パリ生活の一番の楽しみは、街歩きであった。<br />　この街は殺風景な近代都市とは異なり、歩くことが楽しいように造られている。町角毎に新たな情景が展開し、心を揺さぶる感動がある。<br />　至るところに歴史の流れを感じさせる風情が残り、街ぐるみがモニュメントである。その中の自分は、いつのまにか昔の時代にいるように錯覚し、歴史の舞台に立っている。<br />　それぞれの界隈は、自己主張をまっとうに出しながらしっかりした個性があり、それを誇りながらますます磨きをかけつつある。同じ下町と言っても、その味わいは千差万別である。<br />　街を歩く人たち、街で働く人たち、商店のあるじなど、すべての住人に表情があり、それぞれに持ち味を出している。そのような人々に接していると、ひとりでに「人生」を考えている自分を発見する。<br />　あちこちにちりばめられた小公園は、街のオアシスだ。<br />　疲れれば、カフェに憩う。パリのカフェは、おのずと自分の時間を取り戻すことができる、不思議な力を持っている。<br />　このようにパリは、いくら歩いても飽きることがない、魔法の街である。<br /><br />　メトロも、不思議な乗物だ。まったく馴染みのない異邦人でさえ、両手を広げて迎えてくれる温かさがある。<br />　至る所にある駅の数は、大阪の数倍だ。その、どの駅で乗っても、行きたいところに間違いなく連れていってくれる安心感がある。<br />　メトロのおかげで、パリに到着したその日に、長年住んだ故郷のような親しみを感じさせられる。<br />

パリを歩く楽しさ

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1970/07 - 1971/09

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#その他

ソフィさん

　パリ生活の一番の楽しみは、街歩きであった。
　この街は殺風景な近代都市とは異なり、歩くことが楽しいように造られている。町角毎に新たな情景が展開し、心を揺さぶる感動がある。
　至るところに歴史の流れを感じさせる風情が残り、街ぐるみがモニュメントである。その中の自分は、いつのまにか昔の時代にいるように錯覚し、歴史の舞台に立っている。
　それぞれの界隈は、自己主張をまっとうに出しながらしっかりした個性があり、それを誇りながらますます磨きをかけつつある。同じ下町と言っても、その味わいは千差万別である。
　街を歩く人たち、街で働く人たち、商店のあるじなど、すべての住人に表情があり、それぞれに持ち味を出している。そのような人々に接していると、ひとりでに「人生」を考えている自分を発見する。
　あちこちにちりばめられた小公園は、街のオアシスだ。
　疲れれば、カフェに憩う。パリのカフェは、おのずと自分の時間を取り戻すことができる、不思議な力を持っている。
　このようにパリは、いくら歩いても飽きることがない、魔法の街である。

　メトロも、不思議な乗物だ。まったく馴染みのない異邦人でさえ、両手を広げて迎えてくれる温かさがある。
　至る所にある駅の数は、大阪の数倍だ。その、どの駅で乗っても、行きたいところに間違いなく連れていってくれる安心感がある。
　メトロのおかげで、パリに到着したその日に、長年住んだ故郷のような親しみを感じさせられる。