こちらのお店はとにかくシェフのプロ意識が高いということが
特徴です。
まず、予約をすると前日までに食材の打ち合わ...
続きを読むせがあり、
それに応じて仕入れをし、仕込んでいくというスタイルです。
さらに、店内を支配する張り詰めた空気。
彼のアンテナがぴんと張り巡らされ、
お客の一挙手一投足までフォローされています。
それでいておそらくはお弟子さんであろう女性を通して
物事を処理していきます。
厳しく弟子を育てていこうという職人肌のシェフなのでしょうか。
まるで寿司職人のようです。
お店はもともと居酒屋か小料理屋を改装しているのでしょうか。
フレンチのお店なのに玄関は引き戸です。
そしてカウンターがフルフラットといいますか、
シェフの調理の様がすべて丸見えです。
これはこれで見ていて楽しいです。
まるで『小松弥助』のようです。
価格の設定も独特で、魚メインのコースは2800円、
肉メインだと3500円、両方だと4000円とのことです。
迷わず両方をチョイスしましたが、ちょっと不思議です。
さて、アミューズからほとんど作り置きはないようで、
一皿一皿丁寧に、というより、芸術家のような集中力で
作り上げていかれます。
器やカトラリーにもしっかりと気を配っておられます。
アミューズも、オードブルもまったく非の打ち所のない
料理が出てきます。
ビシソワーズに北海道のウニ、アワビのジュレ
これがしっかりと冷やされたシェリーグラスに入れて
供されます。
味も見た目も、そしてサーブの仕方も完璧です。
「説明は後でしますから一番おいしいときに食べてください。」
というセリフは押し付けがましくなりがちですが、
そんなことはまったくなく、いやみのないさりげない一言です。
私が器好きなもので、あれこれ質問すると、
シェフはそれをキャッチしているのですが、
女性の口を通して返答させているあたりに、厳しいながらも
愛情を持って接しておられるように感じました。
オードブルはカツオです。
サラダとドレッシングとカツオ。私はすっぱいのはあまり好きではないのですが、
これはいけますね。
トマトも甘みがあって、これは良い素材を使っているな、
と感じました。
魚料理は明石産の鱸を使ったパイ包みです。
魚料理はソテーしてソースをかけてというのが我が家の好みですが、
これもおいしかったですね。
さらに付け合せのズッキーニの花が面白かったです。
中にひき肉や野菜などが詰め込んであります。
そして肉料理は定番中の定番、牛頬肉の赤ワイン煮込みですが、
これがまたおいしいんです。
近江牛を使用していることももちろん関係あるでしょうが、
製法と味付けのセンスがものをいっているように思います。
やはり丁寧に、じっくりと手間隙かけて作りこんでおられるのでしょう。
この上に自家製の全粒粉のセーグルが加点ポイントですね。
いつも書いていますが、出来合いのパンはどうしても
冷えた状態で出すか、暖めなおして硬くなってしまうかのどちらかになるので、
究極には自家製にするしかなくなります。
そこには手間の問題とセンスの問題が出てくるので、
パンが泣き所というお店も私は数多く知っています。
その意味ではいよいよ非の打ち所がない名店の域にはいります。
デセールのココナツミルクのブランマンジェ、マンゴー添えは
これまた最高レベルのおいしさです。
甘すぎず、それでいて深みのある味わいは、
今まで食べた中でもトップクラスの味でした。
プチフールも充実の自家製品ぞろいで、
中でもトリュフの出来栄えは秀逸でした。
よくぞここまでおもてなしに力を注いでいただけるものだと
感激します。
さて、ほぼ完璧だと思われるこのお店ですが、
唯一心配な点を上げるとすれば、それは
空気がぴりぴりしているところでしょうか。
シェフのプロ意識の高さが緊迫した空気となって
辺りを包んでしまっているので、リラックスできない人もいるかもしれませんね。
しかしそれも好き好きですから、
我が家からすればすばらしいとしか言いようがありません。
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投稿日:2018/05/17