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1998・5・16〜5・23<br /><br /><br /><br /> 平成10年5月17日午後5時前に標高2241mのメキシコシティへ到着し、前面がガラス張りのキラキラ光っているクリスタルホテルへ荷物を置くとすぐ黄昏どきの市街へ出た。名物料理のタコスを食べるためにガルバルディー広場にあるレストランへ急いだ。高地だけに肌寒かった。<br /><br /> 街の第一印象はコロニアル様式の古い建物が立ち並んでおり、ヨーロッパ風の街並である。コルテスがアステカ帝国を征服してからスペイン人達が作り上げた街だというのが頷ける。<br /><br /> タコスはトルティーヤというトウモロコシの粉を練って薄く焼いたパンに野菜や肉をくるんで食べるのだが、サルサと呼ばれる緑色や橙色のソースをつけて食べるとなかなか美味しい。<br /> 飲み物にはマルガリータというテキーラがベースになったカクテルを貰った。とても甘くて口当たりがよい。グラスの回りに塩が塗ってあってこれがまた味を引き立てる。<br /> 舞台ではダンス、投げ縄、タップダンスなど盛り沢山であった。踊り子や楽士達の衣装はこれまたスペイン風であった。ショーが終わると待ちかねていたように、老いも若きも日本人以外の客は、我先にと舞台へ上がりダンスを始めた。彼らには踊りが生活の一部になっているという感じである。ガルバルディー広場は通称マリアッチ広場ともいうらしいが、何組ものマリアッチ(メキシコ独特の楽団)が演奏しており、その周辺には群衆が屯してそれぞれに夏の夜を楽しんでいた。<br /><br /> 翌朝、ホテルを出ると操り人形を持った男がしきりにアミーゴと言いながら近寄ってくる。5ペソほどチップを与えて写真を撮った。<br /><br /> その広さが24万m2もあるというソカロ広場を通って国立宮殿へ入りリベラ作の大きな壁画の解説を聞いた。壁画には夥しいほど数多くの人物が描かれており、その内容は歴史あり、物語ありで説明がなければ意味も分からずに素通りするところだが、ガイドの説明になるほどと頷くことができた。<br /> メキシコは1917年に現行憲法が制定されるまで、今世紀初頭に何回もの革命騒動や政変があったが、革命の理念は褐色の原住民の開放を目指したものであったから、この壁画の主題はコルテスを初めとして彼らを不当に搾取した白人達を告発することと、古代アステカ世界を礼賛することにあるという風に理解した。<br /><br /> 三文化広場、サンティアゴ教会を見学してから、グァダルーペ寺院のマリヤ像を物凄い人混みにもまれながら見学した。<br /><br /> 三文化広場のあるところはアステカの時代に商業都市として栄えたところで1521年にアステカ帝国とスペイン軍との最後の戦闘があった場所である。アステカの神殿遺跡、コロニアル様式のサンティアゴ教会、そして外務省をはじめとする近代・現代の高層建築が一ケ所に会しているので三つの時代の文化という意味で三文化広場と称しているのである。<br /><br /> サンティアゴ教会ではミサをしている所やステンドグラスの単純な模様を見学した。内部の壁に装飾のないすっきりした建物はこれでまたなかなか厳かな感じを与えるものである。<br /><br /> グァダルーペ寺院の周囲にはメキシコ全土から集まってきた善男善女が着飾って、酷暑の中を汗かきながら行列を作り入場の順番を待っていた。ここはメキシコの聖地であり信者達の熱気がムンムンと立ち込めていた。<br /> グアダルーペ寺院のマリヤ像についてはメキシコ人なら誰でも知っている次のような奇跡が伝えられている。<br /><br /> コルテスに征服されて10年後の1531年、ホアン・ディエゴという農民が、当時のメヒコ市の司教スマラガの所へ息せき切って駆けつけて来て言うには市の郊外のテペヤックの丘にマリヤが現れて「ここに教会を建てて欲しい。自分がそう言った証拠としてそこに咲いているバラの花を摘み、着ている正装用のマントに包んで司教の所へ持って行きなさい」と言ったというのである。司教がマントを拡げてみると、そこにこのマリア像が写っておりそれ以来、聖母像がメキシコ人の信仰の中心になりこの寺院が聖地になったのである。<br /><br /> ティオティワカン遺跡へ向かう途中、メキシコ人の土産物店で主人から龍舌蘭の葉を教材として使いながらの説明を聞いたがなかなか面白かった。サボテンの一種であるこの龍舌蘭からは繊維、紙、テキーラ、医薬品、化粧品等沢山の製品がとれて貴重な植物である。バスで移動するときにも、しばしばこの龍舌蘭の畑を目撃した。まさしくメキシコは太陽とサボテンの国である。窓から差し込んでくる日差しも心なしか陽気で力強く感じられる。<br /><br /> ティオティワカンはメキシコシティーの北東50kmにある巨大な宗教都市の遺跡である。紀元前2世紀頃から6世紀頃にかけて発展し、8世紀に滅んだと考えられている。ティオティワカンとは人間が神に変わる場所という意味で、王はこの地に埋葬された後、神に生まれ変わると信じられていた。<br /><br /> この遺跡にある「太陽のピラミッド」は高さ65m、底辺1辺225m、容積約100万m3もある巨大なもので太陽が正面に沈むように設計されている。このピラミッドの階段を手すりに掴まりながら頂上まで登ると緑に包まれた広大な遺跡を一望できて古代のロマンに暫し思いを馳せた。<br /><br /> 翌日はメキシコシティー空港よりユカタン半島のメリダ空港へ飛んで、マヤ遺跡へ向かう途中マヤ人の市場へ立ち寄って彼等の生活状況を観察した。月15&#44000;円〜20&#44000;円が収入だという。中産階級の下限の年収が1&#44000; ドルだといい彼らは今なお下積みの生活に耐えている。<br /><br /> サンタエレナ村のマヤ人の農家マリヤさんの自宅を訪問し見学した。よく太ったこの家の主婦マリヤさんが自らトルティーヤを焼いて振る舞って下さった。広い赤土の敷地は草一本生えていないほどよく手入れされており、屋内も清掃が行き届いていて、いかにも清潔好きな主の人柄を見る思いであった。椰子の葉の涼しげな天井と部屋の中には家具らしいものは殆どなかったのが印象的であった。湿度の高い熱帯地方の風土によくあった生活の形式であると感心して見ていた。また庭には幾つもの檻が置いてあり、孔雀、梟、オウム、九官鳥その他の小鳥が十数種類も飼われていた。彼らは古代マヤ文明を作りだした誇り高きユカタン人でありまたマヤ人の末裔でもあって、今も農業を営んでいるのである。<br /><br /> メリダから約80kmの所にウシュマル遺跡がある。この遺跡はマヤ文明古典期後期の宗教遺跡で壁面にはプーク(台座や壁面を神像などできらびやかに飾りたてる建築様式)と呼ばれる美しい浮き彫りが残されており、マヤ独特の建築様式の最高傑作といわれている。<br /><br /> 「魔法使いのピラミッド」や「尼僧院」と呼ばれる建物群、「総督の家」が残されていて、これらの建物の外壁には象の鼻のように長い鼻に特徴のあるチャック神像(雨の神)や蛇の形をしたククルカン像やその他の動物像等が浮き彫りされている。「球技場」も残されていて建物の内壁には円形の穴のあいた石造りの突起物が取り付けてあり球技用のゴールではないかと考えられている。そして、ここにある建物には鋭角のアーチ型の石組が多く使われており、重量物を支えるには力学的にも最も効果的な構造であり、彼らの建築技術が優れていたことを証明している。<br /><br /> ウシュマル遺跡から20km程離れたカバー遺跡も見学した。ここには、「コズ・ポープ」と呼ばれる神殿が残されておりその壁面には表情豊かなチャック神のマスクが多数浮き彫りされており、保存状態のよいものが沢山残っていた。古代マヤ人が雨という天の恵みを如何に大切に扱っていたかが窺われる。<br /><br /> メリダから西へ約120km行ったところに、チチェンイッッア遺跡がある。この遺跡は古典期後期(600年〜900年)頃マヤの宗教センターとして栄えた所である。900年頃メキシコ中央高原に文明を持っていたトルテカ民族がここへ進出した。彼らは羽を持つ蛇ククルカンを神として崇めたが、チチェンイッツアを征服してからもマヤ文明を容認しマヤ的なものとトルテカ的なものを融合した。<br /><br /> チチェンイッッア遺跡ではカスティーヨ(ククルカンのピラミッド)、戦士の神殿、球技場、生贄の泉、カラコル(天文台)を見学した。ここでの最大の見物は高さ30mの建造物カスティーヨである。春分の日、秋分の日にはピラミッドの影が中央階段にさし、蛇の彫刻に羽が生えたように見えるというのである。実に壮大な仕掛けである。そしてこのピラミッドの内部にはもう一つ小さいピラミッドが収められていて、小さなピラミッドの頂上には赤いジャガーの像と生贄の心臓を置くチャック・モール像が置かれている。<br /> そして、球技場で競技をする戦士達は神に捧げられる名誉の生贄となることを競うのであるという。また生贄の泉(セノーテ)は雨乞いをするために捧げられた生贄を投げ込むための泉であったという。また生贄の頭蓋骨を安置したツオンパトリも残されている。 古代マヤ人やトルテカ人の死生観、宗教観の一端を垣間見た気がした。<br /><br /> トゥルムの遺跡は国際的なリゾート地カンクンに近い海岸線に残されている遺跡である。紺碧のカリブ海の海浜にあるこの遺跡にくると何かしらほっとした気持ちになる。チチェンイッツアで生贄の祭壇とか髑髏の彫り物などを見て、古代人の宗教観の凄まじさに多少辟易しかけてきていただけに美しい自然の光景が心を安らかにしてくれる。この両遺跡は規模も小さくカスティーヨが残されているが、これはカリブ海とのコントラストで風景画の中の一点景と捉えた方が観光客には面白い。<br /><br /> 遺跡巡りの最後にカリブ海の入江シェルハへ立ち寄り、水着に着替えて紺碧のカリブ海の水と戯れた。アメリカやヨーロッパからの観光客がシュノーケルをつけて海底の珊瑚や魚を観察したり、浜辺の椰子の木の下の白浜で背中の甲羅干しをしたりしながら余暇を楽しんでいた。<br /><br /> カンクンではイスラム・ヘーレス島へ船で渡り、潜水艦に乗ってカリブ海の海底を観察した。珊瑚礁の間を回遊する金色や青色や緑色の魚の群舞を見ているとさながら、浮世のことを忘れて龍宮城に遊ぶ浦島太郎の心境になっていた。<br /><br /> メキシコシティー市内へ近づくと、近郊の山の斜面に夥しい数の粗末な建物が無秩序に軒を並べている。これはトルコのイスタンブールやアルゼンチンのブエノスアイレス近郊でも目撃したことであるが、田舎にいた原住民達が生活に窮したり、差別にあったりして都会地へ集まり国有地の山に不法に住みついたものであるという。原住民と征服民との力関係が後世に及ぼす影響を物語っているといえるのではなかろうか。<br /><br /> 今回の旅行は古代遺跡漬けの毎日であったが、人間の原点に立ち戻って暫し古代人の宗教観や死生観に思いを致したことは、老後の心豊かな生活を目指している私にとって大いに参考になったと思っている。<br /><br /><br />

陽光がサボテンにふりそそぐ古代遺跡の国

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1998/05/16 - 1998/05/23

4806位(同エリア6362件中)

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15

早島 潮

早島 潮さん

1998・5・16〜5・23



 平成10年5月17日午後5時前に標高2241mのメキシコシティへ到着し、前面がガラス張りのキラキラ光っているクリスタルホテルへ荷物を置くとすぐ黄昏どきの市街へ出た。名物料理のタコスを食べるためにガルバルディー広場にあるレストランへ急いだ。高地だけに肌寒かった。

 街の第一印象はコロニアル様式の古い建物が立ち並んでおり、ヨーロッパ風の街並である。コルテスがアステカ帝国を征服してからスペイン人達が作り上げた街だというのが頷ける。

 タコスはトルティーヤというトウモロコシの粉を練って薄く焼いたパンに野菜や肉をくるんで食べるのだが、サルサと呼ばれる緑色や橙色のソースをつけて食べるとなかなか美味しい。
 飲み物にはマルガリータというテキーラがベースになったカクテルを貰った。とても甘くて口当たりがよい。グラスの回りに塩が塗ってあってこれがまた味を引き立てる。
 舞台ではダンス、投げ縄、タップダンスなど盛り沢山であった。踊り子や楽士達の衣装はこれまたスペイン風であった。ショーが終わると待ちかねていたように、老いも若きも日本人以外の客は、我先にと舞台へ上がりダンスを始めた。彼らには踊りが生活の一部になっているという感じである。ガルバルディー広場は通称マリアッチ広場ともいうらしいが、何組ものマリアッチ(メキシコ独特の楽団)が演奏しており、その周辺には群衆が屯してそれぞれに夏の夜を楽しんでいた。

 翌朝、ホテルを出ると操り人形を持った男がしきりにアミーゴと言いながら近寄ってくる。5ペソほどチップを与えて写真を撮った。

 その広さが24万m2もあるというソカロ広場を通って国立宮殿へ入りリベラ作の大きな壁画の解説を聞いた。壁画には夥しいほど数多くの人物が描かれており、その内容は歴史あり、物語ありで説明がなければ意味も分からずに素通りするところだが、ガイドの説明になるほどと頷くことができた。
 メキシコは1917年に現行憲法が制定されるまで、今世紀初頭に何回もの革命騒動や政変があったが、革命の理念は褐色の原住民の開放を目指したものであったから、この壁画の主題はコルテスを初めとして彼らを不当に搾取した白人達を告発することと、古代アステカ世界を礼賛することにあるという風に理解した。

 三文化広場、サンティアゴ教会を見学してから、グァダルーペ寺院のマリヤ像を物凄い人混みにもまれながら見学した。

 三文化広場のあるところはアステカの時代に商業都市として栄えたところで1521年にアステカ帝国とスペイン軍との最後の戦闘があった場所である。アステカの神殿遺跡、コロニアル様式のサンティアゴ教会、そして外務省をはじめとする近代・現代の高層建築が一ケ所に会しているので三つの時代の文化という意味で三文化広場と称しているのである。

 サンティアゴ教会ではミサをしている所やステンドグラスの単純な模様を見学した。内部の壁に装飾のないすっきりした建物はこれでまたなかなか厳かな感じを与えるものである。

 グァダルーペ寺院の周囲にはメキシコ全土から集まってきた善男善女が着飾って、酷暑の中を汗かきながら行列を作り入場の順番を待っていた。ここはメキシコの聖地であり信者達の熱気がムンムンと立ち込めていた。
 グアダルーペ寺院のマリヤ像についてはメキシコ人なら誰でも知っている次のような奇跡が伝えられている。

 コルテスに征服されて10年後の1531年、ホアン・ディエゴという農民が、当時のメヒコ市の司教スマラガの所へ息せき切って駆けつけて来て言うには市の郊外のテペヤックの丘にマリヤが現れて「ここに教会を建てて欲しい。自分がそう言った証拠としてそこに咲いているバラの花を摘み、着ている正装用のマントに包んで司教の所へ持って行きなさい」と言ったというのである。司教がマントを拡げてみると、そこにこのマリア像が写っておりそれ以来、聖母像がメキシコ人の信仰の中心になりこの寺院が聖地になったのである。

 ティオティワカン遺跡へ向かう途中、メキシコ人の土産物店で主人から龍舌蘭の葉を教材として使いながらの説明を聞いたがなかなか面白かった。サボテンの一種であるこの龍舌蘭からは繊維、紙、テキーラ、医薬品、化粧品等沢山の製品がとれて貴重な植物である。バスで移動するときにも、しばしばこの龍舌蘭の畑を目撃した。まさしくメキシコは太陽とサボテンの国である。窓から差し込んでくる日差しも心なしか陽気で力強く感じられる。

 ティオティワカンはメキシコシティーの北東50kmにある巨大な宗教都市の遺跡である。紀元前2世紀頃から6世紀頃にかけて発展し、8世紀に滅んだと考えられている。ティオティワカンとは人間が神に変わる場所という意味で、王はこの地に埋葬された後、神に生まれ変わると信じられていた。

 この遺跡にある「太陽のピラミッド」は高さ65m、底辺1辺225m、容積約100万m3もある巨大なもので太陽が正面に沈むように設計されている。このピラミッドの階段を手すりに掴まりながら頂上まで登ると緑に包まれた広大な遺跡を一望できて古代のロマンに暫し思いを馳せた。

 翌日はメキシコシティー空港よりユカタン半島のメリダ空港へ飛んで、マヤ遺跡へ向かう途中マヤ人の市場へ立ち寄って彼等の生活状況を観察した。月15ꯠ円〜20ꯠ円が収入だという。中産階級の下限の年収が1ꯠ ドルだといい彼らは今なお下積みの生活に耐えている。

 サンタエレナ村のマヤ人の農家マリヤさんの自宅を訪問し見学した。よく太ったこの家の主婦マリヤさんが自らトルティーヤを焼いて振る舞って下さった。広い赤土の敷地は草一本生えていないほどよく手入れされており、屋内も清掃が行き届いていて、いかにも清潔好きな主の人柄を見る思いであった。椰子の葉の涼しげな天井と部屋の中には家具らしいものは殆どなかったのが印象的であった。湿度の高い熱帯地方の風土によくあった生活の形式であると感心して見ていた。また庭には幾つもの檻が置いてあり、孔雀、梟、オウム、九官鳥その他の小鳥が十数種類も飼われていた。彼らは古代マヤ文明を作りだした誇り高きユカタン人でありまたマヤ人の末裔でもあって、今も農業を営んでいるのである。

 メリダから約80kmの所にウシュマル遺跡がある。この遺跡はマヤ文明古典期後期の宗教遺跡で壁面にはプーク(台座や壁面を神像などできらびやかに飾りたてる建築様式)と呼ばれる美しい浮き彫りが残されており、マヤ独特の建築様式の最高傑作といわれている。

 「魔法使いのピラミッド」や「尼僧院」と呼ばれる建物群、「総督の家」が残されていて、これらの建物の外壁には象の鼻のように長い鼻に特徴のあるチャック神像(雨の神)や蛇の形をしたククルカン像やその他の動物像等が浮き彫りされている。「球技場」も残されていて建物の内壁には円形の穴のあいた石造りの突起物が取り付けてあり球技用のゴールではないかと考えられている。そして、ここにある建物には鋭角のアーチ型の石組が多く使われており、重量物を支えるには力学的にも最も効果的な構造であり、彼らの建築技術が優れていたことを証明している。

 ウシュマル遺跡から20km程離れたカバー遺跡も見学した。ここには、「コズ・ポープ」と呼ばれる神殿が残されておりその壁面には表情豊かなチャック神のマスクが多数浮き彫りされており、保存状態のよいものが沢山残っていた。古代マヤ人が雨という天の恵みを如何に大切に扱っていたかが窺われる。

 メリダから西へ約120km行ったところに、チチェンイッッア遺跡がある。この遺跡は古典期後期(600年〜900年)頃マヤの宗教センターとして栄えた所である。900年頃メキシコ中央高原に文明を持っていたトルテカ民族がここへ進出した。彼らは羽を持つ蛇ククルカンを神として崇めたが、チチェンイッツアを征服してからもマヤ文明を容認しマヤ的なものとトルテカ的なものを融合した。

 チチェンイッッア遺跡ではカスティーヨ(ククルカンのピラミッド)、戦士の神殿、球技場、生贄の泉、カラコル(天文台)を見学した。ここでの最大の見物は高さ30mの建造物カスティーヨである。春分の日、秋分の日にはピラミッドの影が中央階段にさし、蛇の彫刻に羽が生えたように見えるというのである。実に壮大な仕掛けである。そしてこのピラミッドの内部にはもう一つ小さいピラミッドが収められていて、小さなピラミッドの頂上には赤いジャガーの像と生贄の心臓を置くチャック・モール像が置かれている。
 そして、球技場で競技をする戦士達は神に捧げられる名誉の生贄となることを競うのであるという。また生贄の泉(セノーテ)は雨乞いをするために捧げられた生贄を投げ込むための泉であったという。また生贄の頭蓋骨を安置したツオンパトリも残されている。 古代マヤ人やトルテカ人の死生観、宗教観の一端を垣間見た気がした。

 トゥルムの遺跡は国際的なリゾート地カンクンに近い海岸線に残されている遺跡である。紺碧のカリブ海の海浜にあるこの遺跡にくると何かしらほっとした気持ちになる。チチェンイッツアで生贄の祭壇とか髑髏の彫り物などを見て、古代人の宗教観の凄まじさに多少辟易しかけてきていただけに美しい自然の光景が心を安らかにしてくれる。この両遺跡は規模も小さくカスティーヨが残されているが、これはカリブ海とのコントラストで風景画の中の一点景と捉えた方が観光客には面白い。

 遺跡巡りの最後にカリブ海の入江シェルハへ立ち寄り、水着に着替えて紺碧のカリブ海の水と戯れた。アメリカやヨーロッパからの観光客がシュノーケルをつけて海底の珊瑚や魚を観察したり、浜辺の椰子の木の下の白浜で背中の甲羅干しをしたりしながら余暇を楽しんでいた。

 カンクンではイスラム・ヘーレス島へ船で渡り、潜水艦に乗ってカリブ海の海底を観察した。珊瑚礁の間を回遊する金色や青色や緑色の魚の群舞を見ているとさながら、浮世のことを忘れて龍宮城に遊ぶ浦島太郎の心境になっていた。

 メキシコシティー市内へ近づくと、近郊の山の斜面に夥しい数の粗末な建物が無秩序に軒を並べている。これはトルコのイスタンブールやアルゼンチンのブエノスアイレス近郊でも目撃したことであるが、田舎にいた原住民達が生活に窮したり、差別にあったりして都会地へ集まり国有地の山に不法に住みついたものであるという。原住民と征服民との力関係が後世に及ぼす影響を物語っているといえるのではなかろうか。

 今回の旅行は古代遺跡漬けの毎日であったが、人間の原点に立ち戻って暫し古代人の宗教観や死生観に思いを致したことは、老後の心豊かな生活を目指している私にとって大いに参考になったと思っている。


  • メキシコシティのマリアッチ広場

    メキシコシティのマリアッチ広場

  • メキシコシティのクリスタル・ホテルの前。操り人形でチップを稼ぐ地元のおじさん

    メキシコシティのクリスタル・ホテルの前。操り人形でチップを稼ぐ地元のおじさん

  • メキシコシティーのソカロ広場

    メキシコシティーのソカロ広場

  • グアダルーペ寺院の聖母マリヤ

    グアダルーペ寺院の聖母マリヤ

  • メリダにて。竜舌蘭とソンボレロ。

    メリダにて。竜舌蘭とソンボレロ。

  • ウシュマル遺跡

    ウシュマル遺跡

  • ティオティアカン遺跡のピラミッドの上からの展望

    ティオティアカン遺跡のピラミッドの上からの展望

  • チチェンイッツアの遺跡

    チチェンイッツアの遺跡

  • ウシュマル遺跡

    ウシュマル遺跡

  • サンタエレアナ村のマリアさんの一家と

    サンタエレアナ村のマリアさんの一家と

  • トゥルム遺跡

    トゥルム遺跡

  • カンクンの海辺

    カンクンの海辺

  • カンクンで潜水艦に乗り込む

    カンクンで潜水艦に乗り込む

  • ホテルの夕食。メインディッシュの白身の魚

    ホテルの夕食。メインディッシュの白身の魚

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