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前回のあらすじ!<br /><br />中華街のペーパー調理師として、1年間のダメダメな厨房ライフを、エンジョイしていたきっちーでしたが、部署の上司であるセクハラA先輩と、悪い影響を受けたのか、そのまた上司の熱血M先輩にまでもが始めた、職場内暴力に嫌気がさし、退職を決意しました。<br />悩み続けて3月半ば、冷蔵庫の中で2人きりになったタイミングを見計らい、Mさんに退職の意思を伝えたのでした。<br />そこで待ってろと言われて、冷蔵庫に取り残された、私。<br />さ、寒いんですけど・・。<br />Mさん、早く戻ってきて・・。<br /><br /><br />公休の厨房長にかわって、鍋部に所属している副厨房長が、険しい顔でやってきます。<br /><br />「ちょっと、来い」<br /><br />傍らに立つMさんと、冷蔵庫の中でかなり冷え切ってしまった私、どちらにともなく言うと、厨房の片隅に歩いていきます。<br />寒いよう。<br />怖いよう。<br />入社当時、爆発させかけた、スープを取るケトルの横に並びます。<br />周りでは、黙々と他の調理師さんたちが、働いています。<br />しかし、忙しい時間帯に、副厨房長が鍋の仕事を抜けてまで、おこなわれる話し合いに、全員が耳をそばだてているのが伝わってきます。<br />なんともいや~な雰囲気。<br /><br />「どういうことだよ」<br /><br />こんどは、はっきりMさんと私の顔を、見比べながら副厨房長が、腕組みします。<br /><br />「こいつが、辞めたいって言ってんですよ」<br />「だから、どうしてだよ」<br />「それは・・」<br /><br />Mさんが言葉をつなごうとした、そのとき。<br /><br />「あのう・・。僕、向こう行ってた方がいいですか?聞かない方がいいですかね?」<br /><br />そばの流しで、洗い物をしていた新人Kくんが、恐る恐る尋ねてきます。<br />「いいよ。K、洗ってろよ」<br />ちょっと苦笑した、Mさんが表情を改めます。<br /><br />「俺も、今聞いたばっかりで。詳しいことは聞いてないんです」<br />「どうしてだよ。なんか、あったのか」<br /><br />副厨房長がこちらに向き直ります。<br /><br />「じつは・・」<br /><br />年末くらいからAさんの、手が出るようになっていたこと、それがエスカレートしていたこと。<br />さらには、Mさんも同様に、手が出るようになってしまってしまったこと。<br />ずっと我慢していたけれど、身の危険を感じるようになったので、調理師を辞めるつもりはないけれど、この厨房で仕事を続ける意欲は無くなったこと。<br /><br />「今まででいた、どの厨房でも怒鳴る人はいても、手が出るような状況は無かったですし。私自身は、人に暴力を振るうという選択肢が、どんな正当な理由があっても、ありえないので、頭にきたからといって胸ぐらをつかんだり、蹴ったりというのは、信じられません。職場が厨房だから許される、という理屈はおかしいし、許されないことだと思っています。Mさんまで手が出るようになってしまって、いろいろ悩んだんですが、何かあってからでは遅いですし、3月いっぱいで退職しようと考えています」<br /><br />「そういう事があったのは、間違いないんだな?」<br />「ハイ。Aがやっていたのは知っていましたし、俺も胸ぐらをつかんだりしました。ただ、今まで教え方が甘かったかな、と思ってそれで、暴力というよりは指導のつもりだったんですが・・」<br /><br />副調理長の眉間のしわが、深くなります。<br /><br />「しかし、そうなると逆だな。Aを辞めさせなきゃいけないぞ。俺も責任取って、辞めることになる」<br />「そんな・・っ!」<br /><br />Mさんの、声がうわずります。<br /><br />「Aの上は、俺なんだから、俺が辞めますよ!」<br />「いや、だって、そのために職責者手当てをもらってるんだし。<br />こないだ、本店で暴力事件があって、2人辞めさせられただろ。二度とそういう事が無いように、社長から厳重注意が出ているのに、気が付かなかったんだからな」<br /><br />なんだか。<br />話の方向が、違う方に行ってしまっています。<br />まあ、人も少ないから、にこやかに「じゃあ辞めていいよ。おつかれさん」とまではいかないと思っていましたが、自分以外の人が辞める、というのは想像もしていませんでした。<br /><br />「Eが、見かけた時には言ってくれてたんだけど、ちょっと対処するのが遅すぎたな・・」<br /><br />ええっ??!<br />カンドーです。<br />あの、優しくて毛深いEさんが、見て見ぬ振りをして、暴力と共犯関係を築いていた職場の多数のなかで、ちゃんと言っててくれてたんだ・・・。<br />やっぱ、ナイスガイだよ~。<br /><br />副調理長が、顔を覗き込みます。<br /><br />「俺も、昔やられたことはある。でも、もう、そういう時代じゃないし、Aには二度とやらないように俺から話す。Aの将来のためにも手が出る、というのはやめさせなきゃいけない。お前についても、正直、一年もつかどうかと思ったけど、ここまでついて来たし、これからもっと伸びる大事な時期だと思う。何とか辞めない方向で、考えられないか?」<br /><br />「・・・Aさんのこと、人間的には嫌いじゃないんです。<br />Mさんたちみたいに訊きに来ない奴には教えない、というスタンスじゃなくて、なかなか言い出せない私にも、Aさんの方から『~を訊きにおいで』って、何度も声掛けしてもらったし、感謝してるんです。<br />でも、そういう人だから、きっと暴力を振るうことを悪い、とは思っていないと思うんですね。できない私も悪いんですけど。<br /><br />Aさんの中では、『こいつはここまでやっても、覚えないし、こたえてるように見えない。もっと強くやんなきゃ』って。<br />その『ここまで』が、どんどん延長していった先が、今の状況だと思うんです。<br />Aさんには、教えるって事と、手を出すって事が矛盾してないんだと思います。だから、副調理長が言ってくれても、彼が変わるかは、ちょっと疑問なんです。<br /><br />いままで私のまわりでは、暴力で教える、という選択肢は存在しなかったし、こんなことが続いたら、私自身も後輩のK君や、新しく入社してくる人達に、同じようなことをしてしまうかもしれない。私は、自分がやられるのもそうだし、人がやられたりするのも、見たくないんです」<br /><br />「でも、やめさせなきゃいけない。そういう時代じゃないんだからな。やめられないなら、辞めさせる事になる」<br />「私は、誰かに辞めてもらいたいとは思っていません。退職届にも『一身上の都合』と書くつもりです」<br />「いや、そんな甘くないんだよ。かなりしつこく聞かれるんだ」<br /><br />「そんなこと言われても・・」<br /><br />「きっちーの話はわかった」<br />黙って聞いていたMさんが、厳しい表情で息を吐きます。<br /><br />「だけど、俺もAもお前が何度言ってもできないから、やり方を変えただけで、別にお前がムカつくからとかじゃないぞ。新しい奴が入ってくるのに、同じようなことくり返すし・・。俺としては、早く覚えてもらいたかったんだ。できないお前の方にも責任があるんだからな」<br /><br />「それは・・。男と女の理屈の違いだなあ。おまえ、元アメフト部だもんなあ・・」<br />副調理長が苦笑します。<br />「でも理屈は、きっちーのほうが正しい。裁判したら、こいつが勝つぞ」<br /><br />副調理長が口調を改めます。<br /><br />「それで、どうだ。考え直してくれないかな?」<br /><br />「・・・・」<br /><br />そう言われてもなあ。<br />もう紹介して貰った先方に、よろしくって声掛けてもらっちゃったしなあ。<br />辞める気90%でいたので、意外な展開にリアクションに困ります。<br />う~ん。<br /><br />とりあえずその場は、一晩、よく考えさせてください、と態度を保留にします。<br />どうしよう、どうしよう~。<br /><br />翌日。<br /><br />洗い物にいそしむ私のそばへ、そこはかとなく・・・ではなく。<br />いかにも、いつ切り出すか迷っている様子がありありの様子で、近づいてきたMさんが、口を開きます。<br /><br />「それで・・。考えてみて、どうだった?」<br /><br />「やっぱり、いろいろ考えてみたんですが・・・。辞めるのをやめようと思います」<br /><br />「そうか・・。辞めるのか・・」<br /><br />「いや、辞めるのをやめるんですけど・・」<br /><br />「あ?本当?」<br />ちょっとあっけにとられたように、Mさんの目が丸くなります。<br /><br />「じゃあ、副調理長のところへ行こう!」<br />「あの、今ですか?」<br />「気をもんでるよ。いま行こう!」<br /><br />まわりが、忙しくしてる中での二度目の話し合い。<br />いつの間にか、昨日はお休みだったAさんも、加わっています。<br />イヤ。<br />視線が痛い。<br />もう二度と手は出さないこと。<br />何かあったら、必ず報告すること。<br /><br />「かといって、変に萎縮して、叱るのを躊躇するなよ。きっちーも、責任はゼロか100かじゃないからな」<br /><br />と、最後に釘をさして、副調理長は仕事に戻っていきました。<br /><br />結局、どうなったかというと。<br />A先輩とは、その後2人で話し合い、やはり謝罪の言葉は聞かれなかったものの、同様に手はあげないと約束してもらいました。<br />私もどうやら、もう少し中華街でやってくことになりそうです。<br /><br />こんどの事でわかったのは、『無抵抗』と『非暴力』は違う、ということです。<br /><br />私も人間なので、蹴られたり、胸ぐらをつかまれたら、振り払って突き飛ばしてやりたいし、やり返したいという衝動を感じないわけはないのですが、でもそれをやってしまったら、相手と同レベルになってしまう、と自分に言い聞かせてガマンしていた部分がありました。<br /><br />ですが、無抵抗でやり返さない、というのが『非暴力』なのではなく、やられた時点で「それは容認できない」ときっぱり拒否の姿勢を表明することだった、と思うのです。<br /><br />なんというか、ただ抵抗しない受身の姿勢ではなく、暴力以外の方法で働きかけていこうとする、もっとポジティブな意思のあり方でなかったのではないか、と遅まきながら気付いたわけです。<br /><br />まあ、なんにせよ。<br />怪我が、なくて良かった。<br />うん、うん。<br /><br />唐辛子婆さんが、「調理場に隠しカメラを設置したいっ!」と怒りのメールをくださったのですが、じつは、あるんです。<br /><br />監視カメラ。<br /><br />社長のパソコンとオンラインになっているというのが、厨房のど真ん中にあります。<br />私自身は、監視カメラについて実を言うと、反対なんですが。<br />一方的に監視されるという意味で、抑圧的だし人権に反していると思います。<br />一連の事件は、このカメラの下でも行われていましたが、抑止効果はありませんでしたし、観ていた第三者が駆けつけてということもありませんでした。<br /><br />ようは、どこまで共通の認識が作れるかといった、職場教育の方が効果があるし、反対意見も含めて話し合うことの方が、『社長が設置した監視カメラ』なんかより、重要だと感じています。<br /><br />まあ、生意気なことを言ってるなと思いますが、そんな感じの『退職事件』でした。<br /><br />本日はここまで。<br />今日は、晴れたから、お布団干さなきゃです。<br />

職業調理師?「暴力か非暴力か~後編~」

2いいね!

2006/03/17 - 2006/03/19

38974位(同エリア48198件中)

6

3

きっちー

きっちーさん

前回のあらすじ!

中華街のペーパー調理師として、1年間のダメダメな厨房ライフを、エンジョイしていたきっちーでしたが、部署の上司であるセクハラA先輩と、悪い影響を受けたのか、そのまた上司の熱血M先輩にまでもが始めた、職場内暴力に嫌気がさし、退職を決意しました。
悩み続けて3月半ば、冷蔵庫の中で2人きりになったタイミングを見計らい、Mさんに退職の意思を伝えたのでした。
そこで待ってろと言われて、冷蔵庫に取り残された、私。
さ、寒いんですけど・・。
Mさん、早く戻ってきて・・。


公休の厨房長にかわって、鍋部に所属している副厨房長が、険しい顔でやってきます。

「ちょっと、来い」

傍らに立つMさんと、冷蔵庫の中でかなり冷え切ってしまった私、どちらにともなく言うと、厨房の片隅に歩いていきます。
寒いよう。
怖いよう。
入社当時、爆発させかけた、スープを取るケトルの横に並びます。
周りでは、黙々と他の調理師さんたちが、働いています。
しかし、忙しい時間帯に、副厨房長が鍋の仕事を抜けてまで、おこなわれる話し合いに、全員が耳をそばだてているのが伝わってきます。
なんともいや~な雰囲気。

「どういうことだよ」

こんどは、はっきりMさんと私の顔を、見比べながら副厨房長が、腕組みします。

「こいつが、辞めたいって言ってんですよ」
「だから、どうしてだよ」
「それは・・」

Mさんが言葉をつなごうとした、そのとき。

「あのう・・。僕、向こう行ってた方がいいですか?聞かない方がいいですかね?」

そばの流しで、洗い物をしていた新人Kくんが、恐る恐る尋ねてきます。
「いいよ。K、洗ってろよ」
ちょっと苦笑した、Mさんが表情を改めます。

「俺も、今聞いたばっかりで。詳しいことは聞いてないんです」
「どうしてだよ。なんか、あったのか」

副厨房長がこちらに向き直ります。

「じつは・・」

年末くらいからAさんの、手が出るようになっていたこと、それがエスカレートしていたこと。
さらには、Mさんも同様に、手が出るようになってしまってしまったこと。
ずっと我慢していたけれど、身の危険を感じるようになったので、調理師を辞めるつもりはないけれど、この厨房で仕事を続ける意欲は無くなったこと。

「今まででいた、どの厨房でも怒鳴る人はいても、手が出るような状況は無かったですし。私自身は、人に暴力を振るうという選択肢が、どんな正当な理由があっても、ありえないので、頭にきたからといって胸ぐらをつかんだり、蹴ったりというのは、信じられません。職場が厨房だから許される、という理屈はおかしいし、許されないことだと思っています。Mさんまで手が出るようになってしまって、いろいろ悩んだんですが、何かあってからでは遅いですし、3月いっぱいで退職しようと考えています」

「そういう事があったのは、間違いないんだな?」
「ハイ。Aがやっていたのは知っていましたし、俺も胸ぐらをつかんだりしました。ただ、今まで教え方が甘かったかな、と思ってそれで、暴力というよりは指導のつもりだったんですが・・」

副調理長の眉間のしわが、深くなります。

「しかし、そうなると逆だな。Aを辞めさせなきゃいけないぞ。俺も責任取って、辞めることになる」
「そんな・・っ!」

Mさんの、声がうわずります。

「Aの上は、俺なんだから、俺が辞めますよ!」
「いや、だって、そのために職責者手当てをもらってるんだし。
こないだ、本店で暴力事件があって、2人辞めさせられただろ。二度とそういう事が無いように、社長から厳重注意が出ているのに、気が付かなかったんだからな」

なんだか。
話の方向が、違う方に行ってしまっています。
まあ、人も少ないから、にこやかに「じゃあ辞めていいよ。おつかれさん」とまではいかないと思っていましたが、自分以外の人が辞める、というのは想像もしていませんでした。

「Eが、見かけた時には言ってくれてたんだけど、ちょっと対処するのが遅すぎたな・・」

ええっ??!
カンドーです。
あの、優しくて毛深いEさんが、見て見ぬ振りをして、暴力と共犯関係を築いていた職場の多数のなかで、ちゃんと言っててくれてたんだ・・・。
やっぱ、ナイスガイだよ~。

副調理長が、顔を覗き込みます。

「俺も、昔やられたことはある。でも、もう、そういう時代じゃないし、Aには二度とやらないように俺から話す。Aの将来のためにも手が出る、というのはやめさせなきゃいけない。お前についても、正直、一年もつかどうかと思ったけど、ここまでついて来たし、これからもっと伸びる大事な時期だと思う。何とか辞めない方向で、考えられないか?」

「・・・Aさんのこと、人間的には嫌いじゃないんです。
Mさんたちみたいに訊きに来ない奴には教えない、というスタンスじゃなくて、なかなか言い出せない私にも、Aさんの方から『~を訊きにおいで』って、何度も声掛けしてもらったし、感謝してるんです。
でも、そういう人だから、きっと暴力を振るうことを悪い、とは思っていないと思うんですね。できない私も悪いんですけど。

Aさんの中では、『こいつはここまでやっても、覚えないし、こたえてるように見えない。もっと強くやんなきゃ』って。
その『ここまで』が、どんどん延長していった先が、今の状況だと思うんです。
Aさんには、教えるって事と、手を出すって事が矛盾してないんだと思います。だから、副調理長が言ってくれても、彼が変わるかは、ちょっと疑問なんです。

いままで私のまわりでは、暴力で教える、という選択肢は存在しなかったし、こんなことが続いたら、私自身も後輩のK君や、新しく入社してくる人達に、同じようなことをしてしまうかもしれない。私は、自分がやられるのもそうだし、人がやられたりするのも、見たくないんです」

「でも、やめさせなきゃいけない。そういう時代じゃないんだからな。やめられないなら、辞めさせる事になる」
「私は、誰かに辞めてもらいたいとは思っていません。退職届にも『一身上の都合』と書くつもりです」
「いや、そんな甘くないんだよ。かなりしつこく聞かれるんだ」

「そんなこと言われても・・」

「きっちーの話はわかった」
黙って聞いていたMさんが、厳しい表情で息を吐きます。

「だけど、俺もAもお前が何度言ってもできないから、やり方を変えただけで、別にお前がムカつくからとかじゃないぞ。新しい奴が入ってくるのに、同じようなことくり返すし・・。俺としては、早く覚えてもらいたかったんだ。できないお前の方にも責任があるんだからな」

「それは・・。男と女の理屈の違いだなあ。おまえ、元アメフト部だもんなあ・・」
副調理長が苦笑します。
「でも理屈は、きっちーのほうが正しい。裁判したら、こいつが勝つぞ」

副調理長が口調を改めます。

「それで、どうだ。考え直してくれないかな?」

「・・・・」

そう言われてもなあ。
もう紹介して貰った先方に、よろしくって声掛けてもらっちゃったしなあ。
辞める気90%でいたので、意外な展開にリアクションに困ります。
う~ん。

とりあえずその場は、一晩、よく考えさせてください、と態度を保留にします。
どうしよう、どうしよう~。

翌日。

洗い物にいそしむ私のそばへ、そこはかとなく・・・ではなく。
いかにも、いつ切り出すか迷っている様子がありありの様子で、近づいてきたMさんが、口を開きます。

「それで・・。考えてみて、どうだった?」

「やっぱり、いろいろ考えてみたんですが・・・。辞めるのをやめようと思います」

「そうか・・。辞めるのか・・」

「いや、辞めるのをやめるんですけど・・」

「あ?本当?」
ちょっとあっけにとられたように、Mさんの目が丸くなります。

「じゃあ、副調理長のところへ行こう!」
「あの、今ですか?」
「気をもんでるよ。いま行こう!」

まわりが、忙しくしてる中での二度目の話し合い。
いつの間にか、昨日はお休みだったAさんも、加わっています。
イヤ。
視線が痛い。
もう二度と手は出さないこと。
何かあったら、必ず報告すること。

「かといって、変に萎縮して、叱るのを躊躇するなよ。きっちーも、責任はゼロか100かじゃないからな」

と、最後に釘をさして、副調理長は仕事に戻っていきました。

結局、どうなったかというと。
A先輩とは、その後2人で話し合い、やはり謝罪の言葉は聞かれなかったものの、同様に手はあげないと約束してもらいました。
私もどうやら、もう少し中華街でやってくことになりそうです。

こんどの事でわかったのは、『無抵抗』と『非暴力』は違う、ということです。

私も人間なので、蹴られたり、胸ぐらをつかまれたら、振り払って突き飛ばしてやりたいし、やり返したいという衝動を感じないわけはないのですが、でもそれをやってしまったら、相手と同レベルになってしまう、と自分に言い聞かせてガマンしていた部分がありました。

ですが、無抵抗でやり返さない、というのが『非暴力』なのではなく、やられた時点で「それは容認できない」ときっぱり拒否の姿勢を表明することだった、と思うのです。

なんというか、ただ抵抗しない受身の姿勢ではなく、暴力以外の方法で働きかけていこうとする、もっとポジティブな意思のあり方でなかったのではないか、と遅まきながら気付いたわけです。

まあ、なんにせよ。
怪我が、なくて良かった。
うん、うん。

唐辛子婆さんが、「調理場に隠しカメラを設置したいっ!」と怒りのメールをくださったのですが、じつは、あるんです。

監視カメラ。

社長のパソコンとオンラインになっているというのが、厨房のど真ん中にあります。
私自身は、監視カメラについて実を言うと、反対なんですが。
一方的に監視されるという意味で、抑圧的だし人権に反していると思います。
一連の事件は、このカメラの下でも行われていましたが、抑止効果はありませんでしたし、観ていた第三者が駆けつけてということもありませんでした。

ようは、どこまで共通の認識が作れるかといった、職場教育の方が効果があるし、反対意見も含めて話し合うことの方が、『社長が設置した監視カメラ』なんかより、重要だと感じています。

まあ、生意気なことを言ってるなと思いますが、そんな感じの『退職事件』でした。

本日はここまで。
今日は、晴れたから、お布団干さなきゃです。

  • 実家に帰ったついでに、お花見!<br />桜前線は、北上するのではなく、南下するってホントですか?<br /><br />

    実家に帰ったついでに、お花見!
    桜前線は、北上するのではなく、南下するってホントですか?

  • けーしちょーさんのリクエストでお届けする、「まかない」バナシ!<br /><br />実家近くの私の元バイト先。<br />あ、写真には写っていませんよ。<br />川べりの桜を撮ろうとしている、私のへたくそな写真です。<br />念のため。<br /><br />この某ホテルでは、「まかない」とは非公式のもので、お客さんの朝食バイキングを用意するため、朝早く出社している調理師さんたちが朝ごはんに、コソコソ隠れて食べるものでした。<br />ホテルには社員食堂があるので、昼はそこで食券使って食べます。<br /><br />ホールの人はホールの人たちで、何か食べていたようなので、公然の秘密といったところでしょうか。<br /><br />つまり会社的には、「まかない」はNG。<br /><br />作ってくれたのは、先日ご紹介した「最初の調理師」久保さん!<br />チャーハン、カレーライス、汁物などなど・・。<br />ちゃちゃちゃーっと、作ってくれちゃいます。<br />久保さんがお休みのときは、スーシェフが。<br />基本的にはベテランの人の、担当でした。<br />私は、コーヒーを入れる程度。<br /><br />メニューは、作る人のその日の気分ですが、端材ではなく、カツサンドにはさむトンカツとか、お客さんに出すのと同じものが出るので、ほとんど洋食屋さんと変わりません。<br /><br />ときにはスーシェフが、<br />「オムレツ、焼いてみろ」<br />などと任せてくれたりもしましたが、まったくきれいに巻けず。<br />巻けば巻くほどねじれてしまい・・。<br />「もうちょっと練習が必要だな・・」<br />と、途中交代させられ。<br />チラリと見ると、シェフにはスーシェフの焼いた、見事なオムレツが渡されていたりして、ちょっぴり反省。<br />これを、ブッチャーという肉や魚をさばく小部屋で、隠れて食べます。<br />いまでも、久保さんが作ってくれた、カレーに卵焼きとカツを乗せた「まかない」は、最高でした。

    けーしちょーさんのリクエストでお届けする、「まかない」バナシ!

    実家近くの私の元バイト先。
    あ、写真には写っていませんよ。
    川べりの桜を撮ろうとしている、私のへたくそな写真です。
    念のため。

    この某ホテルでは、「まかない」とは非公式のもので、お客さんの朝食バイキングを用意するため、朝早く出社している調理師さんたちが朝ごはんに、コソコソ隠れて食べるものでした。
    ホテルには社員食堂があるので、昼はそこで食券使って食べます。

    ホールの人はホールの人たちで、何か食べていたようなので、公然の秘密といったところでしょうか。

    つまり会社的には、「まかない」はNG。

    作ってくれたのは、先日ご紹介した「最初の調理師」久保さん!
    チャーハン、カレーライス、汁物などなど・・。
    ちゃちゃちゃーっと、作ってくれちゃいます。
    久保さんがお休みのときは、スーシェフが。
    基本的にはベテランの人の、担当でした。
    私は、コーヒーを入れる程度。

    メニューは、作る人のその日の気分ですが、端材ではなく、カツサンドにはさむトンカツとか、お客さんに出すのと同じものが出るので、ほとんど洋食屋さんと変わりません。

    ときにはスーシェフが、
    「オムレツ、焼いてみろ」
    などと任せてくれたりもしましたが、まったくきれいに巻けず。
    巻けば巻くほどねじれてしまい・・。
    「もうちょっと練習が必要だな・・」
    と、途中交代させられ。
    チラリと見ると、シェフにはスーシェフの焼いた、見事なオムレツが渡されていたりして、ちょっぴり反省。
    これを、ブッチャーという肉や魚をさばく小部屋で、隠れて食べます。
    いまでも、久保さんが作ってくれた、カレーに卵焼きとカツを乗せた「まかない」は、最高でした。

  • 中華街の今のお店は、2食とも社食なので、残念ながら「まかない」は存在しません。<br />社食といっても、やっぱり少人数作って、みんなでコソコソ食べていたまかないの美味しさに比べたら、全然かなわないんですけど。<br /><br />ときどき、ホテルなんかに就職した、元クラスメートから、<br />「まかない任されてるんだ」<br />などというメールを見ると、いまだにスープ取り止まりの自分としては、うらやましい限りです。<br /><br />それでも、調理師として採用されても、すぐに厨房の配属にはならず、勉強として1年間はホールの仕事をやらなくちゃいけない、という条件があるところもあって、「調理」をやる道のりというのは、ホントに仕事場によって違うんだなあ、と考えさせられます。<br /><br />とりあえず、本日はここまで!

    中華街の今のお店は、2食とも社食なので、残念ながら「まかない」は存在しません。
    社食といっても、やっぱり少人数作って、みんなでコソコソ食べていたまかないの美味しさに比べたら、全然かなわないんですけど。

    ときどき、ホテルなんかに就職した、元クラスメートから、
    「まかない任されてるんだ」
    などというメールを見ると、いまだにスープ取り止まりの自分としては、うらやましい限りです。

    それでも、調理師として採用されても、すぐに厨房の配属にはならず、勉強として1年間はホールの仕事をやらなくちゃいけない、という条件があるところもあって、「調理」をやる道のりというのは、ホントに仕事場によって違うんだなあ、と考えさせられます。

    とりあえず、本日はここまで!

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この旅行記へのコメント (6)

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  • けーしちょーさん 2006/04/10 23:43:47
    まかないめしで、おなかいっぱい♪
    きっちーさん。リクエストにお応えいただき、ありがとうございました。

    実は、私。
    学生時代のアルバイトは、色々やりましたが
    食い物屋だけは、とぎれることなくやってました。
    ファミレスに始まり、宴会場まで。
    うまいもん食わせてもらえないと、辞めちゃうの(爆)

    私の天国は、みなさんが花見に繰り出すことで有名な
    東京の、某公園内にある、洋食屋でした。
    作ることはなく、食べるばかりでしたが、
    当時を思い出して、幸せな気持ちになりました。

    食べ物の記憶って、強烈!

    きっちー

    きっちーさん からの返信 2006/04/11 21:25:38
    RE: まかないめしで、おなかいっぱい♪
    やばいですね(笑)。
    そしたら、けーしちょーさんのほうが先輩じゃないですか!
    私なんか、まだ3件目だし・・。
    まかない経験も浅いです!
    まかないは、見た目はともかく、本当に作り立てで、味はサイコーですよね!
    大好きです。
    いかん・・。
    また、食べたくなってきました。
    久保さんが、横浜まで出張してくれないかなあ。
    無理か(笑)。
    けーしちょーさんはどんなお店でバイトされてたんですか?

    けーしちょー

    けーしちょーさん からの返信 2006/04/17 22:52:14
    RE: RE: まかないめしで、おなかいっぱい♪

    ファミレス→ファーストフード→洋食屋

    で、洋食屋さんが気に入って気に入って、ずーっと♪
    「まず、メシだ!!」
    という社風で、バイトに入るとお昼前に「ごはん」
    一通り仕事をして夕方になると「ごはん」
    社食には、たくさんのおかずが並べられ、食べ放題。
    ごはんもおかわりし放題。
    あぁ、夢のような日々☆

    うぬぬ、きっちーさんが「異端カタリ派」だったとは。。

    ますます、「何者?」って感じ。
    ワクワクします。続きを!!

    きっちー

    きっちーさん からの返信 2006/04/22 09:35:37
    RE: RE: RE: まかないめしで、おなかいっぱい♪
    すんません。
    不勉強なため、カタリ派の意味が
    「『異端』つーからには、キリスト教系の一派か???」
    くらいにしかわからなかったので、yahoo!で検索。



    中世ヨーロッパで一時有力だったキリスト教異端の一派。カタリ(Cathari)とは清浄派の意。極度に禁欲的な戒律を奉じたためにこの名が生じた。二神論を基本教義とする。アルビジョア派、パタリニ派、ブルガリ派、プブリカニ派等、地方と時期により多くの別称がある。最初12世紀半ばライン川沿いの諸都市及び低地帯で発見されたが、次第に南に広がり南フランスと北・中部イタリアに確固たる地位を築いた。そのため南フランスではアルビジョア十字軍の発進を、また異端審問制度の創設を必要とした。14世紀半ばに根絶される。
     善神と悪神、さらにそれぞれの属性や領域の対立を想定し、いっさいの物質的存在、現実世界そのものを悪神に属するとみる。人間観は、善神の天使(霊魂)が悪神に捕らえられ牢獄(肉体)に封入されている状態と考える点に特徴がある。教義の細部については彼らの間に相違があり、二神二世界の永劫の存在を想定する絶対派、善神の一天使が反逆して悪神となった、つまり悪は善からの派生物で有限であるとする穏和派の別があった。霊魂の輪廻転生説をとるのは絶対派のみである。ローマ教会を悪魔の教会として攻撃し、旧約聖書は悪の世界の創造者たる悪神の書として排撃した。十字の聖号は、キリストを殺害するという人類最大の罪の記念であるとして嫌った。独自の教団を組織してキリストの真の教会と称し、司教を戴いた。按手礼を受けて教会の信者となり戒律をまっとうするとき、霊魂は悪神の世界から解放されて天界に復帰できると信じた。肉食、殺生、生殖、婚姻、所有など、いっさいの世俗生活を否定し、しばしば断食して苛烈な苦行を実行した。家族、誓約、権力など、いっさいの社会関係も否定される。このような極度に悲観的否定的な教団に入信するものは比較的少数だったが、その周囲に彼らを尊信するものが多かったために社会的に大きな影響力を発揮したのである。同派は中世にあってはマニ教の復活ないし再流入と理解され、今に至るも異教か異端かの議論が行われている。10世紀から14世紀末までバルカン半島の存続した二神論異端ボゴミル派の強い影響下に西欧に発現したことは確実であり、カタリ教団の設立に当たってはボゴミル教団の指導を仰いでいるし、《ヨハネ問答録〈秘密の晩餐〉》や《イザヤ見神記》等の偽書も東方から受容されたのである。さらに先行する近東の二神論異端小パウロ派からの影響が混入していることも、十分に考えられる。しかし、これら先行異端とマニ教との連続は立証できない。カタリ派はやや独自の解釈を加える傾向はあるものの、新約聖書の章句に固執し、原始キリスト教団の生活を理想化してそのまま実践しようとする強烈な意志を示した。二神論教義も、立論の根拠は常に新約聖書であった。儀典や慣行の中にも、異教的要素は全く見いだされない。マニ教から、あるいはグノーシス諸派からの間接の影響が及んでいないとは言えないが、基本的にはキリスト教内の異端であった。  

      - 世界宗教大辞典 pp.358-359

    んん〜。
    ながっ。
    やっぱりよくわかりません(笑)。
    ま、でもクリスチャンではないので。

    ファミレスにもいらしたんですか!
    私の憧れのバイト先は、『バーミアン』でした。
    あそこは冷凍じゃなくて、厨房で作っていると聞いていたので。
    でも近所に無くて、ホテルの厨房でバイトしてました。
    いまでも、『バーミアン』をみるとほろ苦い気分になります(笑)。

    けーしちょー

    けーしちょーさん からの返信 2006/04/24 01:30:25
    まったく、何者なんだ?
    きっちーさん。

    すごい引用文にびっくり。

    私の友達が、エヴァンゲリオンから異端カタリ派に足をつっこんだらしく(←何度聞いても意味不明な動機)友達からの耳学問でしかないのですが。。。

    「神様、助けて」といっても助けてくれない。
    どんなに神様にお願いしても、神様が創った世の中は、
    ナカナカ良くはならない。
    んぢゃ、こんな世の中作った「神様」って、
    実は、悪い人なんぢゃないなのか?

    ?そんな、みんなの考える神様なんかいねーよ。

    ?神様はいるけど、悪い人なんぢゃねぇのか。

    と、教義で分派するようですが、乱暴に要約すると
    異端カタリ派はこんな感じになるようです。

    きっちーさんの、見事な三段論法に、「すわ、異端カタリ派か?!」
    と思ったしだいです。
    宗教をあれこれ言うのは多少勇気が必要ですが
    カドのたたない配慮にも、きっちーさんの教養を感じ、拍手デス。

    もうこんな時間。
    こんな夜中は、バーミヤンでラーメンが食いたい、そんな気分。

    きっちー

    きっちーさん からの返信 2006/04/24 12:52:29
    RE: まったく、何者なんだ?
    あ、わたしもエヴァは、観てました(笑)。
    流行ってるって聞いて、再放送で。

    最初はふつーに面白く見ていたのですが、最終回で「これかよっ!!(やや切れ)」と、挫折しまして。
    あれは、ちょっと・・。
    映画に続くにしても・・つけたしじゃ・・。ぶちぶち・・・。
    そして、映画は観なかったので、ラストがわかりません!
    すんません!!

    TVの方でカタリ派なんて言葉出てましたっけ??
    ちゃんと観てなかったな(笑)。

    このナントカ辞典によると、「神を信じない」というよりは「善と悪の二神を前提としており、物質界および肉体は悪神の支配区域と定義している」ところが特徴のようですね。
    そのうえ、神による物質界誕生の経緯が記された旧約聖書がバツで、十字架を毛嫌いしてるんじゃ、あんだけ十字架を主題とした宗教美術品に固執している、ローマ法王庁と敵対したのも、うなずけます。

    お金かかってますモンネ〜。
    システィーナ礼拝堂とか、ミケランジェロも、どうしたらいいかわかりませんね!
    あの労作を否定されたら、つらいだろうなあ(笑)。

    わたしはまた、けーしちょーさんがクリスチャンの人だったかと、一瞬冷や汗をかきました。
    無宗教はわたしの、個人的な姿勢ではありますが、人によっては怒る人もいるかもなぁ、と思ってたので。

    神様を信仰する習慣はありませんが、仲良くしてくださいネ!

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