代や様式に合わせて対応しているが、日本のオーケストラなどが、バッハやヘンデルなどをモダン楽器で演奏すると当然、443Hzしか演奏できないので、甲高い音になってしまうが、まだ、そういう演奏がしばしば日本では続いているようで、まことに嘆かわしい限りだ!アボカドを載せて、これが寿司だと言われたようなものだ。<br /><br />今回は、古楽器で本物の当時の音色で聞けた素晴らしい演奏会だった。木管のフラウト・トラベルソとガット弦が絡み、そこにチェンバロの響きが加わる至福の時間だった。バッハは7人で演奏され、ヴィヴァルディは9人で演奏された。日本語の翻訳が管弦楽組曲とかブランデンブルク協奏曲とかいうふうになっているので、勘違いしている人が多いのだが、モダン・オーケストラの管弦楽や協奏曲とは関係がないといった方がいい。<br /><br />久しぶりに日本の中で、しかも近くで、こんな本格的なバロック音楽の演奏が聞けた稀有な日であった。なお、来年5月末から2週間ほどロンドン滞在するが、その間、古楽器演奏による音楽会は3枚チケットを購入している。フランスとイタリアとイギリスの古楽器演奏団体が聞ける。ヨーロッパに行けば、こういう音楽会は普通のことなのだが。。<br /><br />一枚目は北九州市八幡区の響ホール。室内楽か室内オーケストラに向いた音響効果の優れたいいホールだが、古楽器によるバロック音楽には、これでも広すぎる。かつて、この舞台ではフルートを演奏したことがある。。<br /><br />(追記:こういった話題に関心のある方は、最後のコメントもお読みください。)<br /><br /><br /><br />

鈴木優人とBCJのバッハとヴィヴァルディを響ホールで聞く(バロック・ピッチと古楽器の話付き)

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2017/11/11 - 2017/11/11

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tad

tadさん

久しぶりで北九州市八幡区にある響ホールで日本最高で、かつ世界的なレベルの古楽器演奏団体であるBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)が、珍しくも北九州にやってきたので、聞きに行った。この団体は海外のレーベルであるBISからCDを90枚くらい(バッハのカンタータ全集は世界的な評価を受けている。)出しており、鈴木雅明の指揮で、世界的な活躍を続けている団体なのだが、日本の地方ではあまり演奏していない。神戸松陰女学院の教会で長年演奏や録音活動を続けていたので、そこで、聞いたことがあるほかは、後は東京のサントリー・ホールなどで毎年クリスマスごろにメサイヤやマタイ受難曲を演奏するので、私たちはこれらの大曲を聞くために、東京まで何度か通ったくらいの素晴らしい団体なのだ。

鈴木雅明は指揮者、パイプオルガン奏者として超一流で、海外の音楽専門誌でも、バッハ演奏の大家として、恐らく日本人音楽家では、もっとも知られているし、活躍している人だろう。内田光子と並んで世界的な現役の音楽家なのだが、今回は息子の鈴木優人が指揮とチェンバロを担当することになった。息子の優人のほうも、勿論、既に大活躍しているし、今回、初めて、彼を指揮者、チェンバロ奏者として見るので楽しみにしていた。

今回は、前半がバッハのフルート(トラベルソ)の入った曲が2曲。前田りり子さんが演奏するものと思っていたら、新顔の鶴田洋子さんがトラベルソを演奏した。前田りり子さんの弟子だそうだ。アムステルダムでも勉強してきた新人だが、上手い。バッハの管弦楽組曲2番とブランデンブルグ協奏曲5番という、有名曲を並べて演奏してくれた。勿論、私も長年、自分なりにトラベルソで演奏してきた曲なので、すみずみまで熟知している曲なのだが、アマチュアの私には難しい部分もあちこちあり、目の前でさらっと演奏される現実に、大いに興奮した。鈴木優人のチェンバロソロは流石であった。

後半はヴィヴァルディの四季。寺神戸亮のガット弦によるヴァイオリン・ソロは素晴らしかった!彼は過去に何度か聞いているが、ヨーロッパのトップ・レベルの古楽器オーケストラでもコンサート・マスターやソリストを務めてきた人だ。流石だった!ブラボーが聞こえたのは当然だろう。(寺神戸亮は、近年は東京の北とぴあで、古楽器でバロック・オペラを毎年指揮し、注目されている。息子がライブを見て、絶賛していた。)

ヴィヴァルディの四季は、古楽器でなかなか日本では聞けないだろう。なにしろ、日本では、長年、イ・ムジチなどの現代楽器でスチール弦の音にみんな慣らされているので、あれがバロック音楽だと勘違いしている人が多い国だ。現代楽器でヴィヴァルディやバッハをやると、甲高い金属的な443Hzのピッチで聞かされるのだが、これで平気になっていると、絶対音感なるものが耳についてしまい、ヨーロッパでは演奏家になれない。

日本の音楽大学は恐らく今でも、入学試験にソルフェージュなるものがあると思うが、あれが悪の根源なのだ!ヨーロッパでは各地で、パイプオルガンのピッチが異なっており、Aの音が日本では440Hzから443Hzくらにセットされているが、ヨーロッパでは、390Hzくらいから460Hzくらいまで、さまざまだった。

欧米では、今では多くの音楽会で、バロック音楽やバロック・オペラの上演には、古楽器で演奏し、ピッチも数種類用いられている。私もそれらの異なるピッチに対応できるように8種類のトラベルソとたくさんのリコーダーを持っている。プロの演奏したCDなどを確認すれば、簡単にわかることだ。大抵の日本で音楽教育を受けた人は、440Hzに耳が固まっているので、欧米のパイプオルガンや古楽器を用いる演奏には参加できない。

私が時々一緒に演奏するチェンバロ奏者も、最初ピアノで出発し、学生時代にチェンバロもやるようになって、絶対音感が邪魔になり、苦労して、その絶対音感を破壊したそうだ!それを越えないとバロック音楽は演奏できない。(これが原因で、日本の音楽家は、古楽器演奏を敵視する人が結構多い。挑戦はしてみたが、上手く耳が慣れないという人をかなり知っている。それに日本の演奏会場は大きすぎて、音量が小さく優雅な音の古楽器演奏には向いていない。今回の720名収容の響ホールでさえ大きすぎるので、私は前から3列目の席を買ったのだ。後ろのほうでは、ちゃんと聞こえないと思う。)

日本はヤマハ音楽教室などのせいで、かつて、大量に鍵盤楽器の教室がはやり、絶対音感で耳が固定されてしまった人が多い。それでは、モーツァルト以前の音楽が当時の演奏スタイルで当時の様式の楽器で演奏できなくなってしまうのだ。(アマゾンのCDのレヴューなどを見ていると、今だに、日本では信じられないような時代錯誤のCDを愛好している人が多いようだが、これらも同じような理由で、現在の楽器とピッチの音だけに耳が馴染んでしまっているからだろう。モダン・フルートや金属弦の音で、しかも高いピッチでバッハを聞いている人がまだ多いという現実がある。。。)

BCJなどは、当然、その曲の時代や様式に合わせて対応しているが、日本のオーケストラなどが、バッハやヘンデルなどをモダン楽器で演奏すると当然、443Hzしか演奏できないので、甲高い音になってしまうが、まだ、そういう演奏がしばしば日本では続いているようで、まことに嘆かわしい限りだ!アボカドを載せて、これが寿司だと言われたようなものだ。

今回は、古楽器で本物の当時の音色で聞けた素晴らしい演奏会だった。木管のフラウト・トラベルソとガット弦が絡み、そこにチェンバロの響きが加わる至福の時間だった。バッハは7人で演奏され、ヴィヴァルディは9人で演奏された。日本語の翻訳が管弦楽組曲とかブランデンブルク協奏曲とかいうふうになっているので、勘違いしている人が多いのだが、モダン・オーケストラの管弦楽や協奏曲とは関係がないといった方がいい。

久しぶりに日本の中で、しかも近くで、こんな本格的なバロック音楽の演奏が聞けた稀有な日であった。なお、来年5月末から2週間ほどロンドン滞在するが、その間、古楽器演奏による音楽会は3枚チケットを購入している。フランスとイタリアとイギリスの古楽器演奏団体が聞ける。ヨーロッパに行けば、こういう音楽会は普通のことなのだが。。

一枚目は北九州市八幡区の響ホール。室内楽か室内オーケストラに向いた音響効果の優れたいいホールだが、古楽器によるバロック音楽には、これでも広すぎる。かつて、この舞台ではフルートを演奏したことがある。。

(追記:こういった話題に関心のある方は、最後のコメントもお読みください。)



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  • 横浜臨海公園さん 2017/11/14 10:04:43
    古楽器演奏
    tadさま、こんにちは。

    旅行記を拝見させて頂きました。

    日本国内で古楽器の本当の意味での理解は、この30年ぐらいではないでしょうか。
    小生、一番最初に欧州に滞在した昭和40年(1965年)のロンドンですら、古楽器演奏をする者もおらず、当時記憶している範囲では、独逸テレフンケン系ダス・アルテ・ムジーク・レーベル、及び、独逸グラモフン系アルヒーフ・レーベルぐらいしかレコードも無く、然も、当時ですらレコード価格が他録音よりはるかに高額だったと記憶しております。
    当時の真空管式アンプで再生したヴェンティンガーの演奏は、子供心にもピッチの低さが解り、作曲当時の音とはコンナものだと理解したものです。
    日本では、弦楽器の弦だけ張替えたコレギウムアウレウム合奏団の演奏で、初めて知られと思います。
    その後、当時のオリジナル楽器使用のエンシェント合奏団演奏のモーツアルト交響曲全集で、認知されたのではないでしょうか。

    兎に角、古楽器啓蒙で、バッハ・コレギウム・ジャパンには頑張ってもらいたいものです。


    横浜臨海公園

    tad

    tadさん からの返信 2017/11/14 11:33:00
    Re: 古楽器演奏
    こんにちは。

    うれしいコメント有難うございます!懐かしいレーベルや名前が登場していますね!アウグスト・ヴェンツィンガーは東京で生で聞きましたよ!文化会館小ホールの一列目の真ん中の席でききました。ブリュッヘンも同じ席でききました。

    日本では60年代半ばにDas Alte Werk 、ArchivなどのLPを通じて、古楽器の音色に出会い、私もリコーダーを始めていました。イギリスの名器Carl Dolmetschの作を持っています。近年はflauto traversoに凝っています。イギリスはドルメッチュの影響もあり、早くから古楽器製作などが盛んでしたね。私も2軒、気に入りの楽器店がロンドンにあります。演奏家もたくさんいますね。近年はOrchestra of the Age of Enlightenmentが活発ですね。親しい楽員もいます。今度の5月の滞在でも最近活発な連中が聞けるので楽しみです。

    日本は、鈴木兄弟子を始め、優れた古楽器演奏家がかなりいるのですが、まだまだ定期的にバロック・オペラなどを古楽器で演奏するほど、活動が広がっていませんね。散発的には上演されているようですが。。
    古楽器演奏は大きいホールで聞くと、良さがわかりません。贅沢に少人数でやるのが理想ですから、高くはつきますね。ヴェルサイユ宮殿内のオペラ・ハウスが理想の小ささですが。。こういう現場にはなかなか行けませんね。

    イギリスではグラインドボーンなど、とっくの昔から古楽器でオペラなどを毎年上演していますし、ウィーンではアン・デア・ウィーン劇場などで、やっていますね。

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