2001/01/17 - 2001/01/23
5578位(同エリア5926件中)
早島 潮さん
カイロ、ルクソール、アッスワン、アルシンベル
エジプト観光はカイロ西南郊外のギザ地区のピラミッド群から始まった。これらのピラミッドの中の一つはライトアップされて昨夜もホテルの窓から幻想的な姿を眺めることができたが、近くまで行って自然光のもとで観察するとまた格別の趣と感慨がある。とにかく雄大である。エジプトといえば直ちに連想するくらい有名なピラミッドを、今目前に四千六百年前に作られたものとして直視していると、積み重ねられた時の流れの膨大な長さに比べ、人の一生のあまりの短さを思い感無量であった。
このギザ地区にあるピラミッドは北から南へ第一ピラミッド、第二ピラミッド、第三ピラミッドと斜めに並んでいてお互いに太陽を遮ることがないように配慮されている。順番に第四王朝のクフ王、カフラー王、メンカウラー王のミイラを収めていたものである。そしてメンカウラー王の第三ピラミッドには更に三つの小さなピラミッドが南側に並んで配置されていて王妃のミイラが葬られていたという。
中で最大規模を誇るのがクフ王の第一ピラミッドで高さ約135m、底辺約227m、約2トン半の石を230万個積み上げているといわれるヘロドドスによれば、建造に要した日数は毎年十万人が三カ月働き、20年間を要したといわれ、その規模の大きさは古代エジプト王の権力の偉大さを如実に示し、今から約4600年前の土木工学の発達が比類ないものであったことを証明している。
これらのピラミッドは「太陽神ラー」への捧げ物であると同時に死者の来世における永遠の生即ち霊魂不滅に対する信仰を表しているものと考えられており、古代エジプト人の死生観に思いを致し、暫く飽きることもなく呆然と眺めていた。
クフ王のピラミッドから約350mのところに大きなスフィンクスがある。全長73mで頭部は人間、体はライオンの巨像である。その顔はクフ王の顔を模しているといわれ、墓守をしていると考えられている。過去に何回も砂漠の砂に埋没したのを掘り起こされた経歴をもっているだけにかなり破損していて顔面等も傷んでいるのが痛々しい。
メンカウラー王のピラミッドの玄室の中へは一般観光客も入ることができるので、入場して見学したが発見された埋葬物の大半のものはカイロ考古学博物館や大英博物館に移送して展示されているので、ここではピラミッドの内部がどのような構造になっていたのかを見学するだけであった。
考古学博物館を見学するためカイロ市内へ向けて高速道路に入った。そこで見た異様な光景は道路の両側に立ち並ぶビル群の屋上に天空へ向かってむき出しの鉄筋が伸びていることであった。あたかも建設ラッシュの如き感を呈している。ガイドに聞いてみると将来の増設を見越してこのように鉄筋がむき出しにしてあるのだという。いわれて子細に観察するとなるほど古ぼけた建物もある。都会の機能美という観点からみればいかにも無粋な光景であった。高速道路沿いの建物群は先ず田畑の中に道路が出来てそれを追いかけるようにして建物が無秩序に次々に建てられたという感じである。その後カイロ市内の通りをあちこち駆けめぐってバスの中から観察した限りでは、カイロの町は無秩序に自然発生的に大きくなった町で一言で表現すれば、汚い町であるとの印象につきる。
カイロの考古学博物館には古代エジプト第18王朝のツータンカーメン王(前1346〜1336年在位) の財宝が至宝として収蔵されているが、他にクフ王、カフラー王の座像やトトメス三世の遺品、ラムセス二世の数多くの像等貴重な収蔵品も豊富である。ツータンカーメン王は19才で亡くなった王であるが、珍しく遺品は盗掘にあっておらず多数の財宝が王家の谷の墳墓から発掘された。特に重さ1170kgの黄金製の棺は現存する世界最大の黄金芸術であろうといわれており棺は三重になっていた。そのうちの二つがこの博物館に収蔵展示されていて残りの一つは王家の谷の同王の墓の玄室に保管展示されている。
夜は光と音のショーが三つのピラミッドとスフィンクスを舞台に演じられるのを見学した。暗い夜空と砂漠の中にライトアップされて幻想的に浮き上がるピラミッドやスフィンクス。それも音と光が緩急、強弱、濃淡、大小いろいろに組み合わされて交錯し、投射される光線束で描かれる横向きの古代エジプト人の顔模様や舟などを交えながら、ピラミッドとスフィンクスを映し出していくのである。時に暗闇に姿が消え時に現れる。その間合いが英語のナレーションとともに見事である。この素晴らしい光と音のショーは京都の大文字焼きがヒントになっているのではないかな等と考えながら鑑賞した翌朝、カイロから遺跡の宝庫ルクソールまで飛んだ。
北側のリビア高地の赤い岩山を背景にして広大な黄色い砂漠が南側に広がっていて、砂漠の東側にナイル川が蛇行しながら南へ伸びている。機上から俯瞰するとエジプトの国は砂漠の中をナイル側が南から北へ貫流していているだけの地形であることがよく判る。ナイル川の周辺だけに緑があり、砂漠の中に所々緑の線が見える。その緑の線は畑であり、そんなところにルクソールの街がある。ルクソールにはナイル川を挟んで東側にカルナック神殿とルクソール神殿があり西側には王家の谷、王妃の谷、貴族の谷、職人の谷、ハトシェプスト葬祭殿がある。
最初にカルナック神殿を見学した。この神殿は日干煉瓦で三区画に区分されていて保存状態が最もよいのが中央部にあるアモン神殿である。このアモン神殿は世界一大きな連柱式神殿でパリのノートルダム大聖堂をすっぽり覆い隠すほどの大きさであるという。ガイドの説明に頷きはするものの出てくる王達の名前や年代はなかなか覚えられずただただ神殿の規模の大きさに感心して見ているだけであった。それでも、やたらに多い大きな柱の列とそこに刻まれている多数の浮き彫りは強く印象に残っている。
次にルクソール神殿を見学した。ルクソール神殿はカルナック神殿と石畳を敷いた人頭のスフィンクス参道で結ばれていたというが、参道は現在発掘調査中でその威容を目視することはできない。ここではひとつだけ印象に残るものを脳裏に焼き付けておこうと考えて見学した。印象に残ったものを一つだけあげれば、入り口のネクタポの中庭と大塔門である。塔門の前には左側に高さ25mのオベリスクが一本と二体のラムセス二世の巨像が建っている。このオベリスクはパリのコンコルド広場で見たものと形状が似ているなと思いながら見ていたら、それもその筈、ここの右側の一本がパリへ運ばれたのだという。
王家の谷は草木の生えていない岩山の渓谷に営まれた第18王朝から第20王朝の偉大なファラオの墳墓が営まれたところである。この谷にある王の墳墓は22に及び葬られた歴代の王のミイラは40体に及ぶ。墳墓建造にあたったのは戦争捕虜達で墓所の秘密を守るため完成後ことごとく殺されたといわれているが、皮肉なことにどの墓所も盗掘に合い、副葬品が満足に残されていた墓地は殆どない。ただ一つの例外として盗掘にあわなかったのがツタンカーメン王の墓であった。ここではツタンカーメン王の玄室に入場してみた。三重に作られていた黄金製の棺のうちの一つはいまでもこの玄室の中に安置されており、薄暗い明かりの中で金色に輝いていて圧巻であった。
ハシェプスト葬祭殿は第18王朝の女王であったハシェプスト女王が時の宰相であり建築家でもあったセンムトに亡き父親トトメス一世と自らの葬祭殿を建設するように命じて出来上がったものである。彼女が選んだ場所は荒々しい岩肌の絶壁を背にした谷であった。この葬祭殿は当時から「輝かしいものの中で最も輝かしいもの」と呼ばれた、エジプト建築史上類をみない傑作であるといわれている。神殿は東向きで、巨大なテラスが三段重なり、階段を通って祭壇に至る。スフィンクスとオベリスクが並んだ参道を通って第一テラスの入り口に至ると、22本の角柱と両端に2本のオシリス柱が並んだ列柱廊が伸びる。再び階段で第二テラスに至ると二列の列柱廊が続き、壁面には女王ハシェプスト女王の誕生や幼年期の伝説の国プントに遠征軍を送る場面が描かれており、キリンや猿、豹の皮、象牙なども登場する。一番奥の壁にある大小18の壁龕には同数の女王の座像もしくは立像が飾られている。この神殿の特徴はシャンポリアンが「初期ドーリア式」と呼んだ優雅な16角柱である。
この葬祭殿で観光客に対して行われた97年11月の無差別のテロ事件は記憶に新しいところである。
翌朝ルクソールからアスワンへ飛んでアルシンベルの神殿を見学した。アルシンべルの神殿は古代エジプト史上最強の権力者でその激しい気性が有名なラムセス二世が建造したものである。アモン・ラー神、ハルマキス神やプタハ神を祭っているが、実際にはラムセス二世の絶対的な栄光を誇示している。長さ65m、幅38mのこの神殿は一塊の岩山を彫って作られたものであるが、アスワンダムの建設により水没する虞がでてきたのでユネスコの手により難工事の末1965年の晩夏に現在地へ移設されたものである。
ラムセス二世は第19王朝の王で紀元前1290〜1224年の在位で戦略家,征服者として知られる。北はパレスチナ、南はエチオピアまで征服し版図を広げ紅海と地中海を繋ぐ運河を計画したことでも知られている。
次いでアスワンハイダムを見学した後、ナイル川で帆掛け舟に乗り暮れゆくナイル川の風情を楽しんだ。船頭助手の子供達は12〜13才の少年達で巧みに竿を操り舟を誘導した。舟が川の中程へでると音楽に合わせて手振り身振り面白く踊り初め乗り合わせた観光客達も彼等に誘導されて見よう見まねで無邪気に踊ったことが印象に残っている。
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