2006/06/14 - 2006/06/14
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うーさん
【当時、マニラで働いてました。そのときの日記】
夕日コレクターの友人のために、マニラ湾の夕日を撮って送りたいのだけど、雨、雨、雨。
今日も雨。
あまり暑くありません。気温は東京とそんなに変わらない。むしろ東京の方が暑いかも。
ということで唐突に。以下、1ヶ月くらい前に書いていたけどアップし損ねていた日記。なんとなく。
■大恋愛の予感
「初めてこの地に足を踏み入れたのは、スペイン統治時代。
スペイン人の裕福な商人の娘で、父親の仕事の関係でこっちに来て、スペイン人だから当然イントラムロスに住んでいて。
植民地に住む外国人として、裕福で何不自由無い生活をしていた時に、召使の少年と恋に落ちてしまうんですよ。
でも、身分違いだから絶対に許されない恋。当然、二人の仲は引き裂かれる。ここで、どうしましょう?」
「うーん。私、人が死ぬ系あんまり好きじゃないけど、そこまで来たら、そのどっちかで行って欲しいねー」
「分かりました。じゃ、彼との仲は引き裂かれて、何にしろ、そのことが原因で亡くなってしまった、と。
それで、生まれ変わって今生。引き裂かれてしまったその人に、もう一度出会う為にここに来た。
そして大恋愛をする。……そんな感じでどうでしょう?」
「最高でございます。…っていうことは。え!?召使の少年って、あの子?あの子にもう一度巡り合うために、私はここにやって来たの〜!?」
イントラムロスとは、16世紀にスペイン人がフィリピン統治の根拠地とした城塞都市で、周囲には城壁が形成され、かつてはスペイン人とメスチーソ(スペイン人との混血)のみが住むことを許されていた地区。
大半は第二次大戦で破壊されたそうだが、ゲートをくぐり石畳の道を歩いていると、明らかにそこは、フィリピンではない、別の国の空気が漂っている。
イントラムロスに行って、カーサ・マニラ博物館という、スペイン統治時代の特権階級の人々の暮らしぶりを再現する博物館に行ったら、玄関に飾ってあった肖像画、老夫婦の女性が、亡くなった祖母にとてもよく似ている気がした。
博物館内で何を見てもどこか懐かしい気がして泣けてきた、という話をしたら、同僚の女の子が私の前世を作ってくれた(当然ですが全て創造)。
ちなみに、召使の少年に指定した「あの子」とは、最近入った男の子。ドアボーイ。
見目麗しい坊ちゃんで、アントニオ・バンデラスに似ている。小さいけど。
ローカルスタッフ曰く「スモール・バンデラス」。身長は多分160センチくらい。
しかしとにかくこの少年、人間の中にあるMaster心をくすぐるというか(ナンだソレ)、とにかくキミこそ理想のServant!なのだ。
「Good Afternoon , Sir」と言うその声は、絶対にまだ声変わりしてない。どう見ても少年。
ここは大卒でなきゃ入れないはずなのにどうやら20歳らしいと聞いて、「どんなコネで入ったの?」「ここの地主の息子?」「オーナーの孫かも」なんて話してた。
同僚の日本人の女の子とは、とても気が合う。
いつも、そんなどーでもいいことを話しては笑い転げ、日々の辛さを紛らわしている。
ちなみに博物館で泣けてきたのは、多分、単なるホームシックだと思うけど、前世の話はちょっとステキなので、勝手に信じることにした。
(ということで、タクシー代やなんや、不当にチップを請求されたりボラれたりした時に「いいの〜私はスペインのお嬢様だから〜」と悔しさを紛らわしてる笑)
■大恋愛の予感、潰える。
↑なんて話をした翌日。
ランチ後職場に戻ったら、スタッフと話していた前述の同僚が、涙を流しながら笑っていた。隣にいたスタッフが、
「何で泣いてるのに、笑ってるんだ。悲しいのか。嬉しいのか」
と同僚に質問していて、「何が起こったの?」と私がたずねると、彼女が、相変わらず泣き笑いのまま、
「あの子が…あの子が…」
とうわごとのようにつぶやいていた。
あの子が…、と言われただけでツボに入ってしまった私も、つられて泣き笑いになる。
そんな私たちの様子に、ローカルスタッフは明らかに「ナンだこいつらは?」という目で見ていた。
正直、この時の私は、「あの子はやっぱりゲイだったんだー」と思っていた(前日そんな話をしていたので)。
しかし、もっと衝撃的事実。彼女は言った。
「あの子…明日で終わりなんですって…学生の研修だったんですって…」
そう息絶え絶えに言うと、また泣き笑いのツボにはまっていた。
そして、その事実を聞いた私も、すぐに同僚と同じ状態に。
前日散々言ってたのだ。
「あの子が運命の人なのね☆」
「やっと巡りあえたんだもの、何とかして日本に連れて帰りたいわぁ」
「でも、私があの子を連れてたら、ナンか明らかに『お金』の匂いがするよね(今当地で話題の、日本人女性がフィリピン人の男の子にお小遣いあげちゃうパターン)」
「兄弟に3人くらい同じ顔の子が居そう(それは関係ない)」
(以上全て私の言葉。同僚は私の言葉に終始笑い転げながら「だから、運命の人はあの子じゃないと思いますよ…」と言い続けていた。)
ちなみにあの子、最後に名前を知った。RichardだかJamesだかEdwardだか、何だか高貴な名前だった。
それにしても。私がこちらで一番興味があるのは、K-9のワンコとあの子だけだったのに。
あの子がいなくなっちゃった…。
大恋愛の予感、わずか1日で潰える。残るはK-9のワンコだけー。
余談。
あの子の最終日、私はお休みだった。
勤務時間が終わった後、あの子は同僚に「彼女はどこ?」と私のことを尋ねてくれたらしい。
「彼女は今日Day-offなの」と答えるとあの子は少し悲しそうな顔をしたという。
その表情を見た同僚は何だか切なくなったと言っていたが、後でその話を聞いた私も胸がキュンとした。
やりたいと言ったらやってもいいよと許可をもらったので、最近ずっと暇な時はドアガールをやっていた。(私、ドア開ける仕事が好きなのです)
で、お客様が来ると、あの子と二人で左右のドアを開けていた。
ドアは大きくて重いので、最初は私が開けるのが遅かったりしたけれど、段々コツを掴んで同じタイミングでドアを開けては、「おぉ〜、タイミングが合ったねぇ!」みたいなことを言っていた。
照れてあまり話してくれなかったけど、通り過ぎる瞬間、お客さんが何か言った時、今、何て言われたでしょう?と言われ、聞き取れなかったと言ったら「ドアをこんな風に開けてくれるなんて、大統領になった気分、って言ってた」と、とても恥ずかしそうに教えてくれたこともあった。
慣れない環境、緊張した時間の中、唯一ほっとできる時間だった気がする。
前世云々は冗談だけど、こんな風に出会ったということは、やっぱり、何かご縁があったんだと思う。
こっちに来て最初の別れだな。寂しいな。
そんな感じでイントラムロス・ーサ・マニラ博物館の邸宅。
(邸宅内は撮影禁止でした。)
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通手段
- 徒歩
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イントラムロス 旧市街・古い町並み
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バルバラズ (Plaza San Luis Complex) ビュッフェ
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バルバラズ (Plaza San Luis Complex) ビュッフェ
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カーサ マニラ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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えっと‥
ここはどこだったかな‥。
(最後がそんな終わり方って‥)
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