1970/08 - 1970/08
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片瀬貴文さん
世界漫歩 264 パリの運転はつらくもあり楽しくもある
1970年代のことだ。
パリの生活で、毎日神経をすり減らせるものに、車の運転があった。
ここでは、車同士が、芋を洗うようにひしめき合い、せめぎあう。
車の運転は、まさに競争社会そのものを、具現化している。
パリのドライブは、優先権を狙って、1センチでも相手に先行しようとする争いだ。
それは楽しむ限りスポーツなのだが、楽しむだけの心のゆとりがなければ、苦痛と修行の場である。
フランス人の好きな言葉に「セ・ラ・ヴィ(C’est la vie.)」、「それが人生というものさ」という言葉がある。
パリの運転では、よくこの言葉を思い出す。
それは、深刻に考えれば、命がけの生存競争と受け止めることが出来る。
人生経験を深める、修羅場なのだ。
しかし慣れてしまえば、車のせめぎあいは一種のゲームになってしまい、楽しみにさえ昇華する。
日本からやってきた人は、パリの車たちの車体が、傷だらけででこぼこしているのに驚く。
接触で多少の傷がついても、あまり気にしない。
人命に関するものは別として、小さな衝突は警察のお世話にならず、お互いに状況を確認しあってサインを交わし、後始末は保険会社に任せる。
一昔前は、自らの正当性を主張しあい、譲らなかったものだから、そのつど街路上で論争をしたようだ。
「絶対に謝らないように」と、先輩たちから聞かされたものだった。
毎日見舞われる渋滞も、イライラすればつらいが、恵まれたゆとりの時間と考えれば、楽しくもある。
私にとっては、フランス語放送をゆっくり聴くことが出来る、ビッグチャンスだった。
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