2006/11/05 - 2006/11/05
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フーテンの若さんさん
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半端ぢゃなかった。予想していたよりも早く、デカく、そしてパワフルな波。それがエル・サルバドルのTUNCOビーチの波だった。
ブレイクポイントは遥か2km以上先。遠く離れた岸から眺めてもその大きさが見てわかる。ハワイのノースショアのように、うまく乗れば一気に岸近くまでライディングできそうだ。果たして僕の腕前でこの特大の波を乗りこなせるだろうか?久しぶりのサーフィンだし、かなり躊躇したが、ここまで来て指を咥えて、サーファーと波を眺めているだけでは面白くない。近くのホテルでボードを借りて、いざ果敢に飛び込んだ。
ブレイクポイントまでで、かなりの疲労を覚えた。僕が入ったのと同時に風がオンショアで強く吹き出したため、面は崩れ波足はさらに加速している。沖に着いて休憩する間もなく、特大のセットの波が僕を襲う。すでに崩れてスープ化しているとはいえ、その高さはトリプル。いやそれ以上はありそうだ。僕は恐怖と疲労のあまり、ドルフィンで抜ける自信がなく、ボードを捨てて海の中に潜る。すぐさまリーシュがピンと引っ張られ、ボードと共にものすごい力で後ろへ引っ張られる。波にもみくちゃに揉まれ息ができない。やっとのこと海面に上がると、立て続けにそれ以上の大きさのセット波が押し寄せる。目の前にあるのはもはや波ではない。生きた壁だ。し、し、死ぬぅぅぅぅ。息が続かない。更に、リーシュが太ももに絡まり、足が千切れそうだ。迫り来る死への恐怖。先日、強盗に襲われたときよりもっと怖い。
このまま波に歯向って行くのは難しい。身の危険を感じ、僕はまともにサーフィンせぬまま、戻ることにした。セット間隔の僅かな隙を見て、方向を回転し、テイクオフを試みる。あまりのスピードに最初は立てずボディボード状態でしがみ付きながら、流れていく。少し波の力が弱まったところで立ち上がる。弱まったとはいえ、かつて味わったことのないスピード。まるでサーフィンボードに小型エンジンを積んだようだ。しかも既にスープ化しているため、じゃじゃ馬のようにコントロールがうまくできない。
波に身を任せ、流されていると、いつの間にかサンゴ礁ゾーンにたどり着いてしまった。浅く、すでに足が届く距離。高波の次はサンゴかい!危険と思っても次のセット波はバンバン来ているのでこれまた除けられない。足を突いて、これ以上浅瀬に行かないよう踏ん張る。いたたたたたたっ。波の力で踏ん張った足にサンゴが食い込む。足が切れまっているのがわかるが他にどうしようもない。
傍から見たらただのアホのようだが、陸に戻るため、サンゴゾーンでボードを抱えたまま、30分以上格闘していた。痛さとしんどさで顔は必死の形相。サンゴのなかをボードを抱えたまま歩く競技があれば、間違いなく入賞できるだろう。(二度としたくないが)
全体力を使いきり、岸にたどり着くと案の上、足は血だらけ。そのまま病院にいって手当てを受ける。特にひどいのは右の親指で肉が削れてしまっていた。もちろんサーフィンはしばらく禁止のお達し。包帯でグルグル巻きにされ痛々しいかぎり。その後は指を庇い、サーファーと波をただ眺めているだけとなってしまった。
エル・サルバドルまで何しに僕は来たんだろう。ライディング時間はわずか3分未満。風来のシレンの旅はまだまだ続いていく。
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