2013/12/01 - 2013/12/01
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sqichiさん
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2014に公開された「The Imitation Game」はイギリスでも人気を博し、濃厚なプロットのみならず、カンバーバッチの熱演に高い評価が集まりました。僕も暗号なるものに従事した経緯もあり、今日DVDを見ました。映画としては感銘を受けたのですが、これを事実を思われるとやや誤解がある。
もし貴殿が旅行をされる方なら、本当の暗号解読の史実を知って頂きたい、そういう思いで2013年 Bletchley Park (ブレッチェリーパーク)を訪れたときの資料を共有します。
おそらく、人知れず暗号解読の秘密基地としてかつて機能した現地を訪問され、再現されたリレー動作の音や機械の匂いなど5感で感じ、歴史を文字通り体験頂ければと思います。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 家族旅行
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- レンタカー
-
ブレッチェリーパーク(Bletchley Park)の暗号関連の展示館は、ロンドン ユーストン(Euston)駅から直通電車で40分のBlechley駅から徒歩10分のところにあります。なお、週末の鉄道は工事などで運休の場合が「よくある」ので、鉄道情報は調べておいて下さい。また事前調査情報はよく頻繁に変更されるので、これにも柔軟に行動下さい。
http://www.nationalrail.co.uk/
さて、Bletchley Parkの入口です。 -
このときはBlock Cが工事中とのこと。Bletchley Parkはこのときから相当展示の梃入れが入ったようです。今ウェブを見ると、 the Imitation Game の特別展示ほか、Enigma関連の展示があることに気がつきました。
http://www.bletchleypark.org.uk/content/visit/whattosee.rhtm
そう、実はBletchley Parkのもともとの展示は Enigma 解読ではなかったのです。では何の暗号? -
ローレンツ暗号(Lorenz)です。興味がおありの方でなければこの名前を聞いたことがないかもしれません。Enigmaというのは確かに第二次大戦でも海軍で使われたのですが、映画にあるような終戦を早めたなどの暗号解読は、むしろこのローレンツ暗号への解読による貢献が大きい。そして、そのローレンツ暗号を解読する解読機の設計には、Enigma解読機の知見をフルに活用した、というもの。
では、このローレンツ暗号は誰がどのようにして解読したのでしょう。やはりアラン・チューリングなのでしょうか。 -
チューリングが建設した解読機 Bombe は一説によれば1939年に初期設計が終わったとあります。Bombe はまさしくあの映画でChristpherと呼ばれていた、リレーの固まりの機械。
しかし、この暗号解読については、映画のとおりドイツの潜水艦から暗号機が入手されました。さらにその解読法の基本はポーランド人が発見していたとされます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Bombe
この解読方法を格段に効率的で信頼性の高い方法で実現したのがAlan Turingのひとつの実績であったと理解しています。
一方、この博物館で主に扱う「ローレンツ暗号」は、まさに得体の知れない暗号でした。暗号文以外の何もわからない。ところがドイツ軍が致命的な運用ミスを犯します。1941年8月31日、3900文字もの暗号化、通信を行ったあと、この再送を要求されたのに対し、鍵のセッティングを同一のまま、3900文字の原文をわずかに変更して送信してしまいました。これにより同一の鍵列で暗号化された2つの暗号文がイギリス側に渡りました。
John Tiltmanの周到な分析(おそらくドイツ語の言語的な分析)の結果、これらの原文を復元するのみならず、暗号機の生の出力である鍵列を導出しました。この鍵列がWilliam Tutte (Bill)に渡され、彼(Bill)の数学的な分析の結果、なんと見たこともない暗号装置を4000文字相当の鍵列から復元することに成功したのでした。 -
その暗号の複雑さたるや。Enigmaもいろいろありますが、Turingが取り組んだEnigmaのバージョンはローター5個とのこと。一方ローレンツ暗号は12個のローターからなります(当たり前ですが、ちょっと暗号文を解析したくらいではローターの数などわかりません)。相当に複雑な機械であったろうと思います。Tutteによる数ヶ月の作業だったとのことですが、考えられない仕事です。
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だいぶオタクな話が続いたので、ここから急ピッチで終戦に向かいます。
解読したい暗号がわかったので、さて、これをどう解くか。そこでチューリング氏の仕事が生きるフェーズになります。その初版ともいえる解読機が Robinson機械 と呼ばれています。この根本部分にはチューリングの知恵も含まれていようかと思いますが、解読に必要な高速なテープの読み込み(2000文字/秒)において、大きな欠陥があり、まともに動きませんでした。
そこで、戦争を終結させる最強の暗号解読マシーン colossus が出現するわけです。 -
この機械がローレンツ暗号の鍵の設定を検出し、戦争を終結させました。また、終結を2年早めたとか数千万もの命を救ったといわれるのもこの成果に対して言われるものです。
http://www.bbc.co.uk/news/technology-18419691
映画でみたリレーの縦横行列とは違い、昭和40年代のスーパーコンピュータか、と見惑うような外見です。どこまで本気なのかわかりませんが、稼動してくれていました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Colossus
ここにあるとおり。10台生産され、うち2台がGCHQで極秘に保存されたとか。1990年代に入って、このBlechleyに関する諸々の情報が明らかになってきて、有志らが、大変な努力と資金を投入し、この博物館の開館(2000年頃)に至っています。 -
戦争を早めたのは一義的にはこのcolossusの存在のため、と言えるでしょう。その技術貢献者の一人に Alan Turing がいたのは間違いありません。しかし、あの映画のように、周囲に反発されながらも機械解読を目指し、暗号解読機の実現に執念を燃やした時代は、開戦前か直後の1940年以前で、それ以降は、Robinsonや、Colossusの開発をそばで眺め、いくつかの助言をした程度ではなかったのでしょうか。
このほか、暗号解読にあたり、傍聴、タイピング、初期の解読作業を行った女性を中心としたチームもあっての歴史です。天才Alanが一人がすっとんきょなことをいい、結果的にそれが正しくて、若干の周囲の支援をもらいながら彼が主体的に解読機を作って新しい時代を作った、ように思われるのは、この歴史に関して言えば、やや歪曲した考え方ではなかろうかと個人的に感じています。
その点、Blechley Parkの展示は fair であり、多くの貢献者というものを細かく紹介してくれています。
映画以上の史実を感じる旅、ぜひご体験下さい。
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