別府温泉旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 外国からのお客さんを連れて,別府にやってきた。お客さんのなかには,偏食気味の方もいて,回転寿司以外の日本食はまったくだめというから,初日から困った。ここに連れて行ってほしいと頼まれたのが「かっぱ寿司別府店」。大分の地元ならではのお料理を楽しみにしていたのに,私は少しがっかり。とはいえ,お客さん第一。初めての日本という方もいらっしゃったから,愉しんでもらわないと。「こんなおいしいお寿司は初めて!しかも,うどんというスープは最高ね!」と喜んでくださった。私は,大分や別府を意識しているけど,外国のお客さんは「日本」を体験している。大分地元料理を期待しているのは私だけだ。<br /> 翌朝,別府でのお仕事も済ませ,猛暑のなかお客さんたちもお仕事で疲れたというので,午後は自由行動とした。元気な女性のお客さんはショッピングに出かける。男達は,ホテルの温泉に浸かったり,海岸に出てみたりと思い思いの過ごし方をされたようだ。私は,竹瓦温泉に行く。お客さんを連れて行こうか迷っていた。私も初めてだし,温泉好きのお客さんとはいえ,竹瓦温泉のような古い地元の公衆浴場は外国のお客さんでも戸惑わずに楽しめるだろうかと心配になり,一人街歩きをしながら,竹瓦温泉に行ってみた。<br /> 竹瓦温泉の建物は,タイムスリップしたようなレトロな建物で,入口を前にして早くも私はにんまりした。「これはすごい。」入浴料百円を入口で払い,下駄箱に靴を入れて板敷に上がる。足の裏に心地よい木の感触。着替え場からは正面の通りが見える。とても開放的だ。棚があるだけの簡素な着替え場で,そこで裸になると,階段を下りて湯船に向かう。昭和13年(1938年)からの公衆浴場なのだそうだ。建物だけでなく,湯船も年季が入っている。あるのは湯船だけ。蛇口やシャワーもない。洗髪する人,体を洗う人(石けんは50円で売っている),みな湯船のお湯を桶で汲み,体に掛け流している。<br /> 地元の子供たちもたくさんいて,体を真っ赤にほてらせて,湯船の縁に座っていた。この温泉,なかなかの熱さだし,今日はとにかく暑い。私のとなりには見知らぬオーストラリア人も,ずいぶんと長湯したようで,白い肌を真っ赤にさせて,湯船の縁にぐったり座っていた。「風呂の縁には座るな」と階上の着替え場から大声で地元のおじさんが怒鳴る。となりのオーストリア人が慌てて湯船に沈む。子供達もびっくりして湯に沈む。私もおとなしく湯船に浸かる。神様が湯船の縁に埋め込まれているとおじさんは言う。オーストリア人に近づき,縁を指差して,「アーメン、アーメン、わかる?」と笑いながら語りかける。オーストラリア人と私は,顔を見合わせて,破顔した。「ここは素敵だね!」とオーストラリア人がいう。「そうだね,僕もそう思う。」建物と湯船,ローカルな文化,地元のこどもたちやおじさんの笑いや話し声,蝉の鳴き声,ぜんぶ時間が止まったようにみえた。僕らは並んで湯船に浸かりながら,ただただ無言で昭和のランドスケープを愉しむ。そして,また顔を見合わせ,ニタッと笑う。「だね!」とでも互いに言うように。<br /> 自分のお客さんを連れて行くのは,やめた。日本語が話せない見知らぬオーストラリア人が愉しんでいたんだから,連れて行ってもよいかなとも思うけど,どうもこのランドスケープを説明するのが,野暮だなと思ったからだ。できることなら,「アーメン、アーメン、わかる?」で説明を終えたい。それ以上の説明はいらない。自らの五感だけで愉しんでもらいたい。どんな歴史があり,どんなふうに入るのが適切で,何が特別で,どのように健康的で,どのように日本人は親しみ,などなど,説明はもうしたくない。ひとり脱力して,心ゆくまで竹瓦温泉を愉しんだ。<br /> 晩ご飯は,地元料理が食べられる居酒屋に行くべしと,半ば強引に近くの炉端焼のお店に連れて行く。大分名物の「琉球」(甘口のたれでお刺身を和えたもの)は,お客さんにも好評だった。日本食になじめないお客さんは,一口も食べず,お店をでたらマクドナルドに直行した。好き嫌いが多いって,やっぱり旅は楽しめないんだろうなと思い,翌日,海地獄を見学したあと,かわいそうになって,お昼はステーキ屋に連れて行った。きっと国産じゃないと思うけど,帰り道,「日本」のステーキは,おいしいと喜んでいらっしゃったので,それはそれでいいと思う。回転寿司に和牛,いろいろと事前に調べていらっしゃったようで,想いのとおり味わって頂いて,喜んでもらえた。とはいえ,私自身,とかく説明過剰,うんちく過剰の旅のお伴になりがちだ。ひとり竹瓦温泉を愉しんでいたオーストラリア人の恍惚を思いだしながら,旅は,うんちくを捨てて,ありのまま五感で味うべきかなと旅を振り返った。

アーメン、アーメン、わかる?

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2019/07/23 - 2019/07/25

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Jakeさん

 外国からのお客さんを連れて,別府にやってきた。お客さんのなかには,偏食気味の方もいて,回転寿司以外の日本食はまったくだめというから,初日から困った。ここに連れて行ってほしいと頼まれたのが「かっぱ寿司別府店」。大分の地元ならではのお料理を楽しみにしていたのに,私は少しがっかり。とはいえ,お客さん第一。初めての日本という方もいらっしゃったから,愉しんでもらわないと。「こんなおいしいお寿司は初めて!しかも,うどんというスープは最高ね!」と喜んでくださった。私は,大分や別府を意識しているけど,外国のお客さんは「日本」を体験している。大分地元料理を期待しているのは私だけだ。
 翌朝,別府でのお仕事も済ませ,猛暑のなかお客さんたちもお仕事で疲れたというので,午後は自由行動とした。元気な女性のお客さんはショッピングに出かける。男達は,ホテルの温泉に浸かったり,海岸に出てみたりと思い思いの過ごし方をされたようだ。私は,竹瓦温泉に行く。お客さんを連れて行こうか迷っていた。私も初めてだし,温泉好きのお客さんとはいえ,竹瓦温泉のような古い地元の公衆浴場は外国のお客さんでも戸惑わずに楽しめるだろうかと心配になり,一人街歩きをしながら,竹瓦温泉に行ってみた。
 竹瓦温泉の建物は,タイムスリップしたようなレトロな建物で,入口を前にして早くも私はにんまりした。「これはすごい。」入浴料百円を入口で払い,下駄箱に靴を入れて板敷に上がる。足の裏に心地よい木の感触。着替え場からは正面の通りが見える。とても開放的だ。棚があるだけの簡素な着替え場で,そこで裸になると,階段を下りて湯船に向かう。昭和13年(1938年)からの公衆浴場なのだそうだ。建物だけでなく,湯船も年季が入っている。あるのは湯船だけ。蛇口やシャワーもない。洗髪する人,体を洗う人(石けんは50円で売っている),みな湯船のお湯を桶で汲み,体に掛け流している。
 地元の子供たちもたくさんいて,体を真っ赤にほてらせて,湯船の縁に座っていた。この温泉,なかなかの熱さだし,今日はとにかく暑い。私のとなりには見知らぬオーストラリア人も,ずいぶんと長湯したようで,白い肌を真っ赤にさせて,湯船の縁にぐったり座っていた。「風呂の縁には座るな」と階上の着替え場から大声で地元のおじさんが怒鳴る。となりのオーストリア人が慌てて湯船に沈む。子供達もびっくりして湯に沈む。私もおとなしく湯船に浸かる。神様が湯船の縁に埋め込まれているとおじさんは言う。オーストリア人に近づき,縁を指差して,「アーメン、アーメン、わかる?」と笑いながら語りかける。オーストラリア人と私は,顔を見合わせて,破顔した。「ここは素敵だね!」とオーストラリア人がいう。「そうだね,僕もそう思う。」建物と湯船,ローカルな文化,地元のこどもたちやおじさんの笑いや話し声,蝉の鳴き声,ぜんぶ時間が止まったようにみえた。僕らは並んで湯船に浸かりながら,ただただ無言で昭和のランドスケープを愉しむ。そして,また顔を見合わせ,ニタッと笑う。「だね!」とでも互いに言うように。
 自分のお客さんを連れて行くのは,やめた。日本語が話せない見知らぬオーストラリア人が愉しんでいたんだから,連れて行ってもよいかなとも思うけど,どうもこのランドスケープを説明するのが,野暮だなと思ったからだ。できることなら,「アーメン、アーメン、わかる?」で説明を終えたい。それ以上の説明はいらない。自らの五感だけで愉しんでもらいたい。どんな歴史があり,どんなふうに入るのが適切で,何が特別で,どのように健康的で,どのように日本人は親しみ,などなど,説明はもうしたくない。ひとり脱力して,心ゆくまで竹瓦温泉を愉しんだ。
 晩ご飯は,地元料理が食べられる居酒屋に行くべしと,半ば強引に近くの炉端焼のお店に連れて行く。大分名物の「琉球」(甘口のたれでお刺身を和えたもの)は,お客さんにも好評だった。日本食になじめないお客さんは,一口も食べず,お店をでたらマクドナルドに直行した。好き嫌いが多いって,やっぱり旅は楽しめないんだろうなと思い,翌日,海地獄を見学したあと,かわいそうになって,お昼はステーキ屋に連れて行った。きっと国産じゃないと思うけど,帰り道,「日本」のステーキは,おいしいと喜んでいらっしゃったので,それはそれでいいと思う。回転寿司に和牛,いろいろと事前に調べていらっしゃったようで,想いのとおり味わって頂いて,喜んでもらえた。とはいえ,私自身,とかく説明過剰,うんちく過剰の旅のお伴になりがちだ。ひとり竹瓦温泉を愉しんでいたオーストラリア人の恍惚を思いだしながら,旅は,うんちくを捨てて,ありのまま五感で味うべきかなと旅を振り返った。

旅行の満足度
5.0
観光
4.5
ホテル
4.5
グルメ
5.0
同行者
その他
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
ANAグループ ソラシド エア
旅行の手配内容
個別手配

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