2011/06/11 - 2011/06/13
495位(同エリア559件中)
ちゃおさん
< 励まされ 朋の扶くる 八甲田 >
2−3年前より足腰の具合が悪くなり、去年1年はとうとう100名山は一座も登ることができなかった。近くの神経外科医に診てもらったところ「脊柱管狭窄症」という、背骨の病気で、山登りとか、過酷な肉体運動を続けていると、こうした病気になると言われた。脊髄の骨の間隔が狭まってきて、神経を圧迫し、その神経作用によって下肢の痺れ、筋力の衰え、関節痛などの症状を呈するとのことである。酷い場合は、骨を削って間隔を広げる手術をするとのことであるが、当方の場合はそこまでの悪化はなく、血液をさらさらにする薬を飲んで様子を見ることになった。
血液をさらさらにする薬は、以前兄が肩が上がらなくなり、次いで軽い脳梗塞様の症状になり、数年前から服用していたが、その兄も去年入浴中に脳梗塞を起こし、73歳で亡くなっているが、その血液をさらさらにする薬と、脊柱管狭窄との間にどんな関係があるのか理解できなかったが、まあ、25年も付き合っている医者だから、自分のことは良く知っているだろうと、言われるままに薬を飲み続けていた。
その薬効があったのかどうなのか、痺れ、筋肉痛なども薄れてきて、この春先辺りから近くの高尾山等歩けるようになってきたが、まだ十分とは言えない。殊、5月の連休には無謀にもバリ島の1700mの山「バトゥ−ル山」を挑戦したが、下山時にはもう殆ど廃人の状態で下り降りた。
そうした経歴があるから、この八甲田の主峰「大岳」を下の避難小屋から眺めた時、到底挑戦できる山ではないと、自身聞かせていたが、同行のリーダー鳥さんの、真摯な眼差しに背中を押され、大きな不安の中に頂上に向け一歩を踏み出したのだった。凡そ200m程の雪原は無事に通過し、後は頂上に向かって200m程の木道を登るだけだ。漸く頂上の平坦部が見えてきた。先に行った仲間の姿も見える。もう後10m。
「ふー」。100名山73座目の喜びよりも何よりも、漸く登りきった、という安堵感、もうこれ以上苦しまなくて済む、との達成感だった。
凡そ300坪ほどの平坦部には当方同行の6人以外にも数人の登山者がいて、平坦部の四周を行ったり来たりして、各方向の山並みを眺め、写真に写している。今、たまたま雲も少なく、かなり遠方まで見渡せる。東の方向、円錐形の、如何にも火山の山を思わせる山が3つ、4つ並んで順繰りに低く落ちて行く。この小さな富士山に似た類似型の山が切れた辺りが、明治の末、陸軍青森連隊が雪中行軍の際に猛吹雪に巻き込まれ200数十名の凍死者を出した三本木の辺りだ。計画が無謀だったとは思えないが、今の福島原発同様、行軍立案者にとっては、青森測候所の記録破りとなる大寒波が襲ってくるとは想定外だったに違いない。
旅順の203高地で2万数千人の将兵の命が失われたことを思えば、この雪中行軍で失われた命200数余名は、数の内にも入らなかったであろうが、戦後、この遭難事故を取り上げ、世の人に知らしめたのは山岳小説で有名な、且つ自身も測候所職員でもあった新田次郎氏の小説であり、後、映画にもなった。新田次郎さんは優れた小説家であると同時に経験豊富は山岳登山家でもあり、日本各地の山を駆け巡ってはいるが、この「八甲田山死の彷徨」は彼の代表作の一つでもあり、他にも白馬に大きな石版でできた方向版を山頂まで持ち上げた「強力伝」、K2登頂の「孤高の人」、毎日新聞に長らく連載された「アラスカ物語」、等々数多くの山岳小説を世に出している。それら小説を読み、登山により親しみを持った日本人はかなりの数いるであろう。
山頂での10数分は瞬く間に過ぎ、皆で記念の集合写真を撮り、それぞれそれぞれの場所で感慨にふけり、当方のみ先に下山を開始する。それを見た鳥さん、すかさず追いかけてきて、下山時の雪渓が一番危険だ。足を滑らせると下まで滑り落ちて、どんな怪我をするかも知れない、と又先に立って、ステップ上の窪みを作ってくれて、下降しやすくしてくれる。頭をどんなに下げても感謝仕切れない。こうした知人を身近に持って本当に幸せだと思った。
1時少し前、無事に大岳山頂から避難小屋まで戻り降り、少し遅い昼食とする。そこで取り出しのが、去年のお正月フランスへ旅行した際にドゴール空港で買ってきたボルドーの赤ワインで、当方、こんな状態で自分自身では山に持って来れず、同行のスーさんに持ってきてもらったものだが、ここで無事に100名山登頂を祝し、皆で乾杯する。皆さん、どうも有難う御座いました!
< 残雪を 踏んで掛け声 八甲田 >
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