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玉生。「たまにゅう」と読みます。<br />船生は「ふにゅう」。<br />どれも高級和食料亭の名前ではなく、<br />奥州から日光へ詣でる街道沿いにある宿場の名前であります。<br /><br />奥の細道ファンからしてみれば、マニア臭ぷんぷんの秘境の地、<br />私くし「さすらいの句碑ハンター」としても(ちょっと言い過ぎました・・・)<br />たまらず、かの地へ赴いた次第でございます。<br /><br />一体、かの地へはどうやって行くのか・・・?<br />とりあえず、一番近い「JR矢板」駅まで行き、<br />その先は聞き込み張り込み尾行を続ける事、約5分(早っ!)、<br />かの地へ行くバスの便は、しばらく来ない事がわかった。<br /><br />駅前のタクシーの運ちゃんに聞くと、<br />「船生まで6000円、玉生まで3000円くらいかな・・・」<br /><br />思った以上に高い。行くべきか待つべきか予定を変えるべきか、<br />はたまた帰るべきか・・・。<br /><br />私の頭の中のペンティアムプロセッサがオーバークロックして導き出した答えは、<br />結局、玉生までタクシーで行ってもらう事でま〜るく収まった。(玉だけに)<br /><br />さて前置きが長くなってしまったが、<br />ここから玉生ぶらり旅、略して「タマぶら」の始まりです。<br /><br />「タクシーで来たの?」<br />モノ珍しそうに歩み寄ってきた老人が、<br />奥様と思しき女性に蔵を開けるよう指示していた。<br />タクシーで来たのが珍しかったのか、<br />それとも滅多に客など来ないから珍しいのか、<br />慌ただしく「和気記念館」は開館した。<br /><br />女性の開ける扉の奥から垣間見えた絵に、<br />思わず「凄い!」と声を漏らしてしまった。<br /><br />仄暗闇の中から現れる能楽師、<br />醜悪な体をさらけ出す裸婦、<br />「幽玄の画家、和気史郎」が描き出す世界は<br />わけもわからずやって来た旅人一人など<br />簡単に押し潰してしまいそうな迫力があった。<br /><br />玉生車庫の方へ歩く。<br />「芭蕉一宿の跡」の看板が見え、尾形病院跡地の間を入っていくと、<br />どん詰まりの藪の中に「芭蕉一宿の跡」の碑が立っている。<br />訪れる者も手入れする者もいないのか、草木に埋まってしまいそうだった。<br /><br />再び玉生の街道へ戻る。車が数台行き交う程度、人影は無い。<br />それでもここは「芭蕉通り」。<br />所々に立つ小さな石標がそう教えてくれた。<br /><br />タクシーで来た道を戻るようにして歩く。<br />やがて国道461号線と合流。<br />その脇に古そうな道標が立っていた。<br />「右 大田原 左 てら山 西国 秩父 坂東 供養塔」<br />どういう意味の供養塔なんだろう?と考えてるうちに倉掛へ。<br /><br />山道へ入り間もなく首から腹まで赤く染めた「ヤマカガシ」が足元を通過する。<br />再び461号線に戻るちょっと手前に「鞍掛の松」がある。<br />平安時代。八幡太郎義家が東征の際、馬の鞍を松に掛けて休んだという。<br />すでに2度枯れて、今あるのは三代目だそうだ。<br /><br />雨が降りそうなので先を急ごう。<br />461号線は幸岡に入る。<br />注意深く見ていくと左に反れる道があるので、そこを少し上ったところに、<br />「高内宿」の説明板が立っている。<br />今では車が通るような街道ではないが、地元産出の石を使った壁や蔵が整然と並び、<br />確かにここは宿場だったのだなと思わせる美しい集落だった。<br /><br />東北自動車道の高架をくぐり抜け、今度は田んぼの中の間道を一気に北上する。<br />農家のおじさん達が「誰だオメエ?」と投げかける視線さえくぐり抜け、一気に北上だ。<br /><br />道なりにひたすら進むと真正面に「剣神社」がある。<br />義家が東征の帰り道、剣を奉納した事から始まった神社らしい。<br />ここは移築されたもので、実際に整備されたのは(狛犬を見る限りでは)<br />支那事変出征と紀元2600年を記念してのものだから70年くらい前か。<br /><br />剣神社の前の道を東北自動車道に向かって100mくらい行くと、<br />田んぼの脇のこんもりとした繁みの中に「下長井芭蕉句碑」が立っている。<br />ここもまったく手入れがされていないようで、ほぼ草に埋もれている。<br />バッタとカエルとトンボを追い払いながら繁みに分け入る。<br />「そのままに 月もたのまじ伊吹山」<br /><br />剣神社前に戻り、そのまま川も道も突っ切るような形で東へ進む。<br />どんなに「誰だオメエ」視線を受けようが狂ったように犬に吠えたてられようが<br />構わず家々の間をすり抜けて、ほぼ一直線に東へ歩を進めよう。<br />やがて矢板中央高校の前に出る。<br />すでに玉生から10キロ以上は歩き続けているはずだ。<br />ちょうど学校の目の前に、なんと100円で「ドデカミン」が飲める自販機がある。<br />ここで体力回復。<br /><br />学校の前の交差点を矢板駅方面へ左折。<br />間もなく稲荷神社が小さな公園と併設して現れる。<br />しかしここも、人の立ち入った様子が全く無いくらい荒れ果てていた。<br />草木を掻き分け神社に参拝。脇に立ってる句碑を確認。<br />「原中や 物にも津かず啼く雲雀」<br />あっと言う間に5ヵ所は蚊に食われた。<br /><br />夕飯の弁当を買い、再び矢板の駅前にやって来た。<br />明日の予定でも立てようとバスの時刻表を見ていると、<br />となりのバス停に停まっていたバスから運転手が下りてきた。<br />「どこ行くの?」<br />赫々云々、今日の出来事を五七五にまとめて話すと、<br />「それは申し訳なかったね。土日は特にバスの便が無くてね。<br />明日は?かさね橋?ああ、そっち方面もバス無いのよ。本当申し訳ない。」<br />運ちゃんがバス会社ならびに栃木県を代表して謝ってくれたようで、<br />「また来ますから、ありがとうございます。」<br />と、恐縮至極でございました。<br /><br />下野国とはまったく縁もゆかりも無いはずなのに、<br />どうしても足が向いてしまうのは、<br />やはりこうしたところからなのかもしれない。<br />そう感じた満月の夕暮れ・・・。<br /><br />山手線内→JR矢板:2520円  和気記念館:500円<br />玉生ゴルフ練習場打ち放題:1000円<br />

電車で行く矢板・玉生

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2008/09/13 - 2008/09/13

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zakoneboy

zakoneboyさん

玉生。「たまにゅう」と読みます。
船生は「ふにゅう」。
どれも高級和食料亭の名前ではなく、
奥州から日光へ詣でる街道沿いにある宿場の名前であります。

奥の細道ファンからしてみれば、マニア臭ぷんぷんの秘境の地、
私くし「さすらいの句碑ハンター」としても(ちょっと言い過ぎました・・・)
たまらず、かの地へ赴いた次第でございます。

一体、かの地へはどうやって行くのか・・・?
とりあえず、一番近い「JR矢板」駅まで行き、
その先は聞き込み張り込み尾行を続ける事、約5分(早っ!)、
かの地へ行くバスの便は、しばらく来ない事がわかった。

駅前のタクシーの運ちゃんに聞くと、
「船生まで6000円、玉生まで3000円くらいかな・・・」

思った以上に高い。行くべきか待つべきか予定を変えるべきか、
はたまた帰るべきか・・・。

私の頭の中のペンティアムプロセッサがオーバークロックして導き出した答えは、
結局、玉生までタクシーで行ってもらう事でま〜るく収まった。(玉だけに)

さて前置きが長くなってしまったが、
ここから玉生ぶらり旅、略して「タマぶら」の始まりです。

「タクシーで来たの?」
モノ珍しそうに歩み寄ってきた老人が、
奥様と思しき女性に蔵を開けるよう指示していた。
タクシーで来たのが珍しかったのか、
それとも滅多に客など来ないから珍しいのか、
慌ただしく「和気記念館」は開館した。

女性の開ける扉の奥から垣間見えた絵に、
思わず「凄い!」と声を漏らしてしまった。

仄暗闇の中から現れる能楽師、
醜悪な体をさらけ出す裸婦、
「幽玄の画家、和気史郎」が描き出す世界は
わけもわからずやって来た旅人一人など
簡単に押し潰してしまいそうな迫力があった。

玉生車庫の方へ歩く。
「芭蕉一宿の跡」の看板が見え、尾形病院跡地の間を入っていくと、
どん詰まりの藪の中に「芭蕉一宿の跡」の碑が立っている。
訪れる者も手入れする者もいないのか、草木に埋まってしまいそうだった。

再び玉生の街道へ戻る。車が数台行き交う程度、人影は無い。
それでもここは「芭蕉通り」。
所々に立つ小さな石標がそう教えてくれた。

タクシーで来た道を戻るようにして歩く。
やがて国道461号線と合流。
その脇に古そうな道標が立っていた。
「右 大田原 左 てら山 西国 秩父 坂東 供養塔」
どういう意味の供養塔なんだろう?と考えてるうちに倉掛へ。

山道へ入り間もなく首から腹まで赤く染めた「ヤマカガシ」が足元を通過する。
再び461号線に戻るちょっと手前に「鞍掛の松」がある。
平安時代。八幡太郎義家が東征の際、馬の鞍を松に掛けて休んだという。
すでに2度枯れて、今あるのは三代目だそうだ。

雨が降りそうなので先を急ごう。
461号線は幸岡に入る。
注意深く見ていくと左に反れる道があるので、そこを少し上ったところに、
「高内宿」の説明板が立っている。
今では車が通るような街道ではないが、地元産出の石を使った壁や蔵が整然と並び、
確かにここは宿場だったのだなと思わせる美しい集落だった。

東北自動車道の高架をくぐり抜け、今度は田んぼの中の間道を一気に北上する。
農家のおじさん達が「誰だオメエ?」と投げかける視線さえくぐり抜け、一気に北上だ。

道なりにひたすら進むと真正面に「剣神社」がある。
義家が東征の帰り道、剣を奉納した事から始まった神社らしい。
ここは移築されたもので、実際に整備されたのは(狛犬を見る限りでは)
支那事変出征と紀元2600年を記念してのものだから70年くらい前か。

剣神社の前の道を東北自動車道に向かって100mくらい行くと、
田んぼの脇のこんもりとした繁みの中に「下長井芭蕉句碑」が立っている。
ここもまったく手入れがされていないようで、ほぼ草に埋もれている。
バッタとカエルとトンボを追い払いながら繁みに分け入る。
「そのままに 月もたのまじ伊吹山」

剣神社前に戻り、そのまま川も道も突っ切るような形で東へ進む。
どんなに「誰だオメエ」視線を受けようが狂ったように犬に吠えたてられようが
構わず家々の間をすり抜けて、ほぼ一直線に東へ歩を進めよう。
やがて矢板中央高校の前に出る。
すでに玉生から10キロ以上は歩き続けているはずだ。
ちょうど学校の目の前に、なんと100円で「ドデカミン」が飲める自販機がある。
ここで体力回復。

学校の前の交差点を矢板駅方面へ左折。
間もなく稲荷神社が小さな公園と併設して現れる。
しかしここも、人の立ち入った様子が全く無いくらい荒れ果てていた。
草木を掻き分け神社に参拝。脇に立ってる句碑を確認。
「原中や 物にも津かず啼く雲雀」
あっと言う間に5ヵ所は蚊に食われた。

夕飯の弁当を買い、再び矢板の駅前にやって来た。
明日の予定でも立てようとバスの時刻表を見ていると、
となりのバス停に停まっていたバスから運転手が下りてきた。
「どこ行くの?」
赫々云々、今日の出来事を五七五にまとめて話すと、
「それは申し訳なかったね。土日は特にバスの便が無くてね。
明日は?かさね橋?ああ、そっち方面もバス無いのよ。本当申し訳ない。」
運ちゃんがバス会社ならびに栃木県を代表して謝ってくれたようで、
「また来ますから、ありがとうございます。」
と、恐縮至極でございました。

下野国とはまったく縁もゆかりも無いはずなのに、
どうしても足が向いてしまうのは、
やはりこうしたところからなのかもしれない。
そう感じた満月の夕暮れ・・・。

山手線内→JR矢板:2520円  和気記念館:500円
玉生ゴルフ練習場打ち放題:1000円

同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円未満
交通手段
JRローカル

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  • 和気記念館<br />幽玄の画家・和気史郎の美術館です

    和気記念館
    幽玄の画家・和気史郎の美術館です

  • 芭蕉一宿の跡<br />草に埋もれています。<br />誰か手入れしてください。

    芭蕉一宿の跡
    草に埋もれています。
    誰か手入れしてください。

  • 倉掛峠から倉掛の停留所前に出てきた所

    倉掛峠から倉掛の停留所前に出てきた所

  • 高内宿

    高内宿

  • 田んぼの中に立ち、東北自動車道を望む<br />下長井芭蕉句碑<br />「そのままに 月もたのまじ伊吹山」

    田んぼの中に立ち、東北自動車道を望む
    下長井芭蕉句碑
    「そのままに 月もたのまじ伊吹山」

  • 見落とし必至の草ボーボーな稲荷神社に立つ句碑<br />「原中や 物にも津かず啼く雲雀」

    見落とし必至の草ボーボーな稲荷神社に立つ句碑
    「原中や 物にも津かず啼く雲雀」

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