アジアハイウェイの源流を訪ねて（１４３)アランヤプラテート「紛争の中の平和」。

2010/12/24 - 2011/01/08

丘の上のアランヤプラテートの遺跡を見、その麓にある今現在建築中の壮麗な寺院を眺め、これからホテルに戻るのだが、ドバイバーは気を利かせてくれたのか、先刻来た道をそのままＵターンして戻るのではなく、大きく迂回してカンボジアとの国境地帯に沿って走る道路を走行してくれる。借り上げ料金３００Ｂ（約９００円）を貰うのに、アランの遺跡を往復しただけでは申し訳ないと思ったのか、サービス精神は旺盛だ。

日本にいるとこの地域での紛争は殆どニュースにはならないし、報道されたしても国際面の端っこに小さく出る位だから、アジアとかタイ等に関心を持っていない人に取っては、見過ごされてしまう。ましてやこの地域が過去数百年の間、アンコール王国が潰え去って以降の両国間、と言っても主にタイ側からの攻勢によるものだが、紛争地帯であることなど、知る日本人は限られている。

但し今は二国間の話し合いで、戦闘休止状態になっていて、国際ニュースになることもない。戦闘が始まれば、当然この道路も封鎖され、人の往来は出来なくなる筈だから、今こうしてツクツクで走れるということは、平和が保たれている証左に他ならない。だから今は運転手に任せ、国境地帯の長閑な田園風景を楽しむこともできる。

静かなものだ。平和な農村だ。道路の横に所々、コンクリで造られたシェルターや、監視所があるが、そこに屯している兵士ものんびりした様子だ。緊張感はどこにない。３８度線がどんなものか知らないが、戦争状態にない前線基地というのは案外こんなものかも知れない。そう言えば、「西部戦線異常なし」にも戦闘の始まる前の情景にこんな箇所もあったように覚えている。

ツクツクを止めて、彼等の写真を撮る訳にも行かず、走らせながらの写真撮影だから充分緊張感が伝わらないが、元々そうした緊張感はないのかも知れず、戦闘が開始されるとすれば、別の要素、バンコクなりプノンペンでの政治的思惑、ここでドンパチさせれば、国民の目がそっちに向かう、等々の、兵隊をコマとしての半ばゲーム的感覚の中での争いで、真に雌雄を決する領土の争奪戦でないことは間違いなく、周辺住民をそれを承知の上での、毎日の生活だと思われた。

「アランヤプラテート」（อรัญประเทศ）の元々の意味は「森の多く繁る州」であり、以前は深い森林、ジャングルに覆われていたかも知れないが、今は、それ等の森も切り払われて、広々した田園地帯に変わっていて、その名を示す森は所々に散在しているだけだが、こうした田園地帯を走行すること約１時間、戦争の無い、平和の有難さを感ずることができた。

エリア アランヤプラテート(タイ)

• 旅行の満足度: 4.0

「アランヤプラテート」（อรัญประเทศ）の意味は「森の州」。今は森も少なく、田野となっている。

何年か置きに、間欠泉的に繰り返される戦闘も、今は平和な空気が流れている。

カンボジアとの国境に沿って、国道が続く。前方に見えるのがチェックポスト。この右手３−５キロ先はもうカンボジア領だ。

こうした茂みからいつ鉄砲の弾が飛び出すか分からないが、今はそうした心配もない。

道路には数キロ置きにこうした兵士のポストがあって、一応は備えをしている。

近くには中国人の墓地などあった。

お金がないとお墓も建てられない。

約２時間のアランの遺跡巡りを終え、町に戻る。さあ、いよいよこれからバンコクだ！