
2019/10/09 - 2019/10/12
8位(同エリア105件中)
鯨の味噌汁さん
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ムンバイから東へ300キロばかり飛ぶと、アウランガバードという町に着く。
ちなみ「バード」はペルシア語で「町」くらいの意味だそうな。
アウランガバードは「アウラングゼーブの町」。
アウラングゼーブって、あのタージマハルを作ったシャー・ジャハンの息子だ。
兄二人を殺し帝位につき、おとっつあんをアグラ城にぶち込んで幽閉しちゃった張本人ですね。
- 旅行の満足度
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 15万円 - 20万円
- 交通手段
- タクシー
- 航空会社
- JAL
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
超巨大都市・ムンバイから来ると小さな町に思えるが、それでも人口120万。さいたま市よりでかい。
ここはエローラ・アジャンタ観光の起点となる町だ。
空港の近くにリゾートタイプのホテルを予約していた。ここに3泊する。
今回は8泊10日で、行く町はアグラ、ムンバイ、アウランガバードの三つだけ。
最後のデリーは一泊だけなんで、日程としてはものすごく余裕がある。
ふたりとも、もう若くない。すでにしてオジジにオババである。気づけばマゴが3人になってるじゃないか。
よって、見物は原則1日1箇所にして、なるたけ早めにホテルに戻ることにした。
さらに夜の予定は入れず、とっとと寝る。
さぁ夜だ、かーちゃんとハッスルハッスル、なんてのは、もはや銀河系の彼方の話である。 -
ホテルのフロントで2日目エローラ、3日目アジャンタのクルマを予約する。
両方とも歴史の教科書に載ってる石窟群だ。
エローラは近くなんで2500ルピー、アジャンタは遠いので4000だそうな。
部屋は一階のプールに面した部屋だった。
カーテンを開けるとガーデンビュー。バルコニーから直接プールサイドに出られる。
プールではお金持ちそうなインド人父子がはしゃいでいた。きれいなお母さんがプールサイドで見守ってる。
こここ、これは泳ぐしかない! -
イチオシ
とゆうわけで、海パンに着替えてトツゲキする。
面白がってかーちゃんも見物に来る(物見高い)。
ワシが泳いでるのをスマホで撮影してるので、思いついてゆう。
「動画で撮ってよ。自分のフォーム見たい」
水泳はそもそも、自分の泳ぎをチェックできないスポーツである。自分のコーモン様を見られないのといっしょだ。
さらに自分のコーモン様は見たい方はいないだろうが(いても少数派)、自分の泳ぐ姿はぜひぜひ見てみたい。
ちなみに、ワシは個人メドレー種目4種、すべてをたしなむ。
このうち、背泳ぎは進むには進むが、いつの間にか足が沈み、立ち泳ぎになるのが難点である。
平泳ぎもまた進むには進が、分速5メートル程度であり、25メートルプールを横断すると体力の消耗が激しいだけでなく、時間の消耗も激しい。
さらにバタフライに関しては、これまた進むには進むが、一回ごとに足をつけないと進まない。オリンピックに出たら失格になるかもしれない。
その3種に比べ、クロールはまっすぐ進むし、スピードも出てるし、泳ぐ姿もそれなりのはずである。
なにしろジムのプールにマジメに通っているのだ。成果が出ないわけがない。
「いいわよ」
とゆうわけで、ワシがクロールでごんごん泳ぐところを、彼女が動画で撮影。
30メートルばかりを泳ぎきり、プールサイドに上がり、スマホの動画を覗き込む。
すると。
なぜだか知らないが、わがクロールはスロー再生になっていた。
巨大生物が水中を「どっぱーーん・どっぱーーん」移動し、ときどきビューっと潮を吹き上げてる。
軟体動物みたいでもあるし、巨大なUMS(未確認生物)がのたうってるようにも見える。
シン・ゴジラの一番最初、これに似た生き物が海で暴れてような気もする。
「スローじゃなくて、フツーで撮ってよ」
彼女に文句をゆう。
「え、これスローなの。やり方わからないよー」
まったく何年スマホ使ってるんだ。これだから機械オンチは困る。
「ワシに貸して」
と、スマホを取り上げる。動画を再生しながら、設定をいじる。
だがしかし。
すぐにスローじゃないことが判明した。フツーに撮れてて、これなのであった。
深く傷つき、しかし表情変えず、スマホをソッと返した。 -
翌朝。午前9時にホテルの車に乗り込んだ。
ドライバーはサンジェイ氏。49歳、ヒゲをたくわえたおっさんだ。
みちみち訊ねる。
-ホテルに日本人が泊ってますね。
「ビジネス、ツーリスト、両方多いよ」
アウランガバードには日系企業の工場がいくつかあって、そこに勤める日本人が長期滞在してるんだという。
そういえばツアー客に混じって、観光モードじゃない中年の東アジア人が2人、朝食をとっていたな。きっと現地駐在員なんだろう。日本から遠く離れてのお仕事ご苦労様。 -
ホテルから40分ほど走るとエローラ遺跡だ。
入り口に近いホテルの駐車場に車を入れ、サンジェイ氏に「3時間くらい」と告げ、ゲートへ向かう。
するとガイドブックを一冊だけ持った兄ちゃんが、
「300ルピー」
と言いながら近寄ってくる。見るとエローラ・アジャンタの両方をカバーしている英語の小冊子だった。
これは欲しい。だが300はないよね。
「ノーサンキュー」
手を振って追い払う。
「250」
兄ちゃん、がんばってついてくるので、立ち止まって告げる。
「100なら買う!」
「安すぎる。150」
うむむ、言い値の半額になったか。だったらいいか。
150ルピーを渡すと、兄ちゃんはぴゅーとどこかへ消えた。
だがしかし、入場料を払って売店を通り過ぎるとき、かーちゃんがその一画をさし
「同じの売ってるじゃない」
値段を見たら25ルピーだったので、脳の血管がブチブチと切れ、その場で昏倒しかける。10倍以上で売ろうとしてたのか。
インドおそるべし。まだまだワシは甘い。 -
エローラについては、地球の歩き方に
「正面の16番石窟が圧巻。最初に見るとあとの感動が薄れるので、最後に見ましょう」
なんてことが書いてある。
だがしかし、その16番は遺跡のゲートの正面にどどーーーんと鎮座しており、どうしたって目に入ってしまう。
よって16番はできるだけ見ないフリをし、右にそれ、1番から順番に見物。
ここは仏教・ヒンズー・ジャイナ、三宗教の石窟が残っているのだが、1番から16番までが仏教だ。 -
それぞれの石窟に鎮座する仏様を順番に見て歩く。前日に見物したムンバイのカンヘーリー石窟に似た、若い仏陀、それにストゥーパがセットで鎮座している。
なおかつ仏陀の座像は、まだ蓮の上に乗っていない。 -
そして16番。
大規模な寺院だけれど、仏像もレリーフも、すべて山肌を彫りぬいて作った構築物だ。
ゾウも階段も塔も全部が全部、砂岩からの削り出し。
実物を目の前にしても、それが信じられない。
本当に人間が作ったんだろうか。
日本にはいわゆる「立木仏」なるものが存在し、そこに根を張った巨木そのものを彫り込んで、根っこをのこしたまま仏像を作るケースがあるけれど。
ここは自然木どころか、山一つをまるごとくり抜いて寺院にしたわけだ。 -
イチオシ
帰り道、アウランガバード市内の「ミニタージ」に寄ってみた。
これは彼女のリクエストだ。
ビービー・カ・マクバラー。通称「貧乏人のタージマハル」。
この町の由来になった6代皇帝、アウラングゼーブのお妃のお墓だ。
作ったのはその息子。
なぜタージマハルのミニサイズを作ったのか、理由はわからない。
サイズが小さいだけでなく、作りも簡素だ。大理石ではないし、螺鈿細工もない。
それでもかーちゃんは大喜びで、あちこちで写真を撮りまくっていた。
どうやらツボらしい。ここらへんを面白がる感覚はワシと似ているかも。 -
外国人観光客は見なかったけど、地元では人気らしく、インド人の家族連れでなかなかの賑わいだった。
パッと見るとダイエットに成功したタージマハル、てな風情だなぁ。 -
10月11日、金曜。
サンジェイ氏の運転で、アジャンタ石窟へ向かう。
ホテルから100キロ、休憩を含めたっぷり3時間。途中凸凹道も多くて、ケツが大いに痛い。
正午過ぎにアジャンタに到着すると、自称ガイドがドドドっと寄ってきて、折り重なるようにワシ達にまぶりつく。
海外からの観光客はツアー多く、個人客は少ないからしょうがない。平日であるからインド人も少ない。
こうゆう時、中谷美紀は「英語が喋れない韓国人」のフリをして切り抜けた。韓国人はケチなので、ガイドの勧誘もあっさり引き下がるんだそうだ。同じ東アジア人でも日本人は押しに弱く、財布にヒモも緩いんだという。
よってもって、ここは一発、韓国人のフリをして切り抜けようと決心。(⇒見た目はコリアンなので)
「 カムサムニダ!」
などと叫ぶが、となりでぼうっとしてる配偶者が「丸顔小柄ぽっちゃり」で、南方系日本人の一典型なので、たちまちにしてバレてしまう。
よく考えたら中谷美紀はプロの女優、こっちはドシロートだ。
勝負になるわけがない 。(勝負しなくていい) -
仕方ないので居直り、
「ノーイングリッシュ。ジャパニーズオンリー!」
するとすると、待ってましたとばかりに目つきの悪いおっさんが手を挙げ、
「私日本語喋ります、ガイドします」
げげげ、こんなところに日本語使い。
「勉強中なので2時間1500ルピーでいいです」
勉強だったらこっちがおカネもらいたいぞ。
「今朝からずっと待ってましたが日本人はあなた達だけです」
待ってろと頼んだ覚えはないぞ。
「あなたをずっと朝から待っていた」
かわいらしい女子高生ならともかく、おっさんにゆわれてもイヤだ。
「特別に500でいいです」
乗り換えのバスまで乗ってきそうな勢いだ。
思いついて、ゆう。
「今日は彼女とデートに来たんだ。ガイドはいらん」
すると、粘着力抜群のおっさんが、ピタリと諦め、離れていった。 -
なるほど。「デートだからガイドはいらん」はかなりキョーレツな断り文句になる、と学習する鯨である。
この後に襲来した複数のガイドの方々も「今日はデートだ」と叫ぶと、大人しく撤退するのだった。
そらそうだ、口説きの現場にガイドは要らんわなぁ。
入場ゲートを過ぎ、階段をふうふう言いながら登り、小さな丘を一つ越えると景色が開き、ゆるくカーブした渓谷沿いに、石窟寺院が足元に広がっていた。 -
この遺跡を見つけたのは、イギリス人のジョン・スミスという軍人だ。
今からちょうど200年前の1819年。撃ち損ねたトラを追いかけて、ここにたどり着いたそうな。
川向こうの山の上に「ビューポイント」の展望台が建っている。妹尾河童さんによると、スミス氏が最初に遺跡を見つけたポイントだという。
写真は「河童の覗いたインド」の「アジャンタ」の挿画。
点線の部分が、トラの「逃走ルート」で、逃げ込んだのは10番石窟だったそうな。
その10番には、スミスさんの落書きが残っているとゆう。
(これは探したけど見つからなかった)
しかし妹尾さん、こんなのどうやって調べたんだろう? -
石窟にはやはり古い仏様と、彩色のはがれかけた壁画が残っている。
期間も長く、紀元前1世紀から8世紀まで延々と彫られ続けた。
この仏陀は鼻筋の通ったアーリア系。教えを受けている弟子はドラヴィダ系だろうか。
それにしても石窟の中はこんな壁画でみっちりと埋まっていて、それがほの暗い照明にひっそりと映っているさまは迫力がある。
なんでこれだけの規模のものが、長いこと忘れられていたのか。
インドはわからんことだらけだ。 -
観光客はそこそこ多い。インド人、中国人、白人。
日本からの団体さんも見かけた。
上を見上げれば青空。
空気は乾いているので汗は意外にかかないけど、階段の上り下りがあるんでなかなか厳しい。 -
インドには1200の石窟があるそうな。
だがしかし、現在、インドの仏教徒は全人口の1%もないんだという。
帰りのクルマの中でサンジェイ氏にその話をすると、
「アウランガバードにはブッディスタが多い。人口の20%はブッディスタだよ。私もそう」
なんてことを教えてくれた。
石窟寺院が多いインド西部は、仏教徒が今でも多く住んでいるのかもしれない。 -
10月12日、土曜日。
この日は夕方のヒコーキでデリーに戻る。
日中はまるまる空くので、のんびり町を歩く。
ホテル前でトゥクトゥクを拾い、「マーケットまで」とお願いする。
にぎやかな通りを走り、市場の入り口で下ろしてもらう。 -
ワシはアジアのマーケットを何か所か歩いたことがあるけれど、かーちゃんは初体験だ。
鶏肉屋。羊肉屋。卵屋。トマト。菜っ葉。なんだかわからない根っこ。山のような香料。果物。みんな単品の商売だ。
「昔は日本もこうだったよね」
懐かしそうにゆう。
彼女は新潟の旧市街、古くからの商業地である古町(ふるまち)の産だ。
実家は東堀で三代続く八百屋だった。
かつて新潟は「西堀」「東堀」とゆう、大きな運河が信濃川の北に走り、北前船が付く物資の集散地だった。今は両方とも埋め立てられてしまったが。 -
そのころの商店街には、卵も鶏肉も、専門の店があった。
新潟の主婦はあちこちで買物をして、晩御飯の支度をしていたそうな。
今、そのあたりは人口も減り、眠るようなシャッター街になっている。
実家も取り壊された。
彼女にとってのふるさとは昭和と一緒に滅んだのである。 -
…などと感慨にふけっていたら浦和の近所に住む長女からLINE。
「地区に避難指示が出た。荒川決壊するかも」
大型台風の直撃で関東全体が厳戒態勢らしい。
鯨家は丘の上だが、長女一家は河川敷に近い土地。
街歩きはやめてホテルに戻り、レイト・チェックアウトをお願いし、ネット経由で流れてくる日本の台風情報を見守る。
台風の関東通過は午後9時。インドだと午後3時。
ぎりぎりまで部屋で粘って、空港へ。 -
デリーのホテルに落ち着いたところで、
「荒川の堤防、持ちこたえてくれました」
長女からのLINEが来た。ああよかった。
荒川の支流があふれ、すぐ近くまで水が来たけれど、自宅はなんとか無事だったという。
最終日、帰りの飛行機は5時間遅れだった。
「機材の調達が遅れました」とのことだったが、要は台風で成田からの便が延着。
空港で半日まちぼうけになってしまったけど、前日の便は欠航だから、飛んだだけでもラッキーと思わなくてはいけない。
「うち、雨漏りしてないかしら」
「雨漏りくらいならいいけど、屋根がなくなってたらどうしよう」
などと語らいつつ、台風一過の日本へ帰っていったのである。
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