この国の輸送は、河に大きく依存している。<br />「母なる河」と呼ばれるザイール河は、広大なザイール盆地を貫流し、全長４，３７０ｋｍ（世界４位）、東京―バンコク間の距離に匹敵する長さ。<br /><br />流域面積３６９万平方キロ（世界２位）は、日本の国土面積の１０倍、利根川の２２０倍。。<br />年間平均流量、毎秒４万トン（世界２位）は、利根川の２００倍だが、一年を通じて安定し変化が少ない。<br />最大流量と最小流量の比は、日本の川では２０〜４０だが、ザイール河は３〜４程度に過ぎない。<br /><br />流域が北半球と南半球にまたがっているので、流域に降る雨が年間を通じて安定しているからである。<br />水量の安定は、この河の利用価値を高めている。<br /><br />だが、いくつかの急流地点では、船の通行できないので、その部分だけ鉄道が必要となる。<br />上流部のスタンレー瀑布、下流部のキンシャサ・マタディ間などは、鉄道が敷設され、船で運ばれた貨物は、積み替えが必要。<br /><br />その不便さと、もうひとつ船が鉄道に比べ遅いことで、この国は一貫した横断鉄道が欲しい。<br />この横断鉄道をザイールでは「国民路線」と呼び、同時にアフリカ大陸横断鉄道を形成する。<br />コンゴ自由国は、発足間もなく、大西洋と開発の中心基地レオポルドヴィル（現在のキンシャサ）を結ぶために、レオポルドヴィルから下流に向かいマタディまで、３６６キロの鉄道を建設した。<br /><br />マタディは河口から１５０キロ遡っているが、何とか外洋船が入ることが出来た。<br />この鉄道建設工事は、悪環境に悩まされ、数千人という犠牲と１１年もの歳月をかけて、１８９８年（明治３１年）にようやく完成する。<br />

ｷﾝｼｬｻ日記　131　母なる河「国民路線」

2いいね！

1975/01/14 - 1975/01/14

29位(同エリア296件中)

#鉄道・バス

片瀬貴文さん

この国の輸送は、河に大きく依存している。
「母なる河」と呼ばれるザイール河は、広大なザイール盆地を貫流し、全長４，３７０ｋｍ（世界４位）、東京―バンコク間の距離に匹敵する長さ。

流域面積３６９万平方キロ（世界２位）は、日本の国土面積の１０倍、利根川の２２０倍。。
年間平均流量、毎秒４万トン（世界２位）は、利根川の２００倍だが、一年を通じて安定し変化が少ない。
最大流量と最小流量の比は、日本の川では２０〜４０だが、ザイール河は３〜４程度に過ぎない。

流域が北半球と南半球にまたがっているので、流域に降る雨が年間を通じて安定しているからである。
水量の安定は、この河の利用価値を高めている。

だが、いくつかの急流地点では、船の通行できないので、その部分だけ鉄道が必要となる。
上流部のスタンレー瀑布、下流部のキンシャサ・マタディ間などは、鉄道が敷設され、船で運ばれた貨物は、積み替えが必要。

その不便さと、もうひとつ船が鉄道に比べ遅いことで、この国は一貫した横断鉄道が欲しい。
この横断鉄道をザイールでは「国民路線」と呼び、同時にアフリカ大陸横断鉄道を形成する。
コンゴ自由国は、発足間もなく、大西洋と開発の中心基地レオポルドヴィル（現在のキンシャサ）を結ぶために、レオポルドヴィルから下流に向かいマタディまで、３６６キロの鉄道を建設した。

マタディは河口から１５０キロ遡っているが、何とか外洋船が入ることが出来た。
この鉄道建設工事は、悪環境に悩まされ、数千人という犠牲と１１年もの歳月をかけて、１８９８年（明治３１年）にようやく完成する。