2013/05/20 - 2013/05/22
28位(同エリア147件中)
ひらしまさん
南はシチリア島から北はアルプスの麓まで約1ヶ月のイタリア縦断旅行記。第2回は、シチリア南岸のアグリジェントです。
紀元前8世紀から前6世紀頃に、ギリシア人は黒海や地中海の沿岸に広がり、多くの植民都市をつくりました。アグリジェントもその一つで、人口30万の大都市だったそうです。
現存する神殿群は紀元前6世紀から前5世紀に建てられています。アテネのパルテノン神殿の方が紀元前5世紀後半と少し遅いのは、カルタゴやペルシアの攻勢を退けた時期の違いなのでしょうが、当時のアグリジェントは新興ながら先祖の地をしのぐ勢いだったのかも知れません。
主な行程と宿泊先
パレルモ→アグリジェント(Cuffaro 社バス) 9ユーロ/人
Camera Con Vista スタンダード 85ユーロ/泊 2泊
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 50万円 - 100万円
- 交通手段
- 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
パレルモ市街を出るとすぐに、バスの窓に映る景色は岩山ばかりになり、「ゴッドファーザーPART?」でマフィアに殺された父の仇を討とうと息子が身を隠しそして殺される岩山の光景を僕は思い出していました。
もっとも今日のシチリアは抜けるようにきれいな青空で、あの映画の暗さは微塵もなかったけれど、このやせた大地とそこに暮らす人々の苦労は、あの時代とそう変わっていないのかも知れません。 -
前の席の女子学生風2人の屈託のない永遠に続きそうなおしゃべりを子守歌に眠りに落ちている間に、バスはシチリア島を北から南に横切っていました。
目覚めると、今度は豊かな緑に包まれた丘が車窓に広がり、その丘の上の街がアグリジェントでした。 -
バスターミナルからタクシーで宿のCamera Con Vista に着いたのは午後1時過ぎ。
ところが門は閉まっていて、脇の通用口に回っても開きません。インタフォンは応答なし。電話をかけてみますがこれも応答ありません。
仕方がないので近くの店で食事をとって時間をつぶそうと、心配して待ってくれていたタクシーに降ろした荷物を積み直してから、Yが念のためと門扉を動かしたら、難なく開きました。
閉まっているだけで施錠はされていなかったのに、そうと思い込んでいました。おっちょこちょいですね。
宿の玄関の扉は間違いなく押しても引いても開かないものの、眺めのいいテラスにテーブルもいすもあるので、そこで手持ちの食料でランチにすることにしました。
世話をかけた運転手さんにチップを上乗せしようとしましたが固辞して去っていきました。昨日のナポリのタクシーとは大違いです。 -
軽い昼食の終わる頃、オートバイに乗った男性が現れました。彼が宿の主人ネッロさんでした。
彼は僕たちを待たせたことを大変恐縮していましたが、チェックイン開始時刻より前に着いたのは僕たちの都合ですからなんの問題もありません。 -
部屋は2階で、L字型になっている広いバルコニーに出ると、エルコレ神殿やコンコルディア神殿を数百メートル先に見ることができます。
宿の名前の通り「眺めのよい部屋」です。 -
ネッロさんが届けてくれたレモンシャーベットをおいしくいただきながら、バルコニーでくつろぎます。
青い空と緑に包まれて、2千5百年前の遺跡を眺め、気分は最高! 遺跡見学は明日にして、今日は部屋でゆっくりしよう。 -
夕食に出かけようとしていたとき、ネッロさんが今度は「アペリティフです」と言って、ワイン、パン、トマトのオリーブ油・にんにく和え、チーズ、オリーブを盛った盆を届けてくれたので驚きました。
ご厚意に甘えて、またバルコニーで遺跡の夕景を眺めながらいただきます。トマトのおいしいのにも驚きました。小食の僕たちはそれで夕食が間に合ってしまいました。
バスタブの栓がないとかの問題もあったけれど、ネッロさんの歓待の前にはまるで気にならなくなっていました。 -
皿を返しに行くと、今度はレモンチェッロのグラスを渡されました。
とても甘いけれどアルコール度は高いレモンチェッロを片手に、暗闇に浮かぶ神殿を眺めて過ごしました。 -
3日目の朝は、目覚めると強い雨。昨日の青空が嘘のようで、遺跡見学ができるか心配になりましたが、朝食の頃には雨は上がりました。
大きなクロワッサンの朝食。テラスのテーブルは、左はフランス語、正面は英語、そして右はイタリア語。
各国語で対応していたネッロさんは、遺跡のガイドの仕事にオートバイで飛び出していきました。
僕たちはゆっくりと出かけます。
入場券売り場を通り、坂を上って門の跡らしきところを過ぎると丘の上に出て、ディオスクロイ神殿跡が姿を現しました。
できてまもなくカルタゴに制圧されて徹底的に破壊され、今あるのは19世紀に再現された断片だけです。まわりは草原で、兵どもが夢の跡といった感があります。 -
巨人の形をした柱が倒れているジョーヴェ・オリンピコ神殿は非常に規模が大きく、できあがる前にカルタゴ軍に破壊されてしまったといいます。
このあたりから見学者が増えてきました。高校生くらいの団体もいます。
コンコルディア神殿に向かう広い道で、ボンジョルノと元気な声をかけられました。なんとネッロさんで、30人くらいの団体さんを率いてガイド中でした。
午前は遺跡のガイドをし、宿に戻れば精力的にサービスして、いったいいつ休むのか。イタリア人とは思えないとYと意見が一致しました。 -
コンコルディア神殿は、紀元前5世紀のものとは信じられないような完成された美しさを感じさせて建っていました。
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アグリジェントの神殿はどれも黄土色というか濃いベージュというか、パルテノンのような白亜の神殿ではありません。
シチリアでは大理石がとれず、砂岩や擬灰岩を使っているからだそうです。 -
建築当時はその上に白い漆喰を塗り、さらに彩色していたのでしょうから、ずいぶんイメージは違います。
でも、この黄土色の地肌がシチリアの大地にはしっくり合っている気がしました。 -
北の高台に市街を見上げ、南に海を見渡す景色もいい。
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中央の薄いベージュ色の建物が泊まっているCamera Con Vistaで、その向こうの方には海が広がっています。
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アーモンドなどの木々の緑もきれいで、歩いているだけでも気持ちがいい。サボテンの花が鮮やかです。
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丘の東の端にあるジュノーネ・ラチニア神殿まではゆるやかな上り坂が続きます。
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そして、右手にはかなり風化してはいるものの城壁が残っています。
神殿の谷は、海から来る敵に対する防衛ラインでもありました。だから市街より神殿の方が低いところにあったのかと納得。
でも、市街よりは低いものの丘の上にあるのだから、「神殿の丘」というほうがふさわしく思えてきました。 -
ジュノーネ・ラチニア神殿に来ました。
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ここからは神殿の丘の全体を見渡せます。
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左手の海の向こうはアフリカ。
アグリジェントは地図で見るとアフリカ北端よりも南にあります。カルタゴからは300?もありません。
ぼくの感覚では、ここはヨーロッパの南の端。辺境。
はるばる遠くへ来たもんだ、なのですが、二千五百年前のここは人口30万の大都市で、交易も文化交流も、そして戦争も活発に行われた地中海世界の中心の一つだったのです。 -
小学生が社会科見学に来ていました。イタリアの小学校では、ギリシア時代のこの遺跡をどんな風に教えているんだろうな。
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道端の花を楽しみながら戻ります。
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最古のエルコレ神殿跡。宿からよく見えた遺跡です。
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神殿の丘のアーモンドの木は、もう実が大きくなっていました。
この日もネッロさんの「アペリティフ」をごちそうになったので、宿の近くのレストラン Vila Kephos での夕食は軽くすませましたが、Yはドルチェに店おすすめのアーモンドアイスクリームを食べ満足そうでした。 -
旅の4日目。今日はアグリジェントにさようならし、タオルミーナへ移動します。
ネッロさんと別れを惜しみます。日本の旅館の番頭さんのような腰の低い人でした。お世話になりました。
タオルミーナまではバスで行きますが、そこから先は鉄道中心の旅。
鉄道の切符はあらかじめ買っておかないと、窓口に時間がかかる海外では乗り遅れる危険があります。
イタリアではなおさらというわけで、アグリジェントのバスターミナルでYに荷物を託し、少し離れた駅に向かいました。
立派なファサードをもつアグリジェント駅にはいると、えっ、あれっ、切符の窓口がないじゃないか。
人の出入りするドアをはいってみればバールです。イタリアのバールはいろいろ売ってるみたいだけど、いくら何でも長距離切符は売ってないだろう。
下に降りる階段があるので降りてみましたが、何もないし誰もいない。上に戻って人に聞くと、やはり切符売り場は地下にあるという。実はもう一つ降りた地下2階のがらんとしたところに切符売り場はありました。
トレニタリアの切符購入初挑戦。
先客もいずラッキーと思いながら、明後日のタオルミーナ発サンジョヴァンニ乗り替えシッラ着の切符をお願いします。もちろんイタリア語ではなく、トレニタリアのサイトから印刷した表に書き込みをして。
15分も待たされて渡された切符を見ると、なんと申し込んだ明後日のではなく明日の列車のものでした。
これでは使えないので返すと、システムの故障で発券できないと言われた、らしいです。イタリア語だけど、たぶん。ぼくの次に待っていた客もあきらめて帰っていったし。
長距離バスをわざわざ1本遅らせて行ったのに、まったくの無駄骨に終わりました。Y「あんまり遅いから、そのまま帰ってこないんじゃないか、あの後ろ姿が最後の姿だったのか、なんて思ってた」。
イタリア縦断の旅、やはり簡単ではなさそうです。
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この旅行記へのコメント (2)
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- mistralさん 2020/04/04 16:14:39
- 手ごわし!シチリア。
- ひらしまさん
アグリジェントはすぐ近くのホテルに泊まり
パーキングにレンタカーを停めながら
途中で内部見学を断念した地でした。
ひらしまさんも切符の購入を断念されておられる。
シチリア、手強いですね。
リベンジできればなあ、と思います。
mistral
- ひらしまさん からの返信 2020/04/05 22:47:19
- Re: 手ごわし!シチリア。
- こんばんは。
シチリアの旅行記、拝見しました。
レンタカーの旅はうらやましいなと思っていましたが、それはそれで結構大変なのだとすごく伝わってきました。
あのアグリジェントの遺跡はとてもよかったのでmistralさんにも見ていただきたかったという思いはしますが、セジェスタで神殿や劇場跡をたっぷり見たからもういいかとなるお気持ちもよくわかります。
旅の中の取捨選択はめぐりあわせと組み合わせですもんね。
そして選択されたモディカの“光の河”、素晴らしいです。
実はぼくもprocidaさんの旅行記でモディカを知ったのですが、mistralさんの写真はいっそう素敵に伝えてくれています。
それにしても、効率は今一つでも人情の濃さがほんとうに魅力的だったイタリア。
あそこで出会った人たちが、今コロナ禍の中で無事でいてくれることを願わずにはいられません。
mistralさんもどうぞお大事に。
ひらしま
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