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中国芸術の至宝、人類への遺産 敦煌莫高窟 <br /><br />敦煌莫高窟は、敦煌市から東南に25㎞離れた鳴沙山の東端の断崖にある。三危山と対峙する大泉河の西岸に、南北に1.6㎞にわたって600に近い窟が穿たれている。市街地を離れ、空港を左にみながらゴビのなかの真っ直ぐな道を走っていくと、草木ひとつない鳴沙山と三危山が迫る峡谷に、一筋の紐のように細長い小さなオアシスがみえてくる。右前方のポプラの繁る細い帯の向こうに、2段、3段に窟を穿たれた断崖が続く。「ここに!」と思わせるショッキングな出会いである。 <br /><br />莫高窟の芸術性の質量は、1日じっくり鑑賞しても味わい尽くせるものではない。写真は、高さ34.5mの大仏を収める第96窟。9層の楼閣は莫高窟のシンボルでもある。 <br /><br /> 莫高窟の開鑿は、現存する「重修莫高窟仏龕碑」(武周聖暦元年・唐代・698年)によると、前秦の366年(建元2年)である。清の地史学者徐松は『西域水道記』卷三に「重修莫高窟仏龕碑」を引いて、 <br /><br /> 「莫高窟は、その初めは秦(前秦)の建元二年、沙門楽&#20692;なるものあり、戒行清虚にして、熱心恬靜たり。嘗て錫を林野に杖き、行きて北の山に至るに、忽として金光を見る。状、千仏あり。その状、千仏にして(5字缺)窟として一龕を造る。次で法良禅師なるものあり、東より此に届り、又&#20692;師の窟の側に、更に即きて営建す。伽藍の起りは二僧に濫觴するなり。復、刺史建平公(北周の刺史建于義)、東陽王(北魏の王)あり、(7字缺)後、州の黎庶(庶民)を合せて造作し相仍ぬ。実に神秀の幽厳、霊奇の淨域なり。(中略)秦の建元二年より大周聖暦の辰(則天武后のころ。698年)に至る。楽&#20692;、法良はその宗を発し、建平、東陽はその迹を弘めたるなり。甲子を推すに四百他歳、窟室を計うるに一千餘龕。今は僧徒を置くを見る」 <br /><br /> と記されている。この地を訪れた僧・楽&#20692;が三危山に輝く夕日に千仏をみて、ここに一龕を築き、ついで東からきた法良禅師がその傍らに窟を営造したことに始まるというのである。ほかに352年または353年という説もあるが、いずれにしても、その開鑿は4世紀なかばである(この中国最初の仏教石窟・莫高窟の造窟は、五胡十六国のころの敦煌を中心とする河西回廊上の仏教の興隆を背景にまず周辺に波及し、酒泉の金塔寺石窟、文殊山石窟、張掖の馬蹄寺石窟、武威の天梯山石窟、さらに東の蘭州の炳霊寺石窟、天水の麦積山石窟、西ではトルファンのベゼクリク千仏洞の造窟へとそのうねりを伝えている。) <br /><br /> 莫高窟には、唐代にはすでに1000余りの窟龕があったといわれており、現在は、十六国、北魏、西魏、北周、隋、唐、五代、宋、西夏、元の10王朝の石窟など492窟が残されている。それぞれの時代の文化、生活を知るうえでの貴重な資料である上、その規模は、壁画総量45000㎡、彩色塑像2400体余、唐・宋の木造りの洞窟5座にわたり、世界最大の画廊、第一級の仏教芸術の宝庫となっている。 <br /><br /> また元代以降、歴史上から忘れ去られた莫高窟が(清代にも重修は行われたが)、その生命を取り戻すのは、清末の1900年、莫高窟の前に住んでいた王円&#31833;という道士によって、偶然「蔵経洞」(第17窟)が発見されたことがきっかけとなる。なかにいっぱいに積み上げられた5万件に登る古文書が、1907年から1925年の間にイギリスのスタイン、フランスのぺリオ、アメリカのウォーナーなどによって持ち出され、皮肉にも国外において注目を浴びて「敦煌学」を生んだ。その後、いわばゴビ灘のなかに放置されたまま風前の灯であった莫高窟は、辛うじて1943年に荒廃しきった莫高窟に赴いた常書鴻を中心とする現在の敦煌研究院の献身的、不屈の努力によって、一つひとつ補修され、環境の整備がなされて、今日の輝かしい世界遺産として蘇生したのである。 <br /><br /> ちなみに、敦煌石窟と総称する場合、最大の石窟である莫高窟(千仏洞)のほかに、西千仏洞、安西の楡林窟(万仏峡)を指す。このほか敦煌周辺には、安西の東千仏洞、粛北モンゴル族自治県の五個廟石窟などがある。 <br /><br />参考:中国旅行専門サイト―西部旅情  http://www.westpassion.com

シルクロード――敦煌編⑤

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2009/07 - 2009/07

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西部旅情

西部旅情さん

中国芸術の至宝、人類への遺産 敦煌莫高窟

敦煌莫高窟は、敦煌市から東南に25㎞離れた鳴沙山の東端の断崖にある。三危山と対峙する大泉河の西岸に、南北に1.6㎞にわたって600に近い窟が穿たれている。市街地を離れ、空港を左にみながらゴビのなかの真っ直ぐな道を走っていくと、草木ひとつない鳴沙山と三危山が迫る峡谷に、一筋の紐のように細長い小さなオアシスがみえてくる。右前方のポプラの繁る細い帯の向こうに、2段、3段に窟を穿たれた断崖が続く。「ここに!」と思わせるショッキングな出会いである。

莫高窟の芸術性の質量は、1日じっくり鑑賞しても味わい尽くせるものではない。写真は、高さ34.5mの大仏を収める第96窟。9層の楼閣は莫高窟のシンボルでもある。

 莫高窟の開鑿は、現存する「重修莫高窟仏龕碑」(武周聖暦元年・唐代・698年)によると、前秦の366年(建元2年)である。清の地史学者徐松は『西域水道記』卷三に「重修莫高窟仏龕碑」を引いて、

 「莫高窟は、その初めは秦(前秦)の建元二年、沙門楽僔なるものあり、戒行清虚にして、熱心恬靜たり。嘗て錫を林野に杖き、行きて北の山に至るに、忽として金光を見る。状、千仏あり。その状、千仏にして(5字缺)窟として一龕を造る。次で法良禅師なるものあり、東より此に届り、又僔師の窟の側に、更に即きて営建す。伽藍の起りは二僧に濫觴するなり。復、刺史建平公(北周の刺史建于義)、東陽王(北魏の王)あり、(7字缺)後、州の黎庶(庶民)を合せて造作し相仍ぬ。実に神秀の幽厳、霊奇の淨域なり。(中略)秦の建元二年より大周聖暦の辰(則天武后のころ。698年)に至る。楽僔、法良はその宗を発し、建平、東陽はその迹を弘めたるなり。甲子を推すに四百他歳、窟室を計うるに一千餘龕。今は僧徒を置くを見る」

 と記されている。この地を訪れた僧・楽僔が三危山に輝く夕日に千仏をみて、ここに一龕を築き、ついで東からきた法良禅師がその傍らに窟を営造したことに始まるというのである。ほかに352年または353年という説もあるが、いずれにしても、その開鑿は4世紀なかばである(この中国最初の仏教石窟・莫高窟の造窟は、五胡十六国のころの敦煌を中心とする河西回廊上の仏教の興隆を背景にまず周辺に波及し、酒泉の金塔寺石窟、文殊山石窟、張掖の馬蹄寺石窟、武威の天梯山石窟、さらに東の蘭州の炳霊寺石窟、天水の麦積山石窟、西ではトルファンのベゼクリク千仏洞の造窟へとそのうねりを伝えている。)

 莫高窟には、唐代にはすでに1000余りの窟龕があったといわれており、現在は、十六国、北魏、西魏、北周、隋、唐、五代、宋、西夏、元の10王朝の石窟など492窟が残されている。それぞれの時代の文化、生活を知るうえでの貴重な資料である上、その規模は、壁画総量45000㎡、彩色塑像2400体余、唐・宋の木造りの洞窟5座にわたり、世界最大の画廊、第一級の仏教芸術の宝庫となっている。

 また元代以降、歴史上から忘れ去られた莫高窟が(清代にも重修は行われたが)、その生命を取り戻すのは、清末の1900年、莫高窟の前に住んでいた王円籙という道士によって、偶然「蔵経洞」(第17窟)が発見されたことがきっかけとなる。なかにいっぱいに積み上げられた5万件に登る古文書が、1907年から1925年の間にイギリスのスタイン、フランスのぺリオ、アメリカのウォーナーなどによって持ち出され、皮肉にも国外において注目を浴びて「敦煌学」を生んだ。その後、いわばゴビ灘のなかに放置されたまま風前の灯であった莫高窟は、辛うじて1943年に荒廃しきった莫高窟に赴いた常書鴻を中心とする現在の敦煌研究院の献身的、不屈の努力によって、一つひとつ補修され、環境の整備がなされて、今日の輝かしい世界遺産として蘇生したのである。

 ちなみに、敦煌石窟と総称する場合、最大の石窟である莫高窟(千仏洞)のほかに、西千仏洞、安西の楡林窟(万仏峡)を指す。このほか敦煌周辺には、安西の東千仏洞、粛北モンゴル族自治県の五個廟石窟などがある。

参考:中国旅行専門サイト―西部旅情 http://www.westpassion.com

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