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1998/9/12<br />この日は朝から雨。洗濯物も乾いていない。<br />朝、ホテルを出て考古学博物館に向かう。ここに、最も見たいモザイク画があるのだ。博物館に着くと、入館料は1万2千リラ(当時)だった。荷物を預けて中に入り、まず2階をゆっくりと見た。<br /><br />2階はポンペイやエルコラーノが主で、その他の小さな遺跡の出土品もあった。ポンペイの現地では見られなかった、甲冑や剣なども展示されている。甲の装飾は非常に細かくて繊細で、驚かされた。また、女性の装飾品も繊細できれいなモノが多かった。ただ、モザイク画と比べると色彩には欠ける印象。<br /><br />やはりポンペイはモザイク画が面白い。キリスト以前なので、写実的なのだ。壁に奥行きのある柱とか外の風景を描いて広く見せるという、遊び心というか、アイデアが面白い。また、色も多く鮮やかで、神話の一場面を描いたモザイク画などは、ウフィッツィでみたルネッサンス絵画を思わせるくらいだ。キリスト教の為に失ったものは、1400年にもわたって押し殺されていたイタリア人の才能なのかもしれない。<br /><br />1階は彫刻の階で、意外と広くてかなりの量の巨大な彫像がある。afroditeやvenus、minervaなどの3mくらいの女神がそそり立っていると、圧倒される。もちろん、これらはきれいに作られたレプリカだ。レプリカの作り方を説明するコーナーも合って、3次元的なレプリカを作ることがいかに難しいかがよく分かった。<br /><br />地下にはエジプトの階もあり、それはそれで良かった。本物のミイラを見たのは初めてだったし、ポンペイやエルコラーノよりも予備知識があったので楽しめた。<br /><br />そして、最後にとっておいた、モザイク画の階へ(中二階?)。<br />そこには見たかったものすべてがあった。小さいモザイク画でも、人の表情が生き生きとしていて、おどろき・怒り・笑いが表されていて、中には「意地悪そうな笑い」をしている人物まで描かれていた。また、人間だけでなく、ポンペイ近くの水辺の動物や水鳥、魚介類も本当に写実的に描かれている。<br /><br />当時のポンペイの人々には申し訳ないが、火山の爆発によってこれらの芸術が残されたことは有り難いと思う。もし、これらの芸術が火山で埋もれていなければ、破壊と再生が繰り返された南イタリアでは、すぐに破壊されるか散逸してしまっただろう。19世紀に発掘されたからこそ、今、目の前に実物を見ることができるのだ。<br /><br />最後に見た「イッソスの戦い」はまさに圧巻で、アレクサンダー大王の落ち着いていながらも、闘志に燃え、勝利の自信にあふれた目。ダレイオス1世の慌て、驚いた表情。彼は何に驚いたのか? アレクサンダー大王を間近にしたからか?負けたこと自体にか?それとも、腹心の部下が犠牲になったからか? 想いを巡らすと飽きない。本に印刷されたものとは全く違う、迫るものがあった。<br /><br />放心して眺めていると、ガヤガヤとアメリカ人の団体がこのモザイク画の前にやってきて、写真をパシャパシャと撮り始めた。そして、その中の一人が、みんなの写真をとってくれ、と頼んできた。最初は内心いい気分ではなかったが、写真を頼んできた青年が、<br />「この絵の前でぜったい写真を撮るんだ」<br />と他の人たちに力説していた。<br />「なんで?」<br />と訊かれて彼は、<br />「この絵がこの博物館の中で一番なんだ」<br />と言っていた。<br />それを聞いて、味方を見つけた気がして、喜んで彼らの写真を撮った。

念願のナポリ国立考古学博物館

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1998/09/12 - 1998/09/12

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Finch

Finchさん

1998/9/12
この日は朝から雨。洗濯物も乾いていない。
朝、ホテルを出て考古学博物館に向かう。ここに、最も見たいモザイク画があるのだ。博物館に着くと、入館料は1万2千リラ(当時)だった。荷物を預けて中に入り、まず2階をゆっくりと見た。

2階はポンペイやエルコラーノが主で、その他の小さな遺跡の出土品もあった。ポンペイの現地では見られなかった、甲冑や剣なども展示されている。甲の装飾は非常に細かくて繊細で、驚かされた。また、女性の装飾品も繊細できれいなモノが多かった。ただ、モザイク画と比べると色彩には欠ける印象。

やはりポンペイはモザイク画が面白い。キリスト以前なので、写実的なのだ。壁に奥行きのある柱とか外の風景を描いて広く見せるという、遊び心というか、アイデアが面白い。また、色も多く鮮やかで、神話の一場面を描いたモザイク画などは、ウフィッツィでみたルネッサンス絵画を思わせるくらいだ。キリスト教の為に失ったものは、1400年にもわたって押し殺されていたイタリア人の才能なのかもしれない。

1階は彫刻の階で、意外と広くてかなりの量の巨大な彫像がある。afroditeやvenus、minervaなどの3mくらいの女神がそそり立っていると、圧倒される。もちろん、これらはきれいに作られたレプリカだ。レプリカの作り方を説明するコーナーも合って、3次元的なレプリカを作ることがいかに難しいかがよく分かった。

地下にはエジプトの階もあり、それはそれで良かった。本物のミイラを見たのは初めてだったし、ポンペイやエルコラーノよりも予備知識があったので楽しめた。

そして、最後にとっておいた、モザイク画の階へ(中二階?)。
そこには見たかったものすべてがあった。小さいモザイク画でも、人の表情が生き生きとしていて、おどろき・怒り・笑いが表されていて、中には「意地悪そうな笑い」をしている人物まで描かれていた。また、人間だけでなく、ポンペイ近くの水辺の動物や水鳥、魚介類も本当に写実的に描かれている。

当時のポンペイの人々には申し訳ないが、火山の爆発によってこれらの芸術が残されたことは有り難いと思う。もし、これらの芸術が火山で埋もれていなければ、破壊と再生が繰り返された南イタリアでは、すぐに破壊されるか散逸してしまっただろう。19世紀に発掘されたからこそ、今、目の前に実物を見ることができるのだ。

最後に見た「イッソスの戦い」はまさに圧巻で、アレクサンダー大王の落ち着いていながらも、闘志に燃え、勝利の自信にあふれた目。ダレイオス1世の慌て、驚いた表情。彼は何に驚いたのか? アレクサンダー大王を間近にしたからか?負けたこと自体にか?それとも、腹心の部下が犠牲になったからか? 想いを巡らすと飽きない。本に印刷されたものとは全く違う、迫るものがあった。

放心して眺めていると、ガヤガヤとアメリカ人の団体がこのモザイク画の前にやってきて、写真をパシャパシャと撮り始めた。そして、その中の一人が、みんなの写真をとってくれ、と頼んできた。最初は内心いい気分ではなかったが、写真を頼んできた青年が、
「この絵の前でぜったい写真を撮るんだ」
と他の人たちに力説していた。
「なんで?」
と訊かれて彼は、
「この絵がこの博物館の中で一番なんだ」
と言っていた。
それを聞いて、味方を見つけた気がして、喜んで彼らの写真を撮った。

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