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<br />2013年8月22日(木)<br /><br /><br />明ければ、黄金色の日の出だ。<br /><br />7階の私の部屋はインスブルックの家並から一段と高く、山の稜線まで視界をさえぎるものはない。<br /><br /><br />東に面していて、真正面から太陽が先ずダイヤモンドに輝き、やがて火の玉となって青空を飾る。<br /><br />太陽の有難さ、そして地球を支えてくれるエネルギーを実感する。<br /><br /><br />ホテルの朝食は、パンが美味しくていろいろ種類が多く、ジャムもまた多種多様の楽しさを与えてくれる。<br /><br />日本人のために白米のホカホカご飯もあり、味噌汁まで作ってくれている。<br /><br /><br />見事な晴天に敬意を表し、本日の訪問先を、インスブルックの南郊に聳えるパッチャーコーフェルと決める。<br /><br />この標高2200mを超える展望台は、昨日登ったノルトケッテと、インスブルックを挟んで南北に対峙している。<br /><br /><br />この山に登るに当たり、大きな楽しみの一つは、途中イグルスまでトラム6系統に乗ることだった。<br /><br />トラム6系統は、同1系統の終点に発し、標高差300mを大きく蛇行しながら、林間をくぐり抜ける。<br /><br /><br />トラムを自分のものにしようと、昨日来駅の案内所ほかあちこちで「トラム系統図」を貰おうとしたが、果たしていない。<br /><br />今朝になってホテルのコンシエルジュに「イグルスまでトラム」を訊くのだが、要を得ない。<br /><br /><br />「そもそもホテルに泊まる人には、公共交通機関の案内が必要ないのだろう」<br /><br />勝手にあいまいさの理由を解釈して、「それならば、自力で街の人から訊き出して見よう」<br /><br />街の人との交わりは、旅行の大きな楽しみであり、そのチャンスの一つである。<br /><br /><br />ホテルを出て右を見れば、正面に中央駅が見える。<br /><br />足の遅い私でも、10分見れば歩くことが出来るだろう。<br /><br /><br />そのように踏んで、インスブルック第二日目は、ワクワクした期待感で始まった。<br /><br />ところが、である。<br /><br />そこには、思いがけない苦労が、待ち受けていた。<br /><br /><br />通りがかりの人を選び、下手な言葉で「イグリスまで行きたいのですが?」と訊くと、皆さん「知りませんが、一緒に探しましょう」ととても親切に、親身になって助けてくれる。<br /><br />言葉はドイツ語だが、私の若いころ3年間も学んだ言葉は、すっかり錆ついていて、ほとんど使い物にならない。<br /><br />英語はお互いに不便であるにもかかわらず、最後の切り札である。<br /><br /><br />そして、私は足を引きずりながら懸命に後を追うのだが、一向に見つからない。<br /><br />結局5人目でやっと、トラム6系統は改良工事中で、現在運休していることが判った。<br /><br />それではバスを利用しようとさらに探すと、バスJ系統イグリス行きが、駅前からイグリスまで直通することが判った。<br /><br /><br />ここまでホテルを出てほぼ1時間。<br /><br />しかしインスブルック人の親切な気質や、ひたむきな素朴さに心打たれ、私には大きく学ぶ点があった。<br /><br /><br />イグリスに近づくに連れ客が減り始め、心なしか、残された乗客の品格が次第に磨かれているように感じてくる。<br /><br />とりわけ少し離れた座席の老婦人の一人は、ハッとした輝きさえ感じる、卓越した気品に満ちていた。<br /><br />彼女も私の視線を感じ、目を伏せ合う。<br /><br /><br />イグリスは、美しく洗練された街だった。<br /><br />終点のパッチャーコーフェル・ロープウエー乗り場まで行かずに、そのひとつ前イグリス・オルツミッテで降りる。<br /><br />客のいない銀行で両替し、案内所はどこかと訊ねたら、直ぐ向かいだった。<br /><br /><br />それは、明るい色に満ちたイギリス風の花壇を前に、壁画が美しい、つい引き込まれそうなチャーミングな建物・・・。<br /><br />若い女性の対応も、建物に負けない明るさだった。<br /><br /><br />私は言葉で四苦八苦しながらも、イグリスの町の構造や、美味しい店、トラム6番系統の未来などについて訊ねる。<br /><br />近くのホテルやレストランはいずれも魅力的で、「ここにしばらく滞在したいな」と、つい思った次第だった。<br /><br /><br />それにしても、先ずはパッチャーコーフェルに登ろうと、ロープウェー乗り場を目指す。<br /><br />ゆるい坂道をトボトボ登っていたら、後ろから追いついてくる人があった。<br /><br />先刻バスで出会い、お互いの視線を意識した、洗練されたたたずまいの老女なのだ。<br /><br /><br />一瞬ドキッとしながらも、挨拶を交わす。<br /><br />先方も日本人の私に興味を持っていて、話したかったらしい。<br /><br /><br />しばらく立ち止まり、この街の住み良さなどを伺いながら、最後に「私はこの道を登ったところにある城に住んでますのよ。ではヴィーダーゼーエン・・・」と別れた。<br /><br />私は相手のペースに呑まれながら握手をして別れたが、別れた後に「城」という言葉が気になって、「どんな所だろう。もっと訊きたかった」「見に行ったら良かったなァ」などと悔やんだ。<br /><br /><br />(2013年9月26日 片瀬貴文記)<br />

チロルの涼風を求めて【021】絶好の好天に恵まれ公共バスでイグルス行き

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2013/08/22 - 2013/08/22

322位(同エリア357件中)

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15

ソフィ

ソフィさん


2013年8月22日(木)


明ければ、黄金色の日の出だ。

7階の私の部屋はインスブルックの家並から一段と高く、山の稜線まで視界をさえぎるものはない。


東に面していて、真正面から太陽が先ずダイヤモンドに輝き、やがて火の玉となって青空を飾る。

太陽の有難さ、そして地球を支えてくれるエネルギーを実感する。


ホテルの朝食は、パンが美味しくていろいろ種類が多く、ジャムもまた多種多様の楽しさを与えてくれる。

日本人のために白米のホカホカご飯もあり、味噌汁まで作ってくれている。


見事な晴天に敬意を表し、本日の訪問先を、インスブルックの南郊に聳えるパッチャーコーフェルと決める。

この標高2200mを超える展望台は、昨日登ったノルトケッテと、インスブルックを挟んで南北に対峙している。


この山に登るに当たり、大きな楽しみの一つは、途中イグルスまでトラム6系統に乗ることだった。

トラム6系統は、同1系統の終点に発し、標高差300mを大きく蛇行しながら、林間をくぐり抜ける。


トラムを自分のものにしようと、昨日来駅の案内所ほかあちこちで「トラム系統図」を貰おうとしたが、果たしていない。

今朝になってホテルのコンシエルジュに「イグルスまでトラム」を訊くのだが、要を得ない。


「そもそもホテルに泊まる人には、公共交通機関の案内が必要ないのだろう」

勝手にあいまいさの理由を解釈して、「それならば、自力で街の人から訊き出して見よう」

街の人との交わりは、旅行の大きな楽しみであり、そのチャンスの一つである。


ホテルを出て右を見れば、正面に中央駅が見える。

足の遅い私でも、10分見れば歩くことが出来るだろう。


そのように踏んで、インスブルック第二日目は、ワクワクした期待感で始まった。

ところが、である。

そこには、思いがけない苦労が、待ち受けていた。


通りがかりの人を選び、下手な言葉で「イグリスまで行きたいのですが?」と訊くと、皆さん「知りませんが、一緒に探しましょう」ととても親切に、親身になって助けてくれる。

言葉はドイツ語だが、私の若いころ3年間も学んだ言葉は、すっかり錆ついていて、ほとんど使い物にならない。

英語はお互いに不便であるにもかかわらず、最後の切り札である。


そして、私は足を引きずりながら懸命に後を追うのだが、一向に見つからない。

結局5人目でやっと、トラム6系統は改良工事中で、現在運休していることが判った。

それではバスを利用しようとさらに探すと、バスJ系統イグリス行きが、駅前からイグリスまで直通することが判った。


ここまでホテルを出てほぼ1時間。

しかしインスブルック人の親切な気質や、ひたむきな素朴さに心打たれ、私には大きく学ぶ点があった。


イグリスに近づくに連れ客が減り始め、心なしか、残された乗客の品格が次第に磨かれているように感じてくる。

とりわけ少し離れた座席の老婦人の一人は、ハッとした輝きさえ感じる、卓越した気品に満ちていた。

彼女も私の視線を感じ、目を伏せ合う。


イグリスは、美しく洗練された街だった。

終点のパッチャーコーフェル・ロープウエー乗り場まで行かずに、そのひとつ前イグリス・オルツミッテで降りる。

客のいない銀行で両替し、案内所はどこかと訊ねたら、直ぐ向かいだった。


それは、明るい色に満ちたイギリス風の花壇を前に、壁画が美しい、つい引き込まれそうなチャーミングな建物・・・。

若い女性の対応も、建物に負けない明るさだった。


私は言葉で四苦八苦しながらも、イグリスの町の構造や、美味しい店、トラム6番系統の未来などについて訊ねる。

近くのホテルやレストランはいずれも魅力的で、「ここにしばらく滞在したいな」と、つい思った次第だった。


それにしても、先ずはパッチャーコーフェルに登ろうと、ロープウェー乗り場を目指す。

ゆるい坂道をトボトボ登っていたら、後ろから追いついてくる人があった。

先刻バスで出会い、お互いの視線を意識した、洗練されたたたずまいの老女なのだ。


一瞬ドキッとしながらも、挨拶を交わす。

先方も日本人の私に興味を持っていて、話したかったらしい。


しばらく立ち止まり、この街の住み良さなどを伺いながら、最後に「私はこの道を登ったところにある城に住んでますのよ。ではヴィーダーゼーエン・・・」と別れた。

私は相手のペースに呑まれながら握手をして別れたが、別れた後に「城」という言葉が気になって、「どんな所だろう。もっと訊きたかった」「見に行ったら良かったなァ」などと悔やんだ。


(2013年9月26日 片瀬貴文記)

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
  • ホテルの窓を開ければ<br />明け方の空が黄金に輝きつつある

    ホテルの窓を開ければ
    明け方の空が黄金に輝きつつある

  • 今日も太陽が出てきてくれた<br />

    イチオシ

    今日も太陽が出てきてくれた

  • マクシミリアン皇帝の結婚式を祝って<br />市民が建てた凱旋門<br />ホテルから歩いて一分にある<br /><br />マリア・テレジア大通りの南端にあり<br />門をくぐりさらに南に進むと<br />ブレンナー峠を越えてイタリアに入る<br />その先はローマ

    マクシミリアン皇帝の結婚式を祝って
    市民が建てた凱旋門
    ホテルから歩いて一分にある

    マリア・テレジア大通りの南端にあり
    門をくぐりさらに南に進むと
    ブレンナー峠を越えてイタリアに入る
    その先はローマ

  • 凱旋門のやや先に<br />大通りに面して<br />キリスト像がある

    凱旋門のやや先に
    大通りに面して
    キリスト像がある

  • イグリスの案内所前の公園<br />花の色の鮮やかさが印象的

    イグリスの案内所前の公園
    花の色の鮮やかさが印象的

  • ホテルから歩いて一分<br />凱旋門<br /><br />マリアテレジア大通りの南端にあり<br />南に進めばローマに達する

    ホテルから歩いて一分
    凱旋門

    マリアテレジア大通りの南端にあり
    南に進めばローマに達する

  • イグリス観光案内所<br />メルヘンチックな壁絵

    イグリス観光案内所
    メルヘンチックな壁絵

  • 観光案内書隣のホテル

    観光案内書隣のホテル

  • イグリス<br />町の風景

    イグリス
    町の風景

  • 美味しそうなレストラン

    美味しそうなレストラン

  • ロープウェー駅までの上り坂<br />

    ロープウェー駅までの上り坂

  • 村の人に声をかける

    村の人に声をかける

  • パッチャーコーフェルに登る<br />ロープウェーのターミナル駅

    パッチャーコーフェルに登る
    ロープウェーのターミナル駅

  • ゴンドラには<br />二回のオリンピックのマークが<br />誇らしげに描かれている

    ゴンドラには
    二回のオリンピックのマークが
    誇らしげに描かれている

  • ゴンドラから見るゴルフ場

    ゴンドラから見るゴルフ場

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