2006/08/03 - 2006/08/08
54412位(同エリア59807件中)
ちゃおさん
8月5日(土)快晴、日本百名山第56座トムラウシ2141m
3時の目覚ましコールは必要無かったようだ。2時には目が覚め、少しベッドでまどろみ、2時半には起床する。3時、真っ暗な中車を走らせるが、空を見上げると満点の星空。昨日は一時雷雨等もあったが、今日は大丈夫のようだ。良く整備されたアスファルト道路を十勝川に沿ってトムラウシに向かう。途中大きな十勝ダムにかかるアーチ橋を渡って、道路はダムの右岸・左岸を行き来するが、早朝ゆえ対向車も無く、至って快適なドライブだ。ここでも又北海道開発庁の潤沢な予算を思い知る。
ダム湖を過ぎ、山間部に入りかけた頃、漸く夜明けの空になってきたが、この辺りまで来ると山に雲が掛かっている。又昨日と同じ様な雷雨が心配になるが、その時はその時、と更に車を走らせていると、道路は突然アスファルト道から砂利道に変わり、かなりのスピードを出していた関係で、ハンドルが右左急に取られて一時操縦不能に陥り、すんでのところで路外逸脱を免れた。ぞっとした。パンクしたら今日の登山は諦めのところ、パンクも免れ助かった。
暫くすると林の下に蛍光灯の明かりが見え、右下に東大雪荘の建物が見える。登山口はここから更に車で約5キロ程林道を走ったところにあり、でこぼこ道でパンクに気をつけ、慎重にハンドル操作する。右手先方には重畳たる深い山並が見える。去年皇海橋まで走らせた時に見たような原生林の重なり。人跡未踏と言っても良いような森林が広がっている。山の深さに圧倒される。
4時20分登山口着。40−50台位は止められそうなかなり広い駐車場には既に2−3台の大型バスと20台位の乗用車が駐車している。これからスタートするグループもいる。トイレで小用を済ませ、4時半出発。来る途中一時雲もかかったりしていたが、スタート時には快晴。早朝の爽やかな樹林帯を気持ち良く歩き始める。暫く歩くと東大雪からの登山道と合流する。ここから先急坂が続き、何人かのグループを追い越す。約1時間、漸く平坦地になり視界も開けてくる。そこはカムイ天井で、既に先行隊の20人位のグループが山道に沿って休んでいる。
6時、朝食には少し早いがお腹も空いてきて、旅館で作ってもらったお結び二つの内の一つを食べる。梅干のお結びが乾いた口に美味しい。
ここから更に数百メートル登りが続き、快晴の中、前方に連なる十勝連峰の幾つかの峻峰が展開している。どれが十勝岳で、どれが美瑛、富良野か分らないが、それぞれ形の整った峯を雲の上に突き出している。
爽やかな遠景を眺めつつの峰歩きが終わると、今度は一旦沢まで下ることになる。潅木の中、ジグザグの下りを200−300m程下りると沢に至る。滔々と流れる沢水は雪解けの水に違いないが、それ程冷たくはない。水辺に足をつけ、更にもう一つのお結びを取り出し、ほおばる。道産のご飯にたらこが美味しい。小人数の登山者が沢のあちこちで休憩している。静かなせせらぎ。
沢沿いを10分ほど登ると、今度は全くのガレ場に出る。ガレ沢をトラバースし、前トム平まで出ると漸くトムラウシの右端の方が見えてくる。ここから又再びガレ場を30分ほど登ると、トムラウシに対面する峠の頂に出て、目の下のトムラウシ公園を隔て、本峰が悠然と聳えている。カール状に大きくえぐられた公園の登山道を上下に動く登山者が小さく、ゆっくり見えていて、箱庭の世界を見ているようだ。暫し大自然の光景に見とれ、さあいよいよここから登山開始だ。もう一息、頑張ろう。
公園まで約150mを下り降り、ところどころまだ雪も残っていて、雪解けを溶かした湿地帯に夏のほんの数週間だけ花を咲かす高山植物の群落を横に見て、ほぼ直線状の登山道を登る。左手に早朝見えていた十勝岳、美瑛岳等の峻峰が再び見えてくる。手前の荒涼とした荒地には火山で噴出されたのか大きな岩石がごろごろ思いのままに散らばっている。火山の激しさが想像された。
本峰の直下に少し平らになった場所があり、幾つかのテントが見える。キャンプ場だ。2000m近くのこんな高い山の頂上付近で、夜はさぞかし冷えるだろう。大学生らしい若者が何人かテントの外で気分よさそうに雑談していた。
11時、残り10分の急な登りを登り詰めるとぽっと頂上に出る。もうそこには既に10人位の登山者が思い思いに休んでいる。好天の夏山、360度の展望が開けている。将にこの山は北海道の中心に位置してかのようだ。手前には今登ってきたトムラウシ公園と十勝連山、この山の向うには日本庭園、大雪山、又その右手にはニペソツの巨峰が悠然と控えている。それぞれの高峰がぐるりと巻いている。小高い岩の上に登り、帰し方の60年を振り返る。
還暦の60歳。記念すべき今日、トムラウシの頂上に立っている。20歳の自分が60を想像した時、この様な所でこのような状況になっていることは全く想像していなかった。30歳の時、泰彦が生まれた時、息子と酒を酌み交わしていることを想像していた。40歳の時、泰彦、文江に囲まれての還暦祝いを想像した。50歳、もう既に家庭は崩壊状態で、10年後のことは殆ど想像できなかった。求心力を失った家庭は皆バラバラの状態で、バラバラな方向に走っていた。自分自身が将来への夢を失くしていた。それでも去年まではまだ僅かに何かのお祝いを期待する気持ちもあった。しかし今年になってから、妻にも子供達にも、還暦を祝ってくれる気持ちの無いことをはっきり言われた。こうなったのも自分が撒いた種とも言われた。そうかも知れない。やむを得ない。これが自分の宿命なのだろう。ひとり好天のみが今日の還暦を祝ってくれている。それだけで充分ではないか。
自分と天と山と地と、そして見知らぬ何人かの登山者。勿論彼らは当方が還暦など知る由もないが。一緒に登頂を喜んでいる。これだけで十分だ。今日のこの光景を忘れずに、いつまでも記憶していよう。還暦登山―トムラウシ。
< 六十年 走馬灯なり トムラウシ >
大雪から登ってきた登山者は昨夜は沼の原の避難小屋に泊まったとのことだが、雷雨が激しく、すぐ近くで雷など落ち、生きた心地はしなかった、との話をしていたが、打って変わった今日の好天を皆一様に喜んでいた。人生60年、有難う。こうして自由に山に登れ、自然を満喫できるのも、今までの人生が間違いではなく、感謝すべき道のりだった証だ。
何人かの登山者を迎え、送り、残りのお結びを食べ、小1時間ゆっくりし、今来た道を引き返す。もうこの山には二度と来れないだろう。長い山道、登り下りに思いを馳せ、日本庭園を見下ろせる峠からトムラウシに最後のお別れし、ガレ場を下り、沢から又300mの折り返しのぬかる道を喘ぎつつ登り、カムイ天井ではもう随分と疲労した足を引きずるように動かし、その山道の長さに辟易し、漸くにしてトムラウシ温泉への分岐点に到達し、4時、ほとほと疲れた状態で、駐車場に到着する。朝駐車していた30-40台の車も今は既に数台を残すのみ。最後に残ったペットボトルを飲み干し、車を走らせる。一旦東大雪荘に立ち寄り、竹村さんのグループが既に到着しているかどうか確認したが、まだ来ていない。何時になるかの連絡も入っていない、とのこと。フロントにメモを残し、当方の今晩の宿オソウシ温泉の電話番号を書いておく。
6時、旅館着。今晩は東京からの団体が20名ほど来ていて賑やかだ。その大半が高年の女性で、男は僅かに4−5人混じっているだけ。ここでも女性の元気さ、パワーを見せ付けられる。取り敢えず、温泉で汗を流し、今日は昨日程の料理ではないが、まあ値段からしてやむを得ない、還暦の祝いにビールと日本酒を頼み、ひとり静かに祝福し、食後再び真っ暗な露天風呂に入り、星空を眺め、人生に感謝する。
60歳まで生きて来られた自分、親、兄弟、家族、世の中の人々、平和、偶然、あらゆる物事、生かされている自分。満天の星空の下で小さな自分を見つめ、温泉につかり、今日の疲れを癒し、小さな喜びが得られていることに感謝する。
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- レンタカー
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