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ナポレオンの逸話の残るブール・サン・ピエール(Bourg St. Pierre)で下車するのは、これが初めてではありません。遠い昔、前世紀の事ですが、苦い経験があります。<br />あわよくばヴェラン小屋、無理ならレ・グラン・プラン(les Grands Plans)と定めて歩き出したのですが、小学生にも満たないような男の子を連れた母子にあっという間に抜き去られてペースを乱し、2本目が少し離れた場所にある鉄梯子で肝まで冷やし、遂には完バテして、どちらにも行けずに帰って来たのです。<br /><br />今回目指す山は、地元のウェブ・サイトでパノラマ道と紹介されている尾根道にあるので楽しみにしていました。<br />でも、アプローチの林道歩きが長く標高差も1150Mあるのに行動可能時間が6時間しか無いので、3時間登った所から引き返す予定でした。<br /><br />ほぼ満員のサン・ベルナール峠行きのバスの乗客で、この村で降りたのは、意外にも一回り程若い男性と私の二人だけでした。<br />私がバス停でゆっくり準備していると先に出発したこの男性がストックを忘れたとかで慌てて戻って来ました。<br />行先を尋ねるとヴェラン小屋だそうで、お互い『帰りに又会いそうだね』と言って笑顔で別れました。<br /><br />この日は、体調が良く、思惑通りに3時間でポワント・ド・ペンヌ の頂上に立てました。<br />ブール・サン・ピエールのバス停にも15分程前に戻ったのですが、何とバス停の時刻表で15時台のバス便が、マジックで消されていて次は1時間半後なのです。<br />直前に時刻表検索をしなかったので、変更に気が付かなかったのです。<br /><br />トボトボと茶店を捜して街を歩いているとホテルの前の路上でパラソルを広げビールなどを飲んでいる数人のグループがありました。<br />この中にホテルの従業員がいるのだろうと思ってビールを頼んだところ建物奥から冷えて栓が抜かれたビン・ビールを持って来てくれて、お金は要らないと言います。<br />ホテルは閉鎖されており、この人たちは隣のアパートに住む人達だったのです。<br />とんだ勘違いで恥ずかしかったのですが、好意には甘えることにして、バス停へ戻ってそのビールをラッパ飲みしていたところへ朝出会った男性が戻ってきました。<br /><br />彼も又、時刻表の変更を知らなかったのです。<br />こうしてドジな西・東洋人コンビが誕生しました。<br />彼は、バス停前の駐車場へ乗り入れて来た老人に事情を話して同乗を頼むものの、『お気の毒だが、逆方向へ帰る』との返事。<br />尚も空っぽの駐車場に現れる車を待とうとする彼に、幹線道でのヒッチ・ハイクを提案しました。<br /><br />幹線での交通量は多いものの、数台連なっている事がほとんどで、しかも皆かなりのスピードで走っており、最後の車以外は止まろうにも止まれません。<br />又、東洋人が見えていては印象も悪かろうと私は彼の陰に隠れて手だけを見せるようにしたのですが効果はありません。<br />結局、十数分、百台近くの車を見送ったところで、『私は村人からビールをご馳走になったのだから今度は私から君にビールを奢る』と近くの茶店で時間を過ごす事を提案。<br />彼も『近年、ヒッチハイカーを警戒するドライバーが増えた。諦めよう』との事で、山の話やら家族の話やらで盛り上がり、思いがけず楽しい時間を過ごせました。<br /><br />相変わらず他に誰もいないバス停に戻り、彼はやって来たバスに向かって手を挙げました。<br />『やっとうまくいった』と言って。<br />

106 ポワント・ド・ペンヌ Pointe de Penne 2782M

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2017/08/03 - 2017/08/03

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いぶれす

いぶれすさん

ナポレオンの逸話の残るブール・サン・ピエール(Bourg St. Pierre)で下車するのは、これが初めてではありません。遠い昔、前世紀の事ですが、苦い経験があります。
あわよくばヴェラン小屋、無理ならレ・グラン・プラン(les Grands Plans)と定めて歩き出したのですが、小学生にも満たないような男の子を連れた母子にあっという間に抜き去られてペースを乱し、2本目が少し離れた場所にある鉄梯子で肝まで冷やし、遂には完バテして、どちらにも行けずに帰って来たのです。

今回目指す山は、地元のウェブ・サイトでパノラマ道と紹介されている尾根道にあるので楽しみにしていました。
でも、アプローチの林道歩きが長く標高差も1150Mあるのに行動可能時間が6時間しか無いので、3時間登った所から引き返す予定でした。

ほぼ満員のサン・ベルナール峠行きのバスの乗客で、この村で降りたのは、意外にも一回り程若い男性と私の二人だけでした。
私がバス停でゆっくり準備していると先に出発したこの男性がストックを忘れたとかで慌てて戻って来ました。
行先を尋ねるとヴェラン小屋だそうで、お互い『帰りに又会いそうだね』と言って笑顔で別れました。

この日は、体調が良く、思惑通りに3時間でポワント・ド・ペンヌ の頂上に立てました。
ブール・サン・ピエールのバス停にも15分程前に戻ったのですが、何とバス停の時刻表で15時台のバス便が、マジックで消されていて次は1時間半後なのです。
直前に時刻表検索をしなかったので、変更に気が付かなかったのです。

トボトボと茶店を捜して街を歩いているとホテルの前の路上でパラソルを広げビールなどを飲んでいる数人のグループがありました。
この中にホテルの従業員がいるのだろうと思ってビールを頼んだところ建物奥から冷えて栓が抜かれたビン・ビールを持って来てくれて、お金は要らないと言います。
ホテルは閉鎖されており、この人たちは隣のアパートに住む人達だったのです。
とんだ勘違いで恥ずかしかったのですが、好意には甘えることにして、バス停へ戻ってそのビールをラッパ飲みしていたところへ朝出会った男性が戻ってきました。

彼も又、時刻表の変更を知らなかったのです。
こうしてドジな西・東洋人コンビが誕生しました。
彼は、バス停前の駐車場へ乗り入れて来た老人に事情を話して同乗を頼むものの、『お気の毒だが、逆方向へ帰る』との返事。
尚も空っぽの駐車場に現れる車を待とうとする彼に、幹線道でのヒッチ・ハイクを提案しました。

幹線での交通量は多いものの、数台連なっている事がほとんどで、しかも皆かなりのスピードで走っており、最後の車以外は止まろうにも止まれません。
又、東洋人が見えていては印象も悪かろうと私は彼の陰に隠れて手だけを見せるようにしたのですが効果はありません。
結局、十数分、百台近くの車を見送ったところで、『私は村人からビールをご馳走になったのだから今度は私から君にビールを奢る』と近くの茶店で時間を過ごす事を提案。
彼も『近年、ヒッチハイカーを警戒するドライバーが増えた。諦めよう』との事で、山の話やら家族の話やらで盛り上がり、思いがけず楽しい時間を過ごせました。

相変わらず他に誰もいないバス停に戻り、彼はやって来たバスに向かって手を挙げました。
『やっとうまくいった』と言って。

  • アクセスは、マルティニから列車でオルシエール、そこからのバス便になります。<br />このパノラマ尾根を歩くに当たっては、少し北のアズラン(Azerin)経由とした方が面白いとは思いましたが、地図上でシャラン・ダン・オ(Challend d&#39;en Haut)と書かれた農家の方から南へのトレイルがハイキング道となっておらず、廃道になっている可能性がある為このコースとしました。

    アクセスは、マルティニから列車でオルシエール、そこからのバス便になります。
    このパノラマ尾根を歩くに当たっては、少し北のアズラン(Azerin)経由とした方が面白いとは思いましたが、地図上でシャラン・ダン・オ(Challend d'en Haut)と書かれた農家の方から南へのトレイルがハイキング道となっておらず、廃道になっている可能性がある為このコースとしました。

  • バス停から南に進むと教会広場に出ます。<br />

    バス停から南に進むと教会広場に出ます。

  • そこにある標識。ここから東へ進みます。ヴェラン小屋まで3時間、ヴァルソレ小屋まで4時間半とあります。

    そこにある標識。ここから東へ進みます。ヴェラン小屋まで3時間、ヴァルソレ小屋まで4時間半とあります。

  • リスに出合いました。

    リスに出合いました。

  • 南のトゥール湖方面。

    南のトゥール湖方面。

  • この辺りで目立つ山、ル・ムーラン。登山道は、無いようです。<br />

    この辺りで目立つ山、ル・ムーラン。登山道は、無いようです。

  • 今度は北側。中央は、ル・カトーニュ、いつか登りたいです。

    今度は北側。中央は、ル・カトーニュ、いつか登りたいです。

  • ここでようやく林道が終わりです。標高2100Mです。<br />ここまで1時間と20分要しました。<br />

    ここでようやく林道が終わりです。標高2100Mです。
    ここまで1時間と20分要しました。

  • 正面の東側です。

    正面の東側です。

  • 北側です。

    北側です。

  • 農家の南の当地が、シャラン・ダン・オになっていました。<br />3本の川を渡って農家に到る道は失われた可能性が高いようです。

    農家の南の当地が、シャラン・ダン・オになっていました。
    3本の川を渡って農家に到る道は失われた可能性が高いようです。

  • 右上が、これから歩く尾根道です。<br />目指すピークは、ここからは見えないようです。

    右上が、これから歩く尾根道です。
    目指すピークは、ここからは見えないようです。

  • 西側の山の奥に高山が見えてきました。<br />左端が三国山のモン・ドランです。

    西側の山の奥に高山が見えてきました。
    左端が三国山のモン・ドランです。

  • 北東側

    北東側

  • 2時間と10分かけて、ようやく稜線に出たところでパノラマ。

    2時間と10分かけて、ようやく稜線に出たところでパノラマ。

  • 北西側。三角の山ル・カトーニュと、その左奥のダン・デュ・ミディ

    北西側。三角の山ル・カトーニュと、その左奥のダン・デュ・ミディ

  • その遠景

    その遠景

  • 左手前方には、グラン・コンバンを縁取る山が見えます。

    左手前方には、グラン・コンバンを縁取る山が見えます。

  • これも東側。

    これも東側。

  • たまには、こんな岩場もありますが、

    たまには、こんな岩場もありますが、

  • 概ねこのような草原の尾根道です。

    概ねこのような草原の尾根道です。

  • グラン・コンバンの西側から北に伸びる山々。

    グラン・コンバンの西側から北に伸びる山々。

  • 正面に堂々としたモン・ヴェラン

    正面に堂々としたモン・ヴェラン

  • 正面左にグラン・コンバンの一座、コンバン・ドゥ・ヴァルソレが見えてきました。

    正面左にグラン・コンバンの一座、コンバン・ドゥ・ヴァルソレが見えてきました。

  • ピークの一つ、ティタ・ドゥ・ブ<br />

    ピークの一つ、ティタ・ドゥ・ブ

  • ようやく頂上が見えました。

    ようやく頂上が見えました。

  • 岩峰シ・ノワール(Six Noir)とその背後のグラン・コンバンの西北稜。

    岩峰シ・ノワール(Six Noir)とその背後のグラン・コンバンの西北稜。

  • 頂上です。出発から3時間でした。

    頂上です。出発から3時間でした。

  • 頂上より北側の眺め

    頂上より北側の眺め

  • 昼食も取らずに下山することにしました。

    昼食も取らずに下山することにしました。

  • モン・ヴェランを振り返って。

    モン・ヴェランを振り返って。

  • 頂上よりは少し下った場所ですが、これを表紙としました。

    頂上よりは少し下った場所ですが、これを表紙としました。

  • 気持ちの良い稜線歩きです。

    気持ちの良い稜線歩きです。

  • 画面では見えていませんが、奥の左端の方にグラン・サン・ベルナール峠があります。

    画面では見えていませんが、奥の左端の方にグラン・サン・ベルナール峠があります。

  • 何の木でしょうか。左上には、実のようなものも見えます。

    何の木でしょうか。左上には、実のようなものも見えます。

  • 奥中央やや右の一番高く見える山は、スイスのフェレ谷で目立つトゥール・ノワールでしょう。<br />稜線も終わりに近いこの場所で昼食としました。<br />

    奥中央やや右の一番高く見える山は、スイスのフェレ谷で目立つトゥール・ノワールでしょう。
    稜線も終わりに近いこの場所で昼食としました。

  • ブール・サン・ピエールは、もうすぐです。<br />結局、このコースではハイカーを見かけませんでした。

    ブール・サン・ピエールは、もうすぐです。
    結局、このコースではハイカーを見かけませんでした。

  • メインストリートにも、人影がありません。<br />

    メインストリートにも、人影がありません。

  • 黒マジックの入った時刻表。

    黒マジックの入った時刻表。

  • ヒッチハイクの為に幹線道路へ向かう途中。<br />楽しい時間をくれたJ Jさん、ありがとう。

    ヒッチハイクの為に幹線道路へ向かう途中。
    楽しい時間をくれたJ Jさん、ありがとう。

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