2003/10/01 - 2003/10/09
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金魚のじいちゃんさん
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「私は英語が離せない」というのは、アメリカ生まれの姪っ子であって、私のほうは「英語が話せない」だ。もちろん同行のかみさんもおなじこと。これまで海外旅行は、添乗員付きの団体ツアーか、英語のしゃべれる子供に同行願っていたが、今回は英語オンチ二人の珍道中である。
なんとかケネディ空港までは到着し、あらかじめ頼んでおいたガイド氏に出迎えてもらい、ホテルへ送り込んでもらった。
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目が覚めたのが朝の六時、ホテルの三十四階のベッドの上だった。いよいよ英語抜きの一日目が始まった。
時差の所為なのだろうか、少し体がボアーンとしているが、寝ているかみさんを残して朝飯の買出しに出た。
高層ビルのすき間から仰ぐ十月の空は曇っていたが、気候は思ったより寒くはない。ホテルの角を回ると、コンビニやデリカテッセンが店を開いていた。
そのうちの一つに入る。取りカゴに、缶ビール、フルーツパック、水、クロワッサンを入れたが、サンドイッチはオーダーしなければならない。何種類もの中からパンを選び、好みの具を指定して挟んでもらうのだ。
「サンドイッチ プリーズ ジスワン アンド ジスワン」で結構通じた。こんな単語の羅列でも、いちおう買い物はできるようだ。
さて支払いである。ふつうは、打ち込まれたレジスターの数字を見れば支払額が分かるのだが、運悪くこの店のレジは見づらい。そのうえ、店員が早口でまったく理解できない。いいかげんに10ドル札を出すと、「○×○×・・」。まだ不足らしい。さらばと、ポケットのコインをカウンターに並べると、必要な分だけとってレシートをくれた。
合計で十五ドルほど。朝飯に1700円は高いのだが、金額の桁が少ないと、そう感じないのが数字の不思議さである。 -
店を出ると、もう帰り道が分からなくなってしまった。とりあえず左に歩いてゆくと、大きなビルの出入り口があった。ホテルに似ていたので入ってみたが、どうやら事務所ビルらしくガードマンが立っていた。仕方なく、ビニール袋をぶら下げたままロビーを抜けて反対側に出た。ますます方向が分からなくなってきた。
出発前、ニューヨーク通の知人が「あの街は東西南北がはっきりしているから、磁石を持っていけば迷わない」と忠告してくれたが、方向感覚には自信があると無視したのが悔やまれる。通りの角々には、ストリート番号を記入した掲示板が立っているのだが、ホテルが何丁目だかを覚えていないのだから役には立たない。やむを得ない。人に尋ねることにした。まず、屋台の物売りの半分黒いおっさんだ。近づいて「メイ アスク ユー」といっても、首を振るばかり。ホントに知らないのか、知っていても教えるのが面倒なのか、とにかくラチがあかない。あきらめて、つぎは古新聞回収中のおじさんに聞こう。白人系である。
「エクスキューズミー メイ アイ アスク ユー? アイ ウォント ゴーツー ヒルトンホテル」。わかったのか、まっすぐ前方を指さして「CORNER、CORNER」。角のところだ、と教えてくれているのかなと「コーナー?」と聞くと「Yes Corner」の返事がきた。「サンクス」といって歩き出すと、すぐそこがホテルだった。 -
夕食は、楽しみにしていたステーキハウスに出かけた。調べておいたステーキハウス「ギャラリーズ」は、ホテルから5分ほどの、ブロードウェィ近くにあった。
店内を覗うと、うす暗く、休業なのかなとためらっていると、外人(じゃない白人)の4人連れがドアを開けて入っていった。やってる。続いた。
入った右手には、切り口を見せた牛肉のブロックが、それこそ何百と吊り下げてあり、壮観というか、ステーキ屋だぞ、という強い主張が感じられた。
店内はうす暗く、トラッドな雰囲気で、壁という壁には、千八百年代からの有名来店者であろう、セピアに染まった写真が張り付けてあった。私にも見覚えのある野球選手や政治家も、幸せそうな顔で写っていた。ほとんどのテーブルが埋まっている。
まずビールを注文して、ステーキの選択である。おもいきって骨付きステーキの33オンス(約1キロ)を注文しよう。かみさんは、「昼のラーメンが重かったので、スープとポテトフライトでいい」と言うのを、「せっかくのステーキ屋だから」と小ぶりなスライスステーキを勧めた。
隣のアメリカ人夫婦のテーブルに、6センチ×20センチ角くらいのステーキが、ドンと運ばれてきた。じっさい「ドン」と、音が響いてきた。
注文を通すのは難しいことではない。メニューを指差して「ジスワン」でよい。ここでよせばよいのに、知ったかぶりをして、英語オンチを暴露してしまった。
注文取りに来たテーブル担当のウエイター氏に「トゥディ ヤンキーズ ウィン?」と大リーグの結果を聞いたのだ、大して興味もないのに。すると「ヤー××××××」と長々と返事がかえってきた。「フーフン。フーフン」と相槌を打っていたが、皆目わかっていない。これでは引き下がれないと「マツイ?」と聞くと、「××ノット、ルッキング×マツイ×××」ときた。身振りと表情で、「見ていないので分からない」と言っているようだったが、こちらこそ分からなかった。 -
最初に運ばれてきた、オニオンスープは、スープというよりグラタンに近い濃厚さで、ビーフ味に、オニオンと日本の麩のようなものが浮いていた。量が多く、かみさんと二人がかりでも半分は残した。
下げに来た中国系らしいボーイ君に「ジス スープ ヴェリィ デリシャス バット アワー ストマック スモール」というと、分かったのか、分からないのか無愛想に「オーイエス」とかえってきた。
東洋系は、どうしても表情が無愛想になりがちである。私も気をつけなければ。
本命のステーキは、骨付きの表面がカリカリに焼き上がったジャンボ級。かみさんのスライスステーキは、一口大にカットされ、グレービーソースが添えられていたが、こちらはストレートな肉のかたまり。テーブルの塩が調味料だ。
思ったより柔らかく、ナイフがスッと入る。うまい。日本の霜降りステーキのとろけるような味とは、まったく違ったかみ締める味である。表面の焦げ目のカリッとした部位も、なかのレアっぽい部位もしっかりとした歯ごたえだ。
ビールを流し込みながらモクモクと食べていると、かみさんが冷やかした。「牛みたい」実際うまかった。時間はかかったが全部食べきった。帰ってからもしばらくは癖になりそうな味わいだった。
つけ合わせで頼んだ野菜サラダも、半端な量ではない。新鮮な野菜はともかく、ドレッシングソースが馴染めない味だった。 -
ノーサンキューというのに、ボーイの強要に負けてカプチーノを注文したけれど、「デザート?」を勧められたときは、ふたりそろって手を振り「いりません」で撃退した。
「ビル プリーズ」と告げると、担当のウエイター氏が持って来た請求書は92ドルだった。50ドル札を二枚渡すと、「チェンジなんとか」。お釣りがいるかとでも聞いているようだ。
ヨーロッパのレストランでやってきたように、釣銭が戻ってきたら、上乗せして一〇?のチップを出そうと思ったので「イエス」と答えた。
彼は、どうやらこれをノーチップと勘違いしたようだ。機嫌を損ねたらしく、担当外のウエイターが釣りを持ってきた。彼は事情がわからず、それを隣のアメリカ人に届けてしまい、「アッチだ、アッチだ」と訂正され、照れくさそうに8ドルを持ってきた。
釣りを届けに来たウエイター氏に「ウエイト」と声をかけ、2ドルを加えた10ドルをチップとして渡した。こちらの意が通じず、担当のウエイター氏には気の毒をした、と若干気にして店を出た。
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この旅行記へのコメント (2)
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- ぷ〜さん 2005/01/14 12:58:40
- 拝見しました
- 私も英語がまったくできないのですが、海外旅行は大好きです。いつもは友人と行き当たりばったりの旅行ですが、今度はニューヨークに1人旅を計画中です。
この旅行記はとても参考になりました。”トゥデイ イズ ヤンキース ウィン?”と私も尋ねてみたいと思います!!
今後の旅行記も楽しみにしています。
- 金魚のじいちゃんさん からの返信 2005/01/14 19:36:36
- RE: 拝見しました
- 読んでいただきありがとうございます。ホント英語がしゃべれないっていうのは悲しいことです。今度生まれるならゼッタイ英語圏、というのが私の辞世の句(予定)です。私が「英語が話せない」っていうと、アメリカ生まれで、スチュワーデス(アテンダント)をやっている姪っ子が「私も英語が離せない」といいよります。ニクッタらしいたら。
でも、英語が話せなくても「ドル」を持ってりゃ大丈夫。向こうが理解しようと必死になりますから。よい旅を!
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