2012/06/03 - 2012/06/08
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JIC旅行センターさん
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「ダニよけスプレーも買っておいた方がいいよ。オレンジ色の缶のスプレー!」とリュドミラさんは言った。6月1日の午後、モスクワのリュドミラさんの会社を訪ね、翌日のキーロフ行き列車のチケットを受け取ったときのことだ。
事前の連絡では、長靴、雨合羽、寝袋、敷きマット、防寒用上着、洗面具などのほか、食事用の深皿とコップ、スプーン、フォーク、ナイフは必携と聞いていた。食糧は各自が持ち寄るが、一緒に歩く友人たちのために、日本からインスタント味噌汁を50個ほど持ってきてほしいとのリクエストを受けていた。私は、味噌汁以外はモスクワで調達するつもりで、たいした食糧を持ってきていない。私と一緒に歩く予定の通訳兼アシスタントのジーマ君は、まだ長靴を買っていないと言う。早速、2人でスーパーマーケットに買い出しに出かける相談をしていたら、リュドミラさんから冒頭の言葉が飛んできた。
■シベリア・ダニ
中央ヨーロッパからロシア西部、シベリア、極東の森林・山岳地域では、「ダニ媒介脳炎」という恐い病気がある。これはある種のダニに噛まれることにより感染し、中枢神経を侵される病気で、発熱をともなう頭痛や嘔吐などの症状を呈する。ひどい場合には昏睡、痙攣、身体麻痺などを引き起こし、重い後遺症を残す。オーストリア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアなどで、毎年、5000〜6000名の発症例が報告されている。日本でも「ツツガムシ病」という類似の病気があるが、ロシアのダニ媒介脳炎は、それよりかなりタチが悪い。
厳密に言うと、ダニ脳炎には2種類あって、中央ヨーロッパダニ脳炎とロシア春夏脳炎とに分かれる。ロシア春夏脳炎はシベリアと極東地方に発症するダニ脳炎で、中央ヨーロッパダニ脳炎が致命率1〜2%なのに対して、こちらは20〜30%と高い。きわめて危険なダニ脳炎だ。
キーロフはウラル山脈の西側だからシベリアではないよね。中央ヨーロッパだよね、……。
ちょっと心配ではあるが、ロシアでの毎年の発症例は数千人程度だから、交通事故に遭う確率よりはかなり低い(と自分に言い聞かせる)。ダニ脳炎の唯一の防止策は、ダニに噛まれないことだ。というわけで、オレンジ色のダニよけスプレーを探してみたが、モスクワでは結局見つけることができなかった。仕方がないので、キーロフで仕入れることにする。
■キーロフ行きの列車
6月2日夕方6時半、モスクワのヤロスラブリ駅のホームでリュドミラさんと待ち合わせた。
ロシアの鉄道駅には改札口というものがなく、駅のホームまでそのまま入っていける。客車ごとの入口に車掌さんが立っていて、乗車チケットのチェックを受けてから乗り込む仕組みだ。車掌さんはほとんど女性で、一車輛につき1人(長距離の場合は2人)の車掌さんが管理するという、ロシア鉄道の贅沢なしきたりは、ソ連が崩壊して資本主義ロシアになった今日でも全く変わっていない。
同行のジーマ君とともに、20輌以上の客車をつないだ長大な列車の号車番号を見ながらホームを歩いて行くと、ちょうど中ほどの客車の入口でリュドミラさんとその友人・セルゲイ氏が待っていた。列車に乗り込む客は誰も彼も大きなリュックを担いでいる。皆、キーロフ行進に参加する人たちのようだ。
ご存じのとおり、ヤロスラブリ駅はシベリア鉄道の始発駅(終着駅)だ。シベリア鉄道は、モスクワからウラジオストクまで全長9000kmの世界一長い鉄道だが、私たちがめざすキーロフは、そのシベリア鉄道の途上にある町なのだ。モスクワから北東に約900km。モスクワを18:50に出発する列車は、ウラジミール、ニジニ・ノブゴロドを経て、翌朝07:30にキーロフに到着する予定だ。
4人コンパートメントの客車は新型車両で、とてもきれいだ。シベリア鉄道といえば、ちょうど30年前にイルクーツクからモスクワまで3泊4日の列車旅をしたことがある。左右に2段のベッドがあり、中央の窓際にテーブル、下段ベッドの下は荷物入れ、上段ベッドの通路側にも荷物を置くスペースがあるのは昔と同じだが、窓の上の壁に液晶テレビがついており、上段の荷物置き場にセイフティボックスがある点が違っている。各ベッドに置かれたタオル、歯磨きセットが昔より垢抜けているのは当然としても、何よりも大きな違いは、車両両端にあるトイレの清潔さだ。昔の「垂れ流しトイレ」は姿を消し、最新式のバキュームトイレに変わっているのには感動した。トイレ使用中のランプが通路端についているのも、日本では当然と言えば当然なのだが、ロシアでは新鮮に感じてしまう。
列車の設備は30年前に比べると格段に良くなったが、スピードはほとんど変わっていない。時速70kmから80kmのスピードで列車は、ゆっくりと走る。
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■語学センターの経営者、セルゲイ氏
セルゲイ氏は、身長190cm近い長身で、がっしりした体格の50歳代男性。その体格に比例してものすごく巨大なリュックサックをコンパートメントに担ぎ込み、ベッドの下に押し込もうとしている。迷彩服のズボンにくるぶしまであるしっかりした登山靴。きびきびした動作。アウトドア活動に慣れた頼もしさを感じる。
リュドミラさんによれば、彼はモスクワで30以上の言語を教える「語学センター」の経営者だ。息子さんは英語、フランス語など4カ国語の同時通訳者で、プーチン、メドベージェフの通訳も務める語学の達人。リュドミラさんの会社の得意客の一人で、旅行の世話をするうちに親しくなり、今回、キーロフ行進にも誘ったのだという。彼女によれば「まだ行き先が決まってもいないのに、旅行代金を前払いしてくれる気前のよい人」なのだそうだ。
今回キーロフで宿泊の世話をしてくれるジーマ氏夫妻も、リュドミラさんの会社を通じて5年ほど前に日本へ旅行をしたのがきっかけで意気投合したのだという。旅行の手配をした翌年にジーマ夫妻が今度は彼女をキーロフ十字架行進に誘い、5日間一緒に歩いて一層仲良くなった。リュドミラさんに限らずロシア人はとてもあけっぴろげで、親しくなるとトコトン仲良くなるところがある。
人づきあいが悪く、話し好きでもない私から見ると、彼女は天性の「営業ウーマン」で、有力顧客をたくさん持つやり手の経営者だ。リュドミラさんの会社は日本専門の旅行社ではあるが、もう一方では、セルゲイ氏やジーマ氏のようなお金持ちの顧客に誘いかけて、インドやチベット、中南米など世界各地に旅行グループを送り出している。
有力顧客をつかみ、客の要望に応じて世界中どこでも旅行を手配して、自らも添乗員として一緒に旅行してさらに客層を広げていくというのは旅行会社の一つの典型的なやり方なのだが、自分にはなかなかできない芸当だ。だから、ロシアに特化した専門旅行社という方向を選んだわけではあるが、リュドミラさんを見ていると、自分の足りないところばかり気付かされいつも反省させられる。
(つづく)
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