2016/07/09 - 2016/07/10
11位(同エリア98件中)
かっちんさん
長野県小谷村(おたりむら)では、地元ガイドが案内する「大自然を満喫できる現地ツアー」をいくつか開催しています。
その中のひとつが、「土木アート砂防ダム巡りバスツアー」です。2016年は7月に4回開催され、7/9のツアーに参加しました。
小谷村は山と谷に囲まれた地質の弱いところで、豪雨などによる土石流が自然の驚異となり、以前から砂防堰堤(さぼうえんてい、砂防ダム)が建設されてきました。
砂防堰堤は、設置される周囲の環境から工法が異なり、さまざまな形状の堰堤がまるで土木アートのように見えます。
ツアーでは10種類の砂防堰堤をバスで巡り、中にはカーブがきつくバスがスイッチバックしながら上がる山道もあり、隠れた人気ツアーになっています。
そして、今日の宿、下里瀬(くだりせ)温泉「サンテ・イン・おたり」では温泉と夕食に満喫し、たった1両で走る大糸線ディーゼルカーを部屋から眺めることができます。
砂防堰堤の説明は、ツアーでいただいた資料をもとに作成しています。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 観光バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
砂防堰堤(さぼうえんてい)
おたり夏の探検ツアー「砂防ダムめぐり」に参加します。
地元ガイドの案内と昼食付きで、6,500円です。
参加者は18名でした。 -
小谷村
小谷村は、長野県の最西北部に位置し、東は東山から天狗原に連なる稜線をもって長野市と新潟県妙高市に接します。
西は白馬連峰を境として富山県に接し、南は白馬村、北は糸魚川市に接しています。 -
ツアー出発
小谷村役場を8:30に集合し、マイクロバスが出発します。
車内では地質学と砂防専門のボランティアガイドさんが説明してくれるので、勉強になります。 -
砂防堰堤MAP
小谷村は中央を日本海に流れる姫川が流れ、これを底辺に標高1,600m~2,800mの高山が連なり、これに囲まれた急峻な峡谷型の地勢となっています。
この姫川に沿って縦断する糸魚川静岡地質構造線により、もろくて弱い地質地帯が広範囲に及んでいます。
東側は地味が豊かですが地勢が脆弱、西側は比較的緩斜面が続くため高原的景観を有し、良質なスキーゲレンデがつくられています。
ツアーは地図上の①から⑩まで順番に砂防堰堤をまわります。 -
①コンクリート堰堤ブロック
最初は千国牛方宿にある「第6号千国砂防ダム」です。
平成7年災害は小谷村内のいたる渓流で土石流が発生しました。
この堰堤は国補災害関連緊急砂防工事で平成8年に竣工したものです。 -
イチオシ
階段上に積み重ねたブロック(①堰堤)
別の場所で造ったブロック(4,472個)をここに設置するので、河床内の工事期間が短くなります。 -
ブロックの頂上(①堰堤)
この堰堤は土石流だけでなく、平常時の流出土砂についても貯留するので、「不透過型堰堤」と呼ばれています。
従来からよく見かけるもので、近年、生物の移動を制限し分断を起こす、下流河川域では土砂が供給されず河床低下を引き起こす、などが指摘され課題となっています。
なるほど、勉強になります。 -
②家政婦が見た!が覗くような細いすき間
次は栂池高原スキー場の近くにある「②コンクリートスリット堰堤」で、千国大橋から眺めています。
無害な土砂は下流に流してあげる「土砂調節のための透過型砂防堰堤」です。 -
③大型ジャングルジム・・・
次は白馬乗鞍スキー場付近の黒川最上流にある「③鋼製格子枠堰堤」です。
土石流が発生したときは捕捉(ほそく、捕まえる)し、通常の土砂流出は格子の隙間から流れ出るので、「土石流捕捉のための透過型砂防堰堤」と呼ばれています。
水量が少ないときは、堰堤の下まで歩いて行くことができます。 -
④白糸の滝・・・
次は日かげ沢 大別当地区にある「④階段状床固め工群」です。
もともと勾配が1/3と急であったため、床固め工を階段状に5群設置しています。
渓床の縦浸食を防止し河床を安定させ、堆積物の下流移動や渓岸の浸食・崩壊などを防ぎます。 -
⑤長~い滝
次は日かげ沢 塩水地区にある「⑤高落差流路工」です。
ここも急斜面で、渓流の縦横浸食により地すべり性の崩壊が過去発生したところです。
対策として、130mの流路長を石張り流路工にし、水流の強さを弱くしています。 -
河床は石張り(⑤流路工)
この石張りで水流を弱くしているのですね。 -
野生のキイチゴ
-
イチオシ
⑥秘密基地がある・・・
次は南小谷の下里瀬(くだりせ)温泉から東に入り、奉納地区の土谷川沿いにある「⑥鋼製セル堰堤」です。
平成7年災害において土砂の流出堆積がおこり、堆積土砂の運搬搬出が課題となっていました。
砂防激甚災害対策特別緊急事業に指定され、円筒形の鋼製壁面材の中に堆積土砂を中詰めし、重力式堰堤にしました。
セルとセルの間隔は5mあります。 -
⑦すき間のある堰堤
次は下里瀬 大雪沢にある「⑦鋼製格子枠堰堤」です。
当初は「不透過型コンクリート堰堤」として建設していましたが、途中で「透過型堰堤」に変更したとめ、このような形になったものと推察されます。 -
昼食
熊汁などが名物の南小谷駅近くの「駅前食堂」です。
もしかして熊肉かと思いきや、普通の定食でした。 -
ご主人は立派な猟師さん
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ゴソゴソ・・・ 熊が出た〜
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熊の顔
な〜んだ、熊の毛皮を箱から出している音でした。 -
V字谷のロックシェード
昼食後、バスは姫川沿いのロックシェードのある県道330号線を中土方面へ向かいます。
鉄道は県道の対岸をトンネルで抜けています。 -
大糸線の橋梁
JR中土駅手前の橋梁です。
列車が来ないかなぁ〜。 -
来ました!!
今はなきキハ52のディーゼルカー。
2010年5月3日に走った臨時列車「ジオパーク号」を撮影した時の写真を載せます。
場所は小滝付近です。 -
⑧地すべりを実際に食い止めた堰堤
次は中土から東に入り、中谷 カクレ沢にある「⑧鋼製枠堰堤」です。
2014年11月22日長野県北部地震で地すべりが発生したところです。
2基の堰堤のうち上段の堰堤は流されたのですが、下段の堰堤で地すべりを食い止めています。 -
地すべりが発生したところ(⑧堰堤)
姫川の東側にあるカクレ沢は、地勢が脆弱で地すべりが発生しやすいところです。 -
イチオシ
石の芸術品(⑧堰堤)
鋼の枠組みの中に玉石等を中詰めする堰堤です。
基礎地盤の変動に容易になじみ、沈下等の変位に追随でき軟弱地盤でも設置が可能です。
石の並び方と色の彩りが芸術品です。 -
バスが坂道をバックして上がります
次は北小谷から東に入り、深原の濁沢へ向かっています。 -
きついカーブ
中型のマイクロバスはカーブを曲がり切れないので、箱根登山電車のようにスイッチバックしながら山道をあがります。 -
イチオシ
⑨吊り橋かな・・・
深原の濁沢にある「⑨ワイヤーネット(リングネット)堰堤」です。
左右岸にアンカレッジ(コンクリート塊)を施工し、主索をアンカレッジに固定、吊索・リングネット・河床部ワイヤーネットにより袋状の形状をなし、土石流を捕捉します。
土石流のおそれの高い危険な渓流では、河床作業が減るため安全面で優位です。
溜まった土石は人間の手で定期的に取り除くので、スイッチバックの道があるのです。 -
⑩眼鏡橋・・・
次は姫川西岸の浦川にある「⑩スーパー暗渠(あんきょ)堰堤」です。
平成8年~10年、日本初のスーパー暗渠堰堤が建設されました。
平常時は流水が暗渠部を流れ、自然に近い状態で水や土砂が流れるため水性生物の往来を妨げません。
暗渠は地下に埋設した水路と思っていましたが、ふたをかけた水路(⑩堰堤)の意味もあります。 -
堰堤上部(⑩堰堤)
堰堤上部は水通しがないため、対岸への通行が可能です。 -
こんな風に歩けます(⑩堰堤)
欄干が無いので真ん中を歩いています。
災害により道路が不通になり孤立状態になったとき、対岸へ行けるのです。 -
イチオシ
万里の長城みたい(⑩堰堤)
下流から見ると眼鏡橋、上流から見ると万里の長城のようです。 -
稗田山崩れ(ひえだやまくずれ)
浦川の上流にある日本三大崩れのひとつ(他に、富山県の鳶山崩れ、静岡県の大谷崩れ)を見に行きました。
1911年に起きた稗田山崩れの土砂災害は、日本における20世紀最大級のもので、今でも砂防工事が続けられています。
稗田山の反対側斜面は白馬乗鞍スキー場になっています。 -
金谷橋
稗田山崩れを金谷橋から見学します。
この橋は八幡製鉄が日本で初めて平行線ケーブル工法により架設した吊り橋です。
これですべての堰堤見学が終わり、小谷村役場へ帰ります。 -
美しいアーチ型コンクリート橋
途中で、小谷温泉口から姫川に架かる姫川橋を見かけました。
昭和14年にコンクリートで径間の長い永久橋を目指し、長野県技師中島武が考案した「コンクリート・ローゼ桁橋」です。
土木遺産に認定されています。 -
「サンテ・イン・おたり」でお別れ
バスは今日の宿を通るので、途中で降ろしてもらいました。
ツアーの集合時刻が早かったので、昨晩もこの宿に泊まっていました。 -
姫川支流を渡る大糸線
宿からこんな景色が見えます。 -
イチオシ
姫川対岸を走るローカル列車
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古い橋跡
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わら葺屋根の民家
対岸の石原集落を散策しています。 -
石原白山社の大杉
長野県天然記念物になっている巨木です。
鉄道を渡った踏切から15分ほど山を登った石原集落にあります。 -
風情のある石仏
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下里瀬温泉の「サンテ・イン・おたり」に
戻って来ました。 -
夕食
手の込んだ料理が並びます。 -
川魚の唐揚げ
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信州蕎麦も
全部を紹介できませんが、山の幸、川の幸を美味しくいただきました。 -
翌朝の姫川
朝から晴れ渡っています。
朝食の時間まで、鉄道写真を撮りに出かけます。 -
姫川の峡谷を走る大糸線
糸魚川からやって来た朝一番の列車です。 -
踏切を通過します
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たった1両のローカル線
南小谷で折り返し、再び糸魚川へ戻って来たところです。 -
姫川に残る古い橋跡
かつて姫川の往来に活躍した古い橋跡が残っています。
砂防堰堤にはいろいろな種類があり、土木アートと思えました。
ちょっと変わったツアーでしたが、十分楽しむことができ、砂防に対する知識も豊富になりました。
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この旅行記へのコメント (3)
-
- PHOPHOCHANGさん 2016/08/10 03:23:37
- 参加したい!
- 楽しそうなツアーですね。どうやって見つけたのですか?
こういうの大好きです。とても良いモノを紹介していただきました。
大糸線も風情が有りました
但し食事が致命傷(川魚、山菜、果物、漬け物が苦手)ですが、小谷村なら色んな宿在りますよね。
- かっちんさん からの返信 2016/08/10 09:07:40
- RE: 参加したい!
- PHOPHOCHANGさん
こんにちは。
このツアーは、東京にある長野県観光案内所に置いているパンフレットで見つけたものです。
村の観光協会が主催しているので、あまり知られていないと思います。
今年はこのツアーをもう開催せず、来年の夏と言ってました。
宿泊したサン・テイン・おたりは、日帰り温泉もやっていて食堂が併設されています。ここではお好みの食事を選ぶことができるので、食事別で泊まられるといいかと思います。
南小谷周辺は似たような宿で山菜中心の夕食です。
土木アートツアーは朝8:30集合なので、車で移動できるならば少し離れた栂池高原にペンションなどがあります。
かっちん
- PHOPHOCHANGさん からの返信 2016/08/10 15:46:33
- Re: 参加したい!
- ありがとうございます!
来年忘れないようにします。
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