2015/02/28 - 2015/02/28
429位(同エリア1776件中)
naoさん
豊臣秀吉が大坂城築城に合せて商人を集めたのが始まりとされ、以来、大阪経済の中心として豊かな文化を育んできた大阪市中央区の船場地区では、その歴史や文化を一般の方々に触れてもらう初めての試みとして、2月27日から3月4日まで「船場のおひなまつり」が開催されました。
「船場のおひなまつり」では、船場ゆかりの別所家、新井家、芝川家に伝わるお雛さまが、魅力あふれるレトロな建物など、以下の3会場を舞台に飾られるのをはじめ、船場一帯では、「五人囃子」による生演奏やお茶会といった、雛祭りにちなんだイベントのほか、老舗や名店がこの時期ならではの「お・も・て・な・し」を用意して、訪れる人々を迎えていました。
○別所家のお雛さま : 少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)
○新井家のお雛さま : 伏見ビル1階「ギャラリーもず」
○芝川家のお雛さま : 芝川ビル4階「芝川ビルモダンテラス」
かつて、船場の「いとはん」や「こいさん」を夢中にさせたお雛さまが甦った「おひなまつり」には、船場商人の華やかな生活ぶりを一目見ようと、多くの方々が訪れていました。
と、ここまではお雛さまを題材にした旅行記を書く積りでいたのですが、少彦名神社以外の会場ではお雛さまの撮影は禁止とのことだったので、北船場界隈の町の様子を中心に書きとめることにしました。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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この日は自宅のある最寄駅から地下鉄に乗って来ました。
下車したのは、大阪地下鉄堺筋線北浜駅です。 -
北浜駅から地上に出ると、堺筋を挟んだ対面に小西儀助商店の木造建物があります。
小西儀助商店(現コニシ株式会社)は、安政3年(1856年)、京都の初代小西儀助が薬種流通の中心地だった大阪道修町に出て創業した薬種商で、薬種業を皮切りに、洋酒醸造業、化学製品業と業態を拡大し、現在は「ボンド」でお馴染みの接着剤メーカー、コニシ株式会社へと姿を変えています。 -
間口10間、奥行き22間の巨大な木造建物は、大阪船場の豪商の店舗と住居が渾然一体となった、日本古来の伝統工法による町家建築で、明治36年(1903年)から3年がかりで建てられたものです。
明治45年(1912年)の堺筋拡幅の際、建物の一部が切り取られ現在の姿になりましたが、所有者の英断により、この町家建築が、現地保存という理想的な形で大阪船場の地に残った意義は大きく、今もなお圧倒的な迫力で迫って来ます。
ちなみに、天神橋筋六丁目にある大阪市立の「大阪くらしの今昔館」が、近世の町家を再現する際、この建物も参考資料のひとつにしたと云われています。 -
小西儀助商店からほど近く、「船場のおひなまつり」の会場の一つになっている、薬業の神様として有名な少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)があります。
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少彦名神社は、ビル街のど真ん中にひっそりと鎮座しています。
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神社を訪れたら、先ずは手水舎でお清めです。
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少彦名神社に飾られているのは、当社の宮司を務めておられる別所家のお雛さまです。
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このお雛さまは、船場の道具商の娘さんが、別所家に嫁ぐ際に嫁入り道具として持参したものだそうです。
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その方は、毎年このお雛さまを飾って雛祭りを祝っておられたそうです。
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こちらは立ち雛。
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ふくよかなお顔のお雛さまと・・・
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お内裏さま。
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拝殿に吊り下げられている本坪鈴。
鈴の音色で邪気を祓い清め、神様を迎える準備を整えるという意味があるそうです。 -
おみくじを入れてある木箱。
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吊られた絵馬には、参拝した人々の願い事が書かれています。
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少彦名命はこんなお顔をしておられるようです。
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こちらは、紐にくくりつけられたおびただしい数のおみくじ。
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では、少彦名神社をおいとまして、次の会場へ向かいます。
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次に、少彦名神社を北に上がった、大正12年(1923年)完成の伏見ビルを訪れました。
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こちらの1階にある「ギャラリーもず」を会場に、船場で証券業を営んでいた新井家に伝わる昭和初期の御殿雛が飾られています。
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でも、御殿雛は写真撮影できないとのことなので・・・
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代わりに、伏見ビルのエントランスホールに飾られている、このお雛さまを撮りました。
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エントランスホールの一角に設けられている、かつての事務所。
現在は使われていないようです。 -
エントランスホールのど真ん中にデ〜ンと置いてある、石の花瓶に活けられた菜の花。
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階段踊り場に付けられたスチールの窓。
アルミサッシ全盛の時代にあって、レトロな香りを振りまくたたずまいは良い絵になります。 -
マーブル模様の照明器具が、優しい灯りを投げかけています。
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磨きこまれた階段手すりが、鈍い光を放っています。
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伏見ビルのお隣には・・・
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大正10年(1921年)に完成した青山ビルがあります。
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スパニッシュ風の外壁は、甲子園球場から株分けしてもらった蔦に覆われており・・・
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都会の真ん中で、四季の移ろいが感じられるスポットになっています。
では、少し西に歩いた所にある次の会場へ向かいます。 -
こちらは、こだわりのお蕎麦屋さん。
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お蕎麦屋さんの、木製のガラス障子が入ったショウウィンドウ。
素朴な草花が焼き締めの壺に活けられています。 -
白いのれんが揺れる入口の格子戸。
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こちらには土蔵のような建物があります。
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昭和2年(1927年)完成の芝川ビルへやって来ました。
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こちらが目的の「おひなまつり」会場になります。
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4階の「芝川ビルモダンテラス」に芝川家のお雛さまが飾られているので、そちらへ向かいます。
階段手すりの装飾が素晴らしいですね。 -
テラスの外壁に開けられた半円形の開口部。
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外壁の装飾に影を落とす外灯。
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こちらの会場もお雛さまの撮影ができないとのことなので、いけないことだと思いながらも、テラス側からちょっとだけ失礼させていただきました。
床に落ちた半円形の影が、ドアのガラスに映っておもしろい光景を生んでいます。 -
一本の木材から削り出している階段の手すり。
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では、北船場界隈の町歩きへ向かいます。
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玄関扉に書かれた金文字が、所々剥げ落ちています。
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中南米風の装飾を身にまとい、スパニッシュ瓦を葺いた玄関上部のファサードは、独特の雰囲気をもっています。
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芝川ビルにテナントとして入っているチョコレートショップ。
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芝川ビルのテナントの照明が、幻想的な影を落としています。
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2階に袖卯建のある、古い町家を活用した居酒屋さん。
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店先では魚の一夜干しを作っています。
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創業160余年に及ぶ大阪寿司の老舗の店先には、近松門左衛門作の人形浄瑠璃、「冥途の飛脚」のゆかりの地であることを示す石標が立っています。
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大坂淡路町の飛脚問屋のせがれ亀屋忠兵衛と、新町の遊女梅川を主人公とした「冥途の飛脚」には、淡路町が舞台の一つとして登場します。
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棟方志功の版画をシンボルにしている「ビフテキ」屋さん。
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こちらは船場で最古の町家である、宝暦13年(1763年)創業の大和屋清兵衛家だった薬品会社の本社です。
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周辺の企業が近代的なビルに建て替える中、内部改修の際には可能な限り旧態を残すように努めておられ、近世以来の問屋の業態を維持している貴重な存在だそうです。
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こちらは、植物成分抽出による医薬品製造を主な業態としている製薬会社の本社です。
今も、伝統的な町家をそのまま使っておられます。 -
武田薬品工業の旧本店ビルだった武田道修町ビル。
現在、武田科学振興財団が貴重な医学関連の資料を収集した杏雨書屋(きょううしょおく)を運営しています。 -
結納用品をはじめとする、儀式や儀礼に関わる物品販売のお店。
大きな虫籠窓と二段卯建が特長です。 -
この光景は、冬の味覚の王様が描く風物詩です。
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こちらは建築金物屋さん。
こちらのお店も、頑なに伝統工法による町家を愛しておられます。 -
煉瓦壁がひと際鮮やかな建物と、レトロな建物が並んでいます。
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この煉瓦造の建物は、明治45年(1912年)に「旧大阪教育生命保険ビル」として建てられたものです。
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現在は、結婚式場として使われています。
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お隣のレトロな建物は、昭和5年(1930年)完成の日本基督教団浪花教会です。
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ステンドグラスが嵌められた背の高いアーチ窓と尖塔が、外観上の特徴となっています。
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この教会は、日本各地に優れた建築を残した、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計指導にあたったことが知られています。
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教会の2階にある礼拝堂です。
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堂内には、アーチ窓のステンドグラスを透して、優しい光があふれています。
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礼拝堂入口の扉に付けられた小さな窓。
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ステンドグラスの色を映すアーチ窓の膳板。
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礼拝堂の入口上部に置かれたパイプオルガン。
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この落ち着いた和風建物は、多くの文化人に愛されている、高級日本料理店の本店です。
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これは、堺筋に面して建っている高麗橋野村ビルディングです。
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このビルは、かつての十大財閥の一つ、野村財閥が建てた最初の賃貸ビル。
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2スパンしかない、非常に奥行の浅い建物にヴォリューム感を与えるため、各階ごとに瓦形タイルの載った腰壁天端を外に傾斜させた、特異なフォルムをしています。
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玄関脇にある、三日月形の照明器具を冠した化粧柱。
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建物各階ごとの構成は、1階は貸店舗で、上階は貸事務室になっています。
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薄茶色の外壁は、和風建築の聚楽壁を連想させてくれます。
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このアングルから見ると、奥行きが2スパンしかないことがよく判ります。
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高麗橋野村ビルディングの、お向かいの眼鏡屋さんのショウウィンドウに飾られたお雛さま。
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天冠を被ったお雛さまと・・・
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烏帽子を被ったお内裏さま。
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高麗橋野村ビルディングを少し北に上がると、大正11年(1922年)に完成した旧報徳銀行大阪支店があります。
ビルの竣工から5年後、金融恐慌により報徳銀行が倒産のち、現オーナー家が買取り代々受け継いで来られ、現在は賃貸ビルとして運営されています。 -
20年ほど前、新しいビルへの建替えを計画されたこともあったようですが、ビルへの愛着から取り壊しを断念、かつての雰囲気を壊さないように修復されています。
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昭和51年(1976年)以来、長い間ステーキハウスとして親しまれてきましたが、平成17年から人気スイーツ店の本店が入居しています。
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スイーツ店に改修する際にも、かつての空間をそのまま残すよう設計され、1階は広い吹き抜け空間を活かしたスイーツ売場、2階は回廊に面した元銀行の小部屋を使ったカフェとして活用しています。
なお、1階奥にある元金庫室は、厨房として利用しているそうです。 -
美味しそう〜っ!
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さすがに人気をあつめるスイーツ店らしく・・・
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店内には華やかな雰囲気がただよっています。
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こちらは、町家を使ったお医者さん。
ちなみに、江戸時代の蘭学者や医者として知られる緒方洪庵が開いた「適塾」は、ここから目と鼻の先にあります。 -
今回の催しにふさわしい名前のお店がありました。
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庵看板を飾る鶴の細工瓦。
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なかなか繁盛しているお店のようです。
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細やかながらも、外観に緑を添える軒下の竹。
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この小さな建物は、20世紀の日本を代表する建築家の一人、村野藤吾氏の設計によるもので、昭和13年(1938年)に完成しています。
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幻想的なデザインの玄関灯。
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ビルの谷間に埋もれるように、ひっそりと建っているのは、明治45年(1912年)、株式仲買会社の社屋として完成した建物で、平成8年(1996年)、近代建築らしい美しい面影を随所に残すこのビルに惚れ込んだ現オーナーが買取りました。
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買い取ったオーナーがこの建物について調べを進めるうち、イギリスの建築に影響を受けた日本の建築家が設計したものであるらしいことが判ってきました。
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「ならば」と云うことで、自らイギリス風にデザインしたオリジナルな空間に改修し、家具、調度品もイギリスで買い付け、平成8年(1997年)、英国紅茶とスイーツの店「北浜レトロ」がオープンしました。
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中之島を挟んで流れる土佐堀川と堂島川の二つの川を渡って、北浜と西天満を結ぶ堺筋に架かる難波橋です。
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橋詰の欄干にライオンの石像が置かれていることから、「ライオン橋」の愛称で親しまれています。
この後ライオン橋を渡って西天満界隈を散歩します。 -
ライオン橋の上から、中之島にある大阪市中央公会堂が見えます。
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ライオン橋のクラシックな街灯。
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中之島南側の土佐堀川に架かるライオン橋。
土佐堀川の南側には京阪電車が走っています。 -
こちらは中之島北側の堂島川に架かるライオン橋。
北側には、ライオン橋を跨ぐように阪神高速道路が通っています。 -
堂島川にその姿を映す阪神高速道路が、現代都市ならではの景観を生んでいます。
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ライオン橋を渡った堂島川沿いには、かつて水運で賑わった頃の倉庫や町屋が残っています。
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時の流れが滲み出た鉄の扉が、喧騒で賑わった町の生き証人であるかのような存在感で迫って来ます。
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この一角に残る古い町家です。
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出格子のある町家。
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こちらの町家は、虫籠風の窓と、瓦を葺いた卯建がしつらえてあります。
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近代化する町並みの中にあって、古き佳き時代にタイムスリップしたようなこの空間は、なぜかホッとさせてくれます。
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ライオン橋の東側に架かる天神橋が見えてきました。
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籐で編んだ壁飾りを外壁に掛けている町家があります。
余計なおせっかいかも知れませんが、雨に濡れて、腐食するんじゃないかと、ちょっと気掛かりです。
では、この先の天神橋筋商店街の南端辺りに、魅力的なレトロビルがあるので向かいます。 -
天神橋筋商店街の南端入口の、少し東側に建つフジハラビルです。
大正12年(1923年)完成のこのビルは、元々は食品会社の本社だったもので、茶色のスクラッチタイルの外壁が大正モダンの雰囲気を今に伝えています。 -
廃屋同然だったこのビルを、現オーナーの藤原さんがコツコツと修復に努めてこられた結果、ギャラリーやデザイン事務所としてのニーズが高まり、今では、若いアーティストたちが集まる、天神橋のシンボル的存在になっています。
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そんなフジハラビルが持つレトロな魅力が注目されるようになり、ポスター写真撮影などに使われることが増える中、平成21年には、NHK朝の連続テレビ小説「ウェルかめ」のロケ地として使用されました。
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窓から顔をのぞかせる魚のオブジェ。
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玄関上部の建物銘板とレリーフ。
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味わいのあるスチール窓のガラスで踊る影絵たち。
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何気なく散歩していて、いきなりこんな影絵に出くわすなんて、素敵じゃないですか。
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では、窓ガラスの前に置かれた真鍮製のオブジェにさよならを言って、家路につきます。
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