幸遠い冬の幸福
- 4.0
- 旅行時期:2010/12(約15年前)
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by がらがらさん(男性)
帯広 クチコミ:3件
帯広駅からバスに乗って幸福駅へ。広大な農場を貫く国道に差し掛かる頃には帯広駅発車時と変わらない程度の乗客数に落ち着き、溶けた泥水を跳ねながらひたすらに進む。窓が泥水を浴びて外が見えない。愛国市街と大正市街でまとまったお客さんを降ろす。「大正20号」「大正21号」無味乾燥とした名前のバス停が虚ろに響く。様子は変わらないけどバス停の名が「幸福」になって降車ブザーが鳴る。降りるのは自分たち二人。
外に出ると遮るものが全くない畑地を身を切るような風が凶暴に通り過ぎて行く。とんでもなく寒い。ここから幸福駅跡地は500mほど歩く事になる。遠くに朱色の気動車が停まっているのが見え、そこが目的地と知れる。歩くことしばし、木立の中に佇む幸福駅の粗末な駅舎が姿を現した。写真ではおなじみの姿だけど実物を見るのは初めてである。勿論、現役時代も知らない。国鉄のローカル線が数多く廃線に鳴ったのは1980年の中頃。当時は小学生だったから自分の脚で訪れるには少々若すぎた。
現役さながらに駅舎が残り、土産物屋も2軒。真冬のオフシーズンだが、いつ来るかわからないお客さんを待っている。
駅舎におびただしい名刺が張られているのは有名で知っているがそれにしても凄い数だ。よく見ると海外のものもある。航空券の半券があったり写真があったり。
そしてホームに佇むキハ22を眺める。廃線以来この場所で余生を過ごすその姿は意外と往時を保っている。幸福駅が幸福を保ったままなのは人の心がこの場所から離れていないからかも知れない。
それにしても寒い。風を遮るものが無いから体感気温はマイナスである。幸震村には福井県出身が多かったので頭文字を取って幸福とした、なんて命名の由来をどこかで読んだが、幸遠かったという開拓の歴史を身を持って体感する事になる。空港へ向かうバスまであと30分。土産物店で扱う「愛国→幸福」の切符を2枚と買い求めると、缶コーヒーを両手で包み込み、風の当たらぬ物陰で暖を取る事になる。
小一時間寒さに震えた後で空港行きのバスに拾ってもらう。ここから空港までは5km程度。白樺とトド松の木立の中を走り抜けるとそこには空港が待っている。
- 施設の満足度
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4.0
- 利用した際の同行者:
- カップル・夫婦
- アクセス:
- 2.0
- 人混みの少なさ:
- 4.0
- バリアフリー:
- 4.0
- 見ごたえ:
- 4.0
クチコミ投稿日:2013/02/28
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