2019/09/14 - 2019/09/22
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HOUKOUさん
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昨日入館できなかった「莫言文学館」に何とか入館できた。
じっくり見学した後、高密から煙台へ鉄道で移動。
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ホテルで朝食後,ともかく再度「莫言文学館」へ向かう。
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相変わらず,門は頑なに閉まったままである。
フェンス前でまごついている私を気にかけてか,地元のおじさんが声を掛けてくれる。
タバコを一本差し出し,味方につける(笑)。
そのおじさんの効果なのだろうか,フェンスの門番小屋からめんどくさそうに門番が出てきた。
例によって,私が日本からはるばる敬愛する莫言を慕って高密までやってきたことを力説する。 -
タバコおじさんのオーラも働いたのか,門を開けてくれた。
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建物の玄関に入ると,知的そうな中年の男性が出てくる。
この時とばかり,タブレットに入れてきた私がこれまで読んだ莫言作品の中国原著名一覧表を見せて,私が単なる映画「紅い高粱」を見ただけのその他大勢の観光客ではなく,莫言文学の熱心な読み手であることをアピールした。
男性は直ちに了解してくれた。その風貌から多分研究者とも思われた。
驚いたことには展示スペースは全て消灯されていて,私のためにこの男性が全室明かりを点けてくれた。 -
『生死疲労』の紹介コーナー。
日本では『転生夢幻』という題で出版されている。
幾つかの莫言作品にみられるが,戦争~国共内戦~大躍進政策・文革~改革開放という時代の荒波と人々の変化もこの作品のテーマともなっている。 -
物語の軸は,地主の西門鬧(シーメンナオ)が銃殺され,ロバ,牛,豚,犬,猿,再び人へと転生し,動物の目を通して元の妻や妾,使用人その他関係が深かった者たちのその後の生きざまを眺めるというものだ。
数えきれないほどのキャラクタリスティックな人物,途方もないエピソードの数々が展開するが,ひと際印象的なのは,西門鬧の使用人であった「藍瞼」という生粋の農夫である。
毛沢東時代,農地は集団化され人民公社に集約されていった。
そんな時代に背を向け,圧力にも決して挫けず自分の農地を頑として守り,月明かりの中農作業に勤しむ。
そして家族,転生した動物,自分の埋葬場所を決めて,ひたすら農耕に精を出す。
土から生まれ,土に食わしてもらい,土に戻る・・それ以外はほとんど眼中にない。
その一種の哲人的姿,生きざまは感動的である。 -
莫言の両親。
父はすごく厳格で,少年莫言は常に父を怖がっていたようだ。
母への思いや限りない愛情は「上官魯氏」という偉大な母の人生を描いた『豊乳肥臀』が,この母にささげられたことでも十分伝わる。 -
莫言のお祖父さん。
とても博識で,幼い莫言に最初に文学的影響を与えたという。
莫言作品には,大時代的な幻想的なエピソードが数限りなく登場するが,それはこのお祖父さんから聞かされたものも多かったであろう。 -
莫言一家
奥さんは,同じ綿花工場に働いていたそうだ。
女の子がおり,名前は「管笑笑」・・いかにも莫言らしい。 -
莫言(本名:管謨業)大欄小学5年生のときの作文。
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莫言少年の愛読書。
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莫言が田舎町の肉体労働者から抜け出せたのは,人民解放軍に入隊することができたことが契機だった。
これは解放軍の身分証明書。 -
この土地の伝統芸能「茂腔」を鑑賞する莫言。
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「紅い高粱」の有名な輿入れの場面。
担ぎ手の泥人形がいかにも土俗的で味がある。 -
小説の原稿(コピー)もいくつか展示されていた。
これは中編小説「筑路」の出だしの部分。
いずれも一癖二癖ある不良分子たちが集められ,道路工事の現場で働かされている。
そこにやってきたのは,まだ穢れを知らない純真な子供たち。
子供たちは男たちの前で「革命劇」を演じる・・というシーンである。
この時代(文革期)荒くれ者たちでも,だまって演劇を見るしかないのだ。
その子供たちのうぶでかわいい事よ。
しかし小説の最後で,その子供たちは・・・。 -
「透明な人参」手稿
「金色」(?)を消して「透明」に書き換えたようにも見える。 -
『酒国』冒頭。
特別検察官ジャックが登場する場面である。
この街でとんでもない事が行われているという情報があり,今から捜査を行おうとしているのだ。
たしかにそれはあまりにも「とんでもない事」で,さすがの莫言も「劇中劇」的な取扱いをしている。 -
「とんでもない事」と言えば『白檀の刑』(原題:檀香刑)もそうである。
北京の宮廷処刑人による一世一代の芸術的な刑(もちろん架空だと思う)を行うというものだが,それは小説の核心ではなく,犬料理屋の女房の県知事に寄せる恋慕の情が本筋と私は感じる。 -
紅い高粱を描いたものであろう。
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すっかり満足して文学館を出ようとしたら,記帳台があった。
日付を見てみると,一日に一回も訪問者・団体はいなかった。
おそらく事前に予約する必要があったのだろう。
飛び入り参観を許してくれた門番,男性に本当に感謝します。 -
さてホテルに戻ってチェックアウトの準備をする。
文学館でもらったリーフレット。
よいお土産ができた。 -
駅までは徒歩でスーツケースを引きずって行く。
この旅では三枚の列車のチケットを予約している。
安全策であった青島北~高密は無駄になったが,これから乗る高密~煙台,威海~青島の二枚の切符を売り場で引き取る。 -
発車まで少し時間があるので,駅前食堂でルー肉米飯を食べる。
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高密駅待合室。
莫言も何回もこの駅で汽車を待ったはずだ。 -
ホームへの渡り廊下に「高密三賢」というパネルがあり,その第一とされているのは,もちろん晏嬰(あんえい)だ。
春秋時代,この地は「斉国」であった。
首都はリンズ。当時数十万の人口を擁する大都会である。
そこで宰相として活躍したのが,この晏嬰である。
数年前私はリンズを訪問し,晏嬰の墓を訪ねたが畑の中にあるその墓に残念ながらたどり着けなかった。
その晏嬰はここ高密の出身なのである。 -
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窓からの風景を飽かずに眺める。
麦畑などもあるが,果物の栽培が盛んなようである。 -
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途中からやっと山が見えてきた。
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煙台に近付くと更に本格的な山岳地帯に入って行った。
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