東京だヨ おっ母さん（2）靖国神社

2018/08/15 - 2018/08/15

祖父は海軍に従軍していたが、横須賀に帰港した際に、上官から顔色が悪いと言われ下船させられた。生前、祖父から聞いた話によると、当時体調が悪いことは全くなく、結婚し子供が生まれたばかりであることを気遣ってくれ、下船命令を下したのではないかとのことだった。その軍艦はのちに南洋で撃沈されたらしいから、祖父に下船命令がなかったら、私はこの世に生を受けることはなかった。このことから、失礼ながらご尊名すら存じ上げないその上官に感謝すべく、以前からずっと靖国神社に参拝したいと思っていた。今回の一時帰国中に終戦記念日を迎えることができたため、その大切な日にお参りさせていただいた。

なお、この旅行記に位置付けは、次の旅行記の続編である。
東京だヨ おっ母さん（1）皇居＆東御苑
https://4travel.jp/travelogue/11267330

エリア 東京

非常に高温にはなったが、天候に恵まれた終戦記念日。

島倉千代子が歌った「東京だヨ おっ母さん」の2番に、兄が眠る場所として出てくる靖国神社。歌詞の内容から、NHKでは歌わせてもらえなかったようだ。

https://www.youtube.com/watch?v=J1vlf2QRE34

第一鳥居を過ぎてすぐ現れる大村益次郎銅像。靖国神社創建に尽力したため、1893年に記念して建てられた。

青銅製の鳥居としては日本最大の第二鳥居。

第二鳥居の近くに正装した一団。女性の服装に見覚えが......。それは台湾原住民族の衣装だった。

戦時中、高砂義勇隊として出兵した台湾人がいた。体が屈強な原住民には自ら志願して出兵した人が多かったのだ。その子孫が今でも毎年終戦記念日に靖国を参拝されている。普段着で来てしまった自分が恥ずかしくなった。なお、台湾原住民全体が親日的であるというわけではない。

靖国には27864柱の台湾人従軍戦没者が祀られている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/高砂義勇隊

1940年に米国在住の日本人から奉納された大手水舎。花崗岩で造られていて、重さは18トン以上あるらしい。

中央の扉に菊の御紋が取り付けられている神門。

埼玉県産の檜で建造された中門鳥居。2016年に建て替えられた。

246万6千余の神霊が祀られている本殿。自分の立つ横に中国人家族も並んでいたから、これは参拝のために並んでいると教えてあげたら、すぐに立ち去った。この日、靖国神社は観光地ではなく、純粋に神聖な場となる。

祖父の上官であった方に参拝が遅れたことを詫びるとともに、英霊の方々に平和を守る努力をすることをお伝えした。

お守りや横山大観の手になる扇などが売られていた。記念に扇（大）を授けていただいた。

参拝のために訪れる人は非常に多い。

この日は商機にもなる。

お神酒やお菓子が売られていた。

1881年に芝公園内に建てられた能楽堂。1903年に奉納移築された。

東京管区気象台が開花観測するのに用いているソメイヨシノの標本木。

靖国神社崇敬奉賛会青年部が麦茶を配っていた。

正式参拝はこちらの参集殿で受付。日本各地から来られた多くの方々。この日、正装していなかったこともあり、正式参拝は断念。

戦没馬慰霊像および軍犬慰霊像

自衛隊の方々が深々と頭を下げられていた。人間がこうであってこそ、犬との良好な関係が築ける。軍犬慰霊像に頭を下げられた自衛隊員に頭を下げたい。

鳩魂塔

鳩の下に地球儀。誠実な伝令として戦場で活躍した伝書鳩の霊を慰めるため、1982年に奉納された。

苦難と孤独に耐えながら子供を育て上げた戦争未亡人へ敬意と感謝を込めて、1974年に建てられた母の像。

遺品などを修造展示する遊就館は1882年に開館し、現在のものは2002年に改築されたもの。

軍用機、戦車、汽車などが入り口すぐのところに展示されている。

他にも、靖国神社に鎮まる英霊の遺書や遺品なども展示されている。遺書には心を打つものが多く、戦争を経験していない自分でも、胸にこみ上げるものがあった。

回天一型改一

日本が世界で初めて開発に成功した酸素魚雷。ハワイの米陸軍博物館で保管されていたものが靖国神社に永久貸与されている。

全長：14.75メートル
直径：1.0メートル
重量：8.3トン
搭乗員：1名

重巡洋艦「高雄」

昭和7年5月、横須賀海軍工場で竣工。多くの海戦に参加し、米国戦艦「サウスダコタ」を撃破する戦果を挙げたが、昭和19年10月、レイテ沖海戦で米国潜水艦の魚雷攻撃を受け中破。シンガポールで終戦を迎えた。

重巡洋艦「摩耶」

昭和７年6月、神戸の川崎造船所で竣工。大東亜戦争で活躍するも、昭和19年10月のレイテ沖海戦で米国潜水艦の魚雷攻撃を受け沈没。

戦艦「大和」

当時最高の技術力を駆使して建造された。1942年6月に連合艦隊旗艦として、ミッドウェー海戦に出撃。レイテ沖海戦では米軍護衛空母部隊に対し、46cm主砲砲撃を実施。1945年4月、米軍機動部隊の猛口撃を受け、沖の坊沖で撃沈。

艦上爆撃機「彗星一一型」

終戦までに2157機が生産された、海軍最後の艦上爆撃機。実際には、戦局の進展から、爆撃機としてでではなく、戦闘機あるいは特攻機として多くが失われた。展示されているのは、1972年に西カロリン諸島ヤップ島旧滑走路脇のジャングルで発見されたもの。

特攻隊......、この言葉を聞いたり見たりするだけで、心が痛む。合掌

海軍神雷部隊「桜花」攻撃のジオラマ

映像により、戦争を振り返ることもできる。

靖国神社創建150年展

売店には購入者の長い列ができていたが、書籍を2冊購入。

この日は警視庁からも警察官が派遣されていた。酷暑の中、お疲れさまです。

軍服を着たかつての従軍者。戦争体験を語っておられた。軍服を着用した人には、一部若い人も見られた。

九段下駅から靖国神社へ向かう九段坂。この日は一日中、多くの参拝者が行き交っていたことだろう。

台湾独立を訴える団体。台湾独立を支持する日本人と台湾から日本に移り住んだ方々とお見受けした。台湾の内外で若干の温度差があることを、台湾在住21年の邦人は感じている。

多くの右翼団体も印刷物を配っていた。右翼というと、過激な人たちを想起するのが一般的だけれど、実際には理性的にものを考えている方も多い。印刷物をもらうため、配っている方に自ら近づくと、非常に礼儀正しく丁寧に分けてくださった。

恒久的な平和の維持のために、微力であっても努力を続けていきたい。