2010/03/18 - 2010/03/18
2475位(同エリア2887件中)
きっちーさん
初恋は、たいていの人にとって、挫折し頓挫し、かなわなかった恋かも知れません。
かくいう自分も、中学卒業で離れてしまうまで、片思いで通した人がおりました。
いっしょに登下校したり、私だけが呼んでいた子どもっぽいあだ名を、あたり前に受けとめてくれ、どうしようもなく馬鹿なことを言い合った仲。
友達も多く、たぶん魅了されていたのは、私だけではなかったと思います。
でも、まわりを楽しませる機転のきいた明るい性格に、隠された影のように、その家庭が葛藤を抱えていたのを知っていました。
両親との確執から、不必要に自分を傷つけ、高校へあがってすぐ家出していたのを、ずいぶんあとに聞かされました。
進学先がバラバラになって、とりまく環境も変わってしまうと、あの人のそばを離れた自分は価値のない人間だと、鬱っぽく落ち込んでいました。
家出の話を聞かされた時、相手が想像以上にキツイ状況にいた事を、ちゃんと気づいていたらと、どんだけ思ったか知れません。
最後には、『北海道へ行く』というハガキを寄越したまま、いまはどうしているのかも分かりません。
もしかしたら、他のクラスメイトみたいに、新しい家族もできて、仕事や居場所を持って、フツーに暮らしてるかも。
あの人を傷つけた家庭とは、ちがう世界を作ってほしいと、思います。
フランツ・カフカ原作、スティーブン・バーコフ演出『変身』――。
この舞台を初めて観たのは、まさにその初恋相手との、分岐路に立っていた頃です。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル 徒歩
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-
先日、思いがけず下北沢で『東京ループ』というお芝居を観る機会を頂きまして。
(『下北沢♪雨の午後は、芝居と猫カフェと頑固オヤジ〜前編〜』http://4travel.jp/traveler/need/album/10434051/)
久しぶりの舞台劇が面白かったもんですから、中学から高校へあがった時期に衝撃を受けた、バーコフ演出の舞台が記憶に甦りました。
「もう、観る機会はないよな。DVDにでもなってないカナ〜?」
と、ネット検索したところ・・。
うおっ?!
一週間後に、やるってよ!!
なんと、18年ぶりの公演だそうで・・。
はあ〜。
そんなになっちゃうのか〜。
そっちのが、こええよな(笑)。
グレゴール役は、宮本亜門じゃなくてセカチュウで「だれかたすけてくださああいっ!」って、叫んでた人が主役・・。
う〜ん。
学生イメージが、強すぎ。
ちょっと微妙だけど、行ってみっか!
そんなわけで、eチケットを押さえます。
直前だし、もうソールドアウトかと思いましたが、公演期間が長いためか、あっさり取れちゃいました。
数日続いた、お天気。寒くて雨降ってて、下手すりゃ雪まで登場しちゃってた春の嵐も、すっきり花粉症日和。
5年にいっぺん訪れるかどうかもアヤシイ、銀座へやって来ました! -
堕落した性格ですから、肩がこるような高級で洗練された街は、芯から苦手です(泣)。
しかし、なおあまりある好奇心に負けるのも、毎度のコト。
アクセス・マップを手に銀座のど真ん中(たぶん)、『ル・テアトル銀座』へ到着です。
席はチョイと、うしろの方。
ま、ギリギリで取れただけでラッキーじゃ。
つか、意外とせまい箱だの。
もっと、だだっ広いステージかと思ったよ。←完全ライブ感覚
いそいそと、着席します。
上演30分前は、このようにガラガラですが、始まる前には空席はほとんどナシの満員御礼。
びっくりしたのは、お客さんの9割女性!
いや普段、演劇なんてめったに行かないし。
映画だったら、のこのこひとりで行っちゃいますけど、映画は女/男6:4くらいですし。
はあ〜。
すごいもんだな。
セカチュウの彼、目当てかな? -
18年前観たのは、バーコフ演出のによる、オスカー・ワイルド原作『サロメ』、フランツ・カフカ原作『審判』『変身』の3本。
パントマイムをベースに、能にインスパイアされたという、スローで幻想的な空間描写と、小道具を身体表現で具現化してみせる驚愕の演出が、頭に焼きついています。
とくに好きだったのは、『サロメ』。
サロメが言いつのる預言者ヨカナーンへの、激しくも詩的な慕情の発露が、舞台に落ちるピアノの旋律を従えて、やや女性差別的なストーリーなのに、美しく感じました。
亜門ちゃんの『変身』は、あの鳥肌モノの蜘蛛っぽい動きに、感動(笑)。
「役者だ!あんた役者だよ〜!」
と喝采しました。
さて、今回は・・・?
時間が来ると、照明が落ち、つかの間の溜めもなく、いきなり幕が上がります。
不条理小説と呼ばれる、カフカの『変身』は、主人公セールスマンのグレゴール・ザムザが、ある朝不安な夢から目を覚ますと、ベッドの中で大きな虫に変わっていることに気づく・・・なんて、ホントに不条理な設定から物語が始まります。
観た感じ、亜門ちゃんが演じた以前の舞台と違いはナイよう?
両親と妹を養い、家計を一手に担うグレゴールですが、虫の姿になってしまったあとは、意思の疎通も出来ず、家族には忌み嫌われ、孤独に部屋に引きこもります。
彼を背負うになった家族は、面影のなくなったグレゴールとの磨り減るような対峙に揺らぎ、肯定と否定のなかで、ついに・・。 -
ザムザ夫人の、心境の変化が唐突なのと、ザムザ氏のキャラが中途半端なのと、グレゴールの昆虫スタイルが器用に表現されすぎてて、ちょっと・・・(笑)。
あと、客席のあいだ狭過ぎ。
足がイタイよ。エコノミ症。
映画館のほうが、全然ゆったりしてる〜。
集中できない。
やっぱ、いっちゃん最初に観た舞台、亜門ちゃん印象が強いですね。
「満足」まではいかなかったですが、まあまあ楽しめました。
観終わったあと、しばし、
「家族って、なんだろうなあ」
と思いました。
血のつながりじゃないのは、絶対間違いないと思う。
じつの家族でも、隔絶したように分かり合えない部分ってあるし。
逆に、血縁関係がなくても、情が通えば「家族」になっていける。
そもそも、夫婦って単位だって、もとは他人だし。
壊れた家族を含めて、「家族」にはいろんな形があっていいのに、「理想の家族」像に囚われ過ぎて、自分を殺してまであわせようとするのは、どこかコワい。
自分を取り巻く小さな集団の価値観が、必ずしも世の中のすべてでない事を、中高生時代にあの人が知ったなら、あんなに物理的に自分を改造しなくて、済んだかも、と。
知っていたとしても、子どもが持つ底抜けの愛情ゆえに、やっぱり傷ついたのかも知れない。
「そばにいたのに、無力だな・・」
カフカの物語を終えて、そんな初恋の思い出が去来し、苦しくなりました。
吐き出されるように、劇場を出ると、日が傾き始めた銀座の街は、巨大な歩行者天国になっています。 -
せっかく都心部へ来たので(いつも用事を詰め込む)、メル友のお爺ちゃんとお茶する約束と、先日めでたく完成した「見返り雀」根付(通称みかちゃん)の、組紐をオーダーしに、お店に向かいます。
お店は、ただいま展覧会開催中で、撮影がびみょーな為、写真に困ったときの狐ちゃん&みかちゃんで(笑)。 -
普段着は、和装でなくアオザイなので(嘘です)、根付のみかちゃんは愛用のウォレットチェーンに装着したいのですが、狐ちゃんと違いピッタリの組紐が見つからず〜(汗)。
代用で荒縄を使用しておりましたが、「ちゃんとしたのをつけてあげたい!」っつー、親バカ心理でございます。 -
『変身』のパンフを抱えたまま、「コンニチハー!」と、お店に飛び込むと、そこには・・・!!
狐ちゃんの、ファイヤー宝珠(←写真の)を製作してくれた、高知在住の根付作家Mさんがっ!
ギャーv
ダ、ダメなんすよ〜v
この人、顔が大好きvv
福福しいっ。
つか、へんなフェロモン出てますよ。
メロメロですよ。
半径1メートル圏内で、ミーハーの血をたぎらせる超電波系職人、Mさん。
ファイヤー宝珠を作ってもろうた時も、イベントの本にサインもらって、ツーショットで写真撮ってもらってマス。
・・・あと、握手してほしい・・・。
そう狙っていたのですが、メル友お爺ちゃんと、ちょこっと茶をしているうちに、逃げられ・・イヤ、帰られてしまいまシタ!
無念!! -
「くう〜っ!なま握手が・・!!高知までは行けない〜っ」
「来月あたり、お仕事でまた見えられますよ」
もだえていたら、お店の人に笑われ半分なぐさめられました。
なんでしょうね(笑)。
理想の男性像とか、そんなんじゃ全然ないし。
あえていうなら、鼻先のニンジンとかマタタビ?
根付作家さんでも、空観さんだと直接お話させていただくだけで、じゅうぶん恐れ多く光栄なのですが。
Mさんはそこはかとなく、追っかけゴコロをくすぐる要素が・・。
やっぱ、超電波系?←失礼な -
人は日々、変わっていくもの。
Mさんストーカー気味の、オイラのように退化しちゃマズイですけど(笑)。
なにも出来ずに、ただ成り行きを傍観してた。
真剣に考えても、まともな解決策を見出せそうもない。
あの頃、とことんガキだったけど、それなりにキタナイ大人になれば、昔よかいろんな選択肢を、今は考えられます。
舞台劇『変身』のグレゴールだって、虫という殻に閉じこもってしまったけど、本当はもっとちがう選択が、いくつもあったと思う。
同じ舞台を観て、あの頃ほど感動が湧かないのは、主人公と同じように、ただ襲いかかった不条理に、我が身を嘆いて状況に流されながら、どこかで安住してた部分が、少し変わったのかと感じます。
スティーブン・バーコフが描く、2010年の『変身』は、「可能性」の物語だったのかも知れません。
パンドラの箱が象徴する、寓話みたいに。
暗い話に囲まれていても、そこに絶望を見るか、可能性を見るかは、カレイドスコープの角度を少し変える程度の話だと、思ってほしい。
そして、ささやかながら力になれるなら、私がもう、グルグル回してやります。そんなもん!
春の卒業シーズン。
あの無力さにさいなまれた「失敗」は、二度とくり返さない。
物理的な別れの季節に、カフカの「変身」は、どこか切ない思い出とリンクしていました。
さて、ここまでのところで、いつも見に来て頂いている皆様に、お詫びを!
なかなか手が遅くて、中国旅行記が進みませんで、あいすみまちぇん〜っ(泣)。
こないな感じで、完全にわき道にそれながらも、地道に進めて行きますんで・・。
どうぞ、ご容赦を!
懲りずに、たまに覗いて下さると幸いです。
今回は、これにて!
みかちゃん&狐ちゃんをニヤニヤ撮影会している、きっちーでした!
(別の世界へ行ってしまえ)
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この旅行記へのコメント (3)
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- ジェームズ・ボンドさん 2010/03/17 00:12:18
- へんしーん
- 変身と言えば仮面ライダーかな。
カフカの変身は、何度か呼んでます。
その時の、周囲の環境によって読後の感想が違ってきます。
最期に読んだのが数年前、穴熊の様な生活中。
「変身」と「2001年宇宙の旅」を続けて読んだら気分は真っ暗。
ちなみに、銀行両替機で手持ちのお金を二千円札に両替して使うのがマイブーム。
二千円札を出した時の相手の反応は、なんとなく「変身」気分ですよ。
- きっちーさん からの返信 2010/03/17 10:54:06
- 二千円札!
- 二千円札、集めてます(笑)。
財布の中に、3枚入ってますよ♪
「いつか価値が出るかも〜v」と、ゼッタイ使わないように仕切りを別にしてストックしてるんですけど、「あ!やべ、お金足りなかった!!」という時に、泣く泣く使ってます。←バカ
コンビニのATMでたまに出てくると、しばらくそのATMで無意味に下したりします。
だから、喜んでもらってあげますよ(笑)。←オチ
-
- ジェームズ・ボンドさん 2010/03/17 00:11:40
- へんしーん
- 変身と言えば仮面ライダーかな。
カフカの変身は、何度か呼んでます。
その時の、周囲の環境によって読後の感想が違ってきます。
最期に読んだのが数年前、穴熊の様な生活中。
「変身」と「2001年宇宙の旅」を続けて読んだら気分は真っ暗。
ちなみに、銀行両替機で手持ちのお金を二千円札に両替して使うのがマイブーム。
二千円札を出した時の相手の反応は、なんとなく「変身」気分ですよ。
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