2010/02/07 - 2010/02/07
268位(同エリア351件中)
まみさん
ひょっとすると、もうすっかり梅の季節でしょうか、東京は。
セツブンソウが撮りたくて初めて訪れてみた国立科学博物館附属・自然教育園。
地図を見て、敷地が妙にえぐれていると思ったら、隣接するのは、かのアール・デコの邸宅で有名な東京都庭園美術館でした。
友人に触発されて美術館めぐりにハマっていたとき、庭園美術館は何度か訪れましたが、その当時は逆に自然教育園のようなところには全く興味がなかったので、この2つが隣接しているなんて、ついぞ知りませんでした。
折しも庭園美術館では、19世紀のイタリア絵画展が開催中です。
でも、マッキアイオーリなんて人は知らないな。
なんて思っていたのですが、公式サイトを調べてみたら、マッキアイオーリとは、19世紀半ば、フランスのバルビゾン派に影響を受け、印象派に先駆けて対象物に当たる自然の光を探求し、同時にイタリア統一運動の激動の時代にふさわしい絵画を求めて、トスカーナ地方の田舎風景やそこに生きる人々の姿をターゲットに、叙情的に、だけど当時のアカデミズムに反抗して革新的な絵画技術を駆使した画家グループのことでした。
イタリアの印象派とサブタイトルがつくのも納得です。
昔の私なら真っ先に美術展の方に飛びついたでしょう。
しかし今の私は、庭園美術館なら庭園散策ができるかも、というところからそそられました。
でもあくまで隣の自然教育園でセツブンソウを撮るのが第一目的で、私の心を一番捉えのたは自然教育園に変わりありませんでした。
ただ、時間があったら、せっかくだから、庭園美術館の庭園散策もよさそうです。
もちろん写真が撮れるから@
そして、その後についでに美術展、という順番になってしまいました。
自然教育園は15時前には回り終えたので、庭園美術館と庭園散策する時間はたっぷりありました。
庭園では、梅が紅白ともすっかり見頃になっていて、庭に彩りを添えていました。
これは嬉しい誤算でした。
梅の季節はこれからだと思っていたのに、東京はもうすっかり梅の季節なのでしょうか。
惜しいことに、15時では、絵になる日本庭園の方はすっかり日陰になってしまっていました。
せっかくの白梅咲き乱れる日本庭園が、雪景色の色あせた写真のようになってしまいました。
マッキアイオーリや印象派が追い求めた外光は、写真では必須です。
東京都庭園美術館公式サイト
http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html
イタリアの印象派マッキアイオーリ展の公式サイト
http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html
庭園マップ
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/index.html
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隣接のミュージーアムショップのゲート前の花壇のシクラメン
自然教育園に行く前に撮りました。
身近すぎてありふれた花ですが、小ぶりな原種シクラメン(あるいはそれに近いガーデンシクラメン)を見てから、シクラメンを見直しました。
初めて原種シクラメンを見たときの写真
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/17378715/
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/17378716/
関連の旅行記
「今年も秋バラめざして神代植物公園(5)エピローグはほっとひと息つける花たちで」(2009年10月18日)
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10390576/
「シクラメン/花言葉:内気、はにかみ、嫉妬
<エピソードといわれ>
原産地はヨーロッパや地中海沿岸です。シチリア島の野豚が、この花の地下茎を掘って食べるので、英語では「豚のパン」と呼ばれています。日本へやってきたのは明治時代。当時は、パンという言葉がわかりにくかったため、パンに替わるものということで、「ブタノマンジュウ」と呼ばれていたそうです。そういわれてみれば、マンジュウに見えなくもありません。
この地下茎は、古代ローマではヘビのかみ傷を治す力があるといわれ、御守りとして各家庭の庭に植えられていたそうです。また葉の形が耳に似ているので、耳の病気に効くとか、お産が楽になるといった話もあったようです。
購入の際のポイントは、葉が生き生きとして、緑色の濃いものを選んでください。好きな色の花を選んで、リボンをかければ、どんな花束にも負けません。しかし、花言葉は『嫉妬』。誤解を招かない相手を選んで、贈りたいものです。
また花が炎を連想させることから、新築祝いには不向きです。
<ひとくちメモ>
別名のカガリビバナは、そり返った花弁の形がかがり火の炎のように見えるからといわれます。牧野富太郎博士が命名したといわれています。
(「花ことば花贈り」(濱田豊・監修/池田書店)より) -
隣接のミュージーアムショップ前の花壇のクリスマスローズ
これも自然教育園に行く前に撮りました。
クリスマスローズは下向きの花が多いので、こんなによく日が当たっていると花が日陰になってしまい、たくさん咲いていたのに被写体向きの花はあまりありませんでした。
「クリスマスローズ/花言葉:私の心を慰めて、追憶
<エピソードといわれ>
一重咲きのバラにも似た、白い花です。花の名は、花がクリスマスの頃に咲くことからつけられました。
イエス・キリストが生誕した時、牛飼いがみんなでお祝いをもってかけつけました。ある貧しい娘は、花を捧げようと思いましたが、雪ばかりの野原には花など咲いていません。途方にくれていたら、天使が舞い降りてきて雪の下から白い花を探し出してくれました。それがクリスマスローズだったとのこと。
学名のヘレボルスは、ギリシャ語の「ヘレイン」(死に至らしめる)と「ボーラ」(食べ物)からできた語。古代のヨーロッパでは、この花の香りは病人から悪臭を除くとされ、ギリシャでは狂人を正気に戻すとか、憂鬱を追い払うとか、いわれていました。
そんなところから、『私の心を慰めて』という花言葉が生まれたのかもしれません。
根に毒があるせいか、あまりよいイメージはありませんが、この草の毒は少量なら刺激剤にもなるとされ、悪いことばかりでもありません。
<ひとくちメモ>
この花には毒性があります。反面、薬効もありますが、神経質になる必要はありません。市販されているクリスマスローズの仲間には、花色の豊かなレンテンローズもあります。」
(「花ことば花贈り」(濱田豊・監修/池田書店)より) -
おしべを見ると、まだ若いクリスマスローズかな
めしべの朱色が艶やかです。
隣接のミュージーアムショップ前の花壇にて。 -
むむむっ、なんの花かしら?
しわしわな花びらがキュートです。
こんなに天気が良いと、紫を撮るのが苦手な私のPowerShot SX 200 ISでも、紫がきれいに出ました。
隣接のミュージーアムショップ前の花壇にて。
ここまでが自然教育園に行く前に撮った写真です。 -
自然教育園散策を終えて、15時すぎ、東京都庭園美術館に入園する
庭の散策だけだと確か200円?
でも、美術展に入る人はサービスですって。
ただし、美術展の入場料は大人1,000円。
閉館は18時なので、明るいうちに先に庭園散策をすることにしました。
芝生公園から日本庭園の池回りをめぐり、それからまた芝生広場に戻って西洋庭園をざっと回りました。
公式サイトには、花木を紹介したマップもあります。
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/index.html -
旧・朝香宮邸の庭園美術館
アール・デコの建物なので、外見はシンプルです。四角っぽいです。
私の好みは、アール・デコよりアール・ヌーヴォーですねぇ。
ただ、比べた場合の話であり、アール・デコの傑作はそれはそれでステキだと思える作品が多いです。
ちなみに、宝飾史では、アール・デコはめっっっちゃくちゃ大好きです@
だってプラチナが普及し始めて、ものすごぉぉぉく精巧なデザインが登場する時代ですもの。
「東京都庭園美術館は 朝香宮(あさかのみや)邸として1933年(昭和8年)に建てられた建物を、そのまま美術館として公開したものです。戦後の一時期、外務大臣・首相公邸、国の迎賓館などとして使われてきましたが、建設から半世紀後の1983年(昭和58年)10月1日、美術館として新しく生まれかわりました。
この建物は1920年代から1930年代にかけてヨーロッパの装飾美術を席巻したアール・デコ様式を 現在に伝えるものです。フランス人デザイナーが、主要部分を設計、内部装飾もフランスをはじめとする 外国から輸入されたものが多用されています。また基本設計と内装の一部は宮内省内匠寮(たくみりょう)の建築家が担当し、アール・デコ様式に日本独特の感性を付け加えています。 当館は従来の美術館とは異なり、建物自体が美術品といえます。そして、作品とその観賞空間との間に 交感が生まれるような、新しい美術鑑賞の在り方を提案しています。美術館は広大な緑溢れる庭園に囲まれ、自然と建物と美術作品があわせて楽しめる環境に恵まれ、そこに庭園美術館の名も由来しています。」
(公式サイトより引用)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/museum/index.html -
芝生公園の入口では、逆光に映えるピーク過ぎのアツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)
太陽の光の効果って、さすが! -
芝生公園を飾る彫刻「住まい」
そんなタイトルだとは思いませんでした。ちょっと寒々しい!?
キュビズムだから仕方がないですか(笑)。
解説は、公式サイトより引用。
「作家名:オシップ・ザッキン(OSSIP ZADKINE)
制作年:1963年/素材:ブロンズ
〈作家解説〉
ロシア生まれ(1890-1967)。
早くからパリに出て、20世紀初頭のキュビスムなど前衛的な芸術運動に参加。アフリカ彫刻など原始美術の影響も受けながら、彫刻を抽象的な形態表現まで突き詰め、現代彫刻への道を拓いた。日本との関係も深く、1920年代・30年代には二科会などに出品をしている。
本作品《住まい》はパリ市から贈られたもので、台座には下記のように記されたプレートがある。
「東京都とパリ市の友好都市協定は1982年7月14日、鈴木俊一東京都知事及びジャック・シラク・パリ市長により調印された。「住まい」と題するこの彫刻は、1963年、ザッキンが制作したものであり、両都市を結ぶ友好の絆の象徴としてパリ市から東京都に寄贈されたものである。1989年10月」」
(公式サイトの「園内の彫刻ガイド」より)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/sclupe.html -
エサに首を伸ばそうとじれてるキリンの後姿@
これも芝生公園を飾る彫刻の一つです。作品名は、そのまんま「キリン」。
「作家名:ウォルター・ロータン (WALTER ROTAN)
制作年:1939年/素材:ブロンズ、黒檀台座付き
〈作家解説〉
アメリカ人(1912年生まれ)。
メリーランド・インスティテュート・オブ・ファイン・アーツとペンシルベニア・アカデミー・オブ・ファイン・アーツで学ぶ。ロータンの作品は、メトロポリタン美術館をはじめ、アメリカ国内の美術館で開催された展覧会で展示されている。」
(公式サイトの「園内の彫刻ガイド」より)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/sclupe.html -
メスライオンかと思ったら、ヒョウでした@
色がない場合は、どうやって見分けるの?
これも芝生公園を飾る彫刻の一つです。作品名は、「座る豹」。
「作家名:エドゥアール・サンド(EDOUARD M.SANDOZ)
制作年:1930年/素材:ブロンズ
〈作家解説〉
スイス生まれ(1881-1971)。
アール・デコの時代の代表的彫刻家。特に1920年代に動物彫刻で高い評価を得た。フランスやスイスを中心に、公のモニュメントを多数制作している。
本作品は、東京都庭園美術館開催の「エドゥアール・サンド彫刻展」(1995年12月〜1996年2月)を記念して、エドゥアール・エ・モーリス・サンド財団の協力により、ローザンヌ(スイス)のサンド邸の庭に置かれている《座る豹》を原型から1997年に鋳造し、設置された。」
(公式サイトの「園内の彫刻ガイド」より)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/sclupe.html -
日本庭園にある茶室「光華」
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池を覗き込む白梅と池にかかる石橋
太陽の光が足らないので、美しい白梅も、白髪に見えちゃう(泣)。 -
茶室を振り返って
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いまにも泣きそうな白梅
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ぽつぽつと咲く白梅と茶室
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あれっ、近寄って見ると、石橋ではなかったみたい@
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日本庭園にぴったりな灯りと池にかかる橋
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池のそばでナイショ話する梅と石灯篭のでこぼこカップル
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邸宅の庭につづく出口の前にはシカの彫刻
ただし、ここは立ち入り禁止になっていました。
また、ここにも見事な梅があって、メジロが2羽、たわむれているのが見えたのですが、残念! 日陰で写真を撮っても真っ暗になりそうでしたので、あきらめました。
梅の季節にぜひメジロの写真を撮りたいものです。
いつかチャンスが来るかしら。 -
芝生公園に戻り、雪の残る芝生と彫刻
作品名は「風」。
「作家名:安田 侃(やすだ かん)
制作年:2000年/素材:白大理石
〈作家解説〉
1945年、北海道美唄市生まれ。
東京芸術大学大学院修了。1970年にイタリア政府招聘留学生としてイタリアへ渡る。大理石の産地として有名なトスカーナ地方のピエトロサンタを拠点に、大理石とブロンズによる彫刻の創作活動を展開している。ミラノ、イギリスのヨークシャー彫刻公園、ロンドン、パリ、フィレンツェなどの野外彫刻展で世界的に高い評価を受ける。自然や都市空間のなかに違和感なく溶け込んでしまう魅力をもった作品群は、ヨーロッパの広場を飾るほか、国内でも東京国際フォーラム、アルテピアッツァ美唄など各地に設置されている。本作品は、東京都庭園美術館開催の「安田侃 野外彫刻展」(2001年4月〜2002年3月)を記念して設置された。」
(公式サイトの「園内の彫刻ガイド」より)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/sclupe.html -
「ねぇ、これからどうしよう?」「うーん、どうしようか」
作品名:ピルタイとパシュフル
作品名は人名でしょうか。
公式サイトに他の作品ほど詳しい解説はありませんでした。
「作家名:ボアズ・バーディア(Boaz Vaadia)
制作年:1992年
〈作家解説〉
イスラエル、1952年生まれ。」
(公式サイトの「園内の彫刻ガイド」より)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/garden/sclupe.html -
芝生公園の雪のような白梅
この庭園では白梅の方が花が豊富です。
日本庭園にも紅梅があるのですが、花は少なくて、上手く撮れませんでした。
それに日陰でも白い花は、露出をオーバー気味にすれば花色が汚くならないので撮りやすかったのですが、紅梅ではそういうわけにはいきませんでしたから。 -
西洋庭園の紅白のシクラメン@
西洋庭園はまだ日がたっぷり射していました。
ただ、日本庭園の方がずっと絵になりますねぇ。 -
西洋庭園の一列に並んで咲いていた紅梅
紅梅は白梅ほど花がたくさんではなかったので、どのアングルで撮るか迷いました。 -
暮れなずむ日に照らされた西洋庭園
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たっぷり日を受けて輝くハボタンとシクラメン
「ハボタン/花言葉:利益、祝福
<エピソードといわれ>
ハボタンは、江戸時代に欧州から渡来し、当時はオランダバナの名前で呼ばれていました。
ハナキャベツとも呼ばれるようにキャベツの仲間で、花ではありません。
ただ、色彩のとぼしくなる季節でも赤や白に色づく、明るい葉の色で彩ってくれる花のようにみえる貴重な植物です。
さまざまな品種があり、色も豊富です。ちりめん系(名古屋)、丸葉系(東京)、中間タイプ(大阪系)と、さらに葉の切り込みが深い、サンゴ系などに分けられます。
中国三国時代の戦術家、諸葛孔明は、行く先々の戦場で、キャベツを栽培しては、兵士の食料にしたという故事があります。
そんなところから『利益』という花言葉が生まれたようです。
それが後に改良されて、観賞用のハボタンになったといわれています。」
(「花ことば花贈り」(濱田豊・監修/池田書店)より) -
ハボタンとシクラメンが咲く西洋庭園の花壇
-
さて、邸宅に戻って、これから美術展に入りましょ!
わあ、入口に青銅の狛犬があります。この邸宅にこの組み合わせって、珍しいかも。
(いままで気に留めた覚えがありません@)
展示作品を眺めながら、久しぶりに見るアール・デコのこの邸宅の内装も楽しみました。
ただし残念ながら内部は当然のごとく、撮影禁止です。
もっとも、写真撮影OKの内部公開展が1年に1回あるようです。
今回、公式サイトをチェックして知りました。
※撮影OKの邸宅の内部公開展の2010年の予定
2010年3月25日(木)〜4月11日(日)午前10時〜午後6時(入館5時30分まで)
金曜日と土曜日のみ午後8時まで会館(ただし庭園は午後6時で閉園)
インフォメーションサイト
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/artdeco_2010/index.html -
邸宅の前のマッキアイオーリ展の看板
看板の絵は、シルヴェストロ・レーガの「母親」(1884年)です。
展示作品の中では、特に気に入った作品の一つです。
子供をふりむく母親の優しい眼差し、そして母親のドレスを踏んでいることも気付かずに熱心に落書きをしている子供の愛らしさ。
とても微笑ましいです。
この作品を見る限りでは、ナビ派などのアンテイミズム(親密派)を連想します。
マッキアイオーリ展は、正直言うと、期待とは違っていました。
公式サイトの説明から私が期待したのが的外れだったというわけです。
マッキアイオーリとは、1850年代から60年代にかけてフィレンツェを中心とするトスカーナ地方で活躍した、先鋭的な画家たちのグループの呼称だ、ということは理解して行きました。
ただ、「マッキア(斑点)」を使用した新たなスタイルで描いた、なんていうから、フランス印象派の点描のスーラやシニャックのような作品を期待してしまいました。
公式サイトで見られる作品は、そこまであからさまな点描でもなさそうというのはちゃんと分かっていたつもりでした。
でも、セガンティーニがこのグループに入るのかと勘違いしていました。
あまりなじみのないものを理解するためには、自分で知っていると思っているものを連想するのが近道です。
それでいくと、やはり、影響を受けたというバルビゾン派のイタリア版というかんじがしました。
あるいは印象派初期か、その前のクールベあたりの自然主義絵画。
展示作品のほとんどは、フランスよりは日差しが強く、日向と日陰の陰影がくっきりした、トスカーナ地方の田舎を詩的に描き出しています。
その背景に、ガリバルディやサルディーニャ王国率いるイタリア統一運動がある、なんて全然思えないほどです。
当時のイタリアは、外国人支配を脱し、かつての栄光を取り戻そうとする統一運動の機運が各地で高まっていたようですが、その熱き思いに応えるために、当時の正統派のアカデミーに反する絵画を求めたというわけでしょう。
そして題材も、歴史画や神話画や支配階層の肖像画といった、いままでアカデミーが奨励してきたようなものではなく、ごく身近な田舎に赴き、農村に生きるふつうの人々、むしろ身分の低い人々を描いた、という意味では、確かに革新的なのでしょう。
でも、目の前に次々繰り広げられた実際の絵は、現代の私たちからすると、いまや都市化で失われた郊外の美しい田園風景や、時の流れに取り残された、あるいは悠久の時の流れを感じさせるような自然に溶け込んだ人間の営みの世界でした。
なので、背景にイタリア統一運動や革新の魂があると解説されても、ピンと来ませんでした。
むしろ、イタリアは日本人にとって人気の観光地ですが、都市以外にもこういう日本人には知らない良いところがあることを紹介している、という視点で眺める方が納得できました。
描き出された田園風景や田舎は、いまのイタリアに全く残っていないというわけではないらしいので。
そして、ここ数年、海外旅行は東欧ばかりターゲットにしている私は、東欧旅行の魅力として挙げられる田舎めぐりを思い出しながら眺めていました。
同じヨーロッパの農村風景でも、確かにこれはイタリアだなぁ、東欧とは違うなぁと思いながら。 -
マッキアイオーリ展のチラシと東京都庭園美術館・自然教育園の半券
カラー印刷のチラシが2種類、A3サイズの2つ折り、となかなか贅沢です。
ただし、あいにくポストカードなど展示オリジナル・グッズは一切ありませんでした。
カタログはずっしりと重く、記述がしっかりとしたものでした。
展示会場では1枚1枚の絵にしっかり解説パネルがあって、非常に感心しました。
それがカタログにも全部掲載されていたのだろうと思います。
残念ながら、私の手には余ったので、買いませんでした。
鑑賞中に休憩がてら、カタログを手にして読みましたが、難しくて意味がよく分からないところもあって(苦笑)。
左の絵はフランチェスコ・ジョーリの「水運びの娘」(1891年)。
敢えて後姿を描いたこの作品は、私も気に入りました。
女性の顔は想像するしかない後姿、意外に感情を伝える後姿。そしてその視線の先には、たぶん暮れかけた太陽に照らされた豊かな大地。
いまではさほど珍しくない構図かもしれませんが、当時としては大胆な試みだったかもしれません。
右の絵はシルヴェストロ・レーガの「庭園での散歩」。
近くで見るとよく分かるのですが、女性たちや周辺の自然を描くタッチは粗いです。
アカデミズムがイタリア絵画界を席巻していた当時としては、これも冒険だったでしょう。
そのあたりも「イタリアの印象派」といわれるがゆえんかな。
女性たちの親密な様子、向かって左の女性より右の女性の方が年上っぽく、ちょっと意気消沈した様子の左の女性の相談にのったり、励ましたりしているようにも見えます。
そんなささやかな日常ドラマが伝わってくる絵画をイタリアで描き始めたのも、このグループの先駆的なところだったかもしれません。
<展覧会の構成>
第一章 カフェ・ミケランジェロのマッキアイオーリ
革新をめざす先駆的なアーティストがカフェに集うというパターンは、19世紀によく例がある気がします。たとえば、シャノワールやムーラン・ルージュ。
いや、あれはどちらもロートレックしか関係なくて、しかもカフェじゃなくてキャバレーでしたか(笑)。
第二章 マッキア(斑点)とリアリズム
どこがマッキア? と思ってしまったのですが、アカデミーに出すような作品に比べると、確かに細部をそんなに丁寧に手を入れず素早く仕上げることで、生き生きとした絵にしていたように思います。
第三章 光の画家たち
展示作品から、イタリアの強烈な太陽の存在が感じられました。白壁が光に照らされて黄土色にまで染まるような明るさは、南欧ならでこそ、と思いました。
第四章 1870年以後のマッキアイオーリ
イタリア統一運動が終わった後、カフェ・ミケランジェロに集まった人々は、それぞれの道を進み始めました、というかんじかな。
戦場での経験で現実社会を率直に表現するようになった、とありますが、飾らずに描くようになったというだけで、絵からは画家たちの悲惨な戦争体験は特に感じられませんでした。
むしろナビ派のようなアンテイミズム(親密派)を思い出させるテーマや題材の絵が多かったように思います。
第五章 トスカーナの自然主義者たち
初代のマッキアイオーリたちがイタリアではあまり理解されずに外国に移住したりしてグループが崩壊していく中、その影響を受けた若き世代も育ってきたようです。
あいにく、素人の私には第三章以降の絵の特徴差はあんまりわかりませんでしたけど(苦笑)。
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