小田原・湯河原・熱海の別荘建築を巡る旅。②～旧松本剛吉別邸と静閑亭、旧井上馨侯爵家別邸の宿

2025/03/18 - 2025/03/20

二日目は小田原の西海子小路にある旧松本剛吉別邸を見学し、黒田長政侯爵の別邸の建物を利用した料亭「清閑亭」で昼食を食べました。

昼食後は東海道本線で湯河原へ。

湯河原温泉にある登録有形文化財・井上馨侯爵家の別邸の宿に泊まります。

エリア 湯河原温泉(神奈川)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• グルメ: 5.0

おしゃれ横丁に、小田原城址公園から移設されたというティーカップが置いてありました。城址公園にある遊園地は昔はもっと規模が大きかったのかな。

おしゃれ横丁 名所・史跡

おしゃれ横丁には、北条氏政と氏照の墓所がぽつんと取り残されたようにありました。

北条氏政 氏照の墓所 名所・史跡

立て札の説明によると、かつてはここに北条氏の氏寺があり、秀吉の小田原攻めで自害した氏政と弟氏照の亡骸が葬られました。その後放置され荒れていた墓所を小田原に城主として入った稲葉氏が整備し、また関東大震災で被害を受けた時も地元の有志が復元して、今に至るそうです。

北条氏政 氏照の墓所 名所・史跡

旧松本剛吉別邸を見学するために、昨日に引き続き西海子小路にやってきました。

この別邸は昨日訪れた小田原文学館のすぐ近くにあるんですが、昨日は休みだったので今日あらためてやってきました。

西海子小路 名所・史跡

主屋、庭園、茶室ともスタッフの方が案内してくれました。

松本剛吉という人は山縣有朋と親しかった政治家で、山縣のために情報収集などを行っていたのではないかということでした。そして、この別邸も山縣の勧めで、求めたものではないかということでした。

西海子小路 名所・史跡

まず、主屋から見学しました。
玄関を上がった正面に目に入ってくるのが、網代などを使った美しい引き戸。

実際には押し入れ（物入れ）だそうですが、玄関の障子を開け放ってこの精緻な技巧を凝らした引き戸を見せてお出迎えしたのでは？という話でした。

西海子小路 名所・史跡

傷んでいる部分もありましたが、直せる職人さんもなかなかいないそうで・・。

西海子小路 名所・史跡

見学は無料でした。これだけの庭と邸宅、整備、修理、維持とたいへんでしょうが、無料で見せていただけるなんてありがたいです。

西海子小路 名所・史跡

二間に渡るような長い机がありました。

これは元々山縣有朋の家にあったものだそうです。

西海子小路 名所・史跡

南側には庭にのぞんだガラス張りのサンルームがあります。

西海子小路 名所・史跡

壁は土の中に鉄粉を混ぜた「蛍壁」というもので、浮き出た錆の紋様が蛍が飛んでいるよう見えるから蛍壁というそうです。

西海子小路 名所・史跡

サンルーム。

いたるところに「なぐり」加工が施してあります。

西海子小路 名所・史跡

邸内にはいくつかアンティークの家具が置かれていましたが、元々この屋敷にあったものだそうです。

西海子小路 名所・史跡

松本剛吉邸は所有者が二度ほど変わっているので、後の所有者が購入したもののようですが、サンルームに置かれていたこの椅子が特にすてきでした。

西海子小路 名所・史跡

昔の洗面所も残っていました。

西海子小路 名所・史跡

庭が整備工事が行われて、芝を養生中。

西海子小路 名所・史跡

茶室は
雨香亭と名付けられています。

西海子小路 名所・史跡

真ん中に入口を挟んで両側に茶室がありますが、「く」の字に曲がっているのが特徴。
右側の茶室はにじり口ではなく開放的な障子になっています。

西海子小路 名所・史跡

玄関部分。

西海子小路 名所・史跡

なぐり仕上げの床に、間に細い竹を入れてます。

西海子小路 名所・史跡

右側茶室内部。

西海子小路 名所・史跡

玄関入って左側の部屋は床を一段高くあげています。

西海子小路 名所・史跡

左側の茶室は手すり付きの濡れ縁がめぐらせてあり、観月などに使われたのではとのこと。

西海子小路 名所・史跡

待合がちょっと変わったところに造られていて、茶室の裏山の上に建てられています。

西海子小路 名所・史跡

ガラス張りの待合。（中には入れません）

西海子小路 名所・史跡

茶室が下に見えます。庭を上から眺めることができる待合ですね。

西海子小路 名所・史跡

同じ界隈には静山荘という別荘建築もありましたが、一般公開はしていません。

西海子小路 名所・史跡

立派な門構えですが、中は全然見えませんでした。

小田原近辺には公開・非公開含めてまだまだ他にも別荘建築が残っているみたいです。

西海子小路 名所・史跡

松本邸を後にして、昼食の予約をしている清閑亭に向かう途中に見つけた教会。

聖公会の教会です。

今回は見ることができませんでしたが、小田原にはカトリック教会も、ロシア正教会もあるみたいです。

西海子小路 名所・史跡

西海子小路から歩いて急坂をのぼって、昼食の予約をしておいた清閑亭にやってきました。

清閑亭 名所・史跡

明治３９年ごろに黒田長政侯爵によって建てられた別邸建築です。

小田原は関東大震災の時にかなりダメージを受けたそうですが、明治時代に建てられたこの邸宅は震災にも耐えたということですね。

清閑亭 名所・史跡

花頭窓のある床の間付きのお部屋に通されました。

清閑亭 名所・史跡

黒田長成侯爵は最後の福岡藩主の長男、世が世ならお殿様だったんですね。

この邸宅は小田原城三の丸の外郭土塁の傾斜地に建てられているので、小田原城の國史跡の上に建つ登録有形文化財ということで、二重の意味で貴重な文化財と言えます。

清閑亭 名所・史跡

部屋からは相模湾が望めます。

清閑亭 名所・史跡

食事の前にはスタッフの方が邸内を案内してくれました。

清閑亭 名所・史跡

孔雀の板戸絵がきれいに残っていました。

清閑亭 名所・史跡

蔵は気軽に利用できるカフェになっています。

清閑亭 名所・史跡

蔵は黒田長成死去後に所有者となった浅野侯爵家によって建てれたものです。

清閑亭 名所・史跡

食事は毬のような丸い形の器に入って出てきました。

清閑亭 名所・史跡

地産地消を取り入れたメニュー。個人的にはカボチャの茶碗蒸しが一番気に入りました。

清閑亭 名所・史跡

食後は、２階を見学しました。

清閑亭 名所・史跡

２階からの眺め。

清閑亭 名所・史跡

小田原駅からJR東海道線に乗って湯河原駅にやってきました。

湯河原駅 駅

湯河原駅前広場のデザインをてがけたのは隈研吾さん。大きな屋根が印象的でした。

この駅前広場からバスに乗って湯河原温泉に向かいます。

湯河原駅 駅

川沿いに今夜のお宿・清光園が見えてきました。

ここは湯河原温泉ですが、川の向こうは住所的には熱海市になるみたいです。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

木戸を開けて入ります。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

一軒家のお宿です。

当日は私たち一組だけでした。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

最初に、玄関で、すごい彫刻の欄間がお出迎えしてくれます。玄関を上がったところは三畳間。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

玄関上の欄間。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

まず、一階の応接室へ。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

部屋側の引き戸のデザインは三日月。

三日月の形をした金属がはめ込まれていて、白く輝く三日月を表現しています。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

オーナーさんが邸内を案内してくれます。

日本画が描かれた絹布が襖に張り付けてあります。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

細かい刺繍を施した布を障子に貼っています。超絶技巧。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

一階の六角間と名付けられた部屋。この別邸は基本的には和館ですが、一階のこの部屋はベイウィンドウのようになっていたり、

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

造り付けのベンチがあったり、洋風のつくりが一部取り入れられています。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

でも、その造り付けのベンチの上を見ると、見事な網代が。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

「福」や「壽」をという漢字を色々な書体で表現している遊び心のある襖絵。（実際には絵ではなく絹織物を貼っています）

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

襖の取っ手のデザインも凝っています。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

一階の食事用の部屋です。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

ちょうどお庭が見えます。

掲げられている書は伊藤博文のもの。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

この部屋の襖の取っ手が特に凝っていました。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

それぞれが図柄が違っています。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

背景は竹林。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

服装からすると中国の故事みたいです。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

どうもそのへんの知識があまりないので、よくわかりませんが、竹林の七賢とかでしょうか？

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

他の部屋の襖の取っ手も、形や絵柄がそれぞれ違っています。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

色がついた花の模様。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

こういった襖の取っ手は当時でも特注だったんでしょうか。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

既製品とかあったんでしょうか。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

比較的シンプルなデザイン。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

釘隠し。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

凝ったデザインの釘隠し

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

一風変わった一階の廊下です。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

白っぽい板に茶色の模様が浮き出るような廊下。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

階段のてすりのデザインは洋風っぽい。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

寝室となっている部屋にも立派な欄間と襖がありました。

もし、万が一寝ている時に襖を蹴ったりしたらいけないと思って（実際にはそこまで寝相は悪くありませんが）布団をもっと襖から離して、そして襖も開けて、寝ました。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

２階の部屋の欄間。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

細かな細工。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

一階と同じ絹の刺繍画が二階にもありました。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

大正硝子と洋風デザインの手すり。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

「東郷さんの椅子」と呼ばれているそうです。

東郷さんとは東郷平八郎のこと。実際、東郷平八郎は湯河原によく来ていたそうなので、井上侯爵家にも来ていたかもしれませんね。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

徳富蘇峰による書。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

さすが井上侯爵家の別邸、こちらは西園寺公望の手による書です。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

夕食は一階の伊藤博文の書のある部屋で。

ボリュームもあって、とってもおいしかったです。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

温かいビーフシチュー。大き目に切った野菜がごろっとはいっておいしかったです。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

芋（さといも？））の煮物。ほくほくして美味でした。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル

トイレやお風呂は増築した別棟にあります。

部屋にトイレがないといっても、一軒家に泊まっているようなものなので、普通の家の感覚です。宿のほうでお湯を入れて準備してくれる温泉は一階にあって、夜の限られた時間帯だけなので、それ以外に温泉に入りたい時は２階にあるお風呂に自分でお湯を入れてはいることになります。

湯河原　清光園　旧井上馨侯爵家別邸の宿 宿・ホテル