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傾斜はますます急になり、空気はますます薄くなる。えっちらおっちら、少し行っては休憩し、後から来たパーティーに追い越されるために立ち止まる。<br /><br />この頃になると、登山道とは名ばかりで、道らしい道はまったくなく、岩だらけのごつごつとしたルートが続く。一歩一歩登るごとに、徐々に体力がなくなっていくのが実感できる。ペットボトルの水がなくなったので、パックのスポーツ飲料を補給しながら、ゆっくり進む。<br /><br />かなりの時間をかけて、ようやく8 合目にたどり着く。山小屋は真っ暗で、その周りに登山客がうじゃうじゃいる状態。休憩スペースを見つけるのが一苦労だ。座って荷物を降ろし、スポーツ飲料を飲む。<br /><br />動いている間はあまり感じないのだが、休憩すると寒さが気になる。体温調節が難しい。下手に体温を奪われるのは得策ではないので、ここでフリースを羽織る。<br /><br />補食にカロリーメイトを一本囓る。固形物を摂る気になったのはこれが最後だった。この頃までにウィダーインゼリーを少しずつ摂ってはいたが、他の食べ物よりこちらの方がよほどスムーズに入ることに気づき始めていた。飴とかチョコとか持ってきていたのだが、何故か口に入れる気にならないのだ。その点、水分が多く、さわやかな味のウィダーインゼリーは、おいしく食べられ、のどの渇きも同時に癒される、非常にありがたい食品だった。<br /><br />上を見上げる。遙か遠くまで光の道が続いている。まだまだ先は長そうだ。ガイドブックには8合目でようやく半分と考えた方が良いと書いてあった。ここまでで半分って、冗談だよね。いい加減疲れたんだけど。<br /><br />もちろん、自分で好きこのんで登り始めたわけで、誰に文句が言えるわけでもない。さ、次は9合目なんだ。9合目って、いい響きだよね、なんだかもうすぐ頂上って感じで。これがそう甘いものではなかったことに気づくのは、すぐだった。<br /><br />8合目まででも、なんでこんなに登りにくいんだろうと思ったが、8合目を越えたら、道はさらに岩だらけとなった。すごい岩を登るたびに、「これ帰りはどうやって降りるんだろう。」という疑問がちらちら頭に浮かぶが、考えている余裕がない。<br /><br />この頃になると、息があまりに早くきれる。数歩登ると息が荒くなって休憩をしてしまう。友人は大きな息をして呼吸を整えていた。高山病予防の呼吸法だ。<br /><br />私もそれは知っていたから、なるべく肺の中の空気を吐ききって、大きく息を吸おうと…努力はしているのだが、登っているうちにそれでは追いつかなくなって、ハーハーと荒く浅い息になってしまう。前を行く友人がその呼吸を聞きつけて、こまめに休憩を取ってくれる。申し訳ないとは思うが、気にしている余裕がない。今考えても、彼女だけならもっと早く登れていただろう。完全に私のペースに合わせてくれていた。<br /><br />休憩のため止まると、しばらくは呼吸が治まらず、ステッキに頭をもたれさせて呼吸を整えることに専念する。心臓が外に飛び出そうなぐらいバクバクしていて、場合によってはちょっと胸のムカつきもでる。頭痛という自覚はなかったが、首と肩のあたりが妙に重い。自分でも軽い高山病になっていることはわかる。なんというか、ガイドブックに載っていた典型的な症状だ。<br /><br />ただ良くしたもので、立ち止まりさえすれば、つまり動いてさえいなければ、ほどなくして呼吸が整ってくる。これがジムでのトレーニングの賜物なのかもしれない。少し呼吸が落ち着いてきたあたりで、再び大きな腹式呼吸に変えると、さらに早く息が整う。心臓のバクバクも治まり、会話が出来るようになる。<br /><br />小休止の時は、呼吸の落ち着き方を見計らって友人に行けることを告げる。ちょっとゆっくり休憩するときは、そこで水分を補給してから、再び歩き出す。<br /><br />この頃はスポーツドリンクとウィダーインゼリーを交互に取っていた。軽い吐き気のため、他の物は口に入れる事が出来なかった。そんな状況で、私と友人は、ものすごくゆっくりと道を登っていった。<br /><br />そして、ようやく9合目の山小屋の看板を拝むところにたどり着いたのだった。

富士登山記 その6

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2004/08 - 2004/08

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Domi

Domiさん

傾斜はますます急になり、空気はますます薄くなる。えっちらおっちら、少し行っては休憩し、後から来たパーティーに追い越されるために立ち止まる。

この頃になると、登山道とは名ばかりで、道らしい道はまったくなく、岩だらけのごつごつとしたルートが続く。一歩一歩登るごとに、徐々に体力がなくなっていくのが実感できる。ペットボトルの水がなくなったので、パックのスポーツ飲料を補給しながら、ゆっくり進む。

かなりの時間をかけて、ようやく8 合目にたどり着く。山小屋は真っ暗で、その周りに登山客がうじゃうじゃいる状態。休憩スペースを見つけるのが一苦労だ。座って荷物を降ろし、スポーツ飲料を飲む。

動いている間はあまり感じないのだが、休憩すると寒さが気になる。体温調節が難しい。下手に体温を奪われるのは得策ではないので、ここでフリースを羽織る。

補食にカロリーメイトを一本囓る。固形物を摂る気になったのはこれが最後だった。この頃までにウィダーインゼリーを少しずつ摂ってはいたが、他の食べ物よりこちらの方がよほどスムーズに入ることに気づき始めていた。飴とかチョコとか持ってきていたのだが、何故か口に入れる気にならないのだ。その点、水分が多く、さわやかな味のウィダーインゼリーは、おいしく食べられ、のどの渇きも同時に癒される、非常にありがたい食品だった。

上を見上げる。遙か遠くまで光の道が続いている。まだまだ先は長そうだ。ガイドブックには8合目でようやく半分と考えた方が良いと書いてあった。ここまでで半分って、冗談だよね。いい加減疲れたんだけど。

もちろん、自分で好きこのんで登り始めたわけで、誰に文句が言えるわけでもない。さ、次は9合目なんだ。9合目って、いい響きだよね、なんだかもうすぐ頂上って感じで。これがそう甘いものではなかったことに気づくのは、すぐだった。

8合目まででも、なんでこんなに登りにくいんだろうと思ったが、8合目を越えたら、道はさらに岩だらけとなった。すごい岩を登るたびに、「これ帰りはどうやって降りるんだろう。」という疑問がちらちら頭に浮かぶが、考えている余裕がない。

この頃になると、息があまりに早くきれる。数歩登ると息が荒くなって休憩をしてしまう。友人は大きな息をして呼吸を整えていた。高山病予防の呼吸法だ。

私もそれは知っていたから、なるべく肺の中の空気を吐ききって、大きく息を吸おうと…努力はしているのだが、登っているうちにそれでは追いつかなくなって、ハーハーと荒く浅い息になってしまう。前を行く友人がその呼吸を聞きつけて、こまめに休憩を取ってくれる。申し訳ないとは思うが、気にしている余裕がない。今考えても、彼女だけならもっと早く登れていただろう。完全に私のペースに合わせてくれていた。

休憩のため止まると、しばらくは呼吸が治まらず、ステッキに頭をもたれさせて呼吸を整えることに専念する。心臓が外に飛び出そうなぐらいバクバクしていて、場合によってはちょっと胸のムカつきもでる。頭痛という自覚はなかったが、首と肩のあたりが妙に重い。自分でも軽い高山病になっていることはわかる。なんというか、ガイドブックに載っていた典型的な症状だ。

ただ良くしたもので、立ち止まりさえすれば、つまり動いてさえいなければ、ほどなくして呼吸が整ってくる。これがジムでのトレーニングの賜物なのかもしれない。少し呼吸が落ち着いてきたあたりで、再び大きな腹式呼吸に変えると、さらに早く息が整う。心臓のバクバクも治まり、会話が出来るようになる。

小休止の時は、呼吸の落ち着き方を見計らって友人に行けることを告げる。ちょっとゆっくり休憩するときは、そこで水分を補給してから、再び歩き出す。

この頃はスポーツドリンクとウィダーインゼリーを交互に取っていた。軽い吐き気のため、他の物は口に入れる事が出来なかった。そんな状況で、私と友人は、ものすごくゆっくりと道を登っていった。

そして、ようやく9合目の山小屋の看板を拝むところにたどり着いたのだった。

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