南国・土佐山田・香南旅行記(ブログ) 一覧に戻る
高知県南国市は、沖縄を除く全国の市町村の中で、陸海軍陣地の密度が最も高い。それは米軍が昭和20年10月末、南九州へ本格的に上陸する前の陽動作戦として、高知県への上陸を計画していたため。高知県に上陸した際、必ず米軍は高知海軍航空基地(高知龍馬空港の前身)を奪うものと考え、四国防衛軍は南国市前浜と周辺の浜から北方の各山・丘陵へかけておびただしい数の陣地を築いた。<br /><br />前浜から一番近い山は琴平神社が鎮座する琴平山(70.1m)で、山中には今でも進駐軍に爆破された砲台の残骸や隧道跡、塹壕等が残る。<br />この神社と山には、野良猫や野良犬が棲み付いていたが、近年、野良犬は姿を消し、野良猫の数が増加している。<br />現在ではNPOが自治体から補助を受け、雌猫への避妊手術を行い、近所の愛猫家等が餌やりをしているため、猫たちは比較的安心して暮らしている。<br /><br />琴平山の戦争遺跡は自著の戦跡ガイド書で紹介しており、新鮮味がないため、最初は南国市十市の大浜や小浜に残る戦跡を探すことに。何人かの住民に聞き取りを行った結果、大浜の津波避難所登り口右手に、入口が進駐軍によって爆破されたコンクリート造りの防空壕跡があることが分かった。<br />避難所登り口に到る道の入口は、大小浜部落(四国では「地区」という意味)集会所の北西。入口の東には「津波避難場所・170m北へ」と書かれた看板が建っているので目印になる。<br /><br />住宅地を抜け出すと前方右に避難場所登り口の看板が見える。壕の入口は大半が土砂で埋まり、防護壁の残骸が散乱している。<br />ここから避難所へ上る小径の途中の分岐で左折し、稜線に登って西に進むと、尾根道の両側が機銃陣地のように削り取られた箇所があった。<br />分岐まで引き返した後、避難場所へも上ってみたが、コンクリート地面の広場があるだけで、展望はなかった。<br /><br />小浜の戦跡へは、集会所から東方に数分進み、Y字路を南に並行する道に折り返してすぐ現れる、南に折れる小径に入る。<br />ビニール張り物置の東に隣接するコンクリート構造物、これは陸軍小浜トーチカ(仮称)。防衛陣地の一つで、外からは見えないが、銃眼が二ヶ所ある。しゃがまないと内部には入れない。<br /><br />次はいよいよ琴平山だが、戦跡本製作時には調査しなかった、山の北東から登る道を上がってみた。登山口は南国スポーツパーク西上の電波塔が建つ里改田駐車場。<br />墓地沿いを登るとほどなく、左下に記念石柱のような一基の墓が現れた。気になってそこへ下りてみると、山道の地下に小さな素掘りの横穴壕が掘られていた。<br />更に登って行くと、右手に進駐軍が爆破したと思われる砲台跡が現れた。この規模は山上直下にあるものと同等に規模が大きい。規模の大きい砲台には、淡路島東部や和歌山市西部に築造されていた由良要塞から運ばれてきた大砲を据えていた。<br /><br />そのやや先で道が二手に分かれていたと思うが、左の道の奥には、池のようになった小型の砲台跡がある。<br />分岐に戻り、右手の道を進むと左手斜面に二本並んだ右にカーブする塹壕がある。左側の方はカーブした先に壕跡があったと思うが、右の塹壕はかなり上部まで伸びている。<br />この道は琴平神社の参道の一つの鳥居に繋がっており、そこに到るまでの間にある塹壕を伴う壕跡は拙著で解説済みなので割愛する。<br /><br />その塹壕に到るまでの間に不明瞭な分岐があり、そこを左に上がると琴平神社へ上がる車道に出る。少し下って適当な所から斜面を上がると自著で解説したもう一つの規模の大きな砲台跡(進駐軍が爆破)、入口がコンクリートで封鎖された小型隧道跡、池のようになった小型砲台跡がある。<br /><br />車に戻ると琴平神社へと移動する。<br />神社への道路の中腹には複数の手作り猫ハウスがあるが、当方の姿を見ると皆、逃げたので、山上駐車場へと移動。<br />ここが、一番猫が多いが、一匹だけ寄って来てくれる猫がいたので、餌やマタタビを与える。<br />神社関係者である女性が餌やり場に行くと、一斉に猫たちが集まって来る。<br />尚、感受性の高い方は、ここは訪れない方が良い。観光地等に行って、たまに体調が急に悪くなることがある方なら、その意味が分かると思う。

陸軍と猫の山

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2016/02/21 - 2016/02/21

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マローズ

マローズさん

高知県南国市は、沖縄を除く全国の市町村の中で、陸海軍陣地の密度が最も高い。それは米軍が昭和20年10月末、南九州へ本格的に上陸する前の陽動作戦として、高知県への上陸を計画していたため。高知県に上陸した際、必ず米軍は高知海軍航空基地(高知龍馬空港の前身)を奪うものと考え、四国防衛軍は南国市前浜と周辺の浜から北方の各山・丘陵へかけておびただしい数の陣地を築いた。

前浜から一番近い山は琴平神社が鎮座する琴平山(70.1m)で、山中には今でも進駐軍に爆破された砲台の残骸や隧道跡、塹壕等が残る。
この神社と山には、野良猫や野良犬が棲み付いていたが、近年、野良犬は姿を消し、野良猫の数が増加している。
現在ではNPOが自治体から補助を受け、雌猫への避妊手術を行い、近所の愛猫家等が餌やりをしているため、猫たちは比較的安心して暮らしている。

琴平山の戦争遺跡は自著の戦跡ガイド書で紹介しており、新鮮味がないため、最初は南国市十市の大浜や小浜に残る戦跡を探すことに。何人かの住民に聞き取りを行った結果、大浜の津波避難所登り口右手に、入口が進駐軍によって爆破されたコンクリート造りの防空壕跡があることが分かった。
避難所登り口に到る道の入口は、大小浜部落(四国では「地区」という意味)集会所の北西。入口の東には「津波避難場所・170m北へ」と書かれた看板が建っているので目印になる。

住宅地を抜け出すと前方右に避難場所登り口の看板が見える。壕の入口は大半が土砂で埋まり、防護壁の残骸が散乱している。
ここから避難所へ上る小径の途中の分岐で左折し、稜線に登って西に進むと、尾根道の両側が機銃陣地のように削り取られた箇所があった。
分岐まで引き返した後、避難場所へも上ってみたが、コンクリート地面の広場があるだけで、展望はなかった。

小浜の戦跡へは、集会所から東方に数分進み、Y字路を南に並行する道に折り返してすぐ現れる、南に折れる小径に入る。
ビニール張り物置の東に隣接するコンクリート構造物、これは陸軍小浜トーチカ(仮称)。防衛陣地の一つで、外からは見えないが、銃眼が二ヶ所ある。しゃがまないと内部には入れない。

次はいよいよ琴平山だが、戦跡本製作時には調査しなかった、山の北東から登る道を上がってみた。登山口は南国スポーツパーク西上の電波塔が建つ里改田駐車場。
墓地沿いを登るとほどなく、左下に記念石柱のような一基の墓が現れた。気になってそこへ下りてみると、山道の地下に小さな素掘りの横穴壕が掘られていた。
更に登って行くと、右手に進駐軍が爆破したと思われる砲台跡が現れた。この規模は山上直下にあるものと同等に規模が大きい。規模の大きい砲台には、淡路島東部や和歌山市西部に築造されていた由良要塞から運ばれてきた大砲を据えていた。

そのやや先で道が二手に分かれていたと思うが、左の道の奥には、池のようになった小型の砲台跡がある。
分岐に戻り、右手の道を進むと左手斜面に二本並んだ右にカーブする塹壕がある。左側の方はカーブした先に壕跡があったと思うが、右の塹壕はかなり上部まで伸びている。
この道は琴平神社の参道の一つの鳥居に繋がっており、そこに到るまでの間にある塹壕を伴う壕跡は拙著で解説済みなので割愛する。

その塹壕に到るまでの間に不明瞭な分岐があり、そこを左に上がると琴平神社へ上がる車道に出る。少し下って適当な所から斜面を上がると自著で解説したもう一つの規模の大きな砲台跡(進駐軍が爆破)、入口がコンクリートで封鎖された小型隧道跡、池のようになった小型砲台跡がある。

車に戻ると琴平神社へと移動する。
神社への道路の中腹には複数の手作り猫ハウスがあるが、当方の姿を見ると皆、逃げたので、山上駐車場へと移動。
ここが、一番猫が多いが、一匹だけ寄って来てくれる猫がいたので、餌やマタタビを与える。
神社関係者である女性が餌やり場に行くと、一斉に猫たちが集まって来る。
尚、感受性の高い方は、ここは訪れない方が良い。観光地等に行って、たまに体調が急に悪くなることがある方なら、その意味が分かると思う。

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
交通
4.5
交通手段
自家用車

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  • 津波避難場所上り口へと至る小径

    津波避難場所上り口へと至る小径

  • 津波避難場所上り口。右上に爆破された壕跡が見えている。

    津波避難場所上り口。右上に爆破された壕跡が見えている。

  • 入口が砕けたコンクリート壕。形状や規模は、浦戸海軍航空隊司令本部跡背後に残る壕に酷似している。

    入口が砕けたコンクリート壕。形状や規模は、浦戸海軍航空隊司令本部跡背後に残る壕に酷似している。

  • 壕の奥の端

    壕の奥の端

  • 稜線の両側が抉られている

    稜線の両側が抉られている

  • 栗山城主・十市新左衛門墓。明和4年(1767)建立

    栗山城主・十市新左衛門墓。明和4年(1767)建立

  • 左に見えるのが小浜トーチカ

    左に見えるのが小浜トーチカ

  • 小浜トーチカ。長さは縦横5.5~5.8mほど。身長が170cm以上の者は、四つん這いにならないと入れない。上面にはまるで砂を盛ったような、偽装のセメントが盛られている。

    小浜トーチカ。長さは縦横5.5~5.8mほど。身長が170cm以上の者は、四つん這いにならないと入れない。上面にはまるで砂を盛ったような、偽装のセメントが盛られている。

  • トーチカ内部の銃眼

    トーチカ内部の銃眼

  • トーチカ内部から入口を見る

    トーチカ内部から入口を見る

  • 楠瀬家先祖代々之墓背後に横穴壕

    楠瀬家先祖代々之墓背後に横穴壕

  • GHQに爆破された砲台跡

    GHQに爆破された砲台跡

  • 分岐から左に行った先にある砲台跡

    分岐から左に行った先にある砲台跡

  • 2本並んだカーブする塹壕

    2本並んだカーブする塹壕

  • 左側の塹壕は深い

    左側の塹壕は深い

  • 2本の塹壕が横穴壕跡手前で合流している(上記の塹壕とは別。写真は左側の塹壕)。石段の鳥居に行くまでにある。

    2本の塹壕が横穴壕跡手前で合流している(上記の塹壕とは別。写真は左側の塹壕)。石段の鳥居に行くまでにある。

  • 進駐軍に爆破された上部の砲台跡。何かのコンクリート台座が残っている。砲床は縦10メートル、横5メートルほど。

    進駐軍に爆破された上部の砲台跡。何かのコンクリート台座が残っている。砲床は縦10メートル、横5メートルほど。

  • 入口が封鎖された素掘り隧道跡。全長約35m。中間部は敵の銃撃や火炎放射砲を防ぐため、クランク状になっている。

    入口が封鎖された素掘り隧道跡。全長約35m。中間部は敵の銃撃や火炎放射砲を防ぐため、クランク状になっている。

  • 隧道跡のすぐ上にある小型砲台跡

    隧道跡のすぐ上にある小型砲台跡

  • 藩政期に設置された石造り燈台(常夜燈)の台座石垣

    藩政期に設置された石造り燈台(常夜燈)の台座石垣

  • 琴平山山上の餌やり場からの展望

    琴平山山上の餌やり場からの展望

  • 琴平山山上の猫ハウス

    琴平山山上の猫ハウス

  • 一匹の猫だけ寄ってきてくれた

    一匹の猫だけ寄ってきてくれた

  • 餌をせがむ

    餌をせがむ

  • 他の猫は知らんぷり

    他の猫は知らんぷり

  • 餌にがっつく三匹

    餌にがっつく三匹

  • 餌やり場

    餌やり場

  • 餌をくれる女性の姿を目で追う

    餌をくれる女性の姿を目で追う

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