2018/08/01 - 2018/08/01
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OE-343さん
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汐留ベヒシュタイン サロンで1830年代ライプツィヒのピアノ製作者ヨハン・ネポムーク・トレンドリンが製作したフォルテピアノのイベントがありましたので行ってきました。
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今日の楽器はこちらです
フォルテピアノ、ヨハン・ネポムーク・トレンドリン製作
ライプツィヒ1830年代
音域 F1~g4 6オクターヴと少し、75鍵
ヴィーン式アクション -
横から見るとこんな楽器です
丸みを帯びたフォルムが特徴です -
さて、普通のチェンバロやピアノであれば、ここで弦が見えるわけですが、この楽器、蓋がありますね。
これは「第二響板」 と言いまして、弦の下に設置されている普通の響板と軽く接続されたもので、また違った豊かな響きを作り出します。 19世紀中頃のフォルテピアノに特徴的な設備です。 -
メーカープレートです
トレンドリンはヴィーンでマテウス・アンドレアス・シュタインに学んだ製作者で、マテウスはかのナネッテ・シュタイン=シュトライヒャー(ベートヴェンが最も信頼したピアノ製作者)の弟で、ナネッテ父はアンドレアス・シュタインでモーツァルトの時代の最も有名なピアノ製作者です。ザルツブルク時代にモーツアルト親子がシュタインの工房に新型の楽器を見に行ったそうなのですが、高くて買えなかったとか。。。
https://www.euro-piano.co.jp/events/fpf_20180810_12-2-2/
ちなみに、このリンクのチラシには「この楽器はライプツィヒゲヴァントハウスに常設されていました」というような文章がありますが、詳しく問いただしたところ「この楽器」がいたのではなく、同じ製作者の楽器がゲヴァントハウスにあったと言うことのようです -
第2響板
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第2響板は簡単に取り外しができます。
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中の様子はこのようになっています
最初は、第2響板なしで弾いてみました -
鋼鉄製の頑丈なフレームが中に入っている1870年代以降のピアノと異なり、この楽器はチェンバロの時代と同様(構造は相当強化されていますが)、全木製の構造に弦を張っています。
完全な木の響板だけで弦の張力を支えるピアノとしては後半の時期の楽器と思います -
参考
1900年頃に製造されたピアノ(ベヒシュタイン) @ 汐留ベヒシュタイン サロン
金属製の一体フレームになっています。
現代のピアノもだいたいこんな構造 -
参考
チェンバロ @Space 415
1996年久保田チェンバロ製フレミッシュモデル(バロック時代のベルギー周辺で製造された楽器を参考にした設計)
木でできていますね。 -
さて、この楽器は6月にも一度弾いているのですが、何か感触が良くありませんでした。
それで、どんな状態なのか調律師の方に尋ねてみると、「意味不明な改造がある」とのこと。。。
あー、この部分のバネみたいなやつ。。。 -
真ん中の木の棒の上の方にコイル状に巻かれたバネがありますが、本来このようなものは付いていません
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そして、そのバネが抑えているのが、鍵盤を押していない間弦の上の乗っかっているダンパーです。
本来は、自然落下のはずですが。。。。 -
弦に直接触れるダンパーフェルトが摩耗しており、弦を抑える力が弱くなっていたそうです。
普通は、ダンパーフェルトを交換する(古楽器でも現代ピアノでもダンパーフェルトは消耗品であり、この交換は一般的な整備作業です。材質などに微妙な違いはあるらしいのですが。。。)をします。しかしこの楽器を整備したドイツのノイペルトは正しい整備を行わず、自然落下のダンパーにバネを追加して弦を押さえる力を強くする、という改造を行ってしまったのです。 -
しかも、ダンパーフェルト交換の際に取り外せるように設計されている部分(黒い部分を外してダンパーを表に出して交換する)を瞬間接着剤でガチガチに接着してしまったそうです。なんで????ノイペルトになぜそんなことしたのか問い合わせているそうですが返答がないそうです。
この部分だけ新品を作るしかなさそうですね。。。
バネを外してみました。この感じのタッチがオリジナル(鍵盤を押すと、ハンマーが弦を叩くと同時にこのダンパーを上に押し上げて弦から外しますので、バネがあると鍵盤が少し重くなります。重いといっても現代ピアノの半分以下ですが。。。) なのでしょうが。。。
先日、ショパンコンクールで2位に入賞された川口さんとこの楽器についてお話しした際も、この不正改造の話が話題になりました。
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さて、今度は第2響板を取り付けて弾いてみます。
お、びっくりです。。。音色が変わり、そして楽器に蓋をしている形になるのに、音量?も豊かになるんです。果たして同じ強さで叩いたときの音量が上がっているのかどうかはわかりませんが、実際には響きが豊かになってより響いているように聞こえます。 -
このフォルテピアノを弾いてから向こうの現代ピアノを弾くと、あまりの鍵盤の重さの違いに衝撃を受けます。ちなみに、重さだけではなく、鍵盤の深さも異なります。
大音量を出すと言う観点では現代ピアノの音量が大きくなりますが、コントロールはフォルテピアノの方が幅広くできる気がします。慣れれば、ですが。
チェンバロやフォルテピアノを弾くテクニックは現代ピアノとは全く異なります(現代ピアノは鍵盤が非常に重いので、全身を使って腕の重さを伝えなければなりませんが、チェンバロやフォルテピアノは軽いので、軽いタッチの指先でのコントロールがより重要です) ので、そういった楽器を演奏したければ、しばらくの間古楽器に集中して練習し、演奏法を習得する必要があります。 -
ナネッテ・シュタインはベートーヴェンのピアノ製作者として知られていますが、マテウスも同時代の活躍です(当たり前)。が、シューマンとも切っても切れない関係です。
フリードリヒ・ヴィークはベートーヴェンを2度訪ねていますが、同行していたのが確か(曖昧な記憶ですが)マテウス・シュタインだったと以前雑誌で読みました。で、クララ・ヴィークに最初に与えられたピアノがマテウスの楽器なのです。信頼性は不明の本に載っていた話によれば、フリードリヒはエラールを使っていたが「子供にはより軽い鍵盤が良い」とのことでヴィーン式のシュタインに発注したとか。(ただしこの話の信頼性を私としては確認できていません。)
クララ・ヴィークはその後ロベルト・シューマンと結婚するわけです。
ちなみに、ナネッテ・シュタインのフォルテピアノは日本に演奏可能なものが二台ありますが、他に面白い楽器を試作していて、「弦を上から叩くピアノ」と言う変わり種を開発しています。結局定着はしなかったようですが。。。
なお、「子供には鍵盤の軽い楽器で練習させる方が良い」というのはバロック時代から言われていたことで、例えばクープランも著書の中で「子供にはカプラーなしのチェンバロかクラヴィコードで練習させるべき」と書いているそうで(生憎クープランの本は読んでなく孫引きで申し訳ありません)、という事は、現代の重過ぎるモダンピアノで練習させるっていうのは、甚だ不適切と言うことになります。
そもそも、アマチュア音楽家として楽しめるレパートリーは圧倒的にバロックや古典派の曲が多いですから、まずはチェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノなどを習って、その後後期ロマン派以降の曲に興味を持ったら現代ピアノを与える、言う発想でいいんじゃないでしょうか? ところがところが、先程の鉄製一体構造の100年前のピアノ、ほとんど現代と同じ構造なのに今の楽器よりずっと鍵盤が軽くて音もいいんですよね。。。 -
さて、1時間半でどこまで弾けるでしょうか?
簡単な曲をやるのがベストなのですが、今回はこの楽器に関連しそうな曲をやってみたいと言うことで、少々難しい曲を入れてみました。
まずはバッハの曲を。。。1830年代のライプツィヒといえばメンデルスゾーン姉弟のバッハ復興運動ですね。
せっかくなので旧全集版でやってみようかな、と思っていたのですが、印刷が間に合わず結局手持ちのヴィーン原典版でやりました。写真は旧全集版。まあこの曲に関しては記載内容は同一かと思います。 -
続いて1830年代のライプツィヒで大いにもてはやされたであろうこの人の曲を。。。クララ・ヴィーク(シューマン)の Soirées Musicales からToccatina
私とロマン派時代のフォルテピアノとの出会いの曲でもあります。ほぼ初見でしたが。。。 -
このクララ・シューマンのピアノソナタは1841年の作曲で、おそらくヴィーンのコンラート・グラーフから贈られたピアノを使って作曲されたと思われますが、なんとこの楽器では音域不足が出ます。。。
このソナタ、私にとって本当に思い出がある曲で、この楽器で弾くのをもの凄く楽しみにしておりましたが、今回は全く弾けないのですぐやめました。「弾くな」ということなのでしょう。 -
上の段の4小節目の左手の低いミの音が、このトレンドリンでは音域から外れてます。
グラーフの6オクターヴ半の楽器(おそらく6オクターヴ半、たぶんCC~g4)はぎりぎりそこまでカバーしています。 -
最近はピアノを全く弾いていないのですが、それでも最近多く弾いているのはこの曲、ちょうど時代も合うし、と言うことでこれも弾いてみました。
シューベルトのピアノソナタD784。 -
さて一番楽しみだったのはロベルト・シューマンのアベック変奏曲。
現代ピアノで弾くと大嫌いな(だった)曲なのですが、これがほんとに素晴らしい。
フォルテピアノの軽い鍵盤であれば、変奏部分も私も再び弾けそうです。今回は余裕がなかったので、テーマだけで終わりました。 -
さて、試しに同じ曲を現代ピアノで弾いてみました
鍵盤が重い。。。重い。。。重い。。。。重くてコントロールが難しい。。。音も大きい。超弱音が出ない。。。(フォルテピアノの中ぐらいの音量が現代ピアノの超弱音、といったところです。)
こちらのベヒシュタイン のフルコン、現代ピアノとしては非常によく調整されていた楽器で、私が今まで触った現代ピアノの中でも最も良いものでした。(ヴィーンのベーゼンドルファーの工場で弾いたベーゼンドルファーに匹敵するかそれ以上に良い状態でした)
素晴らしいのですが、フォルテピアノに比べると。。。
でも、比べる対象がベヒシュタイン のピアノだから比べれるのであって、これがスタインウェイだったら比べる価値もなかったでしょう。ベヒシュタインにはフォルテピアノの伝統をほんの少しだけですが感じます。他のメーカーのピアノに比べ、音が濁りません。ペダル踏みっぱなしが多少ですができます。これはある種フォルテピアノの特徴を受け継いでいると言えるでしょうか。
モダンピアノの方が大音量は出るのですが、適切な会場でフォルテピアノでフォルテッシモを出すと、その迫力は現代ピアノの比ではありません。フォルテピアノの方がなんか迫力を感じます。
(現代ピアノの写真を撮り忘れていたので、汐留ベヒシュタインサロンのFacebookページから写真をお借りしました。) -
1時間半弾き続けましたが、現代ピアノでは疲れてしまいますが、全く疲れずに弾くことができました。
これが古楽器の良いところです。
実際問題、1時間半の練習だけでは弾きこなすことなど到底できませんし、楽器の状態も悪いので、誠に不満足な結果ではありますが、とにかくも「フォルテピアノ弾いてきました」というところです。
知人がやっている1時間1000円のチェンバロのスタジオにはたまに行きますが、フォルテピアノもスタジオあったら行くんですけどね。。。チェンバロスタジオの知人、よく「フォルテピアノのスタジオを紹介してくれ」と言われるそうなので、ベヒシュタインジャパンさんはこのフォルテピアノのスタジオを常設にすれば良いと思うのですが、そうしないようです。。。 -
今度フォルテピアノ弾くときには、もっと良い状態の楽器で、もっと準備をしていきたいと思います。いずれお金を何百万か貯めてレプリカを買うつもりです。ちなみに、有名な製作者に依頼しても、モーツァルト時代の楽器では400~500万円、シューベルトの時代の楽器は800~900万円で買うことができますので、現代ピアノよりずっとお得なお買い物です。(ヨーロッパ名門メーカー製の良い楽器は中型タイプで1000万円以上(1500万くらいかな?)、コンサートホール仕様は2000万以上します。ベヒシュタインはスタインウェイより音が良くて、それでいてちょっと安いんですよ。)
チェンバロも一段鍵盤の普及モデルなら100万円代、小型の普及モデルなら数十万円程度、大型2段鍵盤は仕様により大きく異なりますが大体300から400万円位で買えます。クラヴィコードは大型のもので130~160万円くらいかな。スクエアピアノというのもあります。。。
これから「ピアノを始めたい、習わせたい」と思っている皆さん、将来後悔しないために、ピアノじゃなくて、クラヴィコードをお買い求めなさることをお勧めします。東京なら「チェンバロ教室」で探せば意外に先生もいます。古楽器は中古市場も盛んですのでいいですよ。クラヴィコードを学べばヨーロッパ系の全ての鍵盤楽器の基礎を学べます。一方ピアノを習ってはクラヴィコードもチェンバロもフォルテピアノも弾けません。古楽器をしばらくやって、後期ロマン派、近現代の曲に興味を持ったら、現代ピアノを買いましょう。と言うより、100年前のアップライトピアノとか普通に売り出されています。(もちろん、責任を持って保管できる方に限ります。無責任に放っておく方は、どうぞ中国製ピアノをお買い求めください)。
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