2009/11/11 - 2009/11/12
17位(同エリア28件中)
極楽人さん
カサレス(Casares)。
地中海から10kmほど山側に入った、アンダルシアの小さな村です。
小高い山の頂上に中世の城跡と教会、その下の斜面に白い家々がびっしりと張り付いて、全体としてとても調和のとれた景観になっています。
村の名はローマ皇帝シーザー(カエサル)が近くの湯治場を使ったことに由来しているそうで、ずいぶん古くから人が住みついていたことになります。
日本では「カサーレス」とする本もあります。
遠方からの旅行者にとっては、ちょっと不便なところです。
村への起点となる海沿いの町エステポナ(Estepona)からのバスは、1日2往復のみ。一軒だけのペンションは開いているのかいないのか、情報も不足気味です。
『日帰り』するか『宿泊』するか。一応、どちらにも対応できるよう心づもりをして、とりあえず行ってみることにしました。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス タクシー
- 航空会社
- スイスインターナショナルエアラインズ
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-
アルへシラスから、エステポナを経由してカサレスに向かいます。
マラガ方面行きのバスは
午前中だけで 8:00,9:30,11:00 の三本あり、
11:00発はエステポナでカサレス行きのバスに接続します。
でも、一本早い 9:30 のバスを選びました。
この便だけが別会社(COMES社)の運行なので、Webではなかなか見つかりませんでした。
エステポナまでは約1時間、海岸はすこし離れていますが、海に沿って東へ走ります。 -
10:30、エステポナ到着。
バス駅はこの海岸通りを右に入ったところで、同じ乗り場からカサレス行きのバスが出ます。
駅の時刻表を確認すると、
・エステポナ発は 13:00,17:15 の2本。
・カサレス発は 08:00,16:00 の2本。
片道約40分の行程で、調べてきたとおりでした。 -
『日帰り』だと、13:00で行って16:00で帰る正味2時間コース。あまりに短い滞在になってしまいます。
それで、アルへシラス発を一本早い 9:30 のバスにしたのです。
ここからタクシーを使えば、11時過ぎにはカサレスに到着できます。数千円をケチる場面ではないでしょう。
とり合えず見通しはついたので、道路を一本隔てた海岸へ。夏場は人気の海水浴場だということです。 -
誰もいない海。
♪いまはもう秋・・・ ですね。
ソフトキャりーをバス駅に預けるつもりでしたが、コインロッカーすらありません。
持って動くしかないようです。 -
バス駅前で客待ちのタクシーをつかまえて、
「カサレスまでいくら?」と尋ねると、「ちょっと待って」とA4サイズの料金表を見せてくれました。
25.Xユーロ(詳細思い出せず)、明朗会計です。
タクシーは海と反対の方向に走り出し、20分ほど、ゆるい峠をいくつも上ったり下りたり。 -
そして突然、この景色が眼に飛び込んできました。
目を見張るような『絶景ポイント』。
何かのガイドブックに「旧道を辿ると(中略)絶景が見える」とありました。辿ってきた道がそれだったようです。
運転手さんが停車してくれたので、一枚だけパチリ。後でまた、ここに来なきゃ。
村へ入る道は写真を右方向へ進み、ヘアピンカーブで左に戻って下って行きます。 -
タクシーはここまで。
白一色の、カサレスの入口です。
このとき、もう『日帰り』路線は消え、泊まる気になっていました。荷物も持ったままですし・・・
結果からすると、バスで来た方が“安あがり"だったような。 -
小さな坂を上がったところに小さな広場が。
名前は大きい『スペイン広場』、村一番の繁華な一角です。
広場を囲んで、ペンションと、レストランと、教会と、いくつかのベンチにはお年寄りが日向ぼっこ。 -
村に一軒だけのペンションは、プラザ(PLAZA)。
「オーナーはギタリストで、公演旅行中は近くの店に鍵を預けてある」と、どなたかの旅行記に。
とり合えずドアをノック、でも反応はありません。
営業中か否か、満室か否か。二階の右端だけ窓が開いているように見えますが・・・
ドンドンやっていると、広場のおばさんが「鍵はあっち」と教えてくれました。このへんから、会話はすべて言葉ではなく“しぐさ”になります。 -
教えてくれたところは、広場への坂をすこし戻った[9]番地の表示があるお肉屋さん。
ここで鍵とパスポートを交換して、再びペンションへ戻ります。広場の皆さんも安心してくれました。
ところが鍵がなかなか開かず、また人が集まりだしました。ついにお巡りさんが仕切りだす状況に。
結局その鍵は使えず、お肉屋さんで別な鍵に換えてもらってようやく開錠しました。
全部自分のせいとは思っていませんが、たいへんお騒がせしました。 -
もらった鍵束には似たような鍵が3本。外と、部屋と、洗面所用です。見分けがつきにくくて・・・
なんとか入れた部屋は清潔で、暖色系にまとめられていました。割と心地よさそうです。
素泊まりで25ユーロ。
各階のバス・トイレは共同ですが、3Fには他に客がいないので独占使用となります。 -
大きな窓からはスペイン広場の周辺や、見上げれば古城まで見られます。
荷物を置いて、また外へ。
いいお天気ですが、急変しない保証はありません。
急いで、さっきの『絶景ポイント』まで戻ることにしました。 -
村の入口でいったん振り返ります。
ここは、逆光になっています。
『絶景ポイント』は、写真の左側へとぐるっと回り込んだ、隣の山の斜面です。
坂道は結構な距離と傾斜、タクシーで3分のところを20分かけて、ようやく到達しました。
汗と息切れの勝利です。 -
で、またこの景色。
車道の脇に設けられた歩行者スペースで、しばし堪能。
時おり通りかかる車から、観光客がカメラを抱えて出てきます。オーストリアのご夫婦、カナダのお母さんと娘さん。
村を背景に、お互いを撮り合いました。 -
いい形をしています。
欲を言えば、もう少し古くて汚れていた方がいいかな。綺麗すぎて、歴史や生活の匂いが弱いようにも感じます。
でもそれは観光客の勝手な言い分。村は人気の『保養地、別荘地』として今も“生きて”いて、分譲地などを売り込むためにはきれいに整備しておく必要があるようです。 -
同じような写真を何枚撮ったでしょう。
何十枚かもしれません。
撮影地点のすぐ後に『展望レストラン』がありますが、この時期は閉店していました。
村寄りのもう一軒は開いていましたが、この景観は望めません。 -
よく見ると自動車道路は、村のある小山をぐるりと一周する『一方通行』になっています。
村に入るときは南側を、出るときは北側を半周します。
「帰りのバスでもう一度絶景を」と思っても、もう見ることはできません。
村の入り口まで戻って、今後は北側の斜面につけられた道を進みます。 -
南斜面よりは、家の数がずっとまばらになっています。
-
でも、そのぶん崖の険しさが目を引きます。
平原の彼方には、風力発電のプロペラも見えます。
自然を、何も手を加えないで守る、技術の手を加えて守る。スペインは両方やっている『エコ大国』です。 -
山頂付近の白い家並みが、遠目には雪のようにも見て・・・
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北の斜面は、地味ですがなかなか味わい深い景観でした。
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再び、スペイン広場。
教会の横から、お城へ登る道が伸びています。 -
勾配の急なところは階段になり、10分も歩くと頂上へ到着です。
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案内板も、切符売り場もない城跡。
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♪小高い丘の城跡の・・・
お天気は "しとしとぴっちゃん"ではなく、快晴です。 -
古城の先には教会。
これは比較的新しそうです。 -
その横はきれいな墓地。
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村で、天国に一番近い場所なのでしょう。
それにしても、明るいお墓です。 -
裏手を覗くと、優に100mはありそうな切り立った崖。
この険しさは“ロンダ並み”です。 -
城壁のはるか向こうには、地中海。
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手前の丘には、一転、モダンなアパートらしき建物が。“新旧折衷”のギリギリのデザインで、分譲中の別荘でしょうか。
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村を見下ろすと、スペイン広場の横にペンションが見えました。
(中央の、陰になっている部分です。) -
広場へ下りて、今度は路地を散策します。
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漆喰で塗られた白い家並みは、少し歩くとすぐ階段で沢へ降りるか、お城への登り坂になって、長くは続きません。
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道が崖の方に膨らんで、ちょっとしたスペースになっているところがあります。車が通るとき、通行する人が避けるための場所でしょう。
崖を覗くと、こんな風景。
ここで、日本の青年に遭遇しました。
彼は『日帰りコース』を選んだようで、エステポナ13時発のバスで到着、16時のバスで帰るそうです。
2時間の滞在ではやはりきつく「絶景スポットは見られないかもしれない」と言います。それで、大きなリュックと紙袋を預かることにしました。
身軽になれば、あの峠まで走ってでも行けます。 -
青年の荷物を置きに一度ペンションへ戻り、また散策の続きを。
看板が出ているのは、村に一軒だけの2つ星ホテルです。
ここは日本で予約サイトを見つけましたが、値段はペンションの数倍もしたので敬遠しました。 -
ホテルの裏口に、こんなモノが。
坂と階段のしんどい上り下りが多いので、お客の需要があるのでしょう。 -
民家の入口の、きれいな階段。
-
ちょっとしたスペースには、花が飾られています。
小じんまりとはしていますが、この村の人々の清潔で平和な暮らしぶりを感じます。 -
それからしばらく、あちこちの露地を歩きました。
明日の朝食用にサンドイッチでも買いたかったのですが、八百屋さんとお菓子屋さんしか見当たりません。
仕方なくバナナと甘い菓子パン、それと“命の水”を買ってペンションに戻ります。 -
約束の4時少し前、ペンションで青年に荷物を渡して別れました。話す時間はあまりなかったけれど、カサレスの全景が十分見られた様なので安心しました。
そういえば、彼のカメラはアナログ一眼レフ、根っからの写真好きのようでした。
さて、村もひと通り見てまわりました。
『泊まる』と決めたけれど、何もない村で長い夜をどうしたものかと、思案しかねていました。
そんな時、ペンションのもう一人のお客が戻ってきました。なんと日本から来ている一人旅の女性でした。
驚いたことに、3日前から宿泊していると言います。
「何もないところが好き」だそうです。 -
到着時に見た2Fの窓は彼女の部屋でした。
すぐ上が私の部屋です。
3ヶ月の予定で欧州を周り、ついでに人生の道を見つけたい、と旅の動機。ちょうど1ヶ月目で、人恋しくなった時期だったのかもしれません。夕食をご一緒してくれました。
スペイン広場のレストラン。旅人同士の情報交換で始まりましたが、呑むほどに酔うほどに“オジサンの居酒屋談義”となって、アンダルシアの夜は更けてゆきました。
(写真がそのレストランですが、昼間にペンションの窓から見えるままに撮ったもので、下の方が写っていません。) -
翌朝、8時のバスで村を出ます。
その前に、彼女に薦められた「お城からの朝陽」を見ようと、古城へ登りました。
こういうのを見ながら、簡単には出ない『人生の答え』を探しているようです。
ひとり旅は、あまり長くなると"楽しさ"より"辛さ”が前に出てきます。孤独や疎外感に落ち込んだり、旅の意味を自問して虚しくなったり・・・ 「気分転換」のはずが、かえって悩みを深くすることさえあります。
人と話すのが一番のクスリですから、小さな出会いでも上手に活かして"おしゃべりな旅"を続けてほしいものです。残りの2ヶ月が彼女の『苦行』にならないよう、健闘を祈ります。 -
で、こちらは人の心配をするどころではなくなってしまいました。
7時半になっても、お肉屋さんが起きてこないのです。
表のドアをいくら叩いても叫んでも、ウンともスンとも反応がありません。
この時も、通りがかりのオバサンに助けてもらいました。ガラスが割れんばかりに戸を叩き、ののしり、それでようやく中から肉屋のおばさん。
大急ぎで料金を払い、パスポートを返してもらってバス停に向かうことになりました。 -
バス停はタクシーを降りた先、村の入口に近いところにBARを兼ねた駅舎があります。
何とか間に合って、とり合えずコルタード(コーヒー)を一杯。0.8ユーロでシャキッとします。 -
定刻の8時を少し過ぎて、バスが出発。
直前に乗り込む地元のお客が多くて、運転手さんがイライラしていました。
切符は運転席で、エステポナまで2.3ユーロ。 -
村のむこうから朝陽が昇りはじめました。
バスはやはり、北斜面の道を通って村を去ってゆきます。 -
陽の当たりはじめたゆるい丘を、いくつか上り下り・・・
-
村から見えた“風車の林”を通り過ぎます。
-
途中の村で何度か停車。
地元の人が数人ずつ乗り込んで来ます。
皆が紙幣で払うのでお釣りの小銭がなくなって、運転手さんのイライラが募ります。
「オーイ、だれか両替できないか!」
車内は朝から大騒ぎです。 -
頭にきた運転手さんに代わって、車内を取り仕切るのがこのおばあさん。
運転席のすぐ後から、大声で指示を連発します。
元はといえば、この人がカサレスで最後に乗ってきてバスの出発を遅らせたんですけれども・・・ -
そんなこんなで、45分でエスポテナに到着。
9:00発のマラガ行き始発バスに間に合いました。
次の目的地は、マラガ経由でコルドバです。(完)
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