モスクワ空港の思い出

1996/09/14 - 1996/09/23

　往路…。関空から１０時間、雨のモスクワ空港に着いた。パリ行きに乗り換えるために、４時間の待機だ。
　空港内の喫茶コーナーでコーヒーを飲もうということになったのだが、トランジット（乗り換え）だからルーブルの持ち合わせがない。
　隣にいた、どこかの旅行社の添乗員くんに、「ルーブル持ってる？」と聞くと、「米ドルでも通用しますよ｣と言う。｢米ドル…、君、持ってる？」とまた聞くと、「持ってます」と言う。「じゃあ、払っといてくれる？」とさらに聞くと、｢エェッ！」とヒビッた。
　ケチッ！ 遠いモスクワでめぐり合った日本人同士、コーヒーぐらいおごってくれてもいいんじゃない。「じゃぁ、替えてくれる？｣と両替してもらって、コーヒーを飲んだ。苦い、マルクスの味がした。

↑　写真は、モスクワ空港のカフェ、午前４時。

エリア モスクワ(ロシア)

• 同行者: 友人
• 一人あたり費用: 30万円 - 50万円
• 交通手段: レンタカー
• 航空会社: アエロフロート・ロシア航空

　関西空港を午後１１時１０分のフライト予定。９時過ぎに空港に着いて搭乗手続きを済ませ待合室に行くと、窓ガラス越しに機体が見えた。「あれかなぁ」と友人に言うと、「こんな小さいのでは、遠いとこまでは飛べやんぞ」と言う。
　でも、飛んだ。関空から１０時間、雨のモスクワ空港に到着…。

↑　写真は、アエロフロート（ロシア）ＳＵ548便。　
　　　往路はビジネス、帰路はファーストクラスで、パリ往復158000円だった。今はもうこの航路はない。

　帰途…、午前１１時４５分、ミラノのマルペンサ空港からモスクワへ向かう。モスクワ空港で５時間待機し、パリから来る人たちと合流して、関西空港行きに乗る予定である｡

←　ミラノ・マルペンサ空港からモスクワまで乗った、アエロフロート・イリューシン機のコックピットに座らせてもらった。機体は古くてガタガタだったけれど、サービスが良くなってロシアも変わったなと思ったのだが…。

　モスクワ空港での５時間待ちは長いけれど、帰りはファーストクラスだったので、専用待合室で飲み放題食べ放題で５時間を過ごした。やがて、パリからの便も到着して、空港内は人の波で混雑…。

←　モスクワ空港　ファーストクラス待合室　?
　ゆったりしたソファ…。
　５時間待ちだったから、「ベッドはないのか？」
　と言ったのだが、そこまでは、用意してないらしい。

　ここで事件発生！　｢日本で台風が本土を縦断…死者６人。特に関東の被害は甚大で成田空港は封鎖、成田へ帰る人たちはいつになるか見通しが立たない」という。ほどなく、関空便も２時間遅れとのアナウンスが流れ、待ち時間はさらに延長である。

←　モスクワ空港　ファーストクラス待合室　?
　ファーストクラスは、飲み放題、食べ放題…。あまりに飲み食いするからか、ウエイターが姿をくらましてしまったので、自分たちで勝手に冷蔵庫を空けて、好きなものを食べた。

　日本へ向かう便は関空行きも成田行きも、いつ飛ぶのか解らない。待機のみんなに食券が配られ、パンとライスに鶏のもも肉とサラダが添えられた食事が出された。食事はファーストもエコノミーも一緒に食堂でとる
　モスクワ空港の炊き出しは大忙しだ。長蛇の人の列に、中ほどで、パンもライスももも肉もサラダも、残り少なになってしまった。すると、配膳係りのおばさんたちは、いとも簡単に、「ここからあとは、パンかライスのどちらか。おかずも、もも肉かサラダのどちらか」とやおら宣言。ソ連時代の公務員の感覚そのままで、食事を配給してやっていると言うカンジだ｡

↑　写真は、モスクワ空港で出された食事。　トリのもも肉、パン１片、紅茶一杯。

　しかし、文句を言うほどのロシア語は知らず、平均９０キロはあろうかというスラブの年増女たちに抗議のまなざしをぶつけるだけ。
　それも、目が会うと伏し目がちになってしまうところが、島国育ちの情けなさ…。ふてくされた仕草で、ちぎったパンを口に投げ入れ、もも肉をしがむ。言葉も通じない、異国の地の精一杯の抵抗だった。