瀬棚層の斜交層理を紹介～杉の葉のような美しい模様～（北海道今金）

2018/07/20 - 2018/07/20

今日のブラかっちんは、珍しい「斜交層理（しゃこうそうり）」をご案内します。
美利河（ぴりか）ダムの下流にある中里地区には、約250万年前の瀬棚層の「斜交層理」（これは潮の満ち引きなどで堆積した傾斜のある地層）が後志利別川（しりべしとしべつがわ）の川岸に露頭しています。
その中でも流れが反対方向になる潮の満ち引きによって形成される「ヘリンボーン構造」は、杉の葉のような、またニシンの骨のような、美しい模様になります。
この場所はわかりづらく迷っていたのですが、偶然出会った渓流釣りの人の先導で藪漕ぎをしながら到達できました。

今金町（いまかねちょう）は渡島半島北部の内陸部に位置します。
本格的な開拓は明治の中期から始まり、入植者の必死の努力で肥沃な土壌や気候の恩恵を受けて農業・酪農業が発展しています。
国土交通省の水質調査で、水質が最も良好な河川に国内最多選されている「後志利別川」。
その支流もあわせて、アユやヤマメ、イワナ、ニジマスなどの宝庫です。
ピリカ地区周辺は、全国から釣り人が訪れる知る人ぞ知る渓流釣りのスポットです。

美利河ダムは、後志利別川の上流につくられた多目的ダムで、日本一の長さを誇る「1.5kmもある堤頂」と「2.4kmの魚道」があります。

昼食は長万部に近い中ノ沢にある長万部三八飯店で、名物の「浜チャンポン」と「あんかけ焼きそば」をいただきます。
今晩の宿は苫小牧～八戸間のシルバーフェリーに乗船し、八戸へ向かいます。

なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・今金町HP
・今金町、いまちゃんねる「地元民でも意外と知らない！？今金ヒストリーシリーズ　その9」：ピリカカイギュウ
・北海道開発局「美利河ダム」
・美利河ダム現地案内板
・イエコマ「ギャンブレル屋根」
・日本農業新聞「今金男しゃく黒毛和牛カレー　北海道・ＪＡ今金町」、2020年1月20日
・北海道地質百選「後志利別川（中里）」
・書籍：北海道自然探検ジオサイト107の旅「後志利別川（中里）」、北海道大学出版会
・東濃地科学センター、もぐら博士の地下研究室「層理と単層」
・寒地土木研究所「今金地域における東風（やませ）の発生状況と今後の方針について」
・北海道の人、暮らし、仕事「地域に愛され受け継がれる味「浜チャンポン」長万部三八飯店」
・シルバーフェリーHP
・ウィキペディア「美利河ダム」「瀬棚線」「中ノ沢駅」「シルバープリンセス」

エリア 瀬棚・島牧(北海道)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• グルメ: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: 高速・路線バス 船 JRローカル 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

森の中のお城（美利河）

昨晩から宿泊した「美利河温泉 クアプラザピリカ」です。

「ぴりごん」のお出迎え（美利河）

美利河ダムのマスコットキャラクター「ぴりごん」。

昭和58年（1983）、美利河ダムの工事中に発見された「ピリカカイギュウ」の化石がキャラクターになっています。

この化石は今から120万年前ごろに生きていた体長およそ8mと世界最大級のカイギュウです。

「美利河ダム」周辺の案内図

後志利別川の上流に位置したダムは、昭和37年（1962）8月に起こった大雨の洪水対策として、昭和54年（1979）建設着手、平成3年（1991）に完成しました。

洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の補給、発電の4つの目的をもっています。

ピリカ湖（ダム湖）には、後志利別川とピリカベツ川、チュウシベツ川、計3本の川が流れ込んでいます。

綿菓子みたいな「オニシモツケ」（美利河）

宿から美利河ダムへ行く途中、道端に咲いています。

「国鉄瀬棚線」の廃線跡（美利河）

昭和4年（1929）～昭和62年（1987）、長万部町国縫駅と瀬棚町瀬棚駅を結んでいた「国鉄瀬棚線」の美利河駅付近です。

長い堤頂の「美利河ダム」

美利河ダムは、北海道で初めて重力式コンクリートと中央遮水壁型ロックフィル複合（コンバイン）型式で建設されました。

堤頂長はおよそ1.5kmもあり、複合ダムの中では日本一の長さを誇ります。

では、ダムの周りを散策します。

「土木学会賞」の受賞（美利河ダム）

美利河ダムの建設にあたって、基盤が新第三紀の軟岩で、シルト岩類と砂岩類などで構成されています。

両者の不整合で複雑な地質の基礎処理と合理化施工を図るなど、ダムの計画・設計・施工において、種々の新技術の研究・開発・工法等、ダム技術の粋を駆使して建設されたことが評価され、「土木学会賞」を受賞したものです。

ダム下の「ピリカ発電所」（美利河ダム）

北海道電力の「ピリカ発電所」です。

ダムの水を使って水車を回し、最大4,000kwの電力を発生させています。

長い「魚道ルート」（美利河ダム）

美利河ダムが完成した時点では魚道が整備されていませんでした。

平成17年（2005）にダム直下からチュウシベツ川の合流点間に日本一の長さとなる2.4kmの魚道が完成しました。

緩やかな低々水路、待避プール、チュウシベツ川に直接入れるなど、魚が遡上しやすいルートに設計されています。

階段式魚道（美利河ダム）

高低差の大きい箇所には切り欠きを付けた越流隔を階段状に設置し、魚たちが休みながら遡上できます。

魚道観察窓（美利河ダム）

魚道の横には観察窓が設けられ、行き来する魚の姿を観察することができます。

ウグイ、ヤマメ、アユなどが遡上します。

写真はヤマメです。

ダム堤頂（美利河ダム）

堤高は40m、15階のビルと同じ高さです。

ダム横の階段を登り、ダム堤頂に上がります。

ダム湖（美利河ダム）

後志利別川とピリカベツ川の流入口が見えます。

総貯水容量は1800万立方m（札幌ドーム12杯分）。

「ピリカカイギュウ」のレリーフ（堤頂部高欄下部）

「カイギュウ」は、人魚伝説で知られる「ジュゴン」の仲間で、浅瀬の海で海草を食べる草食の動物です。

牛のようにモグモグと食べる姿から「カイギュウ（海の牛）」と呼ばれています。

この後、ダム事務所でダムカードをもらいます。

三角屋根の「美利河ダム前バス停」

そうそう、瀬棚線美利河駅の駅舎も三角屋根でした。現在駅舎は残っていません。

「瀬棚層 斜交層理」の場所

最寄りのバス停は「中里七号」。

「美利河ダム前」から後志利別川下流の「中里七号」まで、9.9km（バスで14分）。

ダム前9:55発の北檜山・瀬棚方面行きバスに乗ります。

「中里七号」バス停に到着

ここは、瀬棚郡今金町字中里（なかさと）です。

茅葺屋根の民家（中里）

道道936号（旧国道230号）から横道に入ります。

花石地区農業車専用道路（中里）

後志利別川の中里橋を渡り、通称「町道花里線」を歩いて「斜交層理」へ向かいます。

バス停から約2.2km先です。

酪農家の風景（中里）

広大な「ジャガイモ畑」（中里）

昼夜の温度差が大きい内陸性の気象条件を活かしたジャガイモは「今金男爵」として全国に知られています。

トタン屋根のブロック小屋（中里）

酪農の畜舎とサイロ（中里）

屋根が外側に向かって二段階に勾配が急になっている「ギャンブレル屋根」の畜舎。

この屋根は雪のすべりを良くすることができ、また屋根裏の空間を有効活用でき、北海道でよく見かける建物です。

こっちを見つめる「黒牛くん」（中里）

今金町のブランド和牛「今金黒毛和牛」です。

のびのびと草を食べる「黒毛和牛」（中里）

中里集落の農村風景（中里）

黄金色に染まる「麦畑」（中里）

牧草の刈り取り中（中里）

清流「後志利別川」（中里）

牧草地の反対側は町道を挟んで「後志利別川」。

「斜交層理」の風景はまだ見当たりません。

通行止めの案内板（中里）

町道は川と少し離れて森の中へと続き、この先「通行止め」の看板。

熊が出て来そうなところなので、引き返すことにします。

道端に咲く「オオウバユリ」（中里）

「斜交層理」がどこにあるのかわからず、諦めかけてたところに札幌ナンバーの車が目の前で停車。

話をしてみると、これから渓流釣りをする川の対岸にそれらしき地層があるとのこと。

ラッキー！

渓流釣り人の後ろについて行きます（中里）

町道から横道に入るのですが、この先に畑があるのか、草刈りされています。

釣り人は胴付長靴に蚊・ブヨ対策も万全な完全装備。

途中で小川を渡ります（中里）

分かれ道（中里）

左の細い道に入り、これから先が藪漕ぎです。

素人だけでは絶対に行けない道です。

まもなく川に出ます（中里）

対岸の崖は、もしかして「斜交層理」･･･

横道に入り10分ほどで到着。

対岸の素晴らしい景色（中里）

これが白と薄茶の層が斜めに堆積した「斜交層理」です。

第四紀の前～中期更新世（約250万年前）の「瀬棚層」の露頭です。

美しい紋様（中里）

傾斜の異なる層が堆積した「斜交層理」。

お世話になった釣り人（中里）

突然、出会った釣り人にお礼を言い、ここで別れます。

大古の歴史が積み重なる対岸の地層（斜交層理）

上流に向かって川岸を移動しながら、対岸の地層を眺めます。

斜交層理と樹林帯

傾斜の向き合う「ヘリンボーン構造」（斜交層理）

ほぼ正反対の傾斜を示す斜交層理のセットです。

流れが反対方向になる潮の満ち引きによって形成され、「ヘリンボーン構造」と呼ばれています。

上げ潮、下げ潮のときは海水の流れがあるので「ラミナ＊1」が形成されますが、潮の流れが変わるときに海水が停滞してシルトや粘土の細粒土が堆積して平面状の層ができます。
そのために、ニシンの背骨のような杉綾（すぎあや）模様が堆積岩に現れます。

＊1 ラミナは1枚の単層の中にも砂や泥の1回ずつ堆積を示す細い筋のことで、葉理（ようり）とも呼んでいます。

大きく蛇行する川（斜交層理）

川が蛇行する外側の崖にも斜交層理が出来ています。

白黒の紋様（斜交層理）

白色部は軽石質、黒色部は安山岩質の火山岩砕屑（さいせつ）粒子に富んだ部分です。

「押し寄せる波」のような紋様（斜交層理）

自然の現象でできた紋様です。

斜交層理と白い棒状の層の不整合

アートのような紋様（斜交層理）

現在地を確認（斜交層理）

スマホのグーグルマップを開き、現在地（青丸）を確認。

後日、町道から横道に入ったルートを赤い線で追加してみました。

渓流と調和する斜交層理

緩やかな流れの紋様（斜交層理）

長万部行きバス（中里七号）

中里での滞在時間は2時間17分ほど。

偶然釣り人と出会ったことで目的が達成できました。

中ノ沢駅前

バスは国縫を経由して内浦湾沿いに北上し、長万部手前の「中ノ沢駅前」に到着。

中里からバスで30分ほどです。

浜チャンポンの「長万部三八飯店」（中ノ沢）

三八飯店の前身は、寿都（すっつ）町で昭和40年頃に創業した飲食店と旅館。

昭和57年（1982）に長万部の国道5号沿いにドライブインが並び活況のあるこの地に出店しました。

ここで昼食にします。

名物の「浜チャンポン」（三八飯店）

鮮度のいい長万部町のホタテ、ホッキ、イカなどを具材にした「浜チャンポン」。

もう一つの名物「あんかけ焼きそば」（三八飯店）

どちらも味は絶品。量も大盛で美味しくいただきました。

「ノハナショウブ」（中ノ沢）

内浦湾の海岸が近いので散策します。

7月中旬は「ノハナショウブ」が咲き誇っています。

カラフルな「浮き玉」（中ノ沢）

内浦湾の海岸（中ノ沢）

波打ち際の硬くなった砂浜を自転車で駆け抜ける地元のおっちゃん。

気持ちよさそう･･･

「中ノ沢駅」へ向かう女性

車掌車の待合室だけある無人駅です。

我々と同じように20分後の長万部行きに乗るようです。

御宿「仲乃澤屋」（中ノ沢駅）

駅前にあるライダーハウスですが、現在は「閉めました」の表示。

木製電柱と駅名標（中ノ沢駅）

隣は長万部と国縫。

明治37年（1904）に北海道鉄道の紋別（もんべつ）駅として開業。

道内に同様の地名が多かったことから、大正3年（1914）中ノ沢駅に改称。

「中ノ沢」の由来は、この場所が和類川と紋別川の中間にあり、沢を成していることによります。

構内踏切と待合室（中ノ沢駅）

両隣の長万部駅と国縫駅間は複線になっているため、ホームが2面、線路が2本あります。

今いる長万部方面ホームは、構内踏切を通って来ています。

特急や貨物が猛スピードで通過するため、踏切の遮断機が作動します。

長万部行きの普通列車（中ノ沢駅）

森駅始発の列車です。

長万部からは苫小牧へ向かいます。

苫小牧港

今晩は苫小牧港 21:15発のシルバーフェリーに乗船し一泊します。

八戸港には翌日 4:45に到着します、

旅客運賃は2等 5,600円なので、ビジネスホテル並みの料金です。

苫小牧港を出港（フェリー）

シルバープリンセス号の2等船室（フェリー）

座席指定で、座席こどにロッカー・マットレス・仕切りが設置されているので快適です。

大浴場もあるので汗を流せます。

八戸港に到着（フェリー）

シルバープリンセス号は2012年4月から就航。

船体側面のラインカラーはピンクとグレーでお洒落です。

貨物コンテナの積み下ろし（八戸港）

フェリーから貨物コンテナをフェリーターミナルに下ろしています。

これから八戸港5:40発の南部バスで本八戸へ向かいます。

JR東日本の「北海道・東日本パス」を持っているので、本八戸からJR東・青い森鉄道・ＩＧＲいわて銀河鉄道が利用できます。

EH500-1電気機関車（盛岡駅）

EH500交直両用電気機関車の1号機に会います。
ラッキー！

製造メーカーは東芝。

福田パンの「あんバター」（盛岡駅）

朝食は盛岡名物の「あんバター」です。

電車の車内で食べます。

涼しい音色の風鈴（一ノ関駅）

このあと、各駅停車で東京まで帰ります。