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マレーシア滞在中の週末、シンガポール交響楽団(SSO)の演奏会を聴くため、国境を越えてシンガポールを訪れた。SSOについては、以前に鈴木雅明指揮の演奏会について書いた。恐らく性能的には国際的な優秀な奏者を擁するマレーシアフィル(MPO)の方が優れており、SSOの方は特に管楽器に不満が多い。それでもわざわざ4時間ほど車を走らせて、2時間をかけて国境を通過して聴きに行った理由は、2010年にベルリンフィルの首席コンサートマスターに就任した樫本大進がソリストとして登場、メンデルスゾーンのホ短調のヴァイオリン協奏曲を演奏するというからだ。<br /><br />樫本大進は1979年、ロンドン生まれの38歳。3歳よりヴァイオリンを始めたという神童で、5歳で機械メーカーに勤める父親の赴任に伴いニューヨークへ転居、7歳でジュリアード音楽院プレカレッジに入学、11歳のときに名教授ザハール・ブロンに認められリューベックに、その後20歳よりフライブルクに留学。90年の第4回バッハ・ジュニア音楽コンクール、96年のフリッツ・クライスラー、ロン・ティボー国際音楽コンクール1位、その他5つの権威ある国際コンクールにて優勝、ソリストとして華々しく活動を開始したことは知られている。しかしソリストとしてデビューした彼が、2010年ベルリン・フィルの第1コンサートマスターに選ばれたことには少なからず驚かされた。<br /><br />ベルリンフィルのコンマスとしては、カラヤン時代から安永徹氏が活躍していた。小生はたまたまベルリンからの同じ飛行機に乗合せ、同行していたベルリンフィルのヴァイオリニストのシュテルン氏と共にロンドンのサヴォイホテルの中華レストランで夕食を共にしたことがあり、ベルリンフィルのこと、カラヤンや著名指揮者について伺ったことがある。その誠実で控えめな人柄に触れ、素晴らしく堪能な英語とドイツ語を聞き、日本人が天下のベルリンフィルを率いるリーダーであることに感銘を受けた。30年以上の昔の話なので、当然氏も定年を迎えた訳であるが、白羽の矢が立ったのが樫本大進、ということだ。上記の経歴から当然英語、ドイツ語に堪能で、演奏能力だけでなくそのリーダーシップが認められた訳である。<br /><br />彼のメンデルスゾーンの演奏は、テクニックを誇示するものではなく、あくまで正統的で楽譜に忠実な演奏だ。前半が終了した休憩時にサイン会なるものが開かれ、彼と会話することができた。38歳のナイスガイで安永徹氏とは世代が違うとはいえ、共通するところも見て取れた。容易に想像できるように、ベルリンフィル奏者たちがテクニックをひけらかす目立ちたがりのコンマスを受け入れるはずがない。その意味で星の数ほどいるヴァイオリニストの中でも稀有の存在であり、今後の彼の成長に注目していきたい。<br /><br />蛇足になるが、この日は車でクアラルンプールを朝8時半に発って、ジョホール・バールから列車で国境を越え、エスプラネード・コンサートホールに3時頃到着した。まずチケットを購入し開演1時間前6時半のプレ・コンサートトークまでの時間、2012年にオープンした巨大な人工樹林で話題になったガーデンズ・バイ・ザ・ベイを訪れることにした。コンサートホールから橋を渡った対岸にあり、徒歩10分ほどの距離にある。総面積約110haの敷地内にある高さ50mの人工の木「スーパーツリー」とその周囲を散策した。更に演奏会終了後の10時過ぎ、再び夜景を撮影するためここを散策した。小生はすべてが人工的で整備されたこの街があまり好きではないが、ここまで徹底した人工美の極致には唖然とさせられるのみである。

'17シンガポール訪問記No.2:SSOコンサートで樫本大進のメンコンを聴き、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイを散策する

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2017/09/22 - 2017/09/23

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ハンク

ハンクさん

マレーシア滞在中の週末、シンガポール交響楽団(SSO)の演奏会を聴くため、国境を越えてシンガポールを訪れた。SSOについては、以前に鈴木雅明指揮の演奏会について書いた。恐らく性能的には国際的な優秀な奏者を擁するマレーシアフィル(MPO)の方が優れており、SSOの方は特に管楽器に不満が多い。それでもわざわざ4時間ほど車を走らせて、2時間をかけて国境を通過して聴きに行った理由は、2010年にベルリンフィルの首席コンサートマスターに就任した樫本大進がソリストとして登場、メンデルスゾーンのホ短調のヴァイオリン協奏曲を演奏するというからだ。

樫本大進は1979年、ロンドン生まれの38歳。3歳よりヴァイオリンを始めたという神童で、5歳で機械メーカーに勤める父親の赴任に伴いニューヨークへ転居、7歳でジュリアード音楽院プレカレッジに入学、11歳のときに名教授ザハール・ブロンに認められリューベックに、その後20歳よりフライブルクに留学。90年の第4回バッハ・ジュニア音楽コンクール、96年のフリッツ・クライスラー、ロン・ティボー国際音楽コンクール1位、その他5つの権威ある国際コンクールにて優勝、ソリストとして華々しく活動を開始したことは知られている。しかしソリストとしてデビューした彼が、2010年ベルリン・フィルの第1コンサートマスターに選ばれたことには少なからず驚かされた。

ベルリンフィルのコンマスとしては、カラヤン時代から安永徹氏が活躍していた。小生はたまたまベルリンからの同じ飛行機に乗合せ、同行していたベルリンフィルのヴァイオリニストのシュテルン氏と共にロンドンのサヴォイホテルの中華レストランで夕食を共にしたことがあり、ベルリンフィルのこと、カラヤンや著名指揮者について伺ったことがある。その誠実で控えめな人柄に触れ、素晴らしく堪能な英語とドイツ語を聞き、日本人が天下のベルリンフィルを率いるリーダーであることに感銘を受けた。30年以上の昔の話なので、当然氏も定年を迎えた訳であるが、白羽の矢が立ったのが樫本大進、ということだ。上記の経歴から当然英語、ドイツ語に堪能で、演奏能力だけでなくそのリーダーシップが認められた訳である。

彼のメンデルスゾーンの演奏は、テクニックを誇示するものではなく、あくまで正統的で楽譜に忠実な演奏だ。前半が終了した休憩時にサイン会なるものが開かれ、彼と会話することができた。38歳のナイスガイで安永徹氏とは世代が違うとはいえ、共通するところも見て取れた。容易に想像できるように、ベルリンフィル奏者たちがテクニックをひけらかす目立ちたがりのコンマスを受け入れるはずがない。その意味で星の数ほどいるヴァイオリニストの中でも稀有の存在であり、今後の彼の成長に注目していきたい。

蛇足になるが、この日は車でクアラルンプールを朝8時半に発って、ジョホール・バールから列車で国境を越え、エスプラネード・コンサートホールに3時頃到着した。まずチケットを購入し開演1時間前6時半のプレ・コンサートトークまでの時間、2012年にオープンした巨大な人工樹林で話題になったガーデンズ・バイ・ザ・ベイを訪れることにした。コンサートホールから橋を渡った対岸にあり、徒歩10分ほどの距離にある。総面積約110haの敷地内にある高さ50mの人工の木「スーパーツリー」とその周囲を散策した。更に演奏会終了後の10時過ぎ、再び夜景を撮影するためここを散策した。小生はすべてが人工的で整備されたこの街があまり好きではないが、ここまで徹底した人工美の極致には唖然とさせられるのみである。

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
ホテル
3.5
交通
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円 - 3万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩
旅行の手配内容
個別手配

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  • マレーシアのジョホール・バールからシンガポールのウッドランズに向かう列車

    マレーシアのジョホール・バールからシンガポールのウッドランズに向かう列車

  • 列車の写真を撮っていたら運転手が運転席に乗せてくれた

    列車の写真を撮っていたら運転手が運転席に乗せてくれた

  • 運転席からの眺め

    運転席からの眺め

  • 渋滞を横目にシンガポールに向かって約5分の旅

    渋滞を横目にシンガポールに向かって約5分の旅

  • 再びマリーナ・ベイ・サンズの眺め

    再びマリーナ・ベイ・サンズの眺め

  • マーライオンと観光船

    マーライオンと観光船

  • 湾を渡る橋

    湾を渡る橋

  • ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの50mの巨大な樹木

    ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの50mの巨大な樹木

  • 遊びココロがいっぱい

    遊びココロがいっぱい

  • 巨大なトンボとマリーナ・ベイ・サンズ

    巨大なトンボとマリーナ・ベイ・サンズ

  • マリーナ・ベイ・サンズの裏側

    マリーナ・ベイ・サンズの裏側

  • 人口樹林と自然の樹木

    人口樹林と自然の樹木

  • 空中散策路

    空中散策路

  • エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ

    エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ

  • プレ・コンサートトークは毎回開演1時間前、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を分析、ヒラリー・ハーンの演奏を聴く

    プレ・コンサートトークは毎回開演1時間前、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を分析、ヒラリー・ハーンの演奏を聴く

  • ロビーではトリオの演奏

    ロビーではトリオの演奏

  • 開演前のホワイエ

    開演前のホワイエ

  • ステージ裏からの眺め

    ステージ裏からの眺め

  • メンデルスゾーン協奏曲演奏終了後の樫本大進

    メンデルスゾーン協奏曲演奏終了後の樫本大進

  • サイン会で樫本大進とフンメルのトランペットソロを演奏したポール・ダンテ

    サイン会で樫本大進とフンメルのトランペットソロを演奏したポール・ダンテ

  • ブラームス交響曲第4番終了後、指揮は常任指揮者のラン・シュイ

    ブラームス交響曲第4番終了後、指揮は常任指揮者のラン・シュイ

  • 背後の聴衆にもご挨拶

    背後の聴衆にもご挨拶

  • マーライオン像周辺の夜景

    マーライオン像周辺の夜景

  • マリーナ・ベイ・サンズの夜景

    マリーナ・ベイ・サンズの夜景

  • 鯉の池の夜景

    鯉の池の夜景

  • 稲刈りをする人形

    稲刈りをする人形

  • マリーナ・ベイ・サンズの夜景

    マリーナ・ベイ・サンズの夜景

  • ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの夜景

    ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの夜景

  • 巨大な人口樹林

    巨大な人口樹林

  • 人口樹林とマリーナ・ベイ・サンズ

    人口樹林とマリーナ・ベイ・サンズ

  • 空中散策路の夜景

    空中散策路の夜景

  • 人工のひまわりの花

    人工のひまわりの花

  • ミツバチの夜景

    ミツバチの夜景

  • ここはディズニーランドか?

    ここはディズニーランドか?

  • マリーナ・ベイ・サンズの内部

    マリーナ・ベイ・サンズの内部

  • マリーナ・ベイ・サンズの内部

    マリーナ・ベイ・サンズの内部

  • 翌日朝に立ち寄ったジョホール・バールのガラスのヒンドゥー教寺院

    翌日朝に立ち寄ったジョホール・バールのガラスのヒンドゥー教寺院

  • ジョホール・バールのヒンドゥー教寺院の外観

    ジョホール・バールのヒンドゥー教寺院の外観

  • 線香で煙たいジョホール・バールのヒンドゥー教寺院の内部

    線香で煙たいジョホール・バールのヒンドゥー教寺院の内部

  • 線香で煙たいヒンドゥー教寺院の内部

    線香で煙たいヒンドゥー教寺院の内部

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この旅行記へのコメント (1)

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  • Zebraさん 2017/11/05 13:18:37
    美しい建物ですね
    街並みも、モニュメントも空中庭園も綺麗なところですね。
    マーライオンだけじゃないんだな、シンガポール。

    シンガポールは何度か出張の予定があったにもかかわらず、
    毎回土壇場でキャンセルされてしまった街で、
    映画でロケ地になっていたりするし、行きたいとは思っているのですが、
    なぜか縁がなく。(仕事なので、代理で誰か他の人に行ってもらっています)

    でも、綺麗な写真を見せていただき、次回こそはキャンセルしないようにしよう、と思いました。

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