自転車で不忍池を一周

2023/11/15 - 2023/11/15

上野公園に隣接する不忍池も有名ですが、観光客よりも地元民が多く、憩いの場になっている印象です。
のんびり一周すると、見どころも多くて飽きません。
特に池の中央に浮かぶ弁天島には数々の石碑があり、石碑マニアにはたまりません。
仕事の客先が不忍池の近くにあるので、そちらへ寄った帰路、自転車でちょっと寄り道してきました。

エリア 上野・御徒町(東京)

• 旅行の満足度: 3.0
• 観光: 3.0
• 交通: 4.0

• 同行者: その他
• 一人あたり費用: 1万円未満
• 交通手段: 自転車

最初に訪れたのは、不忍池のすぐ近くにある、旧岩崎邸庭園。
旧岩崎邸庭園は明治２９年（１８９６）に岩崎彌太郎の長男で三菱第３代社長の久彌の本邸として造てられました。
鹿鳴館の建築家として有名な英国人ジョサイア・コンドルの設計で近代日本住宅を代表する西洋木造建築です。
園内の建造物は国の重要文化財です。
写真は岩崎邸洋館の外観。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

洋館の入口。
館内の随所に見事なジャコビアン様式の装飾というものが施されているそうです。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

洋館の廊下。
映画のセットのようです。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

広い窓からは美しい庭園が一望できます。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

曲線を描く階段も美しいです。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

２階の部屋。
暖炉が見てとれます。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

こちらも２階の部屋のひとつ。

旧岩崎邸洋館 名所・史跡

庭園の一角にあった撞球室（ビリヤード場）。
当時の日本では非常に珍しいスイスの山小屋風の木造建築で、洋館から地下道でつながっています。

旧岩崎邸撞球室 名所・史跡

窓越しに見た撞球室内部。

旧岩崎邸撞球室 名所・史跡

次に訪れたのは不忍池の西側にある横山大観記念館。
画家、横山大観（１８６８～１９５８）の居住地を美術館にしたものです。
靴を脱いで入る美術館です。
入場料８００円。

横山大観記念館 美術館・博物館

横山大観記念館前にある「横山大観顕彰碑」。
大観の略歴が刻まれています。　

横山大観顕彰碑 名所・史跡

いよいよ不忍池の池畔へ。
不忍池はざっくり３つに分かれています。
こちらはボート池。
名前の通り、ボート遊びができます。

不忍池 自然・景勝地

ボート池の北岸にある親水デッキ。
水鳥が多く、癒される場所です。

不忍池 自然・景勝地

不忍池を反時計周りに回ります。
ボート池の畔に建つ、大きな鑑真像。
２０２２年に建てられた新しいもので、中国の彫刻家、呉為山の作品です。

不忍池 自然・景勝地

不忍池のほとりにある水上音楽堂（上野恩賜公園野外ステージ）。
１０００人程度のキャパですが、開閉式の屋根があり、雨の日でも濡れる事なくイベントを楽しむことができます。

不忍池 自然・景勝地

不忍池の南側は蓮池といって、蓮が群生しています。
夏の午前中はいたるところで開花して見事です。
その蓮をより間近で見るために設けられた蓮池デッキです。
繰り返しますが、夏の開花時の蓮池はお勧めです。

不忍池 自然・景勝地

観光的でも何でもないのですが、個人的に写真を撮りたいスポット、不忍池脇の路地に建つ、オークラ劇場。
すごく昔からある小さな映画館です。
小さな映画館など次々に無くなっている昨今に頑張っているだけでもすごいのですが、この映画館、なんとピンク映画専門の映画館なのです。
これだけＡＶなどが気安く見れる時代に、ピンク映画の上映だけでやっていけるのかと不思議です。
この映画館、もう一つの側面からも有名で、それはこちらがハッテン場ということ。
ハッテン場とは、ゲイの出会いの場です。
昔から怪しすぎて入れない映画館でした。

不忍池の東側には上野動物園の入口（弁天口）があります。
大体の人はＪＲ上野駅公園口から一直線で行ける正門を使うので、ほとんど知られていない入口です。

不忍池 自然・景勝地

弁天島参道手前の池のほとりにある「駅伝の碑」。
駅伝発祥の地記念碑ともいわれています。
大正６年（１９１７）４月２７日〜２９日に行なわれた日本初の駅伝のゴールだった地を記念しています。

不忍池 自然・景勝地

弁天島参道前の駐車スペースにある「かなりあ歌碑」。
西条八十の作詞した歌詞が刻まれています。

不忍池 自然・景勝地

弁天島に向かうには、池の中に造られた参道を通ります。
ここから石碑等が列をなして現れます。
なるべく順番に紹介していきます。

不忍池 自然・景勝地

参道の最初にある「中根半僊碑」。
中根半僊（１７９８～１８４９）は 江戸時代後期の漢学者です。

不忍池 自然・景勝地

「不忍池由来記」。
裏に由来が刻まれています。

不忍池 自然・景勝地

丸めがねの彫刻がユニークな｢めがね碑」。
「徳川家康使用」の日本最初の眼鏡と記されています。

不忍池 自然・景勝地

「利行碑」。
長谷川利行（１８９１～１９４０）は日本の洋画家、歌人です。
長谷川利行は「日本のゴッホ」と呼ばれました。

不忍池 自然・景勝地

「利行碑」の隣にあるのは利行の歌碑です。
「人知れず　朽ちも果つべき身一つの　いまがいとほし　涙拭わず　己が身の影もとどめず　水すまし　川の流れを　光りてすべる」。

不忍池 自然・景勝地

弁天島の中にある大黒天堂。
豊臣秀吉が大切にしていたという大黒天像を祀る堂です。
徳川将軍家の祈祷所・菩提寺である寛永寺のお膝元で、秀吉ゆかりのものが大切にされていたのが不思議です。

不忍池大黒天堂 名所・史跡

弁天島の中央にある弁天堂。
比叡山延暦寺にならって寛永寺を創建した天海僧正が建立しました。
現在のお堂は昭和３３年（１９５８）に再建したもので、不忍池の四方からお参りできるよう八角形のお堂となっています。

不忍池弁天堂 寺・神社・教会

弁天堂前にあった宇賀神像。
人頭蛇身の神様で、なかなかグロテスクです。

不忍池弁天堂 寺・神社・教会

池の縁ではなく、唯一弁天堂の前にある「琵琶碑」。
福徳・諸芸能上達の神として広く信仰されている弁財天の琵琶を模してつくられた石碑です。
正面には「献納銅像琵琶干不忍池弁財天女詞縁由」と刻され、台座に「琴三講(山岡鉄舟筆)」とあります。

不忍池 自然・景勝地

こちらは「芭蕉翁」とだけ刻まれた石碑。
句どころか「芭蕉翁」以外の文字は一切刻まれておらず、誰が何のために建てたのかも不明です。

不忍池 自然・景勝地

碑の上にとらふぐが泳ぐ「ふぐ供養碑」。
タイトルの横に「岸信介謹書」と刻まれています。
岸信介（１８９６～１９８７）は第５６代５７代内閣総理大臣です。
ちなみにふぐの名産地、山口県の出身です。

不忍池 自然・景勝地

「初代杵屋六翁の顕彰碑」。
杵屋六翁は長唄三味線方の名跡です。
初代杵屋六翁は生年不詳で、１７３４年没。
傍らの石碑は、六翁の歌碑です。
「多るまねば　どなたもよしや　綱よりも　ほそき　三筋の　糸の世渡り」。

不忍池 自然・景勝地

「八橋検校顕彰碑」。
八橋検校（１６１４～１６８５）は江戸時代前期の音楽家で、胡弓、三味線の名手でした。
碑は三面鏡のような造りで、正面に「八橋検校顕彰碑」とあり、右に八橋検校史伝、左に頌辞の長文を刻んでいます。

不忍池 自然・景勝地

「扇塚」。
初代花柳寿美の舞扇を納めて、昭和２４年（１９４９）、６代目尾上菊五郎、二世花柳寿輔、花柳章太郎氏らの手によって建てられました。
作家佐藤春夫氏の詩文が刻まれています。

不忍池 自然・景勝地

「スッポン感謝の塔」。
滋養のため、食材として、人々の胃袋におさめられたスッポンに感謝するために建立された塔です。
塔自体はスッポンの形をしていませんが輪郭が彫ってあります。

不忍池 自然・景勝地

「いと塚」。
三味線や琴などの芸事にはかかせない糸に対する感謝を表した塚です。
背面には、前田青邨画伯の撰文が刻まれています。

不忍池 自然・景勝地

「東京自動車三十年会記念碑」。
日本の自動車業界の黎明期を支えた先達を顕彰する記念碑です。

不忍池 自然・景勝地

「暦塚」。
台座の上に、日時計が置かれ、その上に地球が取り付けられています。
弁天島の暦上のデータのみならず暦塚の緯度経度上の位置、時刻、各都市の方位角、時差表等の天文学上のデータが示されています。
暦塚の題字は、中曽根康弘の直筆です。

不忍池 自然・景勝地

「真友の碑」。
上田碩三（１８８６～１９４９）は日本のジャーナリスト。
マイルス・ボーン（１８９１～１９４９）は、大正から昭和時代の日本で活躍したアメリカ合衆国のジャーナリストです。
「真友の碑」は二人が東京湾で転覆死したことを悼み、また二人を顕彰した碑です。
ボーン・上田記念国際記者賞は、二人の名を冠したジャーナリズムの賞です。

不忍池 自然・景勝地

下部が剥落して判りづらいですが、こちらは「筆塚」。
「靄崖山人得筆塚之銘」と刻まれています。
高久靄崖（１７９６～１８４３）は江戸時代後期の文人画家です。
　

不忍池 自然・景勝地

「包丁塚」。
背面には、東京・千葉・茨城各都県の料理店でつくる団体、上豊調理師会の会員の名前が並んでいます。

不忍池 自然・景勝地

弁天島内で一番大きな石碑、「鳥塚」。
東京食鳥鳥卵商業協同組合及び東京都食鳥肉販売業環境衛生同業組合の組合員有志が、諸鶏類の霊魂を永久に慰めるため昭和３７年（１９６２）に建立したものです。
書は、当時の都知事、東龍太郎のものです。

不忍池 自然・景勝地

「幕末之剣豪櫛淵虚沖軒之碑」。
櫛淵虚沖軒（１７４８～１８１９）は日本の剣豪です。
神道一心流の創始者です。

不忍池 自然・景勝地

弁天島の先にあるボート乗り場。
カップルに人気です。


なぜ弁天島に石碑が多いかというと、不忍池を、殺生を禁じる仏教で慈悲の行いとされる「放生」の池に見立てて、商売でそれぞれの生き物を扱う業界団体が感謝と供養の意味で建てた物が多いということです。
前半は、広い池の開放的な眺望、後半はユニークな石碑巡りと、楽しめたショートサイクリングでした。

不忍池 自然・景勝地