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ウユニ塩湖(Salar de Uyuni)は、東西250km、南北100kmにわたる途方もない広さのフラットな塩の鏡。塩湖には島もいくつかある。対岸の見えない白い海だ。秋田県と同じ広さという人もいれば、四国の半分という人もいる。<br /><br />ウユニの街の1歩手前、コルチャニに着いた。鉄道の駅がある。どの駅もゴーストタウンのような殺風景のほこりだらけの集落だが、コルチャニもそうした駅のひとつ。7時間ほど行ったところにポトシという地理で覚えた鉱山(銀、すず)がある。鉄道は鉱山の賜物だった。<br /><br />夕日の沈むまでサラールへ車で漕ぎ出す。そう、車はサラールという海に漕ぎ出す舟だ。わだちや塩取りの小屋、ケルンだけが目印の塩の海。乾期は塩だけだが、雨期には10cmくらい水に浸かる湖。車がすぐに悪くなるだろうなと思う。<br /><br />湖面が亀の子のような紋様になる。紋様は際限もなく続く。<br />湖面に降り立った時は、初めて見る自然の光景にぽろっと涙が流れた。これは何なのだろう?。「何これ?」を連発する。塩の白と空の青。夕焼けの茜色がだんだん加わってくる。亀の子を夕陽に向かって歩く者もいれば(なぜヒマワリのように太陽に向かって歩くのか?)、楽器を奏でる者もいた。私は360度ゆっくりと回ってみた。車を運転し、好き勝手な方向に進んでみた。自分が円の中心にいるような錯覚に陥る。塩を削り取ったりなめてみたり、寝っころがってみたり、逆立ちしたり、ケンケンパーしたり、それぞれが子どものように遊んだ。<br /><br />夕陽がサラールの向こうに沈むのをみんなでずっと見つめていた。沈むまで誰もそこから動かない。青春ドラマのようにくさいが、子どもになって遊んだ後はみんな素である。空の色がブルーからオレンジ、金色と変わっていく。<br />「きれい!」「すごい!」を連発。こんな時って語彙も乏しく同じ言葉を繰り返すだけ。自分が小さく見える瞬間でもある。どう形容しても伝えられない。あきらめるしかない。<br /><br />太陽が沈んでからはその余韻を楽しむ余裕はなかった。目印の殆どない、また車にGPSがついていない塩の上では、方角がわからない。彷徨う難破船になりかねない。来た方角とわずかなわだち(どの方向にも何本もある)、分岐があればどちらかに賭けて進路を取る。見覚えのある塩取り小屋を見つけたときは心の底から安堵した。温度も刻一刻と下がっていった。 <br /><br />「月の塩」というホテルは、コルチャニからわだちを通ったところにある小高い丘にある。サラールに一番近い。壁、テーブル、ベッド、棚、椅子が全て塩湖から切り出した塩の塊(塩のブロック)でできている。床は砕いた塩。きれいに掃き寄せられ、日本庭園のようだ。歩くとさくさく音がして足には柔らかい。<br /><br />雨期でも湿気で溶けないのだろうかと、湿気の多いところに住む者はつい考えてしまう。サラール中央にある、同じような塩づくりのホテルが環境問題のため閉鎖はしたもののちゃんと存在するからには大丈夫なのだろうと思う。<br /><br />サラールに向かって立つコロニアル風で、部屋の外にオープンなリビングがあり、大きく開いた窓から塩湖が見渡せる。塩平線(こんな言葉はあるのかどうか?)へ沈む夕陽の絶景ポイントだ。遠くにウユニの街、近くにコルチャニも見える。<br /><br />月の登らないLuna Salarで、星を眺めた。<br /><br />天の川が星雲に見える。南十字星には初にお目にかかった。<br />星が大きい。星がばんばん流れる。でも寒い!<br />「今からサラールの真ん中で星見よう!」という申し出には丁寧にお断りした。<br />「帰れなくなっちゃうじゃないですか、朝まで」<br />「シュラフ積んでるよ」<br />彼は本気でしたね。いくらきれいでも寒さには勝てないよ。10分見ればもう十分。<br /><br />未明には零下7度まで下がるほどの寒さなので、部屋には電気ストーブとガスストーブがたかれている。バスタブはないがお湯はちゃんと出た。私はラッキーだった。お湯か水かはこの寒さでは大問題だ。同行者の部屋はお湯が出たのは最初の3分だけだったと言って震えていた。<br /><br />そうだ、ここには檻、鉄格子、へいがない。まあ誰かが来ればわだちを辿ってくる車のほこりがそれを知らせるだろう。雨期にはたぶん鉄道でしか来られないだろう。ぐちゃぐちゃのスタックしそうなわだちを駅からタクシーで来る客もいるのだろうか?いや、タクシーは駅にはいなかった。<br /><br />2日間とも私たち一組だけのゲストだった。2日目にはカップルが来るといっていたマスターだが、来なかった。予定通り、時間通りにことが運ぶことがラッキーなこの国ではそれ自体あまり驚くことではないのだろう。TVもないし、携帯は圏外だった。<br /><br />ポトシで知事をしていたという人懐っこいマスターと関係はわからない中年女性、若い男の子、女の子の4人で切り盛りしている。マスターと女性はスペイン系に見え、男の子と女の子はアイマラの人のようだった。<br /><br />まきストーブに火が入り、ろうそくと小さな灯りでゆっくりと食事が始まる。作業をしていた男の子がボーイさんスタイルに着替えて給仕してくれる。メニューはチキンかミートと決まっている。味付けは塩、こしょうのみ。マヨネーズとケチャップはどこでも見かけなかった。日本にはいかに多くの調味料があることかと思う。デザートやジュースの種類が違うだけで2日とも全く同じメニュー。スープは、「クノールだね」とドライバー氏が指摘する。食事に出たフライドポテト。食卓塩はおいてあるが精製塩。「こちらの方が断然おいしい」と、テーブルの裏をごしごしこすってポテトにかける。 <br /><br />ボリビア記①ラパスへ<br />ボリビア記②ケーナ・サンポーニャ工房<br />ボリビア記③アルティプラノ<br />ボリビア記④ウユニ★<br />ボリビア記⑤Isra De Pesca塩湖に浮かぶ島<br />ボリビア記⑥忘れられた村Museoウユニの対岸へ<br />ボリビア記⑦ブロッケオ<br />ボリビア記⑧帰途~ハリケーンせまる

ボリビア記④ウユニ

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2006/08/22 - 2006/08/30

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scomitcheese

scomitcheeseさん

ウユニ塩湖(Salar de Uyuni)は、東西250km、南北100kmにわたる途方もない広さのフラットな塩の鏡。塩湖には島もいくつかある。対岸の見えない白い海だ。秋田県と同じ広さという人もいれば、四国の半分という人もいる。

ウユニの街の1歩手前、コルチャニに着いた。鉄道の駅がある。どの駅もゴーストタウンのような殺風景のほこりだらけの集落だが、コルチャニもそうした駅のひとつ。7時間ほど行ったところにポトシという地理で覚えた鉱山(銀、すず)がある。鉄道は鉱山の賜物だった。

夕日の沈むまでサラールへ車で漕ぎ出す。そう、車はサラールという海に漕ぎ出す舟だ。わだちや塩取りの小屋、ケルンだけが目印の塩の海。乾期は塩だけだが、雨期には10cmくらい水に浸かる湖。車がすぐに悪くなるだろうなと思う。

湖面が亀の子のような紋様になる。紋様は際限もなく続く。
湖面に降り立った時は、初めて見る自然の光景にぽろっと涙が流れた。これは何なのだろう?。「何これ?」を連発する。塩の白と空の青。夕焼けの茜色がだんだん加わってくる。亀の子を夕陽に向かって歩く者もいれば(なぜヒマワリのように太陽に向かって歩くのか?)、楽器を奏でる者もいた。私は360度ゆっくりと回ってみた。車を運転し、好き勝手な方向に進んでみた。自分が円の中心にいるような錯覚に陥る。塩を削り取ったりなめてみたり、寝っころがってみたり、逆立ちしたり、ケンケンパーしたり、それぞれが子どものように遊んだ。

夕陽がサラールの向こうに沈むのをみんなでずっと見つめていた。沈むまで誰もそこから動かない。青春ドラマのようにくさいが、子どもになって遊んだ後はみんな素である。空の色がブルーからオレンジ、金色と変わっていく。
「きれい!」「すごい!」を連発。こんな時って語彙も乏しく同じ言葉を繰り返すだけ。自分が小さく見える瞬間でもある。どう形容しても伝えられない。あきらめるしかない。

太陽が沈んでからはその余韻を楽しむ余裕はなかった。目印の殆どない、また車にGPSがついていない塩の上では、方角がわからない。彷徨う難破船になりかねない。来た方角とわずかなわだち(どの方向にも何本もある)、分岐があればどちらかに賭けて進路を取る。見覚えのある塩取り小屋を見つけたときは心の底から安堵した。温度も刻一刻と下がっていった。

「月の塩」というホテルは、コルチャニからわだちを通ったところにある小高い丘にある。サラールに一番近い。壁、テーブル、ベッド、棚、椅子が全て塩湖から切り出した塩の塊(塩のブロック)でできている。床は砕いた塩。きれいに掃き寄せられ、日本庭園のようだ。歩くとさくさく音がして足には柔らかい。

雨期でも湿気で溶けないのだろうかと、湿気の多いところに住む者はつい考えてしまう。サラール中央にある、同じような塩づくりのホテルが環境問題のため閉鎖はしたもののちゃんと存在するからには大丈夫なのだろうと思う。

サラールに向かって立つコロニアル風で、部屋の外にオープンなリビングがあり、大きく開いた窓から塩湖が見渡せる。塩平線(こんな言葉はあるのかどうか?)へ沈む夕陽の絶景ポイントだ。遠くにウユニの街、近くにコルチャニも見える。

月の登らないLuna Salarで、星を眺めた。

天の川が星雲に見える。南十字星には初にお目にかかった。
星が大きい。星がばんばん流れる。でも寒い!
「今からサラールの真ん中で星見よう!」という申し出には丁寧にお断りした。
「帰れなくなっちゃうじゃないですか、朝まで」
「シュラフ積んでるよ」
彼は本気でしたね。いくらきれいでも寒さには勝てないよ。10分見ればもう十分。

未明には零下7度まで下がるほどの寒さなので、部屋には電気ストーブとガスストーブがたかれている。バスタブはないがお湯はちゃんと出た。私はラッキーだった。お湯か水かはこの寒さでは大問題だ。同行者の部屋はお湯が出たのは最初の3分だけだったと言って震えていた。

そうだ、ここには檻、鉄格子、へいがない。まあ誰かが来ればわだちを辿ってくる車のほこりがそれを知らせるだろう。雨期にはたぶん鉄道でしか来られないだろう。ぐちゃぐちゃのスタックしそうなわだちを駅からタクシーで来る客もいるのだろうか?いや、タクシーは駅にはいなかった。

2日間とも私たち一組だけのゲストだった。2日目にはカップルが来るといっていたマスターだが、来なかった。予定通り、時間通りにことが運ぶことがラッキーなこの国ではそれ自体あまり驚くことではないのだろう。TVもないし、携帯は圏外だった。

ポトシで知事をしていたという人懐っこいマスターと関係はわからない中年女性、若い男の子、女の子の4人で切り盛りしている。マスターと女性はスペイン系に見え、男の子と女の子はアイマラの人のようだった。

まきストーブに火が入り、ろうそくと小さな灯りでゆっくりと食事が始まる。作業をしていた男の子がボーイさんスタイルに着替えて給仕してくれる。メニューはチキンかミートと決まっている。味付けは塩、こしょうのみ。マヨネーズとケチャップはどこでも見かけなかった。日本にはいかに多くの調味料があることかと思う。デザートやジュースの種類が違うだけで2日とも全く同じメニュー。スープは、「クノールだね」とドライバー氏が指摘する。食事に出たフライドポテト。食卓塩はおいてあるが精製塩。「こちらの方が断然おいしい」と、テーブルの裏をごしごしこすってポテトにかける。

ボリビア記①ラパスへ
ボリビア記②ケーナ・サンポーニャ工房
ボリビア記③アルティプラノ
ボリビア記④ウユニ★
ボリビア記⑤Isra De Pesca塩湖に浮かぶ島
ボリビア記⑥忘れられた村Museoウユニの対岸へ
ボリビア記⑦ブロッケオ
ボリビア記⑧帰途~ハリケーンせまる

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
ホテル
5.0
グルメ
3.0
ショッピング
1.0
交通
2.5
同行者
友人
一人あたり費用
30万円 - 50万円
交通手段
レンタカー タクシー

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  • 乾季のウユニの塩

    乾季のウユニの塩

  • 言葉を失います。

    言葉を失います。

  • 陽が傾いてきました。

    陽が傾いてきました。

  • イチオシ

  • 運転してみましたが、どこへ行くのも自由!<br />しかしマニュアル車だったので、エンストを繰り返し、ギブアップ。

    運転してみましたが、どこへ行くのも自由!
    しかしマニュアル車だったので、エンストを繰り返し、ギブアップ。

  • 黙って夕陽を見つめる4人。

    黙って夕陽を見つめる4人。

  • しばし入日をお楽しみください。

    しばし入日をお楽しみください。

  • 塩のホテルの廊下

    塩のホテルの廊下

  • テーブルとイス

    テーブルとイス

  • ソロソロ食事が始まります。<br />オーナーとボーイさん

    ソロソロ食事が始まります。
    オーナーとボーイさん

  • ルナサラダの玄関。<br />朝起きて外に出てみました。

    ルナサラダの玄関。
    朝起きて外に出てみました。

  • 朝日はひとりで見ました。<br /><br />今日は塩湖に漕ぎ出します。<br />

    イチオシ

    朝日はひとりで見ました。

    今日は塩湖に漕ぎ出します。

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