2023年9月瀋陽、丹東、大連５日間の旅<br />Day1　瀋陽から入国<br />https://4travel.jp/travelogue/11854996<br />Day2　パシナに会いに<br />https://4travel.jp/travelogue/11856559<br />Day3　国境の街へ<br />https://4travel.jp/travelogue/11858227<br />Day4　そこから旅順港は見えるか？<br />https://4travel.jp/travelogue/11859629<br />Day5　帰国<br />https://4travel.jp/travelogue/11862430

2023年9月瀋陽、丹東、大連５日間の旅 Day4 そこから旅順港は見えるか？

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2023/09/15 - 2023/09/19

884位(同エリア1051件中)

エリア

大連(中国)

朝、ホテルをチェックアウトして丹東駅へ。
ガイドの解説によると、1965年、国の決定により市名を「安東」から「丹東」に改名しました。「安東」は「東を安んじる」という大国意識を表す言葉で、お隣りの国との友好関係によろしくないため、東方から紅い太陽が昇る「丹東」に改めたとのこと。原来如此，事情是这样啊。Yuán lái rú cǐ, shì qíng shì zhè yàng a.（なるほど、そうだったんですか）
お世話になったガイドさんと改札口でお別れです。
大連行きの高速鉄道に一人で乗車。
D7742次　丹東発、大連行き
丹東(7:49発)→東港北→北井子→大狐山→青堆→庄河北→花園口→皮口→金州→大連(10:31着)
大連駅の改札口でガイドがお出迎え。
大連駅は上野駅の駅舎と似ています。
【大连】Dà lián　大連（だいれん）
南満洲鉄道本社旧址
中の陳列館に入りたかったのですが、コロナで日本人観光客の訪問が途絶えたためか閉鎖中とのこと。
旅順へ移動して日露戦争の戦跡巡り。
まずは東鶏冠山北堡塁へ。帝政ロシアが旅順防衛のために築いた堡塁です。日露戦争では203高地と並ぶ激戦地となりました。
写真はロシア兵の宿舎跡。
【旅顺】Lǚ shùn　旅順（りょじゅん）
【俄罗斯】É luó sī　ロシア
【沙俄】Shā é　帝政ロシア
【日俄战争】Rì-É zhàn zhēng　日露戦争
东鸡冠山北堡垒
dōng jī guàn shān běi bǎo lěi
東鶏冠山北堡塁
ひがしけいかんざんきたほるい
1904年12月15日、帝政ロシア陸軍のコンドラチェンコ少将が、東鶏冠山北堡塁を訪れて兵士たちへ勲章を授与していたところ、日本軍が発射した28センチ榴弾砲の直撃を受けて戦死。旅順要塞が陥落した後に、彼の武勇を惜しんだ日本軍が記念碑を建立しました。
ロマン・コンドラチェンコ（1857～1904）は帝政ロシアの軍人でウクライナ・コサックの出身。ロシア、日本双方から「日露戦争におけるロシア軍屈指の名将」と高く評価されていたそうです。
東鶏冠山北堡塁へ向けて坑道を掘削する日本陸軍。堡塁の地下まで坑道を掘り進めて地雷で発破する戦術がとられました。
いったん入場口へ戻り、カートに乗って望台砲台のある高地の登り口へ。直登の長い階段を登った先に砲台があります。私もガイドも決して若くはない年齢なので、二人で息を切らせながら登りました。ヒザが笑いそう…
山頂にはロシア製の大砲が二門遺されています。ロシア軍が築造した砲台のうち、望台砲台は最も高い標高185ｍの高地にあります。
望台炮台（望台砲台）
wàng tái pào tái
水師営近くの「石磨手擀面」で昼食。手擀面とは手打ち麺のこと。地元民が食べに行く店をリクエストしたところ、ガイドがとても庶民的な店へ案内してくれました。
石磨手擀面
shí mó shǒu gǎn miàn
黄花鱼面（黄花魚麺）
huáng huā yú miàn
うどんの具は黄花魚(キグチ)の素揚げです。
麺にコシあり。素朴な味わいで美味しくいただきました。
水师营会见所　shuǐ shī yíng huì jiàn suǒ
水師営会見所（すいしえいかいけんじょ）　
会見所とされる民居や棗（なつめ）の木はオリジナルではなく復元されたものです。

旅順要塞陥落後、ロシア軍から日本軍へ降伏の申し入れがあり、1905年１月５日、第三軍(※)司令官の乃木大将と、ロシア関東軍司令官のステッセル中将が水師営の民居で会見を行いました。
※ 日露戦争で日本陸軍が現地総司令部として設置した総軍「満洲軍」の隷下部隊

水師営の地名は、中国清朝の北洋艦隊（北洋水師）に所属する水兵の兵営（駐屯地）に由来します。
尋常小学唱歌（第五学年用）1913年出版
『水師営の会見』
一　旅順開城約成りて
　　敵の将軍ステッセル
　　乃木大将と会見の
　　所はいずこ水師営
二　庭に一本なつめの木
　　弾丸あともいちじるく
　　くずれ残れる民屋に
　　今ぞ相見る二将軍
四　昨日の敵は今日の友
　　語る言葉も打ちとけて
　　我はたたえつ彼の防備
　　彼はたたえつ我が武勇
203高地
入場口からカートに乗って登り口まで移動。そこから坂道を登った山頂に、爾靈山（にれいさん）の塔が建っています。爾靈とは爾(なんじ、あなた)の霊の意味。日本軍、ロシア軍双方の戦没者の霊を慰めるため、戦場で回収された砲弾や弾丸の薬莢を鋳造して建てられた慰霊碑です。
乃木大将は「二〇三」の音から「爾靈山(にれいさん)」の語を得て漢詩を詠んでいます。
爾靈山
爾靈山險豈難攀
男子功名期克艱
鐵血覆山山形改
萬人齊仰爾靈山

203高地は日露戦争最大の激戦地。1980年公開の映画「二百三高地」や、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」、同名のNHKスペシャルドラマで壮絶な戦いが描かれています。
満洲軍総参謀長児玉源太郎「そこから旅順港は見えるか？」
観測将校「見えます！丸見えであります！」のやり取りは小説の創作であるとのご指摘はさておき、感動のシーンですね。サラ・ブライトマン『Stand Alone』が脳内リフレインします。
写真のとおり、実際に203高地から旅順港方面を望むと「丸見え」というにはちょっと遠い気がします。
203高地攻略の目的は、旅順港を見下ろせる地点に観測所（砲撃の精度を高めるために砲弾の着弾点を観測する場所。観測所から送られた情報をもとに砲撃の射角を調整する）を設置することです。日本軍は203高地占領後に観測所を設け、旅順港内のロシア海軍の軍艦を28センチ榴弾砲で砲撃しました。
「乃木保典君戦死之所」石碑
乃木希典大将の次男、乃木保典少尉の戦没地に石碑が建てられています。203高地の山頂から下った山の中腹にひっそりと建っているので、ガイドの案内がなければ見落としていたと思います。
第三軍司令官の乃木希典（まれすけ）大将は、日露戦争で二人の息子を亡くしました。長男の乃木勝典（かつすけ）中尉は、1904年5月27日、南山の戦いで戦死（満24歳没）。次男の乃木保典（やすすけ）少尉は、1904年11月30日、203高地の攻防戦でロシア軍の砲弾を至近距離に受けて岩壁から滑落。頭部を損傷して亡くなりました（満22歳没）。
関東軍司令部旧址博物館
「関東」は日本の関東地方ではなく、中国の華北と東北の境界である「山海関」から東側の地域のことです。
関東庁博物館旧址
1934年に旅順博物館に改称。現在も博物館として公開されています。
华俄道胜银行旅顺分行旧址
旧露清銀行旅順支店　1902年竣工
旅顺钱币博物馆（旅順貨幣博物館）として2019年開館。
コンドラチェンコ少将旧居
東鶏冠山北堡塁で戦死したコンドラチェンコ少将が居住していた邸宅。現在も住居として使用されています。日露戦争で戦ったロシア軍の将軍、提督の名前を中国語で表すと次のとおり。発音が近い漢字を使っていますね。
コンドラチェンコ
康得拉欽科　kāng dé lā qīn kē
ステッセル
斯特塞尔　sī tè sāi ěr
ロジェストウェンスキー
罗日杰斯特文斯基　luó rì jié sī tè wén sī jī
関東州民政長官住宅旧址
日露戦争終結後、日本が遼東半島を租借地として統治していた時代の関東州民政長官の旧宅です。居住者がいないのか、ツタが繁茂して荒れかけています。
旅顺火车站（旅順駅）
満鉄がロシア人設計士に駅舎の設計を依頼し、1906年に竣工しました。
緑色の鱗瓦の屋根に塔楼がのったロシア風のデザインで、「おしゃれな駅舎」として人気を集めています。現在、この路線で旅客列車の運行はしておらず、駅舎内に入ることはできません。
太阳沟经典老建筑打卡游线路
太陽溝レトロ映え建築めぐりルート
旅順口の西側、歴史的建築物が遺る地区を太阳沟(太陽溝)景区として観光客を呼び込んでいます。
地図の右側、川の両岸に書かれた文に注目。
ガイドの説明を傾聴しましょう。
“一个旅顺口，半部中国近代史”
yí ge Lǚ shùn kǒu, bàn bù Zhōng guó jìn dài shǐ
旅順口の半分は中国の近代史である。
世界史に興味があるので、その言葉にハッとさせられました。
旅順口は約60年もの間、日本とロシア、ソ連により争奪、支配されていたのです。
1878年　旅順が北洋水師の根拠地になる
1894年　日清戦争で日本軍が占領
1895年　下関条約により日本に割譲されるも
　　　　三国干渉で中止に
1898年　露清条約によりロシアの租借地
　　　　となる
1905年　日露戦争の旅順攻囲戦でロシア軍が
　　　　降伏して日本軍が占領
　　　　ポーツマス条約で日本の租借地
　　　　となる
1945年　ソ連軍が満洲に侵攻し旅順を占領
　　　　ヤルタ協定により旅順港が
　　　　ソ連海軍の軍港となる
1955年　旅順港が中国に返還される。
白玉山塔
旅順湾を一望できる白玉山の山頂に建っています。日露戦争終結後、日本兵の慰霊のために建てた塔。日本統治時代は「表忠塔」と呼ばれていました。現地に着いた時は塔の開館時間を過ぎていたので塔の上に昇れませんでした。
白玉山から望む旅順湾。ちょうど船が湾外へ出るところでした。湾口の幅は270m。湾口の右側が老虎尾、左側が黄金山です。
旅順から大連へ戻り、ホテルにチェックインして夕食へ。
事前にリクエストした海鮮レストランへ案内してもらいました。私と导游(ガイド)、师傅(運転手)の三人で食事をとります。
正黄旗海鲜烧烤大排档
大排档（dà pái dàng）とは、屋台街のような雰囲気で料理を味わえるお店のことです。
テーブルへ案内される前に、
食材を見てオーダーするスタイル。
食材から選ぶもよし、
メニューの写真から選ぶもよし。
ガイド：「ユムシ」食べますか？
私：あの「ユムシ」ですか!?
　　食べます！串焼きにします。
これにしようかな…
大头菜爆螺片
dà tóu cài bào luó piàn
つぶ貝のキャベツ炒め
南极海松茸
nán jí hǎi sōng róng
南極の海松茸とは…？
コリコリした食感の海藻(？)の冷菜です。
厚皮海肠串（厚皮海腸串）
hòu pí hǎi cháng chuàn
ユムシの串焼き。コリコリして美味しい。
ホルモンが好きな方にオススメ。
ところで海腸こと「ユムシ」って何？
海の生物「ユムシ」の正体は次の画像をご覧ください。
【警告】次の画像はグロ注意
海の無脊椎動物「ユムシ」。
大連の海鮮レストランでは定番の食材だそうです。
疙瘩汤（疙瘩湯）
gē da tāng
小麦粉のダマと野菜のスープ
ビールはドーンとピッチャーで。
会計はAlipay(支付宝)で支払いました。
夕食後、ホテルに戻りガイドとお別れ。
明日、日本へ帰国します。