2013/05/31 - 2013/05/31
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ちびのぱぱさん
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道南の江差もそうですが、余市には、ほどよい歴史的建造物があります。
たとえば、かつて北海道がニシン漁でにぎわっていた時代の名残をとどめる施設群……
北海道のニシン漁は、この地に莫大な富をもたらし、その富は、ニシン御殿と呼ばれる、華麗にしてもの悲しい日本建築を、蝦夷地に生み出すことになったのです。
ニシンがもたらしたバブルとでも言えるでしょうか。
北海道に来て、幕末や明治に出会う、それは、予期せぬ驚きであり、サントリーではなくニッカウヰスキーの味わいに似ています。
北海道にも、北海道なりの歴史がある、ということを、最近じんわりと感じるようになりました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
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まったくの余談ですが、4トラベルには、写真の上手な方がたくさんいらっしゃいます。(4トラの4て、なんだろう)それに較べて、自分の写真がつまらないのはカメラのせい、といって妻にごねてデジイチを購入しました。
勇んで、左のような習作を近所で撮ってきて友人に見せたところ、彼は以下のような感想を無表情で語りました。
「これは、ちびのぱぱさんが撮った写真、という以外なんの意味もない写真ですな。」
そりゃそうかもしれんけど、そこまでいわんでもいいじゃん。
かつて住んでいた道東の街に、知り合いの高校生の息子が、夏休みにやってきて、その辺のどうということはない景色を写真にとって、そして帰って行きました。
しばらくたって彼から送られてきた数葉の写真は、それはそれは美しい絵なのでした。その後彼は、いくつかのコンテストに入賞して、プロの写真家になりました。
ようは、才能があるか無いか、タダそれだけの問題です。
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閑話休題
天気も良いので気を取り直し、NIKON1J1を持って、札幌から西進いたします。
写真は、なのはな畑ごしの手稲山。
札幌市内からは、どこからでも見える山で、この山の雪が消えれば夏、と地元では言い習わします。
(写真が平凡なのは、カメラのレンズの問題であります)手稲山 自然・景勝地
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苛立たしくも長々しい、小樽の市街地をなんとかぬけると、国道5号線はやがて、なまこのように黒々とした奇岩と、鏡のように静かな石狩湾の、浜に寄り添うように進みます。
塩谷という玉石の海岸を過ぎると、行く手を岬が遮り、そのどてっ腹に忍路(おしょろ)という暗いトンネルが、すぼめたような口を開けています。
トンネルのすぐ手前の道を右手にはいれば、絵のように美しい忍路漁港があります。
千と千尋のようなトンネルをぬけて5号線を進めば、平成の世に入ったことにいまだ気づかぬようなひなびた町並みが現れ、そこが蘭島であり、盛夏には、海水浴客でうたかたのような賑わいをみせます。 -
街の中程に、国道を左に折れてすぐの正面に、JR函館本線の蘭島駅があります。
蘭島駅は、小樽と余市のあいだにある変哲のない駅ですが、NANAという映画のロケに使われたり、南野洋子のポッキーのCMで使われたりしたといいます。蘭島駅 駅
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駅前に車を停め、小さな駅舎(写真右上)の中に踏み込むと、古い木造家屋の匂いがして、右手の窓辺に巨大なクンシランの鉢が一つ、おりしもトキ色の美しい花が咲き誇っていました。
蘭島駅に置かれたランの花……
クンシランの窓の向こうに、目にあざやかな新緑をたたえた山が迫っていました。駅と山のあいだには、蘭島川の清流が流れています。
再度待合室に目を転じると、どこにでもありそうな平凡なポスターが何枚か貼ってあるばかりで、これといって目を引くものはありません。
ヒット映画のロケに使われたと聞いていたので、映画ファンが喜びそうなものでもあるかと思っていましたが、拍子抜けしました。
左手には、切符売り場があって、その仕切りガラスの向こうの駅員室は、無人駅のはずのこの駅に、なぜか、人が住んでいる気配があります。
様々な生活雑貨や、事務用品などが雑然と置かれ、たった今まで誰かがそこにいたような、そんな印象でした。
「だれか住んでるのかな?」
「まさか……、でも、汽車の時刻には、誰かが来るのかもね。」
一時間に一本あるかないかの時刻表が掲げられていました。
ホームに出ればいよいよ静まりかえり、蝉の声だけが、山にこだましていました。蘭島駅 駅
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蘭島からさらに国道5号線を海に沿って進むと、余市に達します。
国道5号線は余市で海を捨て、内陸の倶知安に向かいますが、わたしたちは積丹半島をぐるりと巡る229号線に進みました。(わたしたちは、この道をニンニクと呼んでいます)
余市といえばニッカウヰスキー工場ですが、車で来ているときは、どっちが試飲するかでもめることになりますから、寄りません。
余市川にかかる大きな橋を渡ると、右手にモイレ岬があって、細い道が小高い岩山に回り込むようにして海に消えています。誘われるように、その道に沿って進むと、忽然と「下ヨイチ運上屋」が現れました。
見学料300円、かつての運上屋を訪れてみることにしました。 -
現存する唯一の運上屋の建物。
運上屋とは、アイヌとの交易を独占していた商人が、取引の拠点とし、かつ、松前藩の出先機関でもあった建物です。
自前で米を産することのできなかった松前藩にとって、貴重な石高を生み出す運上金が、徴収される場でもあるわけです。 -
海上の難所である神威岬をまわる近江商人たちの北前船が、多く行き来したことでしょう、安全祈願の神棚の、なんと仰々しいこと。
アイヌとの交易の品は、鮭やニシンなどの海産物や、熊などの毛皮が主なものだったでしょうか。
アイヌ人は、17世紀の酋長シャクシャインの主導による反乱が鎮圧されていこう、ほとんど隷属状態にあったようです。
1811年に、千島列島の測量の使命を受けてやってきたおりに捕らえられて捕虜になったワシーリー・ゴローニンの日本幽囚記を読むと、その二年にわたる捕虜生活を通して、当時の蝦夷地の様子が実に生き生きと伝わってきます。
高度な官僚教育を受けた役人たちと、素朴なアイヌ民族の被支配民的な隷属状態が描かれています。
とくに、交易の主体が商人たちの手に渡ると、その搾取はいっそう過酷になっていったようです。
北海道生まれの作家佐々木譲の「武揚伝」のなかで、若き榎本武揚が蝦夷地視察に訪れた際に、そのアイヌの置かれた悲惨な状況に同情する場面が描かれていましたが、搾取というものは、相手が異民族であるとき、いよいよ手加減が消えるものなのでしょう。
少し話がずれますが、こうして近江商人により運ばれた身欠きニシンが、京都でもニシンそばとして、明治時代から食されたそうです。
そいえば、四条大橋のたもとに、美味しそうなニシンそば屋がありましたね。神威岬 自然・景勝地
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アイヌの人は、遺伝子的には沖縄の人々と親しいことが分かってきましたが、和人とも決して無縁ではないようです。
言語的には、SOV(主語+述語+目的語)の構文を基本とする点で、日本語や韓国語と同じですが、イヌイットなどの北方系民族との関連が深い珍しい言語と、ウィキペディアに書かれていました。 -
旧下ヨイチ運上屋の庭園は、狭いながらもよく手入れが行き届いて、目を和ませてくれます。 -
必要最小限の狭い階段…… -
遠山の金さんのモデルになった遠山景元(=かげもと)のおとうさん(景晋=かげくに)もいたことがあるそうで、ちょうど、日本とロシアの関係が緊張していた時期です。
何とか、日本と通商条約を結びたいと思っていたロシアは、かの大黒屋光太夫の帰国にかこつけて親書を交わすものの、結局、長崎奉行をしていた金さんのおとうさんに断られる形で、体よくあしらわれました。
ついでながら、大黒屋さんというのは、遭難してロシアへ行き、エカテリーナ2世に謁見するなど数奇な運命をたどって、井上靖の小説「おろしや国酔夢譚」に描かれたり、映画にもなっています。
もしかすると、先に述べたゴローニン事件の際、函館奉行所で対応した幕府の役人の中に、遠山景晋(金さんのおとうさん)がいたのだろうか。
このころの日本周辺は、幕末の開国に向かって、いろいろ騒がしくなっていたのですね。
ヨイチ運上屋も、ふつうの番屋などと違い、いくつもの座敷がもうけられていて、役所の体をなしています。 -
座敷の一つには、お腰元のマネキンもいて、説明では、本来単身赴任が建前なので、いないはずだが、ちょっと殺風景なので配しておきました、的な説明があり、なかなかサービス精神に富む文化施設です。 -
運上屋が廃止された後はニシン番屋として、ニシンが来なくなってからは数家族が借り屋住まいをし、その後町に寄贈され、もとの運上屋の造りに戻されたという話を、お向かいにある茶店の主の方が話してくださいました。
中で、お茶や、簡単な食事ができるようになっています。 -
旧福原漁場
運上屋から国道229号に戻り、積丹方面に進むと道沿いにあります。
入場料300円。
ここは、たびたび主が変わったものの、やはりニシンの群来がなくなり、その役割を終えたのです。
三層造りの倉がみごとで、なかに、懐かしい資料が一杯収められています。 -
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やんしゅう(雇いの漁師)たちには、たらふくと白米が振る舞われたそうです。 -
ニシンは捨てるところのない魚で、ニシンを食べた鮭もまた、とても美味だったそうです。
ところが、ニシンというのはよく分からないやつで、急に来なくなったのは、人間に料理されるのがいやになった、というわけでもないそうです。
しかも、最近来るようになったニシンは、かつて来ていたニシンとは別人だというのです。
「へえ、そうなんだ。」
そんな、ニシンにまつわるトリビアを聞かせてもらえる場所です。 -
ちょっと、映画の一場面を思い出しています。 -
モッコと呼ばれる背負子でニシンを運ぶのは女性の仕事で、一杯運ぶごとに左の細い札一つをもらえ、それをお金と引き替える仕組みだそうです。
思いを寄せた女性には、少なめに、憎たらしい女性には多めに入れてやった、という話が語り継がれたようです。
案内の女性が笑いながら説明してくださいました。 -
まだ、日が高いので、神威岬まで足を伸ばすことにしました。神威岬 自然・景勝地
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積丹岳は、まだまだ白い雪を頂いています。 -
笹の花が咲いたのでしょうか、いちめん枯れ野原になっていました。
確か60年に一度咲くのだとか……、そういえば、昨年訪れた際に見た記憶が……。 -
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がんばって、数年ぶりに先端の灯台までやってきました。
岩まで吹き飛ばしそうな猛烈な風が吹き荒れ、岩礁に潮と潮とがぶつかり合って複雑な渦をつくっています。
ふと、日本人とは何かについて考えていました。
幾筋にも分かれた人類の潮流が、北から南から、そして朝鮮半島からやってきて日本列島で出会い、ぶつかり、まじりあって、日本民族ができあがる。
いくつかの民族が混ざるとき、支配的な民族の言語が取って代わるという事になるのだろうか。
気がつくと、いつもは聞こえる外国語が今日は聞こえない。
周囲から聞こえるのは、モーラが刻むリズム心地よい日本語ばかりです。 -
さて、岬の湯の絶景露天風呂に入って、帰るか…… -
積丹岬の湯は、ぽかーんと太陽が、すべての音を消し去ってしまうような光線を降り注ぐ露天風呂から、紫紺の海がきらきらきらきら……直接、脳に達する
炎天下のベンチに、全裸のおとうさんがひとり、生きているとも知れぬほど、あたまをたれて、深く眠り込んでおりました。
ああ、強烈な睡魔……
どうも、歩きすぎたせいか、腰を痛めたようで、靴下をちゃんとはけるか心配になり、脱衣所の少し離れたところにあったドーナツ椅子を、ガタガタ引き寄せてきました。
ナマ尻で座るのはいやなので、これもかなりの苦労の末パンツをはいたのですが、いざ座ろうとした瞬間、いつの間にいたのか、やせた老人がするりとその椅子に腰掛けちゃいました。
「あっ」
と、声を出すいとまも与えないほど、自然ですんなりと腰掛けちゃいました。
「それ、わたしのです。」
とも言えず、あきらめて、脂汗を流しながら、立ったままの姿勢で靴下をはきました。(経験者は分かるはず)
ふと、視線を感じて目を上げると、15才くらいの白人の子が、パンツに片方の足を入れたままバランスを崩し、けんけんしながら視界から消えてゆくのが見えました。
しかしそのとき、のぼせて赤くなった彼の目が、笑っていたのを見逃しませんでした。
一部始終を見られたのに相違ありません。
札幌への長い道のりをドライブしながらも、雪のように白い白人の肌が上気したとき特有の赤い、若々しい彼の顔が、浮かんでは消えてゆきました。
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この旅行記へのコメント (4)
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- わんぱく大将さん 2014/01/09 10:27:07
- 今までの景色は。。。
- ちびのぱぱさん
あけました〜こちらも(おそいがな!)
今まで素晴らしい景色をみせていただき、最後のドーナツの。。。
思わず想像したら、笑っちゃいかんのだが、すんません。
大将
- ちびのぱぱさん からの返信 2014/01/09 23:43:10
- RE: 今までの景色は。。。
- どうぞ、わらってください。
妻に話したら爆笑されたので、受けねらいで入れておきました。
-
- JBさん 2013/06/17 07:19:39
- おはようございます
- ちびのぱぱさん へ
祇園のそばだと松葉ですかね。
ニシンそばは大好きです。
http://4travel.jp/travelogue_vote/vote/?THIS_TRAVELOGUE_COMMENT=%C5%EA%C9%BC%A4%B9%A4%EB&submit=%C5%EA%C9%BC%A4%B9%A4%EB&THIS_TRAVELOGUE_ID=&THIS_ALBUM_ID=10780353
月曜の朝から、見とれていると〜なんで、また伺いますね〜。
カメラゲット おめでとうございました!
オリバーのすけ
- ちびのぱぱさん からの返信 2013/06/17 16:21:16
- RE: おはようございます
- オリバーのすけさま
メッセージありがとうございます。
おっしゃるとおり、松葉のことです。
今そのホームページを見たら、文久元年創業とあるので、江戸時代からあるのですね。
食べようかと思ったのですが、実は、身欠きニシンがニガテでして……。
店の前まで行ったんですけど。
松山城、いいですね、いつか行ってみたいと思っています。
旅行記読ませていただいて、お城についていろいろ知ることができました。ありがとうございました。
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