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<br />私が東海道新幹線の仕事にたずさわり始めたのは、1960年(昭和35年)のことだった。<br />発令を受け、雪深い秋田・岩手県境の山中から、家族を盛岡に残して、とりあえず東京に馳せ参じた。<br /><br />新幹線調査室が1959年に出発し、翌1960年には新幹線総局に格上げされて、全国からメンバーが集められたのだった。<br /><br />そのころ、まだ世銀の動きもはっきりしないまま予算の目途が立っておらず、果たして出来るものかどうか未知の段階だったが、東京オリンピックを四年後の1964年に控えて残された時間は少なく、猪突猛進の感じだった。<br /><br />新幹線総局は、国鉄本社ビルの最上階8階の大講堂に、補佐クラス以下の若いメンバー全員が机を並べ、非常時体制を感じさせ、壮観だった。<br /><br />この「大部屋」が、どれほどチームワーク固めに役立ったか、計り知れない。<br /><br />私は「新幹線総局建設局計画課補佐兼新幹線調査室補佐」という長い発令を貰い、建設基準の策定業務に従事する。<br /><br />これは、新幹線設計の基本となる数値を決める仕事で、ほとんど全ての専門分野を網羅するものだった。<br /><br />国鉄の各専門分野がいかに高いレベルでも、それぞれの専門がバラバラならば、力を発揮しない。<br />建設基準策定は、専門分野の力を合わせるための、まとめ役的な仕事だった。<br /><br />私がそれを担当するのは、まだ若くて「専門」の色に染まっていないからだと、上司の課長から説明された。<br /><br />会議では「自分の思っていることを、遠慮せずにどしどし発言しなさい」と、励まされる。<br />会議のメンバーは30歳代だったが、私がいつも一番若かった。<br /><br />毎日専門家たちが、口角泡を飛ばしながら議論をする。<br />世界に例を見ない、全列車250キロという高速運転を可能にするために、それぞれの専門家には不安が残っている。<br /><br />自分の専門分野では、少しでも有利な設計条件を貰って、技術的なゆとりを残したいと考えるのは、当たり前だろう。<br /><br />専門技術がわかっていない私は、その行司役に向いているようだった。<br />専門の人の発言はいつも我田引水的と、色眼鏡で見られがちの中で、私の発言は中立的と受け止められる。<br />

片瀬貴文の日記【07.01.13】専門の力を総合させる行司役

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2007/01/13 - 2007/01/13

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ソフィ

ソフィさん


私が東海道新幹線の仕事にたずさわり始めたのは、1960年(昭和35年)のことだった。
発令を受け、雪深い秋田・岩手県境の山中から、家族を盛岡に残して、とりあえず東京に馳せ参じた。

新幹線調査室が1959年に出発し、翌1960年には新幹線総局に格上げされて、全国からメンバーが集められたのだった。

そのころ、まだ世銀の動きもはっきりしないまま予算の目途が立っておらず、果たして出来るものかどうか未知の段階だったが、東京オリンピックを四年後の1964年に控えて残された時間は少なく、猪突猛進の感じだった。

新幹線総局は、国鉄本社ビルの最上階8階の大講堂に、補佐クラス以下の若いメンバー全員が机を並べ、非常時体制を感じさせ、壮観だった。

この「大部屋」が、どれほどチームワーク固めに役立ったか、計り知れない。

私は「新幹線総局建設局計画課補佐兼新幹線調査室補佐」という長い発令を貰い、建設基準の策定業務に従事する。

これは、新幹線設計の基本となる数値を決める仕事で、ほとんど全ての専門分野を網羅するものだった。

国鉄の各専門分野がいかに高いレベルでも、それぞれの専門がバラバラならば、力を発揮しない。
建設基準策定は、専門分野の力を合わせるための、まとめ役的な仕事だった。

私がそれを担当するのは、まだ若くて「専門」の色に染まっていないからだと、上司の課長から説明された。

会議では「自分の思っていることを、遠慮せずにどしどし発言しなさい」と、励まされる。
会議のメンバーは30歳代だったが、私がいつも一番若かった。

毎日専門家たちが、口角泡を飛ばしながら議論をする。
世界に例を見ない、全列車250キロという高速運転を可能にするために、それぞれの専門家には不安が残っている。

自分の専門分野では、少しでも有利な設計条件を貰って、技術的なゆとりを残したいと考えるのは、当たり前だろう。

専門技術がわかっていない私は、その行司役に向いているようだった。
専門の人の発言はいつも我田引水的と、色眼鏡で見られがちの中で、私の発言は中立的と受け止められる。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • あんちゃんさん 2007/01/21 11:33:32
    新幹線の設計
    この続き、ぜひお聞かせくださいませ。

    ソフィ

    ソフィさん からの返信 2007/01/21 20:13:16
    RE: 新幹線の設計
    ご訪問くださり、ありがとうございます。
    話は、東海道新幹線の現場、全国新幹線網、北陸新幹線と発展します。
    ご期待ください。

    最近このブログは、日本、アジア、欧州、アメリカ、アフリカ。
    60年代、70年代、80年代、90年代、00年代。

    とテーマを変えながら、一日2本平均でバランスよく書きたいと思っていますが、なかなか思うように行きません。

    これからもご贔屓に、お願いします。

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