2011/05/27 - 2011/05/27
70位(同エリア217件中)
deracineさん
- deracineさんTOP
- 旅行記202冊
- クチコミ44件
- Q&A回答165件
- 398,950アクセス
- フォロワー39人
祝 世界遺産に登録決定!
世界文化遺産に正式登録されることが決まった「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」のうちの一つ、熊本県荒尾市にある三井炭鉱・万田坑を見学しました
映画やTVのロケにも使われたことのある由緒正しい遺跡ですが少し物足りない部分も、、、
世界遺産に正式に決定する前に見学を考えておられる方々への参考になればと思い記事をアップしました
なお本記事は2011年5月見学した時点のもので、その後多少の変更はあるかもしれません
最新情報については下記の荒尾市のホームページをご参照下さい
https://www.city.arao.lg.jp/kurashi/shisetsu/mandakou/
-
JR荒尾駅
駅前に案内図があった -
駅構内にも万田坑のPRポスターが展示されていた
-
-
案内図の拡大
万田坑は福岡県と熊本県の境界に位置している -
駅前からバスが出ているが、、、
-
路線図を見ると万田坑までは数えられるほどの駅しかない
-
おまけに田舎のバスの本数はきわめて少なく次のバスまで待ち時間が長かった
そこで天気も季節もよいので散歩も兼ねて歩くことに決定! -
下を見るとマンホールには梨の花をモチーフにしたマンホールがあった
地元特産の荒尾梨は有名だ -
途中昼飯を食べるため目に付いたカフェ・レストランに入った
-
広々として綺麗なインテリアに満足
-
スパゲッティを食べたが分量にも味にも料金にも満足だった
-
今も石炭を運んだ炭鉱電車の廃線が残る荒尾駅近くの踏切を越えて歩いていった
-
5月なのに黄花コスモス?が咲いていた
-
事前に用意した地図を頼りに歩いたが高速道路をくぐるトンネルが見えた
万田坑はもうすぐのはずだ
このあたりになると行き交う人も少なくウグイスが美しい声で鳴いていた -
やがてバス停と道路標識が見えた
-
駅から歩くこと約30分、森のそばを通り抜けると「世界遺産を目指して!!」と書かれた大きな看板が見えた
-
現在は「九州・山口の近代化産業遺産群」のイメージ 5構成遺産として主要設備を含む約2万?が史跡となり保存されている
まず入り口の万田坑ステーションで入場料400円を払い概要を学習する
なお同ステーションには炭鉱マンOBのガイドが常駐していて毎日4回、約1時間かけて主なポイントを説明してくれる -
万田坑は1902年(明治2年)の出炭開始から1952年(昭和26年)の採炭中止まで半世紀の間三井炭鉱の主力坑口のひとつだった
-
万田坑は陸上だったがその後炭層を求めて掘り進みやがては有明海の海底を掘り進むことになった
そして1963年11月9日三川坑で炭じん爆発事故で458人死亡という大災害が発生
犠牲者に謹んで合掌 -
ステーションには精巧なジオラマや往時を偲ばせる数多くの写真があった
-
中央の丸で囲んだ第二竪坑関連設備が保存されている
右が当時東洋一だった第一竪坑櫓 -
炭鉱では特に重要なガス検知器とキャップランプ
-
2011年5月5日にもここ万田坑が舞台となった忽那汐里さん主演のNHKドラマが放送された
これをPRするポスターがステーションに展示されていた -
彼女のサイン
-
ステーションを後にして肝心の炭鉱設備を見学した
これは正門からの眺め -
高い櫓と赤レンガの建物が見えた
これが重要文化財の第二竪坑巻揚機室 -
入り口には構内の説明図があった
-
観光客も殆どおらず地元の人やかっての炭鉱関係者や家族とおぼしき人だけだった
写真の帽子を被ったおじさんがボランティアの説明員 -
正門を入るとまず山の神神社がある(山の神はどこも恐ろしいですから、、、)
炭鉱は危険な場所のため入坑前には必ず参拝したという -
事務所の横には安全燈室と風呂場がある
-
お参りを済ませると大事な安全燈(キャップランプ)を付けていよいよ入坑だ
なお安全燈室の隣には炭坑夫には欠かせない風呂があった
坑内作業で汚れの酷い坑夫たちは 予備洗浄→本洗い と2工程で身体を洗ったらしい -
愛するヤマの絵を描き続けた山本作兵衛さんが描いた当時の入浴風景を描いた絵
現在の世相から見ると男女混浴で驚かされるような風景だが文字通り毎日が生きるか死ぬかの生活をしている彼らにとっては一番ホッとする至福の時間だったのかもしれない -
安全燈を着けたら竪坑のエレベーターに乗って入坑だ
現存する第二竪坑は深さ274mあり、1997年まで排水施設として使用していたが残念ながら現在は埋め戻されている
炭坑夫はケージと呼ばれるエレベータのカゴに乗り地下深く潜って行った
エレベーターと同じくケージは2つあり、片方が上がるともう一方は下がる
中央部の柵で囲っているところが第二竪坑 左はエレベータ運転室 -
トンネル内部に見えるのがエレベータのカゴ
-
右の手前の鉄箱がエレベーターケージ
定員は25名 -
第二竪坑櫓を内部から見上げたところ
-
第二竪坑櫓は高さ18.9mの鋼鉄製
ペンキを塗り直したのかキレイだった -
これは石炭を運んだ炭車
-
映画「青春の門」などのロケにも使われた万田坑
高い竪坑櫓と重厚なレンガ造りの巻揚機室が往時を物語る
第二竪坑を覗いたあとはこの竪坑に物資や人員を昇降させる巻揚げ機が格納された第二竪坑巻揚機室を見学した
同建物は1909年(明治42年)完成、レンガ造り切妻2階建てで1階は入り口のみ、中2階には重量物を昇降させるウィンチが、2階には坑夫を昇降させるケージ巻揚機が装備されている -
櫓を後ろから見たところ
-
三井炭鉱の炭層の状況を説明する説明員
炭層は斜めになっていて有明海に続いている -
建物内は構造物むき出しで頭が危ないのでヘルメットを着用
中2階にはデーンと巨大な歯車が付いたウィンチが鎮座していた
上の写真が巨大なウィンチ 昔は蒸気エンジンで動かしていた
-
更に階段を上がり2階に上ると今度は人員昇降用のケージ巻揚機とモーター、更にこの巻揚機の運転台があった
ケージ巻揚機 モーターは306馬力、巻揚機のワイヤーロープは36mm×390m -
ガイド氏は昔を懐かしがって運転の様子を再現してくれた
ケージ巻揚機の運転台 昇降速度は270m/分なので1分で270mの坑道に達した(東京タワーは150mを45秒) -
次に第一竪坑櫓跡を見学した
同櫓は完成当時は東洋一で石炭を地上に揚げる4台のケージが吊るされていた
これも残念ながら1954年に解体され大きな基礎部分が当時を偲ばせるのみ
竪坑自体は埋め戻されていないが周囲には柵が張巡らされ、深い中を覗き込みこむこともできない -
最後に汽罐場(ボイラー室)跡を見た
石炭を燃やして蒸気を発生させ坑内の施設に蒸気を送っていたが電化により縮小された
煙突は最盛期には5基あり一番高いのは49mもあった
なお炭坑節に「♪あんまり煙突がぁ 高いのでぇ〜」と歌われた煙突は 福岡県田川市にある旧三井・田川坑にある二本煙突とのこと -
これで見学コースは終了だが何だか欲求不満が募る内容だった
その原因のひとつは坑内に入れないことではないか
金属鉱山と違って石炭ヤマは一般的に崩れやすく、またガス噴出の恐れもあるが出来ることなら一部に限定してでも坑内に潜り炭坑夫が置かれた過酷な環境を少しでも疑似体験したいものだ
スウェーデンのキルナ鉱山で地下550mに潜った体験をした直後でもあり、一層物足りなさが感じられた
上の写真は厳しい採炭現場の環境を物語るものでステーション内に展示されていた -
時間が余ったので万田坑ステーションの手前にあったた万田炭鉱館にも立ち寄った
(2000年開館)
2009年4月に万田坑ステーションがオープンするまでここが唯一の展示施設だった -
白亜&レンガ造りの殿堂といった立派過ぎる趣きの万田炭鉱館
-
時間が遅かったせいもあるが閑散としていた
立派過ぎる外観の建物内部に入ると大きな吹き抜けのスペースがあり、床には付近の航空写真が、正面には万田坑のいろいろな写真パネルが飾られていた -
立派な外観の割りには展示スペースは少なく玄関を入って右の約20?位の部分のみ
大画面薄型テレビで5分ほどの万田坑紹介ビデオを上映していた
ここには地下の石炭を掘って地上に揚げる様子を示した模型が展示してあり、これは分かりやすくて良かった
上の写真は採掘から地上に石炭を運搬するプロセスを説明した模型 -
展示室内には炭鉱で使用された道具や機械の模型などがあった
-
掘削した石炭をかき集めコンベアに載せるフエスローダーと呼ばれる機械
なおこの模型は週刊誌などの紙を使用して作ったもの
見事な出来映えだ -
手が汚れるためか触らないでとの注意書きが、、、
むしろ大いに触って石炭が「燃える石」ということを知らない子供もいるのだから例えば石炭を燃やして何か実験するなどの工夫がほしいものだ -
さて全体を見学しての感想だが少し厳しい指摘をしたいと思う
写真パネルや道具だけ展示で、動くものが無ければ男性や子供は興味が湧かない
それと折角現地に来ているのだから本物を見せる工夫をして欲しい
すなわち実際の採炭現場や坑道、乗れるトロッコなど、、、、
日本の行政の縮図なのだろうかハコには随分カネがかかっているが肝心の展示物がお粗末では本末転倒ではないか -
それに産業遺産が行政のセクト主義であちこちに散在しているのも観光客にとってはフレンドリーとは言い難い
すぐ隣の大牟田市(福岡県)にも同じような石炭産業科学館という立派なハコがあるが肝心の現場の宮原坑跡は第3土曜日だけ一般公開では手軽に見られないだろう
また炭坑節に歌われた二本煙突が残されている、福岡県田川市にも同様の博物館や産業遺産がある
地域の人々が昔を懐かしむ縁として残しているのならいいが、いやしくも日本近代化の世界遺産として世界の人々にアピールしたいのであればもう少し選択と集中をした方がよいのではなかろうか
ここ万田炭鉱館にも炭坑の画家山本作兵衛さんの作品(コピー)が展示されていた
現場の炭鉱夫としての視点で描いた彼の飾りの無いリアルな説明付きの絵には本物にしかない説得力に溢れている
そのため世界遺産を審査するユネスコから「日本の近代化を支えた底辺の人々が
自らの手でその記憶を留めた類稀なる作品」として絶賛され日本で初めて「世界の記憶遺産」に選ばれた
彼に倣って行政からの高い視点からではなく一般市民や世界の人々の目線に立って日本の炭鉱の素晴らしさを訴えるような展示をして欲しいものだと思いつつまたウグイスの心地よい鳴き声を聴きながら万田坑を後にした -
帰り道によく見ると昔の栄華をしのばせる立派なレンガ造りの塀が多くあった
多分職員住宅の跡だろう
栄華盛衰は世の習いだが石炭産業は間違いなく日本の近代化を担った重要な産業であると思う
今回の世界遺産登録決定が世間の人をしてこのことを知らしめることになったことは嬉しい
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
玉名・荒尾(熊本) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
57