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 ニャチャンからクイニョンへバスで到着したのは9月30日の午後。僕はチャンパ遺跡を見るために、ガイドブックにも載っていないこの貧しい街にやってきた。日本の真夏そっくりの気候の中、街の中心部にあるアントゥーホテルにチェックインし、すぐさま外に出た。交差点にいたバイクタクシーの運転手に声をかけ、象牙塔のコピー写真を見せ、ここに行きたいことを伝えた。男がうなずいたので、値段交渉に入った。ベトナムではここからが重要である。彼らは外国人との交渉事となると必ずぼってくるので、相手の言い値で支払うと、後で悔しい思いをすることが多いのだ。サイゴンだと、外国人だけでなく、ベトナム人同士でも、相手が田舎者だとみるとぼってくるほどだ。<br /> バイクタクシーの男の言い値は5万ドン(約400円)。往復数十キロの道程でこの値段なら、妥当だと思われた。僕がリアシートに跨ったのを確認して、男はゆっくりと100CCのカブを発進させた。街の中心部を抜け、国道一号線に出ると車の量が一気に増えた。大型車やバスが多く、追い抜かれるたびに、運転手はスピードを緩めてやり過ごした。トゥイフォックの街を過ぎ、15分ほど走ると、右手の丘の上に赤レンガで造られた三つの建造物が見えた。運転手の男はバイクを止め、丘を指差し、「あれだよ」と言った。確かに今目の前にあるのもチャンパの建物だが、僕が見たい象牙塔とは違う。これは銀塔じゃないか。こんな近くにあるとは。明日見物しようと思っていたものだが、目の前とも言える距離にあるのだから、行ってもらうことにした。一号線を右折し、数百メートル走ると上り坂となった。舗装はされておらず、雨季に大量の雨水が流れたようで、道路を抉るように溝ができている。バイクで行くにはかなり危険で、現に前を行く、荷台に2?近い荷物を積んだ運転手も何度も停止しては安全そうなラインを探しながら上って行った。危険を感じた僕はバイクを降り、歩くことにした。運転手は「大丈夫だから乗れ」というのだが、深い溝が好き勝手に走り、踏み固められてつるつるになった路面が大丈夫とはとても思えなかった。<br /> 遺跡が建つ丘の麓は金網で囲われていて、掘っ立て小屋の中から管理人らしき男が出てきた。運転手と二言三言言葉を<br />交わすと、男は僕に対して、「どうぞお入り下さい」とうやうやしい動作で金網の扉を開け、僕らを招き入れた。運転手に促され、二千ドン(約20円)支払った。

忘れ去られた歴史への旅 チャンパ王国の遺跡を訪ねて ? 海洋交易王国の象徴として−銀塔

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2002/09/20 - 2002/10/05

12052位(同エリア22444件中)

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ハイペリオン

ハイペリオンさん

 ニャチャンからクイニョンへバスで到着したのは9月30日の午後。僕はチャンパ遺跡を見るために、ガイドブックにも載っていないこの貧しい街にやってきた。日本の真夏そっくりの気候の中、街の中心部にあるアントゥーホテルにチェックインし、すぐさま外に出た。交差点にいたバイクタクシーの運転手に声をかけ、象牙塔のコピー写真を見せ、ここに行きたいことを伝えた。男がうなずいたので、値段交渉に入った。ベトナムではここからが重要である。彼らは外国人との交渉事となると必ずぼってくるので、相手の言い値で支払うと、後で悔しい思いをすることが多いのだ。サイゴンだと、外国人だけでなく、ベトナム人同士でも、相手が田舎者だとみるとぼってくるほどだ。
 バイクタクシーの男の言い値は5万ドン(約400円)。往復数十キロの道程でこの値段なら、妥当だと思われた。僕がリアシートに跨ったのを確認して、男はゆっくりと100CCのカブを発進させた。街の中心部を抜け、国道一号線に出ると車の量が一気に増えた。大型車やバスが多く、追い抜かれるたびに、運転手はスピードを緩めてやり過ごした。トゥイフォックの街を過ぎ、15分ほど走ると、右手の丘の上に赤レンガで造られた三つの建造物が見えた。運転手の男はバイクを止め、丘を指差し、「あれだよ」と言った。確かに今目の前にあるのもチャンパの建物だが、僕が見たい象牙塔とは違う。これは銀塔じゃないか。こんな近くにあるとは。明日見物しようと思っていたものだが、目の前とも言える距離にあるのだから、行ってもらうことにした。一号線を右折し、数百メートル走ると上り坂となった。舗装はされておらず、雨季に大量の雨水が流れたようで、道路を抉るように溝ができている。バイクで行くにはかなり危険で、現に前を行く、荷台に2?近い荷物を積んだ運転手も何度も停止しては安全そうなラインを探しながら上って行った。危険を感じた僕はバイクを降り、歩くことにした。運転手は「大丈夫だから乗れ」というのだが、深い溝が好き勝手に走り、踏み固められてつるつるになった路面が大丈夫とはとても思えなかった。
 遺跡が建つ丘の麓は金網で囲われていて、掘っ立て小屋の中から管理人らしき男が出てきた。運転手と二言三言言葉を
交わすと、男は僕に対して、「どうぞお入り下さい」とうやうやしい動作で金網の扉を開け、僕らを招き入れた。運転手に促され、二千ドン(約20円)支払った。

同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
高速・路線バス
航空会社
キャセイパシフィック航空
  •  遺跡が並ぶ丘の頂上まで、運転手に先導される形で登った。道はなく、雑草の茂っていないところを進み、雨水の浸蝕によってできた大きな溝を飛び越え、何度も足を滑らせながら何とか頂上までたどり着いた。<br /> 建造物は南北の軸線上に並んでいた。頂上に主祠堂、少し低い場所に船形屋根の宝物庫、そして少し離れたさらに低い位置に碑文庫が建っていた。どの建造物にも所々に修復の手が入っていて、真新しい部分と、元の部分とが奇妙なアンバランスさを醸しだしていた。<br /><br />(写真は主祠堂)

     遺跡が並ぶ丘の頂上まで、運転手に先導される形で登った。道はなく、雑草の茂っていないところを進み、雨水の浸蝕によってできた大きな溝を飛び越え、何度も足を滑らせながら何とか頂上までたどり着いた。
     建造物は南北の軸線上に並んでいた。頂上に主祠堂、少し低い場所に船形屋根の宝物庫、そして少し離れたさらに低い位置に碑文庫が建っていた。どの建造物にも所々に修復の手が入っていて、真新しい部分と、元の部分とが奇妙なアンバランスさを醸しだしていた。

    (写真は主祠堂)

  •  船形屋根の宝物庫の屋根にはヒンドゥーの神ガルーダが翼をひろげた姿が彫られているが、片翼は崩れてしまっている。<br /><br />(写真は船形屋根の宝物庫)

     船形屋根の宝物庫の屋根にはヒンドゥーの神ガルーダが翼をひろげた姿が彫られているが、片翼は崩れてしまっている。

    (写真は船形屋根の宝物庫)

  •  最も高い位置にある主祠堂は、おそらく湾内に入ってきた船舶からも見えただろう。祈りの場所であると同時に、航海者への灯台の役割も果たしていたのか。あるいは、王国の威容を誇示するためのものだったのか。かつて、大和朝廷の有力者が大陸からの使者に自分たちの権勢を見せるために、大和川沿いに古墳を造営したのと同様の意味もあったのではないだろうか。<br /><br />(写真は片翼のガルーダ)

     最も高い位置にある主祠堂は、おそらく湾内に入ってきた船舶からも見えただろう。祈りの場所であると同時に、航海者への灯台の役割も果たしていたのか。あるいは、王国の威容を誇示するためのものだったのか。かつて、大和朝廷の有力者が大陸からの使者に自分たちの権勢を見せるために、大和川沿いに古墳を造営したのと同様の意味もあったのではないだろうか。

    (写真は片翼のガルーダ)

  •  運転手は僕の横に立ち、遠く西の方角を指さした。丘の上に建つ朽木のような塔が見えた。金塔だ。そして、次に指さした南南西の方角には、森の中から先端だけが突出した建造物が見えた。おそらく銅塔だろう。そして、金塔と銅塔の間の遥か彼方の田園地帯には真ん中だけが背丈の高い三つの塔が微かに見えた。象牙塔だ。そうか、象牙塔あんなに遠いのか。<br /> 「今から全部見に行くかい?」と運転手は尋ねた。象牙塔はかなり遠く、あそこまで行くと日が暮れてしまいそうだ。<br /> 「金塔と銅塔を見て、クイニョンに戻ると何時くらいかな」<br /> 「そうだなあ、五時半くらいかな」<br /> 今二時半だから、やっぱりそれくらいかかるだろう。象牙塔は明日にして、金塔と銅塔を見に行くことにしよう。<br /> 「で、いくら?」<br /> 「十万(ドン=約700円)だな」<br /> まあ、そんなとこだろう。この運転手はぼったくりで悪名高いベトナム人にしては正直な値段を出してくる。<br /> 交渉妥結である。金塔と銅塔に向け出発だ。<br /><br />(写真は碑文庫)

     運転手は僕の横に立ち、遠く西の方角を指さした。丘の上に建つ朽木のような塔が見えた。金塔だ。そして、次に指さした南南西の方角には、森の中から先端だけが突出した建造物が見えた。おそらく銅塔だろう。そして、金塔と銅塔の間の遥か彼方の田園地帯には真ん中だけが背丈の高い三つの塔が微かに見えた。象牙塔だ。そうか、象牙塔あんなに遠いのか。
     「今から全部見に行くかい?」と運転手は尋ねた。象牙塔はかなり遠く、あそこまで行くと日が暮れてしまいそうだ。
     「金塔と銅塔を見て、クイニョンに戻ると何時くらいかな」
     「そうだなあ、五時半くらいかな」
     今二時半だから、やっぱりそれくらいかかるだろう。象牙塔は明日にして、金塔と銅塔を見に行くことにしよう。
     「で、いくら?」
     「十万(ドン=約700円)だな」
     まあ、そんなとこだろう。この運転手はぼったくりで悪名高いベトナム人にしては正直な値段を出してくる。
     交渉妥結である。金塔と銅塔に向け出発だ。

    (写真は碑文庫)

  •  二人で丘を下り、バイクを置いてある場所に戻った。運転手は乗れと促すが、溝が縦横にはしる急な下り坂をバイクの後ろに乗って下る気にはならず、平坦な場所まで歩いた。途中でペットボトルの水を売っていたが、素通りしてしまったことを、金塔を目指した丘の途中でえらく後悔することになる。<br /> 茶色の袈裟を着た青年僧たちとすれ違った。この先にお寺でもあるのだろう。カブに二人乗りをして、滑る後輪に苦労しながらも坂を上ってくる。物珍しそうに僕を見ていたが、目が合うと遠慮がちに会釈をして通り過ぎていった。

     二人で丘を下り、バイクを置いてある場所に戻った。運転手は乗れと促すが、溝が縦横にはしる急な下り坂をバイクの後ろに乗って下る気にはならず、平坦な場所まで歩いた。途中でペットボトルの水を売っていたが、素通りしてしまったことを、金塔を目指した丘の途中でえらく後悔することになる。
     茶色の袈裟を着た青年僧たちとすれ違った。この先にお寺でもあるのだろう。カブに二人乗りをして、滑る後輪に苦労しながらも坂を上ってくる。物珍しそうに僕を見ていたが、目が合うと遠慮がちに会釈をして通り過ぎていった。

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