2019/08/16 - 2019/08/26
23位(同エリア179件中)
gyachung kangさん
- gyachung kangさんTOP
- 旅行記66冊
- クチコミ60件
- Q&A回答20件
- 91,303アクセス
- フォロワー59人
2019年夏私はモンテネグロにいた。
今回の旅のターゲットはドゥルミトル国立公園。モンテネグロが世界に誇る堂々の世界遺産である。同時にその知名度もまた堂々の無名っぷりであった。
しかし、旅の半分は偶然から始まる。殆ど出会い頭の衝突事故のようにネットで見つけたドゥルミトルの山の姿は私の目を釘付けにした。迷うことなくスケジュールを組み立てチケットを確保、八重洲の本屋でロンリープラネットも買ってトレッキング準備万端、バルカン半島へ飛んだ。
ヒマラヤやキナバルのようなハードトレッキングではないだろう、おそらく山の景色を味わいながら最高にリラックスできるトレッキングになる筈。
だったのに。
危うかった。背筋が凍った。
山をナメたら絶対にあきまへんな。
今だから書ける危機一髪となったドゥルミトル国立公園ソロトレッキングをレポート。後に続くトレッカーのみなさまの参考になれば喜びです。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 高速・路線バス タクシー 徒歩 飛行機
- 航空会社
- ターキッシュ エアラインズ
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
バルカン半島入りを果たした私はアドリア海沿岸にあるモンテネグロ随一の観光の街であるコトルに滞在していた。
コトル観光を切り上げ今から北上、モンテネグロの内陸にあるドゥルミトル国立公園へと向かう。朝コトルのバスターミナルで10時20分発の長距離バスチケットを購入。運賃は16€。 -
私が乗った小型のバスは順調に北上。
のどかな牧草地や見渡しのいい丘陵地帯を走り抜けて行く。 -
14時半過ぎにドゥルミトル国立公園へのアプローチとなる街、ジャブリャクに到着。
長距離バスの降車地点には写真の事務所小屋があるだけ。小屋の中を覗いてみると窓口はクローズ、何の情報も得られず仕方なくガラス窓に貼り出された各地へのバス発着時刻表をスマホに控える。
頼みの綱は近くにあるツーリストインフォメーションだ。 -
ツーリストインフォメーションを探して歩きジャブリャクの街の中心地に出た。
最大繁華街はこの交差路である。
おいおい。
昨年訪れたジョージアのズグディディの街が脳裏をかすめる。
街力の乏しさはズグディディの上を行ってますな。私はこのジャブリャクで果たしてやっていけるのだろうか?笑 -
周囲をパッと見渡すと一番デカい建物がこのVOLI。ジャブリャク住民の胃袋を支える地元スーパーマーケットだった。
入ってみると品揃えは隙がなく店員もお揃いの赤いユニフォームを纏ってキビキビ動いてる。ジャブリャク滞在中は前を通れば必ず寄ってお買い上げをするくらいお世話になった。ジャブリャクにVOLIあり。 -
ツーリストインフォメーションには若い女性が一人。対応は悪くなかったが、さしたる情報は得られず撤退。結局グーグルマップと道中の住民ヒアリングを頼りに予約を入れておいたジャブリャクでの民泊宿を探し当てた。
そ、この赤茶色い一軒家が私のお宿! -
玄関から入り声をかけるとキッチン兼リビングから女性が現れた。御用達となった予約サイトの画面を見せ私の名前を確認、女主人は私を家の2階の部屋に案内してくれた。
部屋に入った時、着いたばかりと思われる先客の20代前半フランス人男女ペアがいてお互いギョッとしたのだが、部屋の割り振りに手違いがあったらしく、彼らは隣の部屋に移動。私がこの部屋に確定となった。
宿の名前はドゥルミトルマジック。朝食付き2泊で47€ 現金払い。窓からは明るい太陽光が燦燦と降り注ぐ気持ちのいいお子ちゃま部屋である。 -
2階と1階の上り下りはこの階段を使う
-
トイレとシャワーはここ。
宿泊ゲストも家族と共用。洗濯機の中には洗濯物もそのまんまある。
映画シャイニングで冬の間管理することになったコロラドのホテルに着いたジャック・ニコルソンが満足げに「homy」と言い放つシーンがあるが、ここドゥルミトルマジックもまさに「homy」 -
翌日
ドゥルミトルマジックにも朝が訪れた。私の部屋は写真で2階右の部屋。こうしてみると手頃な大きさで朴訥な造りが結構いい味わいを出してるような、ね。
朝食は8時から敷地内にある椅子と机のオープンエアスペースで食べる。パンにジャム、コーヒーか紅茶のみの超簡素な朝食だが女主人とまだ5歳くらいの男の子、おばあちゃん、そして隣部屋のフランスカップルも一緒。他愛のない会話をしながらの朝食だがメガネをかけた20代前半フランス人女性は華があって品がよく英語も達者でそのスマートさに朝からグッと来た。比べてフランス男子は大人しめで英語もイマイチ、まあ大概にして女子の方が旅力が上であるなあと思った次第。 -
朝食後、早速ドゥルミトル国立公園内へと出かける。国立公園とあってそのエリアは広く拠点となる街はいくつかある。私がジャブリャクを選んだ理由は単純でトレッキングコースが豊富にあるから。ドゥルミトルの滞在は今日と明日組んでいる。情報もほとんど無いので第一日目のミッションはまずトレッキングの難度を実際に確かめること。
-
公園の入口で入場料3€を払う。
舗装路の一本道を15分程歩くと。
突然目の前の視界が開けた。 -
湖がどーん
ここはドゥルミトル国立公園の中でも有数の観光スポット、ブラックレイク。
写真でこの空気感を伝えるのは実に難しいが朝の静寂に包まれたブラックレイクがどれだけ魅力的な場所かはここに立ってみれば誰にでもわかる。 -
ブラックレイクの脇にはこの湖を囲むようにバリエーション豊富なトレッキングコースの紹介板があった。とは言え目的地と距離以外の情報はわからない。こりゃもうヘナチョコトレッカーとして培った勘頼み。こういう局面こそ自分を信じろ、である。
-
トレッキングへの起点からはもう舗装路はない。左手にブラックレイクを見やりながら林間道へ入っていく。
-
木漏れ日の中を歩く平坦道。絶好のお天気に恵まれて快適この上ない序盤戦~
-
平坦道一本道を抜けると全方位に視界が開けて現れたのがこれ。
足下に点在する岩に書かれた赤ペンキの矢印。このドゥルミトル国立公園でのトレッキングでルートの指標となる命綱。この赤ペンキを軽視して独自ルートを切り開こうなんて間違っても思っちゃいけない。それがどれだけの危機を招くかは後でわかる。 -
大きなサインが出現。このポイントで公園スタッフの男性が1人、小屋も何にも無い野ざらしの中に待ち構えてチケットチェックをしてきた。
サインは自分が正規ルートに乗っていることの証し。だからホッと一安心するのだが、実はこの大きなサインも数えるくらいしか設置されていない。 -
何かの記念碑。モンテネグロ語表記なんで解読不能。
-
歩くこと1時間、木の合間から山肌が姿を見せた。
-
トレッキングルートの地図は前日ツーリストインフォメーションで手に入れていた。しかしスケールが小さ過ぎていったん森の中に入ってしまうと地図は何の役にも立たない。もちろん、あの最強の地図アプリグーグルマップも自然が相手では潔いくらいに無力。
頼りはひたすら赤ペンキ矢印のみ。 -
一見すると快適なハイキング道を進む。だが私の後を追ってくる人も反対方向からやってくる人も誰もいない。私はこのへんでドゥルミトルトレッキングの危うい一面に気がつき始めていた。
-
こういう高さにある赤ペンキ表示は見落とすことはないからいいんだけどね。
-
目の前の森が開けてカールのような場所に出た。ここでベルリンとフライブルグからやってきたドイツ人4人グループと遭遇。女性2人は木陰で小用してて私としてはまあ笑うしかないよねえ笑
-
空が見える。安堵する。
-
朽ち果てた小屋の痕が。
避難小屋だったのか何かの作業場だったのかはわからない。 -
この小屋脇でランチブレイク。食料は前夜のうちにあのスーパーVOLIで仕入れていた。
上の写真が現地で購入したマップなんだがブラックレイクを取り囲む山の位置関係とポイント間の距離表示を掴むためのもので明確な登山道が皆無のドゥルミトルの山中では戦力にならない。ホントである。 -
あのカールを折り返し地点にして近くにある別の湖を目指して再出発。この時点で私以外のトレッカーに出会ったのは確か4,5組だったと思う。つまり何かアクシデントが起きた場合に助けをもらえる確率が非常に低いのである。
-
岩がない場所では木の樹皮に赤ペンキのサイン
-
ハッキリとわかる道が現れて
ここで初めての轍の痕跡が。
抉られかたが尋常じゃないですな。 -
スモールレイク発見!
現地名は Zminje jezero
すみません、読めません(詫) -
湖畔への降り口は1カ所。木のベンチとテーブルがあり私が着いた時に家族トレッカーが1組、ほんわかしていた。
その場所以外は手つかずの自然で湖の周りを1周することは出来ず途中で断念。 -
スモールレイクを後にしてブラックレイクの方角に向かって徐々に山を下る。実はこれだけ歩いても本当に方向があっているかどうか自信がない。この幻惑感は初体験。ヒマラヤのアンナプルナトレッキングでもこういう不安を感じることはなかったのに。
-
へえ~かなり古そうな用水施設だ。
さすがにここまで来れば人がいる場所近しの気配がしてくる。
足どりが自然と軽くなる。 -
道はブラックレイクへと繋がっていた!
15時過ぎ、初日のトレッキングは無事終了。ドゥルミトルの片鱗を垣間見た程度かもしれないが、かなりの満足感。
明日はさらに遠くを目指す。 -
ブラックレイクは静かに水を湛えていた。大きさはスモールレイクの比ではない。んで実際にはブラックじゃなくてブルーレイク。
-
と思うとエメラルドグリーンレイク
沿道があるので3分の2周程歩いてみたがポイントによってずいぶんと違う。 -
カヌーを漕ぎ出している人もいるし水着を用意して湖水浴を楽しんでいる人もいる。この日は30人くらい泳いでいたかも。
-
これだけ景色に恵まれていながら飲食施設はたった1店だけ。湖を見下ろせるテラスレストランがあって食事メニューも充実。全てのトレッカーが吸い込まれそうな独占営業状態で私も席を取って休憩した。
-
公園を出てジャブリャクの街場まで徒歩20分。すごく感じのいいレストランに出くわして飛び込んでみた。
トラウトのグリルを注文するとマスターは満面の笑みでグッドチョイス、自信あります、の回答。
味ですか?ええ、マスターの言葉に偽りなし。ホント美味かった。
ああ今日はなんて充実した日なんでしょう。
だいまんぞく。 -
ジャブリャク3日目。
今朝も爽やか。東京のような真夏の湿気というものがない。去年のジョージアも同じだっけど、この気候の良さは羨ましくなる。
この日はフランス男女にもう1人、フィラデルフィアから自転車持参でやってきたちょっとシャイな米国人大学生男子も増えてゲスト4人家族合わせて7人での朝食に。 -
公園入口で今日もエントリーフィーを支払い全トレッキングの起点となるブラックレイクへ。この日もレイクは麗しい。
うん、この位置から見ると確かにブラックなんだなあ。 -
これがブラックレイクの全容。
現地名は Crno jez。
浅瀬でつながるツインレイクである。
多くのトレッキングコースは今私がいる東岸をスタートしてレイクの北回りか南回りで西方角に進んで行く。 -
今日のトレッキングは手探りではない。
前日、公園入口の男性スタッフから聞き出していたこのエリアの人気スポット、アイスケイブ、Ledena Pecina を目指すことにした。片道は3時間、往復しないでワンウェイのラウンドトレッキングに挑む。比較的安全度が高いリターントリップよりもワクワク感が高いほうに惹かれる。私はね。そうだよねえ。 -
9時7分トレイル開始。
ブラックレイクに沿って北に進路をとり、少ししてベンチがポツンと一個。 -
ベンチの後ろに公園スタッフの男性。
チケットチェックポイントだった。
サインには私の目的地 Ledena Pecina の表記がある。 -
ここから山に分け入って行く。
期待と不安が半分半分、さあどんなルートが待ち構えているのか?
この瞬間がトレッキングの醍醐味だ。 -
今日もしっかり赤ペンキを追っていく。
だけど、このペンキはマーキングとしては石が小さ過ぎないかなあ??草の背が伸びたらスッポリ覆われてしまうよ。これがドゥルミトルの落とし穴。 -
ジリジリと高度を上げていくアップヒルが続く。おまけに数日前に大雨が降った跡と思われる荒れた足場。昨日も今日も晴天で私は運があった。
-
今日のルートは人気ルートの筈。
なのに私の前後にトレッカーの気配は一向にない。
その代わり、突然向こうから犬が現れた。飼い主はついていない。私には目もくれず通り過ぎていく。
ココ、既に相当山の中に入ってるんですけど。ちょっと驚いたね。 -
木に寄りかかるように立つ円盤のような岩。往復のコース取りならこういう岩は都合のいい目印になる。
-
このルート初の展望。
ウン、ここまでは順調に来てる。 -
トレッキングってホントに天候が鍵だ。
太陽の光はそれだけで全ての不安を打ち消してくれる。普段ビルの中で生活しているだけだと、太陽の偉大さに気がつなかいんだよね。今や私はすっかり太陽崇拝者であります。 -
すこ~しずつ、荒々しい岩肌が近づいてきた。このあたりからドゥルミトルの本領発揮となるのか。
-
わお
行く手にサインがある。 -
私が目指す Ledena Pecina は右のルート。
この時、まだ気がついていなかったが、この地点は極めて重要な分岐点だった。
それは後ほど分かる。 -
いいぞいいぞ
うっとり見惚れるような景観地帯に今まさに入っている。 -
これだけ道が視認できれば不安が湧くことはない。とにかく私以外のトレッカーと会わないのである。信じるのは自分のみ。
-
ラベンダー色の野草と乱反射するコガネムシの緑色の羽の組み合わせが素敵。
-
樹木の下、枝に隠れて消えかかっているところが道。人間のカラダがギリギリ1人入るような枝の下を頭を下げて掻き分けて進む。本当にこの方向でいいのか?にわかに自信がなくなってくるが進むしかない。
-
尾根伝いに歩いていくと突然
このカールに出た。
三角屋根の小屋があるじゃないか。 -
小屋に吸い寄せられた。
扉脇には石積みも残っていた。 -
内部には何一つ残されていない。
少しだけ不気味さを感じて私はすぐにこの小屋を立ち去ることにした。 -
小屋を立ち去ったのはいいが、いつの間にか足元から赤ペンキの道標が消えていた。
たまたま間隔が開いているだけなのか?
このあたり踏み固められた道がなく草が茂るだけ。来た方向から小屋を通り越すとこのダウンスロープになって先に続いている気配もある。が、ガレ場まで下ってみても一向に赤ペンキのマークが見当たらず。
ヤバいぞ。
プチパニックに陥った私。ここにレスキュー隊は来ない。目をさらのようにして赤ペンキの石を探した。もう必死。 -
右往左往すること20分。
おっかしいなあ~と焦りつつ小屋に降りてきた道に戻ると。
この岩を発見した。
怪しい二つの赤ペンキマーク。
私から見て、左側が正解なのか? -
こっちだった。
この上りが Ledena Pecina に通じる道だった。
いやあ、危ない。肝を冷やした。
一瞬にして道を見失う恐ろしさ。ドゥルミトルの洗礼を受けた気分。
この魔のカールを一目散で後にした。 -
ここから先、タフな足場が待ち構えていた。
もはや道とは言えない。
トレッキング、ではなくて登山。
ドゥルミトル、恐るべし。 -
タフな足場を手を使いながら突破。
すると今度は山腹に沿った長いトラバース道が走っていた。
こういう道は大大大大大好きだ!
任せておくれ。 -
長いトラバース道のその先には急勾配の大きな山塊の姿がある。おそらく、あの真下が Ledena Pecina 。
-
そしてここからが急登だった。
再び両手を使わなければクリアできない難所が連続して出現。キナバル山には固定ロープがあったがこのルートにはロープはない。
間違いなくガチ登山になっていた。 -
下を見下ろす。この斜面で初めて私以外のトレッカーの姿。すれ違ったソロで下山していく女性、私の後から続いてくる2人組。
-
山塊の真下まで登り切った。
-
大きな洞窟があって
-
ズームして見ると氷の柱が立っていた。
間違いない、これが、アイスケイブか。
なんとか目的地の Ledena Pecina に到達。 -
背後にたちすくむ大きな山塊
2303メートル、この上がこの山 Obla glava の頂上である。
だが、この位置から岩を登っていくには岩壁登攀の確かな技術なくしてはどう見ても無理。
裏側に回りこもうとしても足元が断崖絶壁で危険過ぎた。 -
丸腰では登ることが叶わない頂上との落差はおよそ50メートル。ということで事実上、このポイントが頂上と言っていい。
実際、この踊り場には私の他にトレッカーが3組。荷物をほどいて汗を拭い達成感に浸っていた。 -
私もランチタイムにする。
スーパーVOLIで調達しておいたリンゴとバナナ、サラミにソーセージである。
大自然の真っ只中では何を食べてもご馳走になるんだなぁ。 -
リンゴを齧りながら景色を味わう。
-
刃物のエッジのような稜線
-
ドゥルミトルの荒々しいパノラマビューが広がっていた。
モンテネグロ、和訳すれば黒い山ってことになるが、ドゥルミトルは見ての通り黒くない。明らかに白である。なので私の中ではこの国はモンテブランカ。そう思いませんか、みなさん。 -
ランチ休憩終了。
来た道を戻らずに別ルートを使って下山する。
この足元ガレ場から後半戦開始だ。
ね、白いんです。 -
石の大きさが要注意。体重をかけると一番グラッと動きやすいサイズである。大きければ動かないし砂利サイズならカラダは地面に沈む。下りは転倒リスクがはるかに高いのでしっかり踏んでいく。
-
この高度帯の植生はほぼハイマツだけ
-
慎重に下っていくと。
この渓谷に出た。
この一帯、実に起伏に富んだ地形である。美しき難敵、そう思った。
ここに来た甲斐があった。 -
よし、大丈夫、このルートに乗ればちゃんと山を降りられるな。
-
この道を下って左側が東方角、ブラックレイクにつながっているハズだ。
-
この斜面で植生が変わった。
日本のウサギギクに似ている。 -
自分が降りてきた方向を振り返ると。
いつの間にか雲の位置が下がってきた。こいつはうかうかしてらんないかも。少しスピードを上げなければ。 -
オンルート、だよね。
-
ルートは山を巻きながら東に舵を切るところで眼下に水場が見えた。
-
このドゥルミトルで二つのレイク以外に初めて見る水場。
湧き水?
下に降りてみたいけど寄り道は三角小屋で懲りた。先を急ぐ。 -
一本道でルートの誤読の心配はないんだが、この地点ではブラックレイクまでの距離感がつかめていない。少しでも距離を詰めておきたいこのあたり。
-
馬の背のような場所に着いた。
-
フォトタイム。
いや、馬の背からの景色があまりに気持ちよかったんで。ダメ? -
下山ルートで初めてサインを発見。
Crno Jezro ブラックレイクまでここから3.5キロとある。順調に行ければ射程圏内と言っていい。私は大きく安堵した。ここまで来れば安泰だろう。そう思ったね、この時は。 -
この馬の背は中継地点のようだった。
一軒の三角屋根の小屋があり建屋には小さくBEER の文字が。え、ショップなの?と思って中を覗くとなんと男性が一人いる。
瞬間目があったがショップらしさは微塵もなく、不思議な空間に戸惑って挨拶の言葉も出なかった。
反対方向からやってきた男性もこれなに?という表情で凝視。 -
ミステリアスな三角小屋のその向こうは視界が開けたなだらかな谷になっていた。
-
この谷をクリア。後ろを振り返るとあのミステリアスな小屋ははるか遠くに。
ここまで辿りついて、再び馬の背の踊り場に立ち一足早い達成感が込み上げていた私。
ブラックレイクは目と鼻の先、疑いなくトレッキングの仕上げ、にかかろうとしていた。 -
私の目の前にソロの女性がいた。
最後の仕上げはこの馬の背から下って入り、進行方向と左右がブッシュに囲まれた全く展望のない峠道。
少し心理的に圧迫を感じるエリアで嫌な感じがよぎったが、ここまで来ているという安心感から注意力が希薄になっていたのかもしれない。 -
ブッシュなので赤ペンキは遠目からは見えにくいエリアだった。
-
この赤ペンキの右と左
ここでハッキリとわかる道は消え足元は草と岩。
明らかに右手のほうが開けていてこちらに進む。足場は岩と岩を飛び移っていくような足元だ。いつ赤ペンキが現れるのか、試行錯誤しながら岩をジャンプしていくが赤ペンキは一向に見当らず。
おっかしいなあ、見落としてるのかな?
そうしているうちに行く手を見上げるといつしか大岩壁が立ちはだかってきているじゃないか。
違うぞ、おい!
この方向はドゥルミトル山塊の中の Mt.meded に向かっていくルートだった。岩をホッピングしながら赤ペンキを必死で探した。
時刻は16時近く。トレッカーが私と交錯する可能性は極めて低い。ここで森の中を彷徨ったら日が落ちてしまう。
本日2度目、いや最大のピンチ。頭の中に初めて遭難の二文字がリアルに浮かび上がり焦りは最高潮に達していた。
ど、ど、ど~しよう~泣 -
泣きながら(いやホントは泣いてないけど)ブッシュと岩場の行ったり来たりを繰り返しティショットで林の中に打ち込んだゴルフボールを血眼で探すが如く赤ペンキを探した結果……
コイツを発見した。
この赤ペンキがブラックレイクへと戻っていくルートの指標だった。
道迷いのこの間20分。
悪夢の20分だった。
出口が見つかったとわかった瞬間、全身からヘナヘナと力が抜けていった。 -
あの因縁の赤ペンキを通り過ぎるとやがて小高い丘の上に出た。間一髪で迷宮から生還を果たした心境である。残り少なくなったペットボトルの水を一飲みしたらようやく私の鼓動は正常値に戻っていた。
あそこに見える山が私を吸い込もうとした魔性の山 Mt.meded である。
山とは……… 。恐ろしいものよ。
痛感。 -
ブラックレイクの方角はあちら。
今度こそ間違いなく安全圏だ。 -
安全圏の小高い丘からダウンしてアップすると黄色いサインが登場した。
これは、見たことがある。
今朝、登り途中でこのサインから右に進んだあの場所じゃあないか。
ガッツポーズ!
ルンルンを買っておうちに帰ろう、私はそんな心境であった。©️林真理子
-
足取りはカルカッタ、いや、軽かった。
もはや私を遮るものは何もない。
この倒木は登りの途中で腰を下ろし休憩した場所である。トレッキングのゴールが近い。 -
山道を降り切った。
ここから先は平坦道。人影も見える。
ブラックレイクがすぐそこにある。 -
もうそこは
-
ブラックレイクだあ!
やったあ~ おめでとう㊗️
ただいま帰りました。
ご心配おかけしました。 -
ドゥルミトル、波乱のトレッキングをやり遂げた私はブラックレイクの湖面から湧き上がるマイナスイオンを全身で吸い込んだ。
この景色、本日格別の味わい。
もう最高にキヨキヨできました。
©️渋野日向子 -
ブラックレイクに別れを告げ余韻を楽しみながらブラブラ歩いてジャブリャクの街に戻った。
時刻は夕食にちょうどいい時間。
前日に入ったレストランの料理とマスターが気に入っていた私はこの日もこの店に立ち寄った。テラス席に腰を下ろすとこの日はこのネコがお迎えしてくれた。 -
昨日は魚、今日は肉。
ラムのリブローストを注文。マスターは自信満々で私に料理を差し出した。
一口目で結果は出た。
taste goooooooooood ! ★★★進呈!
絶品の味だった。どうしてこういうラムが日本にはないんだろうな~。ジャブリャクでこんだけの味に出会えるとは誰も思わない。あまりに美味いので骨まで食べそうになったよ。これでまた一つ、私がヴィーガンになる日は遠のいた。 -
大満足でした、という意味を込めてマスターにエスプレッソをたのんだ。もう陽は落ちている。道路を挟んだ向こう側の家の前にパパと小さな女の子。
お代15€を置いて店を出た。
お店の名前はドゥルミトルINN。 -
ドゥルミトル国立公園のトレッキングはその予定を全て終了。私がお世話になった宿ドゥルミトルマジックともお別れである。実に良い眠りと良い目覚めができました。厚く御礼です。
今回の計画はガイドブックにもほぼ情報がなく、難易度は現地に来るまで分からなかった。ネット上でもトレッキング報告は数える程度。そこにドゥルミトルの魅力を伝える楽観的なものはあったが、危うさを指摘するものは皆無だった。
実際にはルートは把握しづらく途中の補給地はなくトレッカーの数は少ない。ソロトレッキングになると全く油断はできない、そういう場所だった。そのことをお伝えしておきたい。私の旅の掟は楽しんで無事に戻ってくること、ただそれだけです。
これからドゥルミトルへトレッキングに向かわれる方は必ず、楽しんで無事に戻ってきて下さい。では!
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (2)
-
- あころさん 2021/12/08 21:43:13
- お疲れ様でした!
- いつか行こうと思ってますが、過去のモンテネグロ訪問などから情報薄は心配していたので、とても参考になりました!
次の夏に行きたい!けど、いつになったら行けるのやら。
- gyachung kangさん からの返信 2021/12/10 22:24:43
- Re: お疲れ様でした!
- あころ様
こんばんは
ご投稿いただきありがとうございました。ずいぶん早くにモンテネグロに行かれたんですね。
旅先としてはメジャーとは言い難いモンテネグロになぜ?
すごく気になります。
かくいう私もバルカン半島の国々はなかなか面白いなあと思う次第。
早く行けることを祈りましょう。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
その他の都市(モンテネグロ) の人気ホテル
モンテネグロで使うWi-Fiはレンタルしましたか?
フォートラベル GLOBAL WiFiなら
モンテネグロ最安
1,378円/日~
- 空港で受取・返却可能
- お得なポイントがたまる
2
114