2002/09/20 - 2002/10/05
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ハイペリオンさん
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獣道すらなく、草に覆われ尽くした丘の斜面を僕は息を切らせながら登った。標高100米もない丘だが、道がない斜面はことのほか登りづらく、不惑の歳を迎え体のあちこちにガタが目立ち始めた身にはかなり応えた。さんさんと降り注ぐ熱帯の太陽が恨めしい。
ペットボトルの水はここに来るまでに大半を飲んでしまっている。ようやく中腹まで来た時、麓を見下ろした。僕を耳まで運んでくれたバイクタクシーのドライバーは既に豆粒のように小さくなって、白いTシャツでなければ、周囲と見分けがつかなくなっていただろう。僕が上から見ているのに気付いた彼は、大きく両手を振って見せた。「がんばれよーっ」と励ましているつもりなのだろうが、半分の行程でとっくにへとへとになってしまっている僕には、木陰で佇んでのんきに手を振る彼の姿は親の苦労を知らない無責任な子どもに見えた。しかし、この場所まで行くよう頼んだのは僕であり、こんなのただの逆恨みだ。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- 高速・路線バス
- 航空会社
- キャセイパシフィック航空
-
再び頂上を見上げて登り始めた視線の先には塔の上半分がとらえられている。天辺は雑草に覆われ、赤レンガはぼろぼろと剥がれ落ちて、建築物の様相を呈しているとは言いづらく、まるで朽木のようだ。四方どこからでもよく見える丘の上に建てられたこの塔は、建造した人々が南へ去って以来数百年間、誰に顧みられることもなく、風雨に晒され、その壮麗な姿をぽろりぽろりと崩し続けているのだ。まるで、座して死を待つ老人のように。
陸の頂上付近は棘のある植物が来るものを拒むかのように繁茂していた。僕がそれらを掻き分けて進むと、バリバリと音をたててジーンズに引っ掛かった。
登り始めて15分は経っただろうか。棘を掻き分けて登った先に塔の全貌が露になった。汗は顔全体から流れ、ぬぐってもぬぐっても吹き出して来る。西にほんの少し傾き始めた太陽は、頂上に立った僕と、うらぶれた姿で悄然と立ち尽くす塔を鮮やかに照らしていた。 -
金塔、現地名トックロック。これが今、眼前に立つ塔の名前だ。ベトナム中部に興亡したチャンパ王国が、13世紀初頭に建立したいくつかの宗教施設のひとつである。
金塔の周囲を一周した。高さは20米くらいか。屋蓋に茂る草と、侵食によるレンガの剥がれや、基壇部分の無残な崩壊は、これが数百年間、誰に手入れされることもなく孤独の中で生きてきたことを如実に物語っていた。基壇の崩壊によって、遠くから眺めると花瓶のようで、実に不安定な印象を与える。
この塔は、これからもレンガを一個一個剥がすようなゆったりとした速度で倒壊への道を進むのだろうか。僕の視線は、到達した喜びから、次第に哀れみを帯びたものに変わっていった。
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この旅行記へのコメント (2)
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- c.makotoさん 2011/03/07 00:53:37
- おつかれさまです。
- こんばんわ
チャパン王国の遺跡を見に
丘へ登る大変さが伝わってきました。
へぇ〜なるほどなと
知る事ができ、ありがとうです。
また暇な時間に見に来ますので
それでは、また
c.makoto
- ハイペリオンさん からの返信 2011/03/07 15:57:38
- 投票ならびに書き込みありがとうございました
- どうも。
投票と書き込み、どうもありがとうございます。
この時は、ベトナムを北から南まで
旅したのですが、実は、バイクによる
ベトナム縦断を計画していました。
しかし、ベトナムは当時、100CC以上の
バイク持込ができず、あきらめました。
かの賀曾利隆さんが、確かジェベルで
ベトナムを走ったのですが、同氏の場合、
あちこちと交渉して何とか認めてもらえた
ようでした。
ならば、現地でバイクを買ってということも
考えたのですが、これも、外国人がバイクを
直接購入して乗るというのも難しく、
結局あきらめました。
外国、特に発展途上国で、バイク生産を
行っている国では、自国の産業保護のため、
いろいろな規制をかけられていると
思い知らされました。
c.makotoさんが、おっしゃっていたように
海外ツーリングは、絶対に行くという強い思いも
必要ですが、それだけでなく、向こうの法律の
壁というものも存在します。
それだけに実現できたときは、喜びもひとしおでしょう。
ちなみにベトナムでは、レンタルバイクで
いろいろ走り回りましたが、ハノイは飛び出しが
非常に多く、何度もパニックブレーキを踏まされました。
どう考えてもぶつかるタイミングで飛び出してくるバカが
いて、蹴りをいれるまねをしたら、ずっとこちらを
にらんでいました。
実際、バイク事故は頻繁に目にしました。
日本の交通マナーなんて全く通用しないので、
なかなか大変でした。
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